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40mPら人気ボカロPが語る“ネット音楽文化”――VTuberは「個人のアイデアでひとつで突破」したボカロ文化から何を汲めるのか?

“文化”として見るボーカロイドとVTuber

――今回のコラボに参加してみて、VTuberとボーカロイドでどこか共通点を感じたりしましたか?

はるまきごはん:
 僕は同人文化がすごい好きで、ボカロとか東方アレンジとか、もっと前だとアイマスの曲のアレンジ、リミックスくハマったり。そういうものって連続的に生まれは盛り上がりを繰り返していたと思うんですけど、VTuberってそれのひとつなのかな、って最初は思ったんですよ。個人の参入障壁が比較的低くて、それを見ていた若い子がまた次に入ってきて、活動を続けていく、みたいな。だからすごく注目してたんです。

 だけど近頃だと、個人と企業の差がついてしまった印象があります。結局個人だと、ひとりで毎日投稿や配信を続けるのは難しかったりして。そうした経過の中で、僕が最初に「共通している」と思っていた部分が、徐々に共通ではなくなっていったという気がしますね。なので、共通点という意味では、今はむしろ無くなったような気がします。

――ボーカロイドの文化って、曲を作って“残していくこと”が基本的な活動だと思うんです。対してVTuberは、ボーカロイド文化に比べると、SNS的なスピード感のある消費のされ方をしている側面はあるかもしれません。

はるまきごはん:
 VTuberって“運営”するものだと思うので、やっぱりコストとか労力がかかりますよね。ただ、いまってまだ「個人がVTuberを自由にやれる技術」が充分に発展していない時代でもあると思うので、もしかしたら近い将来、個人がもっと活動しやすくなるような環境が整う可能性はあるのかなーとも思ってます。いつか裏方として、企画とかで関わってみたいなっていう気持ちもあります。

40mP:
 資本の有無による運営力によって大きく差ができてしまうのだとしたら、良い悪いの話ではなく、文化としては根本が異なるものなのかもしれないですね。ボカロ文化には、自分の持っている技術や世界観を作品として発信して、その曲がヒットすれば個人でもひと晩で有名になれる可能性があるのが面白さとしてあるんですが、自分の作品以外でも、良いものは積極的にシェアしあってみんなで広めていく空気感もあったりします。

 はるまきさんも仰っていましたが、技術がもっと追いつけば変わる部分はあるかもしれませんね。DTMって楽器の演奏ができなくても打ち込みで曲が作れるんですが、例えば、いきなり「スタジオで生楽器を使って曲を作れ」って言われるとすごく敷居が高くなってしまうので。
 ただ、手軽に始める人もいればがっつり機材をそろえてやる人もいて、温度差こそあれど、どれも許容されているポジティブな感じはボカロと似ていますよね!

――音楽という長く蓄積された文化とコンピューター技術のクロスオーバーがDTMやボカロを生み出したのに対して、VTuberは技術も概念そのものもまだ生まれたばかりなので、今後の発展は楽しみですね。

元・YAMAHA 木村氏がコラボを賛助するワケ

――木村さんは、今までボーカロイドを作る側にいらっしゃったわけですが、例えば今回のようなコラボをサポートするにあたって、「ボカロPのボーカロイド離れ」を生んでしまう可能性も無きにしもあらずだと感じたのですが、今回こうして関わるに至った意図についてお聞かせいただけませんか?

木村:
 まず前提としてボカロPのみなさんって、ボカロPである以前に、ソングライターなんですよ。たまたま今の時代で表現の手段としてボカロというツールがあっただけだと思うので、そういった意味では、ソングライターとしての活動の幅を広げるチャンスなので、そのサポートができればいいな、と。今回は彼らにとっても良い話だと思ったので、橋渡しさせていただきました。

友人A:
 以前仰っていた、「ボカロPを作曲の道に引き込むキッカケを作った者としての責任」のお話ですよね。

――そのお話、もう少し詳しく伺ってもいいですか?

木村:
 大したアレではないんですが……僕はボーカロイドを長年にわたって数多く作っていたので、そのことに対する責任を感じるわけですよ。

――責任……ですか。

木村:
 自分が作ったボーカロイドというモノをきっかけに「音楽家になりました」とか「仕事辞めました」という人がいっぱいいるんですよ。そういう話を聞くと「頑張ってね!」と言うことは出来るんですが……一方で、勝手に責任を感じている自分もどこかにいるんです。

 なので、いまはYAMAHAからは離れてしまいましたが、リクエストがあれば自分でサポートできるところはしたい気持ちがあるので、新しく活躍しているボカロPの活動の幅が広がったり、曲の印税が還元されるように音楽出版の仕組みを作ったり、今回のようにシンガーへの提供の機会を増やしたりとか。みなさんにきちんと音楽で食べていってもらえるように、そういうことは一貫してやっているつもりです。

――ボーカロイド、そしてボカロ文化の誕生に関わった者として、ボカロPの活動をサポートし続けていきたいと。本当に、素晴らしいことだと思います。

「ボカロP」という“くくり”について

――今回のようなボーカロイド以外の“声”と一緒に作品をつくる機会もこの先増えていくと思うんですが、ボカロPって今後どうなっていくんでしょうか。例えば、VTuberに曲を書くときって、“ボカロのP”ではないじゃないですか。みなさんのような才能のある作家がよりボーダーレスに活動するにあたって、“ボカロP”と名乗ると必要性ってあるんでしょうか?

40mP:
 いろんな方がいると思うのですが、ボカロPという言葉が伝わりやすいからそう名乗ることが多いですけど、言葉自体に縛られている人はそんなにいないんじゃないかと思います。

はるまきごはん:
 僕はどうするか具体的には決めていないですけど、ボカロPというジャンルにもし縛られているとしたら、もったいないなという感じはします。

 そもそもボカロPという言葉が生まれたのってアイマスの文化からで、シンガーソングライターとかアーティストを指す言葉ではないから、場面によっては合わないなと思うこともあります。でも、だからといってそれぞれが急に新しい言葉で名乗りはじめしまうと、なんだかバラバラになってしまいますよね。それは文化としてすごくもったいないことなんじゃないかとも思います。

 実はこの感覚って、YouTubeでよく感じているんです。悪く言えば“解散”みたいな。ボカロPというのは文化をひとまとめに象徴する言葉で、聴いてくてれいる人にも定着しているので、ボカロPという名前を捨てたほうがいいとは思っていないですね。

――YouTubeは超大規模なプラットフォームで人も多いけど、それ故の弊害もあると。

キノシタ:
 自分は、今まで楽曲やイラストなど全部含めて「キノシタ」として活動してきたので、深く考えたことはなかったのですが、でもやっぱり文化として考えたときは、自分もはるまきさんと同じ意見で、これからもっと幅広く活動される方が出てきても、呼び名はそのまま残ってほしいですね。

40mP:
 いまのはるまきさんの話がけっこう大きくて、確かにボカロPと名乗ってしまうと、分かりやすい反面、「ボカロしか作らない人」という印象を与えてしまいがちです。
 でも個人的にボカロPと名乗るのは、ボーカロイドがあったから今の自分があるからなんです。ある種の感謝みたいなものもあって。だから自分を説明する上では、ボカロという言葉は敢えて外さないようにしています。

――活動の根幹の部分にボカロがあるんですね。

40mP:
 そうですね。いま現時点でもボカロの曲を作っているし、自分の音楽活動の主軸にもなっている。説明的な意味と、文化のため、両方の意味でボカロPと名乗っています……そもそも僕、名前にPが入っていますしね(笑)。

――文字通り、切っても切れない関係ですね(笑)。それでは最後に、ボカロPのみなさんから、今回のコラボで担当した楽曲について一言いただいてもよろしいでしょうか?

40mP:
 ボカロPコラボ楽曲の記念すべき第一作目ということで、どういう方向性にするかとても悩みました。「“ときのそら”を意識しすぎず自由に作ってもらって構わない」とのことだったので、参加される他のボカロPさんのお名前もお聞きしたうえで、おそらく自分らしさを一番発揮できるであろうビターなジャズ調の楽曲を制作しました。

 歌詞ではもの悲しい失恋の気持ちを歌いながらも、オケは跳ねるようなリズムをバックに楽しげなシロフォンの音色がリードメロを担当したりと、ミスマッチ感が自分では気に入っています。
 きっと普段とは違う、そらさんの新しい音楽性の一面を垣間見える作品になったのではないかと思っています。

はるまきごはん:
 ときのそらさんはいつもみんなの心を晴れな感じにしてくれるというイメージがあったので、そういう存在の寂しさみたいな一面を描いてみようという試みで、敢えて「雨」をテーマにしました。

キノシタ:
 Dream☆Story、夢に向かって進むそらちゃんのワクワクした気持ちを十二分に形にすることができたと思っており、とても気に入っているのでたくさん聴いてやってください!

――ありがとうございました! みなさんの楽曲、楽しみにしています!

『Dreaming!』3/27発売!

 今回の対談にご参加いただいた方々をはじめ、ボカロPが多数参加して楽曲を書き下ろした『Dreaming!』が、明日いよいよ発売となります! オリジナルボイスドラマ付きの初回限定盤も見逃せません!

 ときのそらのという一人のVTuberの新たな“挑戦”が詰まったアルバムは、こちらの特設サイトより予約・購入可能です。

作品情報

ときのそら『Dreaming!』

2019年3月27日発売 / ビクターエンタテインメント

アルバム特設サイト:https://www.jvcmusic.co.jp/tokinosora/65163/

初回限定盤 [CD] 3672円 / VIZL-1558
通常盤 [CD] 3024円 / VICL-65163

CD収録曲

01. Dream☆Story
[作詞・作曲:キノシタ]

02. ヒロイック・ヒロイン
[作詞・作曲:buzzG]

03. コトバカゼ
[作詞・作曲:多田慎也]

04. ほしのふるにわ
[作詞・作曲:歩く人]

05. 冴えない自分にラブソングを
[作詞・作曲:石風呂]

06. IMAGE source
[作詞・作曲:渡辺翔]

07. ブレンドキャラバン
[作詞・作曲:渡辺翔]

08. 未練レコード
[作詞・作曲:40mP]

09. 海より深い空の下
[作詞・作曲:アゴアニキ]

10. そんな雨の日には
[作詞・作曲:はるまきごはん]

11. メトロナイト
[作詞・作曲:春野]

12. Wandering Days
[作詞・作曲:Dios/シグナルP]

13. 好き、泣いちゃいそうだ
[作詞:まつもとななみ / 作曲:青木康平]

14. おかえり
[作詞・作曲:瀬名航]

15. 夢色アスタリスク(Dreaming! ver.)
[作詞・作曲:ていくる]

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