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本当はゆるい“カリブの海賊”「トラブルの元になるので女には手を出さない」「襲うのは日用品を積んだ船」

国が略奪を許可!? 政府公認の海賊“プライヴェイティア”

岡田:
 今回、取り扱う“海賊”というのは、1670年から1730年くらいのカリブ海にいた海賊です。

 この60年間くらいが、いわゆる海賊の黄金期だったんだけど、それまでの海賊の大きい流れとしては、まずは“私掠船”(プライヴェイティア)と呼ばれる海賊がいました。

 私掠船というのは何かというと、ヨーロッパのいろんな国が、海賊たちに対して“略奪許可証”というメチャクチャなものを発行していたんですよ。それを受け取った国家公認の海賊というのを私掠船と呼びます。

 ちなみに、『マスター・アンド・コマンダー』という映画で、イギリスの軍艦が戦っていたフランス船も私掠船です。確か『モーレツ宇宙海賊』も私掠船だったと思うんだけども(笑)。

 もちろん、彼らプライヴェイティアは、国に帰れば英雄です。しかし、そこで略奪した財宝の中から一定の配分を王室に支払うということが義務になっていたそうです。

 まあ、今聞くと「本当かよ?」って話なんですけど。これが、当時発行された私掠許可証です。

私掠許可証

 これが、国家公認の略奪許可証。例えば、フランスが発行する許可証だったら「スペインとイギリスの船は襲ってもいい」とか、もしくは「ポルトガルの船を重点的に襲いなさい」みたいなことが書いてあります。

 もちろん、さっきも言ったように「ただし、襲って得た財宝は、必ず一定の割合を王室に納めなさい」というふうに書いてあるんですけど。この割合は、だいたい2割とか3割だったと言われてます。

 ここまで来ると、もう、ほとんど“戦争の外注化”と言ってもいいですね。そういうことをやっていたのが私掠船という海賊です。

宗教戦争の尖兵としての海賊“コルセア”

 その他に“コルセア”という海賊もいたそうです。コルセアというのは、「宗教的な海賊」という意味で、例えば“バルバリ海賊”というのがあります。

 バルバリ海賊は16世紀の始めに、もう何百年も前の出来事であった“キリスト教徒による十字軍遠征”への復讐を目的として、イスラム教徒が「カソリック皆殺し!」を合言葉に始めた海賊なんですよ。恐ろしいですよね。もちろん、彼らも地元に帰ったら英雄なんだけれど。

 それに対して、“マルタ海賊”というのもいた。これは、地中海のマルタ島を本拠地にしていたキリスト教の海賊なんですよね。こっちは主にイスラム教徒を襲います。で、もちろん、地元に帰ったら英雄です。

 マルタ海賊に限らず、ロードス島騎士団など、当時の地中海はキリスト教海賊団というのがいっぱいいたそうなんですよ。

 いや、俺も、「キリスト教がエグい」というのは知ってたんだけど、ここまですごいとは思わなかったよ(笑)。

 それに対して、“バッカニア”というのは、スペインによってジャマイカ島から追い出された島民たちによる、スペインへの復讐を目的にした海賊です。

 ジャマイカ島には、それまでいろんな人がいたんだけども、一時期、この島をイギリスが支配してたんです。この時期は、島民のみんなも、「ああ、イギリスの支配ね」って、それなりに平和に暮らしてたんだけど。その後、スペインがイギリスに対して干渉して、「島の民を全部追い出せ!」というふうなことになり、ジャマイカ島からみんなが追い出されてしまいます。

 結果、追い出された島民が「スペイン許すまじ!」ということで、主にスペインを襲う海賊たち、バッカニアというのが生まれたそうです。

ジャック・スパロウのモデルとなった“黒髭ティーチ”

 さて、海賊の黄金期と呼ばれたこの時代には、バッカニアもいれば、国家の公認を受けた私掠船もまだまだいっぱいいました。その他にも、そういうのとは全く関係なく「俺達はどこにも属さない」と言っているフリーの海賊も混在していた時代です。

 そんな時代、海賊として最も有名だったのが“黒髭”ことエドワード・ティーチ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウのモデルになったともいわれているオッサンです。

黒髭ティーチ

 この肖像画、よく見ると、頭から伸びたおさげみたいなものから煙が出てますよね? これ、何かと言うと“火縄”なんですよ。つまり、火縄銃の導火線を帽子の中に入れて、垂らしているんです。しかも、この導火線が特注で、ものすごく煙が出るものなんです。

 他にも、髭の中に、硫黄とか大麻を入れて、もうもうと炊いていたそうなんですよ。襲った船の中を練り歩く時には、それら全部に火をつけて、本当に顔を火傷するかしないかのような状態でうろついていたそうです。

 胸の辺りを見ると、ピストルがいっぱい付いています。これ、6丁も下げてるんですよね。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の第1作をチャンスがあったら見てみてください。ジャック・スパロウが、「さあ、これから戦いだ!」という時に、ピストルをいっぱい胸に取り付けるシーンがあるんだけど、これはエドワード・ティーチがモデルだからなんです。

 なぜ、6丁も持っているのかと言うと、当時の銃は“先詰め式”で、基本的に1発しか撃てないからです。つまり、船内で戦闘する時に、6発撃つために6丁もの拳銃を持っているんです。

 そんな、ちょっと頭がおかしい感じになってる人なんですけど。この人は、結局、海賊狩りで首を切られて死んじゃったんだけど。「その際、海に捨てられた胴体部分だけの死体が、船の周りを3周泳いだ」っていう伝説があるんですよ(笑)。

 まあ、これは嘘だと思うんだけども。それくらいビビられてたような人だったんですね。

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