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40mPら人気ボカロPが語る“ネット音楽文化”――VTuberは「個人のアイデアでひとつで突破」したボカロ文化から何を汲めるのか?

 近頃のVTuber界隈の急速な発展は、読者のみなさまもご存知のことかと思う。2017年の12月に最初の大きなブレイクを迎えてから約1年と少し経った2019年3月現在、数多くのVTuberが誕生し、誤解を恐れずにいうならば、まるで地下アイドル界のような様相を呈しはじめた。
 そんなVTuber戦国時代の最中、バーチャルアイドル・ときのそら@tokino_sora)が、なにやら新たなる企み事をしているというニュースが駆け巡った。

 それは、完全オリジナルの楽曲で、アルバムを発売しメジャーデビューするというものだ。VTuberがオリジナルの楽曲を発表する事例はあったものの、“バーチャルアイドル”としてメジャーデビューするのは史上初。

 さらに注目したいのが、楽曲のプロデューサー陣には、ボカロPたちが起用されているという点だ。初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカなどに代表される、YAMAHAが制作・発売しているボーカル音源ソフト「ボーカロイド」を駆使して作られた楽曲は、2008年以降、ニコニコ動画を中心に大きな文化を形成していて、日本のネット音楽文化を語る上でも欠かせない文脈となっている。

 このYouTubeとニコニコ動画の文化のクロスオーバーとも言える今回のコラボレーションに際して、ニコニコニュースオリジナルでは、ときのそらの動画にも度々登場する友人A氏、ボカロPの40mP氏はるまきごはん氏キノシタ氏、そしてYAMAHAで黎明期の“ボカロ”に深く関わっていた木村 義一氏の対談を実施させていただける運びとなった。
 対談の中では、今回のアルバムを通して「VTuber文化」のアップデートに挑戦した制作サイドの熱意や、同人文化においては“先輩”にあたるボカロPたちから見たVTuberの考察など……アルバムを心待ちにしているファンの方のみでなく、VTuberやボーカロイド文化に携わる方にとっても興味深い内容となっているはずだ。

取材、文/レオ・ハリス
写真/Daimei


人気ボカロPによる書き下ろし楽曲に注目!

――ときのそら×ボカロPのデビューアルバムが明日、3/27についに発売ということで、おめでとうございます! 今回はこの記念すべき日に合わせて制作の裏話なんかを語っていただくためにお集まりいただきました。まずはお互いに、軽く自己紹介からお願いできますでしょうか?

友人A:
 こんにちは、ときのそらの親友兼裏方の友人A(@achan_UGA)です。今日はみなさんよろしくお願いします。

キノシタ:
 ボカロPのキノシタ(@k1n0shita)と申します。作曲や、イラストを描いたりしています。作曲自体は、DSとかで中学のころからやっていたんですけど、大学に入ってからちゃんとDTMの勉強を始めていまに至ります。曲を投稿し始めたのは、2016年ぐらいです。

はるまきごはん:
 はるまきごはん(@harumaki_gohan)です。ボカロPとして、音楽、イラスト、映像などをやっています。楽曲MVやCDなど、全部自分でプロデュース&制作するというスタンスで活動しています。けっこう黎明期にボカロを追い初めて、自分で曲を作り始める前はいちリスナーとしてニコニコ動画を見ていたんですが、まさに40mPさんのような方々を見て、自然と自分も活動を始めました。

40mP:
 40mP(@40mP)と申します。2008年からボカロPとして活動を始めました。2007年に初音ミクが出てきたので、初音ミクと同じくらいの活動歴です。楽曲制作自体はボカロPになる以前からやっていたんですが、歌モノを作るにあたってボーカルがいなかったんです。そこで「じゃあボカロを使ってみよう」と思い立ったのがきっかけです。

――まさにボーカロイドとばっちりハマったわけですね。最後に、今回はYAMAHAでボーカロイドの制作に関わっていた木村さんにもお越しいただいています。

木村:
 木村です、よろしくお願いします。YAMAHAでボーカロイドの事業の立ち上げの頃から関わって10年間ほどでたくさんのボーカロイドを作りました。1年ちょっと前に退職しまして、今はコンテンツ制作の仕事をする傍で、縁があって今回のプロジェクトでボカロPさんのコーディネーターもしています。

さすがです…友人Aが語るアルバムの制作秘話

――近年、新しいボカロPの登場でボカロシーンが再び盛り上がりを見せつつあるこのタイミングで、VTuber・ときのそらのコラボでオリジナル楽曲でのアルバムを作るという“挑戦”に打って出るわけですが、今回のお話にはどういったキッカケがあるんでしょうか?

友人A:
 コラボのアイデア自体は、ボカロPさんと歌い手さんの関係性をベースに思いついたものです。ボカロPさんと歌い手さんって相乗効果で盛り上がる部分があると思うんです。その歌い手さんをVTuberに変えてみても成り立つのでは? と思ったのがキッカケですね。

※ニコニコ動画で「歌ってみた」でヒットする動画の数(2019/3/12 現在)。100万件近くの動画が存在することからも、ニコニコ発の音楽文化において重要な文脈を担っていることが分かる。

――ボカロ文化の成功事例を参照にしている、と。ただそれでは今回のコラボのように、「オリジナル曲を作る」という発想にまでは至らなそうです。

友人A:
 大体は人気曲などの「歌ってみた」の投稿に注力すると思います。YouTube検索や関連動画、広告を運用することで新しい視聴者にみつけてもらえるようになりますし、そのVTuberのファンの方にとっては、自分が応援している「推し」の歌が聴けるので、「歌ってみた」はみんなにとってうれしい取り組み方だと思います。

――現状のVTuberの界隈では、そういう運用が多数派な印象です。

友人A:
 そうですね。ただ、それは誰でもできてしまうんですよね。なので、そらについては、「歌ってみた」はもちろん投稿しつつも、ボカロPさんとコラボしてオリジナル曲をどんどん作っていこう、となりました。
 VTuberは近ごろ中国とかでも急速に発展してきていますが、私は引き続き、VTuberを日本発で世界に広まっていく文化に育てたいと思っています。その日本のVTuberの中でも先頭のほうを走っている子が、新しいことや難しいこと、成功するかわからないことに挑戦しないと! っていう気持ちで、コラボを発案しました。

※bilibiliで“VTuber”と検索した結果(2019/3/12 現在)。日本のVTuberが、動画に中国語の字幕を追加して投稿しているケースも多数確認できる。日本国内のファン数を、中国でのファン数が上回っているVTuberもいるようだ。
(画像はbilibiliより)

  という理由もありつつ、一方で、そらの今後の歌の幅を広めるためにも様々なジャンルの歌を歌ってほしかった、というのも複数のボカロPさんとのコラボの理由の1つです。

――シングルではなくアルバムにこだわった意図はなんなのでしょうか? 音楽業界ではサブスクリプションサービスの普及以後、アルバムを1枚出すよりも、コンスタントにシングルを出してバズっていく方が、駆け出しのアーティストには一般的な戦略とされていたりもしますよね。

友人A:
 これもやっぱり、挑戦をしたかったという部分がありますね。夢を持って、夢を見せていかないと、と思って。「VTuberでもアルバムを出せるんだぞ!」と、色んな人に知ってほしかったんです。
 例えば、瀬名航さんやナユタン星人さんのように、ボカロPをしながら、アーティストさんやアイドルグループにも曲を書いていたりする方や、40mPさんのようにバンドもされている方が、VTuberともコラボするようなキッカケに成れれば、という思いもあります。VTuberという存在を「アーティスト」や「メディア」としても知っていただきたいなと。

――そういうムーブメントを起こしていきたいと。

友人A:
 そうですね。成功確率が分からなくても、とにかくやってみようと思い動き始めたプロジェクトです。今回のそらをみて、他のVTuberとボカロPさんのコラボ作品が出てくるようになったら面白いですし、作曲家さんやアーティストがVTuberという新しい文化を知るきっかけになって、この先より多くの、さまざまなコラボが生まれて欲しいといちファンとしても楽しみにしています。

――「世界にとって面白い文化」に育つための挑戦でもあると同時に、VTuberやボカロPに新しい活躍の仕方を発見して欲しいと。ちなみに今回のコラボ、そらちゃんはどんな気持ちで歌っているんでしょうか?

友人A:
 そらは元々、今回のコラボで楽曲を提供してくださっているボカロPさんのファンなんです。なので練習のモチベーションも高くて、すごくいい作品に仕上がっていると思います。

世代もルーツも様々な豪華ボカロP陣

友人A:
 そういえば、曲を発表した時に、今回のボカロPさんたちのことを初めて知ったという方が思っていた以上に多くて驚いた記憶があります。VTuberのファンの方たちって、アニメやソシャゲ・声優界隈、またはニコニコ動画にルーツのある方が多いと思っていたので「知っている人が大半かな」って思っていたんですけど、「初めて知りました」という方が多かったのは嬉しい誤算でした。

――理想的なファンミックスですね。せっかくなので、今回コラボに参加されたボカロPのみなさんのことをより知っていただくために、好きな音楽のことなど伺ってみたいです。

キノシタ:
 ボカロでいうと、一番すごいなと思ったのが、kemuさんの『人生リセットボタン』です! いままで自分は聴いたことがないような曲だったし、中毒性もあってすごく良いなって感じました。

40mP:
 ボカロ文化が盛り上がりはじめた当時流行っていた、ryoさんの『メルト』とか、kzさんの曲は思い出に残っています。はじめは初音ミクのこともよく知らずに見ていたんですが、若干機械っぽい音楽というか、言ってしまえばオタクっぽい文化なんだろうなと思ってちょっと倦厭していた部分があったんですけど、よく聴いてみると良い曲がたくさんあってハマっていきました。

はるまきごはん:
 自分はcosMoさんの『初音ミクの消失』とか大好きでした。たしか2007年頃に出た曲で、自分が知ったのは2009年頃だったと思います。ボカロ以外だと、昔から東方のアレンジがすごい好きで、ずっと聞いていましたね。他にはカゲプロとか、あとはBump of ChickenとかRADWIMPSをはじめとする邦ロックとか、普通にJpopも好きでGReeeeNとかも聴いてきました。

――キノシタさんと40mPさんは、ボカロ以外で言うとどんな音楽がお好きなんですか?

キノシタ:
 ボカロ以外でいうと、B’zは昔から聴いており大好きです。あとはヒャダインさんが作る楽曲が大好きで創作活動に影響を受けています。ゲームミュージックやアニメ音楽、Jpopもよく聴きます……Jpopだと特に矢島美容室も好きでした(笑)。

――矢島美容室、懐かしい! とんねるずのやつですよね。

はるまきごはん:
 キノシタさんは、GReeeeNの明るい曲が好きそうですよね。

キノシタ:
 あー! ですです、好きです!

はるまきごはん:
 僕はどっちかというと逆で、GReeeeNの切ない曲が好きなんですよ。GReeeeNはめっちゃ二面性ありますよね。

――GReeeeNって、そんなに二面性のあるグループでしたっけ……?

はるまきごはん:
 めっちゃ明るい曲とめっちゃ切ない曲があって、そのバランスがすごい上手いんですよね。ただ、切ないほうが好きなファンと明るいほうが好きなファンでは、全然話ができないこともあります(笑)。

キノシタ:
 ……その話は、僕は知らなかったです(笑)。

一同:
 (笑)

40mP:
 僕はJpopばっかり聴いていました。90年代〜00年代のポップスがすごく好きで、当時の音楽から影響を受けてます。特にゆずが大好きで、歌を作り始めたりしたのもそこからの影響が大きいですね。

――ちなみにどの曲が特にお好きとかってあるんですか?

40mP:
 本当に最初のころから好きですね。それこそデビュー曲から。

――ゆずのデビューシングルっていつ頃でしたっ……

40mP:
 98年です(即答)。

――!? ちなみに曲名……

40mP:
 『夏色』(即答)。

一同:
 (笑)

――ゆず愛がとてもよく伝わってきました(笑)。

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