パワー&スピードでザクを圧倒的に凌駕していたモビルスーツ“ヅダ”。性能で勝りながらもジオン軍に制式採用されなかった悲劇の歴史をひもとく
アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する、ジオン公国軍が地球連邦軍との戦争に向けて開発した「ザクⅠ」。初めて実用化された核エンジン搭載二足歩行可能な人型兵器です。
今回紹介する、シラヌイさんが投稿した『[ゆっくり解説]ゆっくり霊夢と学ぶガンダムMS開発史講座 Part3』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、同人ゲーム『東方Project』の霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)と博麗霊夢(はくれい れいむ)のふたりのキャラクターが、ジオン公国軍制式MS(モビルスーツ)に「ザクⅠ」が採用された経緯について解説を行っています。
実戦仕様のMS“YMS-05試作型ザクⅠ”とは?
魔理沙:
ZEONIC【※1】社内コンペの後、MSの量産化が決定すると、ホシオカ【※2】は部品メーカーとして正式に迎えられるんだ。※1ZEONIC
ジオニック。ジオン公国に本社を置く機械メーカーで、史上初めてモビルスーツという兵器を開発した企業。一年戦争終戦後はアナハイム・エレクトロニクス社に吸収合併されている。※2ホシオカ
ZEONICからの外注を受け、「核融合エンジン搭載の新型作業機器」としてMS-05ザクIの基礎を完成させた。霊夢:
苦労が報われたね。
魔理沙:
ZEONIC本社の技術者がホシオカに出向き、量産型MSの開発を行った。そして裏で公国軍に佐官待遇で出向したエリオット・レムは、実戦仕様のMSの開発を始めるんだ。そして宇宙世紀0074 2月、YMS-05試作型ザクⅠを開発するんだぜ。この機体はプロトタイプザクと比べて各種データ収集用のセンサー類を排除し、装甲形状も一新したことによってスマートな印象の機体になった。だが、こうした外見だけではなく、機体内部にも大きく手を加えられている。
霊夢:
へぇ~どんな所が変わったの?
魔理沙:
例えば反応炉は、プロトタイプザクが採用しているZAS-X7の改良型であるZAS-MI8Bへと変更されている。ここでちょっとプロトタイプザクとザクⅠのカタログスペックを見てくれ。霊夢:
ん? どうしたの?魔理沙:
出力に注目してほしい。霊夢:
953kWから899kWへ低下しているね。改良型を搭載しているのにどうなっているの?魔理沙:
これは、プロトタイプザクのZAS-X7が排熱の問題から最大出力を長時間維持できなかった事を反省して、ある程度の出力低下に目をつむりつつ、安定性を重視した結果なんだぜ。霊夢:
そうなんだ。魔理沙:
あとこれにあわせて懸念事項とされていた排熱機構にも手を加えられ、蓄熱材に熱を吸収させた上で放出するという新たな冷却システムを採用したんだ。空冷効果が期待できない宇宙空間においても、ある程度、効率的に熱を排出することが可能になったことにより、連続稼働時間も伸長されたんだぜ。そして、このYMS-05を見たギレン・ザビは「これこそ今のジオンに必要な兵器だ!」と叫んだらしい。霊夢:
冷笑したりシミュレーションに乗ったり叫んだりと色々とやってるね。魔理沙:
その後、テストパイロットから送られてくる運用データの分析、さらにはパイロットやメカニックからのヒアリングが行われ、問題点の洗い出しが進められた。その結果、早急な改善が望まれるポイントが発見されていたため、技術陣は対応策を協議し始めていた。そんな中、国防省はYMS-05の本格量産を保留としたうえで、同時期にZIMMAD【※】社が完成させていたMSとの間で、制式採用の座を巡るコンペティションにかけるという決定を下したんだぜ。※ZIMMAD
ツィマッド社。ジオン公国のモビルスーツ開発、製造に携わる企業で、ジオニック社、MIP社と共に公国の重工業を支えた。モビルスーツの推進装置の開発を得意とし、中でも後述するヅダに搭載された土星エンジンが有名。
実戦仕様のMSを開発する過程で、プロトタイプザクからある程度の出力低下に目をつむりつつ、安定性を重視したMSに改良されました。コメント欄では、「その代わり機体重量が7t以上も軽くなって、パワー・ウェイト・レシオが向上してるな」「重量も減ってるから出力が下がっても問題無し」「高出力、高推力なら良いって話じゃないのね」といったコメントが寄せられました。
ZIMMAD社が完成させたMSとは?
霊夢:
ZIMMAD社が完成させたっていうMSって何?
魔理沙:
コイツだぜ。EMS-04ヅダ。次期主力兵器の雛形がMSに決定した後、ZIMMAD社は得意な推進装置の開発技術を生かし、宇宙空間での高機動性とそれを実現する大推進装置、軍用でしか必要としない性能を持つ機体の開発に取り掛かったんだ。宇宙空間におけるMSの接近戦闘は極めて短時間で機体の遂行方向と速度を変更しなければならない。短時間での大推力、そして推進方向を自在に変更できるシステムを完成させるために、広帯域推進技術を導入した。霊夢:
その技術を導入するとどうなるの?魔理沙:
導入することにより大出力スラスター【※1】とAMBAC【※2】を併用して急激な姿勢制御が可能になったんだぜ。※1スラスター
推進システムの総称。※2AMBAC
アンバック。active mass balance auto control。能動的質量移動による自動姿勢制御。宇宙空間において可動肢の一部分を高速で動かすことで発生する反作用を、MSやMAの機体全体の姿勢制御に利用する。霊夢:
すごいね。魔理沙:
導入後ZIMMAD社は独自のエンジンシステムを完成させる、それが木星エンジン。試作の水星エンジンを経て完成した実用タイプのエンジンシステムで、これを搭載しているのがEMS-04ヅダの最大の特徴なんだ。
ZIMMAD社が完成させたMS“EMS-04ヅダ”。独自のエンジンシステム、木星エンジンを搭載した高スペックなMSということが分かりました。コメント欄では、「スペックだけ見ると性能は格段に良いな」「実際最終的なリミッター付けたヅダは優秀だったんだよな」「兵器に最低限必要なのは火力や機動力じゃなくて耐久性だからな」といったコメントが寄せられました。
ジオン公国軍制式MSの座を賭けたコンペの結果は?
魔理沙:
そして宇宙世紀0075初頭、ZEONIC社のYMS-05試作型ザクⅠとZIMMAD社のEMS-04ヅダで、ジオン公国軍制式MSの座を賭けたコンペが行われるんだぜ。霊夢:
話を聞いていると試作型ザクⅠよりヅダの方が強そうだけど、試作型ザクⅠに勝てる要素はあるの?魔理沙:
その考えは、あながち間違えじゃない。霊夢:
どういうこと?魔理沙:
EMS-04ヅダは、パワーやスピードの面でYMS-05試作型ザクⅠを遥かに凌駕し、軍上層部もヅダ勝利の声が上がっていたんだ。霊夢:
やっぱりヅダの方が強いんだね。
魔理沙:
飛行試験において、試作型ザクⅠのパイロットはエリオット・レムだったんだが、飛行試験の時のヅダのスピードは圧倒的で全く追いつくことが出来なかったんだ。そしてエリオット・レムが負けたと思った時に悲劇が起きた。霊夢:
何が起きたの?魔理沙:
ヅダが空中分解したんだぜ。霊夢:
悲しい事故だね。魔理沙:
これによりヅダ有利で進んでいた形成が逆転し、YMS-05試作型ザクⅠが制式採用される事になったんだ。霊夢:
良い機体だと思うけど空中分解しちゃう機体を制式採用するわけにはいかないよね。魔理沙:
そうだな。ただ、ヅダが制式採用されなかった理由の1つに、ヅダ1機の生産コストがザクⅠの約1.8倍かかるって事もあるんだ。霊夢:
そうなんだ。魔理沙:
その後、空中分解した原因を機体の強度不足、過剰なまでのエンジン出力、さらにはZEONIC社による妨害工作。様々な角度から検討されたんだ。霊夢:
わかったの?魔理沙:
いや、決定的な証拠は見つからなかった。そしてヅダを推したジオン高官のためもあり、開発は、正式には中止されなかったんだぜ。ヅダの空中分解を目撃したエリオット・レムは、機体の安全を確保したままヅダに匹敵する性能を獲得するというのを目標にしてMS開発をするんだぜ。霊夢:
やっぱり出来た人だね。魔理沙:
試作型ザクⅠがヅダに勝利した後、宇宙世紀0075 7月ザクⅠの量産化が決定する。そしてジオンは実戦型の開発にあたって、開発スタッフ、軍関係者に徹底した箝口令を敷いた。霊夢:
連邦にバレたら苦労が水の泡になるしね。
魔理沙:
この機密保持は、徹底されており、ドズル・ザビ級の人物ですら工場内の出入りの際には厳重な身体検査が行われた。霊夢:
ドズル・ザビ級って、その上なんてほとんどいないじゃん。それにしてもドズルまで身体検査って怒られそうだね。魔理沙:
ドズルは怒らなかったんだ。怒るどころか身体検査をした兵士を褒めたたえたんだぜ。だが開発から4ヶ月後には、設計図面が連邦に渡るんだがな。霊夢:
ダメじゃん。
試作型ザクⅠよりヅダの方が強かったが、最終的に空中分解してしまったヅダ。その結果、様々な理由によりYMS-05試作型ザクⅠが制式採用されることが決まりました。コメント欄では、「残念だけどザクが優れてるのは後の歴史が証明してるんだよね…」「最初の目的は「誰でも扱えて、必要なだけの性能がある兵器を作る」ことだから、ヅダは全てにおいて過剰だった」「コスト面から見てもザクで正解よ」といったコメントが寄せられました。
ジオン公国軍制式MSに「ザクⅠ」が採用された経緯についての解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。