「朝倉未来に勝ったら1000万円」は何が問題だったのか? 賛否が分かれた企画を久田将義&吉田豪が批評
格闘家・朝倉未来さんに挑戦する企画『朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円』が、11月20日にABEMAで放送され、その内容が話題となっています。
朝倉さんは3人の挑戦者をわずか96秒でKOするなど強さを示した一方、視聴者からは賛否両論の意見が集まりました。
朝倉さんは自身のYouTubeで「いい企画ではなかった。 反省しています」と謝罪しました。
久田将義氏と吉田豪氏は自身がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「久田将義と吉田豪の噂のワイドショー」ではこの話題について言及。
この企画にモヤモヤしていたという久田氏は「問題はABEMA側にある」と、プロとアマチュアの対決において安全面が考慮されていなかったことを指摘。
吉田氏は現役のトップ選手が参加したことについて「絶対に1000万が出ない前提でやってる。もうちょっとハラハラさせて欲しい」と企画の工夫を促した。
#朝倉未来に勝ったら1000万円
— ABEMA(アベマ) (@ABEMA) November 20, 2021
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※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。この番組は2021年11月26日に放送されたものです。
■朝倉選手が勝つに決まってる
久田:
この企画について、僕はモヤモヤしていて言いたいことがありました。
吉田:
久田さんはこの企画が発表されたときからずっと文句を言ってましたね。
久田:
この企画自体、朝倉未来選手が勝つに決まってるじゃないですか。
魅力がある選手だと思って、以前、朝倉さんにインタビューしたことがあります。今でもそう思っていますし、頑張って欲しいと思っているんですよね。
吉田:
久田さんは今回の生配信を課金して見たんですか?
久田:
課金して見ましたし、同じ日のRIZINの沖縄大会も課金しています。
■挑戦者の候補には「世の中に本当に出してはいけない人」の名前が?
久田:
今回の問題のひとつはABEMA側に、もうひとつは選手側にあると思います。
この企画にはテレビの制作会社が入ってるんですけど、挑戦者の候補に“世の中に本当に出してはいけない人”の名前が挙がっていたみたいなんですよ。
しかも「ストリートファイト企画」って聞いたから、「は?」と思って。
吉田:
ストリートファイトっぽさは、番組セットくらいでしたね。
久田:
朝倉さんはプロだから絶対に勝つんですけど、候補に挙がっていたその人は、負けたらそれで終わり、では済まないような人かもしれないということですね。
吉田:
要は本当に手を出しちゃいけない人を呼ぼうとしていたと。
久田:
そうそう。僕はその制作会社が好きなので協力しようかなと思ったんだけど、「そこは触りたくないからダメだわ」と思って。
結局、挑戦者は素人の入れ墨の人(久保田覚さん)、後藤祐樹さん、モハン・ドラゴン選手。これならモハン・ドラゴン選手を抜かして朝倉選手が全部勝って当たり前ですよね。
しかも、ストリートファイトで朝倉さんが手加減してるとはいえ、素人相手に怪我させちゃったっていうのはプロとしては計算違いでしたよね、残念ながら。
出なきゃよかったなというのと、出ても違うやり方があったんじゃないかなって思います。
でも朝倉さん自身、YouTubeで「反省してる」とも言っています。
1000万企画に関して考えを改めましたhttps://t.co/gvyA0OvfHU pic.twitter.com/IZMDNNlcVN
— 朝倉未来 Mikuru Asakura (@MikuruAsakura) November 24, 2021
吉田:
朝倉未来はあの時点では、求められていたことはやれていたと思うんですよね。プロの怖さを見せつけつつ、ちょっと派手な技とかも出しつつ、遊びつつも怖さを見せる。ただそもそもの企画というか……。
久田:
ABEMAの企画だからまた事故るんじゃないのって思っちゃうもん。もうちょっとひどい怪我をしていたら、「誓約書を書いていたから怪我してもいい」って問題じゃなくなっちゃいますよ。
この件について弁護士ドットコムの記事で、「誓約書にサインしても即『合法』といえないおそれも」って書いてありましたけど。
吉田:
後藤祐樹の歯が8本折れたとかのデマも流れてましたけど、本当に歯が折れてなくて良かったですね。
久田:
朝倉さんは「弱い者いじめをやめよう」「格闘技を広めよう」という声を期待して企画に参加したって言ってるけど、実際にコメント見てたら「未来くんかっけぇ」「未来くん強ぇ」になっちゃってるから。
吉田:
ファンの子たちは「俺もこういうことやりてぇ」みたいな(笑)。
久田:
喧嘩は絶対やるべきじゃないし、勝っても負けてもデメリットしかないですからね。負けた側はボコボコになるし、勝った側は社会的地位を失うかもしれないじゃないですか。
喧嘩はやめたほうがいいんですよね。それは別に見せる必要もないし。
あと総合格闘技ってまだ歴史が浅いから、ボクシングコミッションみたいなのがないので、将来的に政治家が動いて一般社団法人なり、しっかりした組織作りも考えても良いのかなと思いました。
過去には、試合中にジェラルド・ゴルドーが中井祐樹さんをサミング(目潰し)したという事件もありました。UFC第1回から数回はゴルドーやホイス・グレーシー、ケン・シャムロックみたいなプロに対してアマチュアに毛が生えたような選手がボコボコにやられていましたよね。
そういう残酷性を排除しようと今のUFCがルールを厳格化して発展したのに、今回の企画はその流れをまた元に戻してしまう物だと思いましたね。
だから、前田日明さんがプロデュースした総合格闘技の大会「THE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)」では、前田さんは格闘技の危険性を分かっているから、めちゃくちゃルールは厳格でしたよね。
プロ対プロならまだしも、ABEMAはプロ対アマ。それなのにABEMAの企画では怪我人も出ちゃってるから、制作側は朝倉選手に、今までの企画とは違うことを言っていたと思うんですけどね。
吉田:
リアルアウトローな人たちって、最近はYouTubeとかもやってるし、一般人からすれば「ちゃんと話を聞いたら面白いんだ」「こういう場にも出てきてくるんだ」みたいに気軽で身近な存在になってるけど、「本当に気をつけて距離を保たなきゃいけない人たちだ」という客観性を失っている人が多いですよね。
久田:
多いね。でも“本当にヤバい人”はまだYouTubeとかには出ていない感じがします。
出しちゃって、勝ったはいいけども、さっき言った通り「いやそれで済むか? 済まねえだろこの野郎」みたいな人はいるからね。その人の名前を出す時点で「ちょっとな……」と思ったしね。
■「ストリートファイトマッチ」企画も多種多様
吉田:
こういうストリートファイト企画を見るたびに、プロレスラーの大仁田厚はすごかったと思いますよ。
「ストリートファイトマッチ」って銘打って何やってんのかと思ったら、普通にただTシャツにジーンズ姿で場外乱闘やってるだけですかね(笑)。
やってることはいつもの試合と何も変わらない上に、Tシャツを着ることで有刺鉄線の痛みを軽減させているわけだから、むしろ裸より安全じゃんって(笑)。
久田:
高木三四郎さんの路上プロレスみたいなことをやるのかなと思ったんだよね。
吉田:
FMW【※】のストリートファイトに触発されたJWPという女子プロレスの団体が、「ドレスアップワイルドファイト」って私服ファイトをやってて、「それ全然ドレスアップじゃねえだろ、Tシャツじゃなくてパーティドレスとか着てやれよ!」と思いました。カクテルグラスとか叩きつけるみたいな(笑)。
※FMW(フロンティア・マーシャルアーツ・レスリング)
大仁田厚が設立したプロレス団体。現在は活動終了。
久田:
あと、この企画のペイパービューの売上が一番良かったっていうのも自慢してましたけど、それだけ詰めていくと、また事故るんじゃないかなと思います。ちょっとそれに走りすぎなような気がしますけどね。
■もうちょっとハラハラするような企画に
吉田:
このシリーズって、絶対に1000万出ない前提でやってるじゃないですか。
ルールとかを工夫して「これは万が一のことがあるかも!?」みたいな、もうちょっとハラハラさせて欲しいんですよ。
久田:
みんなプロのすごさを知らないと思います。僕も、総合のジムの一般会員だった時、たまに時間帯によってプロの選手のスパーとか間近で見るんだけどパワー、スピードが当たり前だけどすごいですよ。
あと、プロは生活がかかってるからハートも違うんで、アマチュアが勝てるわけないよ。
吉田:
出ないのが前提の1000万円だから嫌なんですよね。
久田:
「亀田興毅に勝ったら1000万円」は見ましたけど、「朝青龍を押し出したら1000万円」は絶対に無理だから見てないし。
あと解説者の大沢ケンジさんも、解説だから騒ぐのはわかるんですけれど、もうちょっと格闘家としての矜持みたいなものを求めたかったですけどね。
吉田:
もし久田さんが解説とか頼まれたら……?
久田:
冷めるでしょうね。あれを見てたら「これ、だめじゃないですかね」って言うでしょうね。
だって数年前、気に入らない番組の収録だと寝ちゃうくらい好き嫌いハッキリしてますからね。今は大人になったからそういうことはしませんが。
吉田:
解説しながら文句を……。
久田:
言うでしょうね。大沢さんも「格闘技は朝倉選手によってめちゃめちゃ潤ってる」って言ってたんですよね。ABEMAはいろんな格闘技のライブもやってくれるし、格闘家はABEMA批判ができないっていうのはわかるんですけれど……。
でも僕はプロ選手としての矜持を持ってもらいたいなと思いますけどね。
吉田:
「桜庭和志に勝ったら1000万円」だったら、もうちょっとハラハラすると思うんですよ(笑)。打撃なしで素人相手だとしても、「桜庭危ないかも!?」みたいな?
久田:
今の桜庭さんでしょう?
吉田:
そう。ちょっと心配じゃないですか?
久田:
「髙田延彦に勝ったら1000万」はどうですか? これくらいだったら、結構ハラハラするよね。
吉田:
いろんな人が名乗りあげますよ(笑)。
視聴者コメント:
亀田(の企画)はいいラインだった
吉田:
そうですよね。亀田さんみたいに現役を離れてある程度の期間が空いてるとか、「いけるかも!?」みたいな可能性を感じさせてくれたらいいけど、朝倉未来は現役バリバリじゃないですか。
久田:
現役のトップ中のトップだから無理に決まってるじゃん。
吉田:
こういう企画であれば「いけるかも?」感を出してほしいんですよ。「現役が圧勝しました、以上」ではちょっとね。
久田:
そうだよね、見た瞬間に勝ちってわかる企画はちょっとね。
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