デーモン閣下5年ぶりのニューアルバム『EXISTENCE』は、聖飢魔IIファンへの裏切り!? 「吾輩のアーティスティックな側面の集大成」
3月15日にソロアルバム『EXISTENCE』のリリースを記念し、デーモン閣下さんが『リリース記念ニコ生特番』に降臨しました。番組MCは、以前から閣下のファンである、やついいちろうさん(エレキコミック)が担当しました。
デーモン閣下さんが「アーティスティックな側面の集大成」と言う、ソロアルバムの聖飢魔II時代からの歌詞の変化や、初回限定盤ジャケットの撮影秘話などを大いに語りました。
聖飢魔II時代の「演説」の歌から「ファンタジー」になった。
デーモン閣下:
新作アルバムと今までの作品との大きな違いというのは、作詞をするにあたって、今までにやったことのない手法をとっているんだよ。
やつい:
長くやっておられますもんね! 何百年、何千年も(笑)。
デーモン閣下:
現世に置いては32年くらいしかやってないけど(笑)。今まで通りの作り方をしていたら面白くないな、ということを話していたら、プロデューサーと「あらかじめ、曲のお題を設定して歌詞を書くといいんじゃないの?」って話になった。まだ歌が入っていない状態の曲を聴きながら、こういうストーリーがあって、こういう主人公がいて……みたいな映画があるとして、それのテーマソングを書いてください、と。これはいい手法を発見したね!
デーモン閣下:
吾輩の作った歌詞の今までの曲をよく知っている諸君も、きっと思うことだが、概ね吾輩の書く歌詞というのは、聖飢魔II時代から、説教臭いと言うか、「君たちは、社会をこの視点から見ているけれど、違う視点で見てみたらこんな風に思えるかもしれないし、こっちから見たらこんな風に見えるんだよ。だから、そっちからばかり見てたら駄目なんじゃないの?」みたいな。まるで論文ですよ(笑)。
やつい:
(笑)。観客を説得してるんですね(笑)! 「こうじゃ駄目だろ?」と。
デーモン閣下:
簡単に言うと、演説が歌詞になってる(笑)。 だけど、今回のアルバムは作り方が全然違うので、やっと、論文や演説からファンタジーになったんだよ。
やつい:
いや、最初から結構ファンタジーですけどね(笑)。
デーモン閣下:
世の中における吾輩の存在は、ファンタジーっぽいじゃん(笑)?
やつい:
ファンタジーな世界観は得意そうですもんね。閣下を薄く知っている人は、そう思うかもしれないですね。
デーモン閣下:
でも、吾輩の曲で徹底的にファンタジーな曲って、あまり思い浮かばないでしょ?
やつい:
そうですね……。『蝋人形の館』とかはファンタジーですよね?
デーモン閣下:
だが残念ながら、『蠟人形の館』は吾輩の作詞ではないんだよね(笑)。あれはダミアン浜田陛下【※】が作詞しているんだよ。ダミアン浜田陛下はファンタジーを作るのが得意なわけ。吾輩は得意じゃない、ということが30年目にしてわかった(笑)。
※ダミアン浜田陛下
聖飢魔IIの創始者にしてギタリスト。聖飢魔IIデビュー後はバンドに参加せず、地元の高等学校で教諭の道を歩むことを選ぶ。
曲作りの冒険は、ファンを裏切ること
デーモン閣下:
冒険している曲って難しくて、今まで出してきた曲を好きでいて応援している諸君を、ある種、裏切るんだよね。つまり、今までとは違うパターンのものを提示するわけだから、「君ら、吾輩がこんな曲を作るとは思わなかっただろう?」という物を作るときには、えっ? っていう反応が来るのは、あり得るわけだ。
やつい:
まぁ、そうですよね……。
デーモン閣下:
「こんな内容の歌は好きじゃない!」みたいな(笑)。うるせぇよ、って言いたいんだけど(笑)。だって、何も新しいことを考えずに今まで通りのイメージで、新しいアルバムなんて作れないからね。
やつい:
新しいものを作る意味がないですもんね。
デーモン閣下:
たとえば、初回限定版のジャケットなんだけど、こういう風になってるわけね。これは一枚の写真なんだけど、これよく見ると……。
デーモン閣下:
道玄坂。これは渋谷の道玄坂の入口、スクランブル交差点の角で撮った写真。交差点まで繰り出して、何往復もしたんだよ。
やつい:
目立つでしょ(笑)。
デーモン閣下:
隠れてやるわけにもいかないしね(笑)。だから信号が青になるまで待ってて、カメラマンが吾輩にカメラを向けて、吾輩もポーズを取りながら交差点を渡り続けて(笑)。ミュージックビデオも渋谷のヒカリエで撮ったし、渋谷づくしなの。
やつい:
当初は渋谷をテーマにしたわけじゃなかったんですよね?
デーモン閣下:
アルバムを作り始めたときは、誰も渋谷なんて単語は言ってなかった。けれど、最後の段階では「アルバムタイトルは渋谷でもいいんじゃないの?」っていうくらいまでいってたからね(笑)。
やつい:
それ、びっくりしちゃいますよ! デーモン閣下、5年ぶりのアルバムタイトルが「渋谷」って、どうしちゃったの!? って(笑)。
デーモン閣下:
そういう意外性は好きなの。吾輩のことを頑固だと思っている諸君は、世の中にいっぱいいる。確かに、生き方とか生活信条とか、これは譲れないっていうのは頑固かもしれない。けれど、エンターテイメントや作品づくりに関しては、もの凄く柔らかいのよ(笑)。
アーティストとして、新たな扉を開ける
デーモン閣下:
自分で詞を書けるんだったら、人に頼む必要がないわけよ。ここも冒険。今までの吾輩のファンの諸君には、やっぱり吾輩が書いた詞で育ったり、好きで聞いていた諸君は、この貴家悠【※】が作詞した『地球へ道連れ』の違う世界観が入ってきているのは、いろいろ思うところはあるでしょう。
※貴家悠
さすが ゆう。漫画原作者。主な作品に『テラフォーマーズ』。アニメ『テラフォーマーズ リベンジ』の主題歌『荒涼たる世界』『PLANET / THE HELL』を聖飢魔IIが歌った。
やつい:
でも、新しいことをやるっていう意味では大成功ですよね。
デーモン閣下:
吾輩的には大成功。作品づくりや、アーティスティックな感覚で、やったことのない扉を開ける作業としては大成功なんだけど、それは、ファンを満足させるとか、そういうことではないわけだよね。
やつい:
期待に応えるというか、これが聞きたい! というところにも、ちゃんと応えつつ、また新しいこともやるという。
デーモン閣下:
吾輩のアーティスティックな側面の集大成。売れるとか、売れないとか、ポップスであるとか、そういうことを考えていない。一番考えたことは何かというと、吾輩は邦楽(和楽器)奏者と長年に渡ってコラボレーションの活動を続けているから、ものすごくその分野に詳しいの。誰も世の中でやったことがないことができるわけ。能楽囃子とロックが合体して、さらにボーカルが乗っている音楽は世界で初のはずなんだよ。
やつい:
革新的ってことですね。
デーモン閣下:
アート作品としてはね。ただ音をくっつけたというだけにはしたくなくて、能楽囃子がちゃんと生きていて、ロックとしても聞けるものを作ったつもりだけどね。だから本当は、こういう曲を4、5曲作りたかったんだけれども、こういう曲を作るのは、エネルギーをかなり使う。ただ演奏を合わせるだけじゃ駄目で、お互いの良さを引き立たせるためにコラボレーションしていかなきゃいけないからね。