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懐かしくも新しいキャラクター造型への野心的な挑戦 「パトレイバーREBOOT」吉浦康裕×浅野直之対談

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 『パトレイバーREBOOT』を作る上での重要なテーマの一つは、ゆうきまさみによるマンガ版の絵柄をもとにしたキャラクターをいかに現代の観客に向けてリファインするかということだった。

 それを実現するためのキーパーソンとして白羽の矢が立ったのが、『おそ松さん』のキャラクターデザインとして人気のアニメーター・浅野直之氏。浅野は他にも『ドラえもん』劇場版で総作画監督を務めた経験を持つなど、旧作のキャラクターに現在のエッセンスを加えて再構築することに定評がある、まさに本作にうってつけの人物。

 しかも監督の吉浦康裕氏とは同い年で、この分野においても、“オリジナルスタッフから若手への継承“が行われている。そして吉浦監督からは意外なオーダーも……。

 さて、浅野はどのようにゆうきまさみの絵柄を吸収し、「REBOOT」させていったのか、彼の魅力に触れてみよう。

取材/桑島龍一(さかさうま工房)
文/野口智弘
カメラマン/増田雄介

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※『機動警察パトレイバーREBOOT』は、2017年2月28日まで無料公開中
日本アニメ(ーター)見本市・機動警察パトレイバーREBOOTサイト


キャラクターリファインの名手、浅野直之という男

——公開から約2ヶ月が経ちましたが、反響はいかがですか?

吉浦康裕氏(以下、吉浦氏):
 まずに劇場で見た人、次にパッケージを買った人、そして最近だと配信で見た人と、いい具合に定期的な波が来るので、その都度、多様な意見をいただけている感じがしますね。浅野さんは感想を読みました?

浅野直之氏(以下、浅野氏):
 ちょこちょこ読みましたね。短くても満足度はあったみたいで、いい評判を聞けました。

吉浦氏:
 おおむね楽しんでくれたみたいですね。自分のまわりだと、いとこの旦那さん。これまで全然話をしたことなかったんですけど(笑)、『パトレイバー』のファンだったそうで、劇場まで見に行ってくれたらしくて、意外なところで『パトレイバー』というタイトルの大きさを改めて感じましたね。やっぱり見たかった人は多かったんだなと。当初の目標だった『パトレイバー』を知らない世代からも「初めて見たけど、面白かった」という意見が増え始めて、それが個人的にはとても嬉しいです。

——ではあらためて浅野さんを交えてお聞きしていきますが、この作品に参加する経緯はどのような形だったのでしょう?

浅野氏:
 ちょうど去年の12月ごろ『おそ松さん』の仕事をしているときに、スタジオカラーの稲垣(亮佑)くん(ラインプロデューサー)から連絡があって「『パトレイバー』をやるんですけど、どうですか」みたいな話をもらいました。監督が吉浦さんで、短編で『パトレイバー』を新しくしたいと。もし尺が長かったらちょっと考えたと思うんですけど、短編なので電話をもらってすぐ返事した気がしますね。吉浦さんとは同い年で、おたがい『パトレイバー』をリアルタイムで観た世代でもありますし。

吉浦氏:
 同い年なんですけど、当時小学生の自分にとっては敷居が高くて、あとからハマったクチなので、浅野さんのほうが開眼は早かったみたいですけどね。

——浅野さんと『パトレイバー』の出会いは?

浅野氏:
 自分は兄の影響です。兄がコミックスを持っていたのと、ちょうど自分の家にビデオデッキが入った頃だったので、レンタルビデオ屋さんで劇場版の1作目を借りて観ていました。子供の頃からロボットアニメは好きだったんですけど、『パトレイバー』はガンダムシリーズとも違うかっこよさがあって、好きでしたね。で、劇場版を見たんですけど、押井(守/監督)さんの聖書から引っ張ってきた話の要素って、小学生にとっては難しいじゃないですか。だから、話はよくわからないけどかっこいいロボットアクションが観られる作品という認識でしたね。『パトレイバー』は身近にあったので、お話を頂いたときには、ぜひやりたいと思いましたし、カラーというスタジオにもちょっと挑戦してみたいなと。

——浅野さんは今回初めてカラーで作業したそうですが、いかがでしたか?

浅野氏:
 スタジオによっては、スケジュールや予算の都合でクオリティを詰めきれないところもあるんですけど、カラーは庵野(秀明/「日本アニメ(ーター)見本市」企画立案)さんのもとに人が集まっていて、徹底してクオリティにこだわるところがあるので、自分もどこまでやれるかは挑戦してみたかったんです。あと今回、メカが手描きではなく3DCGなのにも興味がありましたね。アニメ(ーター)見本市でも『カセットガール』や『神速のRouge』を見て「あ、3DCGでここまでやれるんだ」と結構感動したので、だったら3DCGでイングラムをやっても相当いいものになるんじゃないかなと。逆にもしメカを作画でやることになっていたら「すいません、メカは描けないんで……」って断っていたかもしれないんですけど(苦笑)。

吉浦氏:
 (笑)。『パトレイバー』はやっぱり過去の作品がどれもすごいので、どうやってそれに太刀打ちするかを考えて、勝負するなら違うツールでやるしかないなと。そこで、わりと早い段階からレイバーを3DCGでやることにしました。でも、最初は必ずしもカラーさんで3DCGをやるとは決まってなかったんですよ。ただ、『カセットガール』(アニメ(ーター)見本市第35話)を見て「ぜひスタジオカラーのデジタル部にお願いしたいです」と僕から強くお願いしました。今回のスタッフはCGI作画監督の松井(佑亮)さんも、美術監督の金子(雄司)さんも『パトレイバー』好きな人ばっかりで、いい具合にみなさん自分の持てる力を活かしていいものにしてくれたので本当にラッキーでしたね。

浅野氏:
 ベストなスタッフが集まるかどうかはタイミング次第なところもありますからね。

——メインスタッフでは浅野さんが最後に決まったというお話でした。

吉浦氏:
 そうですね。『パトレイバー』って、キャラもレイバーも背景美術も際立つ要素じゃないですか。そのどれが欠けても面白くならないので、キャラの要として最後に浅野さんに入っていただいた瞬間に「よっしゃ、いける!」という感じでした。浅野さんは昔の作品の絵柄をリファインするのがめちゃくちゃ上手いじゃないですか。これはゆうきまさみ先生の絵柄で『パトレイバー』をやるという今回のコンセプトにすごく合っているんじゃないかなと。それで実は最初に浅野さんに以前のシリーズの特車二課のメンバーの絵を描いてもらったんですよね。

浅野氏:
 そうですね。プロデューサーからの最初の電話で「ラフでいいのでちょっとキャラを描いてみてください」と言われたんですよ。でも詳しくは教えてくれないから昔のキャラが出てくるのかと思って、張り切って野明や遊馬をいっぱい描いたら「彼らは今回出ません」って言われて(笑)。

吉浦氏:
 (笑)。それもすごく魅力的だったんですけどね。

——そのデザインはどこかで見られる機会はありますか?

吉浦氏:
 いやー、ちょっと出せないんじゃないですかね(笑)。浅野さんも最初の頃は不安があったみたいで、直接メールで何回かやり取りしたのを覚えています。

浅野氏:
 ああ、ビビってた感じですね(笑)「黄瀬(和哉)【※】さんみたいなことはできないですよ?」とは言ったんですよね。劇場版みたいなガチガチにレンズを意識した方向性かと最初は思っていたので。やっぱり個人的には『パトレイバー』の劇場版3作品はアニメーターにとって、神様が描いたお手本というか、棚に置いてあるだけで絵がうまくなった気分になるような作品なんですよね(笑)。そこのレベルには到達できない感じがあるんですけど、プロデューサーや吉浦さんからは「今回はゆうき先生のマンガ版のノリでやりたい」と聞いて、それなら自分の良さも活かせるかなと。ただ初期のデザインはまだちょっと崩しきれてなくて、結構硬かったと思うんですよ。それで吉浦さんから「もう少し浅野さんのやりたい感じでいいですよ」という意図のメールをいただいた気がします。

※黄瀬和哉
アニメーター。『パトレイバー』劇場版3作品においては作画監督を担当。その他、代表作に『攻殻機動隊 ARISE』(総監督)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』、『君の名は。』(作画監督)など多数。Production I.G取締役。

吉浦氏:
 ガチガチにマンガ版のデザインに合わせようとすると失敗するので、要所要所を押さえれば大丈夫ですよみたいな感じでしたね。キャラクターは浅野さんの味を出してもらって、レイアウトに関しては「任せてください!」……とまでは言わなかったですけど(笑)、そこは僕のほうが得意なところなのでお互いに補完し合えば大丈夫ですよと。

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