[対談 岡田斗司夫 ✕ 西野亮廣]差し入れ迷惑の炎上問題 キンコン西野亮廣さんが本当に伝えたいこと。「僕は貰ったものを捨てたくないだけ」「ファンレターは本当に嬉しいです」
「差し入れは迷惑なので、いらないです」と発言したところ「ひどい! 」「気持ちを受け取らないなんて! 」という声が多数上がり、炎上騒ぎにまでなったキングコング西野亮廣さん。
この話題を受けて、3月5日配信の『岡田斗司夫ゼミ』にて「ファンの贈りたい気持ち」について探った。ファンに我慢して欲しい、と語る西野さんに岡田斗司夫さんは「その気持ちは2つある。ファンが我慢するのと、タレントが我慢するのと。その中間案を探るべき」と語った。
認知と人気の違い
岡田:
どうなの? 差し入れ問題。
西野:
僕、こういうことを考えたんですよ。タレントさんの収入源って、元をたどれば広告費でしょ。つまり、スポンサーさんがお金を出されて、それが番組の制作費になって、一部がギャラになるじゃないですか。
岡田:
いつの間にかそうなったよね。昔は演芸場があって、お客さんが出したお金だったんだけども。
西野:
そうですよね。いつの間にかそういう風になった。つまりテレビの広告ビジネスになったじゃないですか。そうなったときに、タレントに必要なのは、好感度ですよね。スポンサーさんが大本ですから、みんなに好かれなきゃいけない。
好感度が必要ということになったら、たとえばすごく不味いご飯が出てきても「美味しい」って言わなきゃダメじゃないですか。何年か前はこれで通用したんです。でも今、これを美味しいと言ったら、本当かどうかは「ぐるなび」でバレてしまう。
岡田:
つまり、お前の舌がバカなのか、もしくは媚びているのか、どっちかだと。
西野:
露出すればするほど、嘘をつくことになる。
岡田:
好感度の高い人間は、バカか嘘つきかの2択になってしまうわけね(笑)。
西野:
10年前だったら、それがウソかホントかを調べる術がなかったので、嘘を通すことができた。今、不味いのに「美味しい」と嘘ついたら、たぶん、タイムラインにバーッて流れるじゃないですか。
これで、確かに認知度を得ることはできるけども、人気を得ることができないなと。認知と人気は絶対違うと思ったんです。
岡田:
つまり好感度を得ることはできるかもしれないけど、評価を得ることはできない。
西野:
その最たる例って、ベッキーだと思うんです。あの事件はわかりやすかった。ゲスの極み乙女。の方は、ファンがいたからちょっと長生きしたけど、ベッキーはあの瞬間に社会的制裁を喰らって活動停止になっちゃった。あの時にファンがいるかいないかって、すごく大事だと思った。
ここからの時代は、広告費で生きるのではなくて、お客さんからのダイレクト課金でいった方が強いなと思ったんです。そうしたら、ちょっとやそっとのことで折れない。もう嘘をついてる場合じゃないと思った。ムカついたらムカついた、不味かったら不味いと、ちゃんと言おうと思ったんです。
差し入れのことにようやく話がつながるんですけども、やっぱ、みんなブーブー言ってるんですよ。タレントさんも「貰って面倒くさいわ。どうすんねん」って言ってるんです。もちろんそれを喜ばれる方もいらっしゃいます。でも迷惑だと思う方もいらっしゃいます。
僕は貰ったものを捨てたくない
岡田:
堺正章さん離婚の原因、それみたいよ。
西野:
え?
岡田:
堺正章さん、年末になったら、家に鮭とか伊勢海老が何十匹も送られてくるんだって。彼は昔ながらの芸人さんだから、それをちゃんと食べるところまでが人気商売であり、タレントであると。
それで奥さんに料理しろと言うんだけども、奥さんは、何十匹もの鮭を毎日食卓に出すわけにはいかない。旦那はちゃんと料理しろと言って、仕事に行って現場の弁当食べてる(笑)。それがすごいストレスになったというのがあって、やっぱり~って思ったもん。
西野:
なるほどな。この間もツイッターであったんですよ。僕が「じゃあなんだ、5キロとか6キロの荷物を常に持ち歩かなきゃいけないのか」という話をしたら、「ペットボトルのジュースの1本くらい受け取ってやれ」って言う人がいる。
お前が10人いたらもう5キロだろ。なんでプレゼントをするのは、お前1人ということになってるんだ。
僕、けっこう家が貧しかったんですよ。食べ物を粗末にするっていうのが1番アウトな家でした。だから昔から、劇場への生ものの差し入れが、そのままゴミ箱にいく。捨てられちゃう。こんなことがあっていいのかと。僕は食べ物を捨てたくない。だから「僕はいらない人ですよ」と。
ファンが我慢するのか、タレントが我慢するのか…
岡田:
じゃあ、ファンの贈りたい気持ちはどうしたらいいの?
西野:
それはもう、我慢してくれ!
岡田:
それって2つあるよね。誰かが負担を受けないといけない。ファンが負担を受ける方法として、差し入れを我慢する。タレントが負担を我慢する方法として、受け取って後で自分で処分する。その中間案みたいなものがないのかと。
西野:
今コメントで「現金は?」とあったんですけど、現金いいと思うんですよ。でも僕が嬉しいのは、自分の本を買って下さって、ここにお金を使っていますっていうのを証明してくださるのが。
岡田:
領収書をくれるのが一番嬉しい。
西野:
領収書をくれるのが一番嬉しいです。レシートでも何でもいいですよ。これ、買いましたよっていう。それが一番嬉しいですわ。
岡田:
でもそれじゃ、奉仕にならないよ。ファンの人が思う「この人のために何かしてあげたい」にならない。『ちびまる子ちゃん』で山口百恵の引退コンサートに行った時に、カニ缶差し入れたというのがあって、あの気持ちが最も原初なものだと思うのだけど。原初なファンの衝動にどう応えるのか。でも応えた場合、全部嘘になる。
西野:
嘘になるんですよ。
岡田:
つまり、にこにこ笑って受け取って、辛い顔しながら、その場で捨てていくっていうことになる。
西野:
それが嫌なんですよね。捨てるのが。もう、とにかく人から貰ったものを捨てるっていうのが、一番嫌なんですよ。
ファンレターは本当に嬉しいです
岡田:
あれはどう? 「貰ったものをありがとう、と受け取って人に渡す」というやつ。
西野:
僕それこの間やったんですよ。誰にあげてもいいって言われたので。いらないって言ってるのに化粧品をプレゼントされて「誰かにあげて下さい」って言われたから、次来たお客さんにあげた。でもあまり気持ち良くなかったらしくて「そんな。お前、次の人にあげるなよ」って言われて。
岡田:
僕にくれた差し入れは、次の人にあげますから、みんな誰が貰っても嬉しいものを下さいってなっちゃうね。そうすると、サラダオイルとか、昆布とか、お歳暮みたいなのが来てしまう(笑)。
西野:
難しいですよ。本当に難しいですよ。
岡田:
迷惑なんだけど、笑って受け取るっていうのが人気者の義務という「ノブレス・オブリージュ【※】」という考え方がある。つまり、それなりの地位を得た者は、それなりの負担をする義務がある。でも堺正章さんのように、家庭の離婚という悲劇を生む。
※ノブレス・オブリージュ(仏: noblesse oblige)
直訳すると「高貴さは(義務を)強制する」を意味し、一般的に財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴うことを指す。
西野:
嘘をつくのはやめようと。いらんもんはいらん。僕は迷惑だと言おうと思ったんですよね。今コメントで「手紙はどうなの? 」ってありましたけど、手紙は嬉しいですよ。本当に嬉しいです。かさばらないし。
岡田:
差し入れをどんなに嫌がる人でも、絶対手紙だけは読むもんな。それで僕、西野くんのフェイスブックのコメントに「西野さんの独演会でファンレターボックスを置いたら」って書いたら、2千人くらいの独演会で、2通しかファンレターが入っていなかった(笑)。
西野:
そうですよ。どうしてくれるんですか。ホンマに。千人に1人しか書いてくれないんですよ。
岡田:
ファン層というものあるんだよね。
西野:
確かにね、僕のファンの方、手紙なんか書いてくれないんですよ。
岡田:
乱暴な言い方だけど、西野くんのファンって、マイルドヤンキーばっかりじゃないの?
西野:
僕しか出ないライブですよ。僕しか出ないライブで2千人来て、2通とか終わってるじゃないですか(笑)。
岡田:
終わってるよ(笑)。