タイツとはフェロモンの真空パックである──「タイツの匂いと湿度」まで描き切るアニメ『みるタイツ』原作者・よむ氏が語り明かした“タイツへの想い”とは?
“エロいタイツ”を描くテクニック
──タイツを描く際のテクニックだったり、こだわりだったり、技術的なこともお聞きしたいと思います。まず、率直に“エロいタイツ”を描くために、意識していることはありますか?
よむ:
僕の中ですごくエロいのが、「タイツの反射光」なんですよ。タイツって透けて明るくなるところと、光が当たって明るくなるところはまったくの別なので、描くときにすごく意識してます。そこをうまく描かないと本物っぽくならないんです。
──タイツの反射光。 イラストを見て具体的に説明していただけますか。
よむ:
たとえば、このイラストなんですけど、反射光を入れることで、すごくほんのりなんですけどすごく立体感が出て、湿気があるように見えてすごくエロくなるんです。入れると入れないとで全然違う。
(お尻の箇所に見える反射光を指して)ここで奥行きができるんです。ここがすごく大事。
──たしかに、目が行っちゃいますね。
よむ:
奥に行くほど、タイツの目が集まるので暗くなっていくんです。フチは全部暗いので、その後ろにこういう反射光があるとさらに立体感が出るんです。
──あらためて見ていくと、光もそうですし、たとえばこのイラストだとひざの部分は薄くなって明るくなっているんですよね。全然違う。
よむ:
膝も良いですよね。膝はすごく骨がゴツゴツしているところだから、すごく生々しくなって好きです。
──膝のゴツゴツや足裏のシワなどは、けっこう忠実に再現しているんですか?
よむ:
割と忠実に描いてますが、あまりにリアルだと生々しすぎてしまうので、やりすぎないようにしています。
特に足裏って、実際はものすごくたくさんシワがあるんですが、それを忠実に描いてしまうと、顔とのバランスも悪くなってしまうので。
──タイツってつま先からパンツの上まで範囲が広いですが、イラストを描く際に、最初に筆を入れる部位って決まっているんですか?
よむ:
じつは、顔なんです。
──タイツではないんですね。
よむ:
タイツは描き慣れているのもあるかもしれないですが、顔が一番描き直すことも多いし、時間をかけています。
──どのあたりを意識して描いているんですか?
よむ:
僕の絵は、タイツがメインなんですよね。なので、顔が目立ちすぎてしまうのとダメなので、あくまで淡白に、目立たないけど表情は伝わって、シチュエーションが想像できるようにしないといけないんです。目のハイライトが少ないのも、そういう理由だったりします。
──主役はタイツ。顔はそのシチュエーションを想像するための要素のひとつであると。
よむ:
あくまでタイツがメイン。タイツを見てほしいんですが、「ちょっと恥ずかしがってる」っていうシチュエーションは、わかってほしいんです。そのために、何度も何度も、最後まで顔だけは描き直します。
匂いと湿度
──ちなみに、イラストを描く際の資料ってどう調達しているのでしょう?
よむ:
基本的に写真を参考にしています。コスプレイヤーさんの写真を見たり、写真系のSNSで良い写真を探したり、アイドルの写真集やポーズ集を見ています。
──シチュエーションはご自宅で考えるんですか? 街中でふとした瞬間に足裏が見えて、インスピレーションが湧くということもなく。
よむ:
街中で足裏が見えるシチュエーションってほとんどないので、完全に自宅ですね。
──『よむタイツ』の巻末コメントでは「このとき疲れていたから~」と書かれていたんですが、よむさんの願望や描くときの心境が、構図やシチュエーションに反映されるということなんでしょうか?
よむ:
完全にそうですね。もともと自分を満足させるために絵を描き始めたので。なんのシチュエーションを描くにしても、そこから始まります。
──自分を満足させるためということですが、読者にイラストを通して感じてほしいことって、何かありますか?
よむ:
匂いとか湿度みたいなものを感じてほしいですね。透けとかテカりなどすごく意識して、湿度が出るように描いています。
テカリのないタイツが好きな方もいるのですが、僕はやっぱりテカらせちゃうんですよ。テカっていないマットなタイツを描こうとしても気づいたらテカっちゃう、透けちゃう。
「匂いが伝わってきます」と言ってくれるファンの方もけっこういて、そういうときはすごくうれしいです。
──本物のタイツをスキャンして、テクスチャしたイラストもありました。すごいことされるなって驚いたんですが、それもテカりへのこだわりゆえの挑戦なのですか?
よむ:
そうですね。質感を出すためにいろいろ試していた時期に、「実際にタイツを使っちゃえば良いじゃん! 」と思って試してみました。そうしたらけっこうリアルな感じになって。
ただ、それ以降はテクスチャを使っていないですね。使うことを悪いとは思ってはいないのですが、自分の手で表現したい、自分の手ですごい質感を出したいという目標があります。
──湿度といえば、水が滴っているタイツもよく描かれています。
よむ:
やはり水が滴ると、濃密な雫が垂れているわけですから。すべて詰まった純度の高いフェロモンなんです。
──濃密な雫。なんだか、雫から匂いと甘い味がしそうな気がしてきました……。ちなみに、透けやテカリ、水滴以外で、タイツと相性の良い表現やアイテムってあるんでしょうか。
よむ:
いま、ほかの作家さんに描いてもらったタイツイラストを集めた『くろタイツ』という画集の第2弾を作っているんですが、それを見ると「猫」を絡めている方が多かったです。足元にいたり、タイツと接したり、あと伝線させるしで、猫とタイツは相性が良い。
あと、『くろタイツ』第1弾では、メガネが多かったです。やはりメガネキャラとタイツとの相性は良いですね。
──メガネをかけている女の子はちょっとガードが固い印象があって、なんとなくタイツのイメージに合います。清楚な図書委員、みたいな。
よむ:
そうですよね。やはり上品さが出るものじゃないですか、そこがすごく好きだなって。あくまで品があるものであってほしいんですよ。
──露骨なエロじゃない。ってことですかね?
よむ:
そうそう。
──ということは、見た目がビッチな女の子が履くタイツはそこまでそそられない?
よむ:
その理論だとそうなのですが……でもじつはいま、黒ギャルに白タイツを履かせたいと思っていて。
基本は白い肌の子が黒いタイツを履いているのが好きなんですが、もう逆じゃないですか。ギャップが良いんですよね。
──いやーそれすごいわかります! コントラストが美しいです。
アニメ『みるタイツ』の楽しみかた
──さて、いよいよ5月11日に配信開始となるアニメ『みるタイツ』ですが、よむ先生的にアニメだからこそ注目してほしい描写を教えていただけないでしょうか。
よむ:
イラストでは絶対にできない、動きによる「タイツの変化」を楽しんでもらえたらうれしいです。たとえば、しゃがんだときに膝が明るくなるとか、足の指を開いたときの指のあいだの隙間とか。
──メインビジュアルのアングルもかなりフェチフェチしてますよね。足裏もしっかりと描かれていて。
よむ:
靴なんか履かせませんので!
──おお、なんて頼もしい。
よむ:
イラストでこだわっている匂いと湿度も、監督が理解してくれて頑張って出してくれています。
──薫っていますか……? 画面から。
よむ:
がっつり薫ってきます!
──タイツがメインの作品ということで、やはりアングル的にもタイツが映っている時間が多いんですか?
よむ:
顔も映りますけど、ほかのアニメに比べたらかなり少ないと思います。脚本の丸戸史明さんによって濃密なストーリーが展開され、セリフ数もたくさんあるのですが、タイツに寄っているシーンが多いので、タイツだけ映って会話劇が進んでいくアニメになっています。
──まるで「しゃべるタイツ」ですね。
よむ:
アニメを見ちゃうと完全にタイツフェチなんですけど、音声だけ聞くと普通の学校生活が描かれてるんですよ。だからこそ声優さんは演技力のある方々にお願いしたくて。監督とも「この人にお願いしたいね」という意見が一致していて、みなさん受けてくれたのでふたりで喜んでいました。
──戸松遥さん、日笠陽子さん、洲崎綾さん、茅野愛衣さん……そうそうたる顔ぶれで。
よむ:
アフレコ楽しかったです。全部行きましたもん(笑)。
──幸せそうですよね、収録の場が。
よむ:
別にお願いしたわけじゃないですけど、最初の収録のとき、メインキャストの方々が全員タイツだったんですよ。
──うわあ、良い話。すばらしい。
よむ:
特に話し合ったわけではないそうなんですが、「今日はタイツじゃなきゃいけない」って思ってくださったらしくて。
自分だけタイツだったらどうしよう? とか狙いすぎかな? とか葛藤はあったらしいんですが、最終的に全員タイツだった。
──いや、すごいです。
よむ:
思わず、挨拶のときに第一声で「タイツですね」って言っちゃいました。
同席スタッフ:
ちょっと寒かったので、デニールまではキャラクターに合わせられなかったみたいなんですけど。
よむ:
もう、そんな、履いてきてくれただけで良いんです。そのあと、「イベントがあったらデニールも合わせます」って、言ってくれましたけどね。
──期待が跳ね上がりますね。実際にタイツから発している声がアニメに入っているという。真空パックされたフェロモンがしっかりと。
よむ:
そうです。ちゃんとタイツを履いてアフレコしてくれてますからね。いろんなものが、こもっています。
──アニメ制作にあたって、よむ先生は具体的にどの範囲まで監修されたんですか?
よむ:
シナリオの原案やシチュエーションなどけっこうガッツリと。シナリオに関しては原案を出してそれを丸戸さんに膨らませてもらいました。
──ではもう、性癖が詰まっているアニメになっていると。
よむ:
間違いなく。丸戸さんもタイツフェチなので、タイツフェチが好きなタイツフェチのためのシチュエーションを作っているのでタイツが好きな人は楽しめるものになっていると思います。
──丸戸さんに脚本をオファーしたのはなにか理由があるんですか?
よむ:
タイツといえば丸戸さんだと思うのでお願いします! と。じつは、丸戸さんから「『冴えない彼女の育てかた』を見て依頼したというお話だったら断っていた」と言われました。「タイツといえば丸戸さん」という理由だから引き受けていただけたという。
──タイツが結んだ縁みたいですばらしいですね。おふたりでタイツ談義はされましたか?
よむ:
もちろんしました。
──どんな話をしたのか気になります。同じタイツ好きでも、胸でいうと巨乳派、貧乳派のような、ここは違うね? っていう部分は出てきそうですよね。タイツ好きには派閥とかあるんですか?
よむ:
匂いが好きかどうか、破くのが好きかどうか、とか。お尻、太もも、ふくらはぎ、つま先、足裏と、タイツは楽しめるところがいっぱいあるので、その分好みも分かれますよね。
たとえば、僕は破くのは好きではないんです。伝線は自然現象なのでしょうがないんですが、破くのは違う、とか。そういうところですかね。
──イラストとアニメ制作だと作業がかなり異なると思うんですが、アニメ制作においてここがとくに苦労したって部分はありましたか?
よむ:
集まってくれたスタッフがすごい方ばかりだったのでとくに。最初にフェチに理解ある方、変態を呼んでください、とお願いしたので、最初の条件とのすり合わせが大変だったかもしれません。
──変態が条件……。
よむ:
そうです。丸戸さんとも変態の人が良い、と意見があっていて。それで現れたのが今回の小川監督です。
──監督はタイツに対して、フェチズムはお持ちだったりしたんですか?
よむ:
聞いたところ、普通に好き、くらいでした。でもそのあと、サイトを見たり、自分でタイツを買って濡らして着たり、いろいろ研究してくれたみたいで、タイツ好きのことがわかっているシチュエーションを描いてくれています。
──タイツを濡らして着る……変態ですね(笑)。
よむ:
みんな変態ですよ! ありがたいです。
──公式サイトのキャラクター紹介では、女の子それぞれの好みのデニールも紹介されていますが、このデニール数もよむ先生が考えたんですか?
よむ:
もちろんです。実際の女の子も自分に合ったデニールを着ると思うので、女の子に合ったデニールを選びました。真面目な委員長みたいな子は30デニールのような薄いタイツは履かないじゃないですか。
──ちょっと厚い印象がありますね。
よむ:
そうそう。そうなんですよ。
ホミちゃんというショートカットで活発な女の子は、あまりエロスを感じさせたくないから肌の透けない厚いタイツで。逆にユアちゃんという子はセクシーさ、色っぽさを出したいから薄い30デニール、レンちゃんは中立的な感じにしたかったので60デニールくらいの普通の厚さにしています。
──ユイコ先生はデニール数薄いですよね?
よむ:
一般的には30デニール以上をタイツ、それ以下をストッキングなのですが、ユイコ先生は20デニール設定にして、色っぽさを極限まで高めています。僕が考えていた以上に丸戸さんがエロく描いてくれて、超エロ先生になっています。
──アニメでは全員黒タイツじゃないですか。ここはやはり「黒一本でいこう! 」という意思があったんですか?
よむ:
そうですね。まずは黒でしょう、って思って。
──タイツ入門編みたいな感じですかね。アニメで初めてこの作品を知る方もいると思いますが、作品を通してどんなことを感じてほしいですか?
よむ:
「俺、タイツ好きなんだ」、って自分の隠れたフェチに気づいてもらえたら最高です。多分、タイツを好きな方ってたくさんいると思うんですけど、それを意識してないだけなんだと思うんです。潜在的に好きだけど普段の生活で提示されていないから気づかない……そんな一部のタイツ好きを発掘していきたいです。
──よむ先生的には全人類がタイツの魅力に気づいて、女の子たちも積極的にタイツを履くような世界が希望だったりするんですか?
よむ:
いえ、あまりエロツールとして広く認識してほしくはなくて。あくまで、いまの状態くらいで、世間的には性的じゃないけれど、一部の人には性的に感じるものだよね、ぐらいの「覗いている」って感じが良いですね。
「これがエロいんだろ」みたいなのじゃなくて、本人たちも意識していないところだけど、すごくエッチに見えるっていう。無意識でやってるから良いんですよね。
──本人がエロいと思っていない、狙っていない部分がチラっと見えるのがっていうことですよね。
よむ:
そういうことです。アニメもタイツをメインで見せているけどタイツの話ではないんですよ。あくまで普通の日常生活を送っているだけで、彼女たちはタイツを見せようとは思っていない。それをエロとして狙って出す時点で、もうエロくないんです。
──ありがとうございます。それでは、アニメを心待ちにしているファンの方へメッセージをお願いします。
よむ:
正直、みなさんのためというより自分の満足のためにやっているのですが、それでも好きと言ってくれる方にはきっと楽しんでもらえるアニメになっています。全員変態な制作陣で作って、すごいパワーになっているので、ぜひ楽しみにしていてください。
──良いですね! 最後に、ひとつ聞かせてください。よむ先生にとってタイツとはなんですか?
よむ:
タイツとは……真空パック。
──完璧です(笑)。「人生」って言うかなって思って、身構えてたんですよ。
よむ:
人生ではないです。「宇宙が詰まっている」とか、そういう大きなものにはしたくなくて、あくまで日常のものなんです。
──本日はありがとうございました!(了)
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— ニコニコニュース (@nico_nico_news) 2019年5月9日
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締切:2019/5/15(水)23:59
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『みるタイツ』第1話 5月11日22時~配信開始