稽古場から出ずに事件を解決。『能楽師探偵 月城奏人の心得』能楽×ミステリーという異色の組み合わせで導き出す真実とは
歴史の授業で一度は耳にするであろう日本の伝統芸能、能楽。
『能楽師探偵 月城奏人の心得』は、能楽×ミステリーという異色の組み合わせが生み出す、華麗な推理劇が魅力の作品です。
ふだん能楽になじみがないという方でも、天才能楽師の月城奏人(つきしろ かなと)の活躍を見ていると、自然とその世界観に引き込まれてしまうことでしょう。
神秘的な能楽の世界に見入る海外ファン
ある日、日本を訪れた金髪碧眼の外国人男性。
ピンク色のド派手なハッピ+ペンライトという、まるでこれからアイドルのライブに向かうような出で立ちです。
タクシーの運転手が話を聞くと、じつはこちらの男性は天才能楽師・月城奏人のファンだそうな。
若くして能の演目で主役を張る“シテ方”の奏人を「神」とまで崇める彼は、どうやら日本文化に対してかなり偏った知識を身に着けてしまっているようです。
その後、公演会場にたどり着いたファン男性は念願の奏人の舞台を観賞。
能楽の独特な所作と神秘的な謡(声楽部分)に、観客ともども引き込まれていきます。
しかし、演目もクライマックスというところで、出演者のひとりが突然倒れるというまさかのアクシデントが発生!
観客たちも一時騒然としますが……!?
会場の関係者がホール内に急行すると、そこにはまるで何事もなかったかのように演目を続けている“シテ方”奏人の姿が。
突然の事態にも動じず、有無を言わせず観客の心を引き戻すこの迫力。さすがは天才能楽師といったところでしょう。
演目中のアクシデントに事件性アリ!?
思わぬアクシデントを挟みつつも、見事に演目をやり遂げた奏人。
その後、彼は現場検証に訪れた土谷警部の前に現れ、舞台を中断しなかった理由を説きます。
能とは、芸能であると同時に神々へと捧げる神事。奏人は毅然とした口調で「人間の都合で中断される事は許されません」と言い放ちます。
しかも奏人はなぜか土谷警部と面識があったようで、警察がやってきた理由をピタリと言い当てるのでした。
警部よりも先に、「毒ですね」と断言した奏人。
そう、じつは先ほどの出演者が倒れたアクシデントは、事故ではなく事件の疑いがあったのです。
今回、毒を盛られたとされる被害者の山田さんは、能の舞台でシテ方のサポートを務める“後見”という役割。
いったいだれが、どんな目的で山田さんを狙ったのか。その真相を探るべく、奏人は楽屋での様子を回想します。
楽屋で奏人が顔を合わせたのは、後見の山田さん、良川さん、そのほかの演者たち、そしてガラの悪い警備員・仁木。
この中で怪しいのは、どう考えても山田さんの持病の薬を届けてくれたという仁木ですが……。
そのほかのできごとといえば、山田さんに叩かれた良川さんが、誤って奏人にコーヒーをぶちまけてしまったこと程度。
このひと幕だけでだれかを犯人だと断定するには、いささか証拠不足と言えるでしょう。
また、いつも通り奥さんのノロけ話をしていたため、自殺の線も薄いらしく、どうやら犯人は部外者の可能性もあるとか。
目撃証言がないか聞き込みをしたほうがいいと土谷警部に告げるなど、妙に場慣れしているように見える奏人。彼はいったい何者なのでしょう……?
迷コンビ結成!? 事件の手掛かりは“物狂い能”
山田さんに毒を盛った犯人を推理する、奏人と土谷警部。
そこに何やら不審者という触れ込みで、ある人物が連行されてきます。
警官が連れて来たのは、なんと冒頭で登場した奏人ファンの外国人男性でした!
思わぬ形で「神様」と対面して感激する彼に対し、奏人は「黙れ刺すぞ」と迫真の塩対応を見せます。
パスポートを確認したところ、彼は紫星流生(しせい るい)という名の日本人とフランス人のハーフであることが判明。
「カナトのタメなら何でもする」と言い切ったり、勝手にツーショットで写真を撮ったり(連射)、警察の前だというのにマイペースっぷりを見せるルイ。その奇行(?)のせいか、奏人からは「事件とは無関係では。ただとバカかと」と言い放たれてしまいます。
さて、その後も警察とは別ルートで事件の調査を続ける奏人でしたが……。
そんな奏人に「また探偵ごっこをするつもりか」と、彼の祖父が釘を指します。
どうやら奏人の叔父は探偵事務所を営んでいたようですが、彼が幼いころに失踪してしまったらしく。
奏人が身近な事件につい首を突っ込んでしまう性格は、恐らく叔父ゆずりという部分もあるのでしょう。
祖父の「稽古場へ戻れ」という言葉に、奏人は「稽古場から出なければよいのですね?」と不敵な笑みを見せるのでした。
こうして、稽古場から離れず事件の真相を追うことになった奏人は、イヤイヤながらもルイに連絡。
なぜか奏人宅の庭に忍び込んでいたのか……は置いておいて、奏人は「何でもする」と言ったルイに事件の聞き込みを依頼(命令)します。
内面はどうあれ、フランスの血を引くルイの端正な顔立ちと天性の人当たりの良さは、聞き込み捜査にはうってつけ。
奏人の指示を受けた彼は、事件当時を知る良川さんや、重要参考人として勾留中の仁木から情報を集めていきます。
そして奏人は、良川さんや仁木の言葉から事件の真相を導き出して「心得ました」とひと言。
続けて彼が口にしたのは「かようの思ひに狂乱する物狂い」、「一大事なり」という、能楽の中でも“物狂い能”と呼ばれる演目にまつわる一節でした。
この一節は、「“物狂い能”は主人公が乱心する姿を描く演目であるから、それを演じる側にも相当な技量が求められる」という意味らしく。
奏人は「殺人はまさに物狂い、正気の沙汰じゃない」と、今回の事件から“物狂い能”を連想していたようです。
つまり、常人が殺人などという狂気の沙汰を演じたら、必ずどこかでボロが出るとでも言いたげな奏人。
彼がどのようにして、良川さんや仁木の証言から犯人の動揺を気取ったのかは、ぜひ本編を読んで確かめていただければ幸いです。
このように、本作ではつぎつぎに起こる怪事件を天才能楽師の奏人が能楽の演目をヒントに解決していきます。
神秘的かつ奥深い能楽の世界に引き込まれてしまうことはもちろん、奏人とルイの凸凹迷コンビっぷりからも目が離せないところ!
今回ご紹介した第1話の真相や今後の展開が気になった方は、2019年9月6日より発売中のコミックス第1巻を手にとってみてください。
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(画像はニコニコ漫画『能楽師探偵 月城奏人の心得』より)
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