ヘリをチャーターして秋葉原を空撮!? 10年以上続くロングセラー同人誌「秋葉に住む」作者に溢れ出す「秋葉原愛」を聞いてみた
作者の並々ならぬ愛情と情熱、そして私財を注ぎ込んで生み出される同人誌――そこにはディープで、マニアックで、だからこそファンの心を掴んで離さない世界が広がっています。そんな世界の一端をしっかりと掘り下げながら紹介していくのが、ニコニコ発の企画「薄い本プロジェクト」です。
そんなディープな同人誌を取り上げ、制作者にそのアツい思いをひたすら聞いてみる連載企画も、今回で最終回。
第1弾の「人工衛星に魅せられて”人工衛星本”を作ってしまった男」、第2弾の「童貞から集めた疑問に答える話題の同人誌」、第3弾の「コンビニで呑む」に続いて紹介するのは、10年以上にわたって30冊(臨時増刊号含む)を発行している超ロングセラー同人誌、「秋葉に住む」です。
秋葉原といえば、電気街、メイドカフェ、AKB劇場などなど……。熱烈なファンを集めるこの街ですが、「住む」というイメージはあまりありません。そんな中、アキバに住めたら便利だなという願望を叶えるべく、実際に「秋葉原に住む」ことについて徹底的に研究し調査したのが、この同人誌です。
どうしてこんな同人誌を作ってしまったのでしょうか。そして一見ニッチそうなこの同人誌、なぜこんなにもロングセラーになったのでしょうか。ご自身も長年秋葉原に住んでいる、制作者のしげのさんにお聞きしました。
取材・文/透明ランナー
10年以上続くロングセラー同人誌「秋葉に住む」
――こちらの「秋葉に住む」、一体どういう同人誌なんでしょうか。
画像は秋葉に住むHPより
しげの:
「秋葉原」という街は一般的には買い物をする街、あるいは働く街というイメージですよね。そんな中で、「住む街」としての観点からの秋葉原を紹介している同人誌です。
自分自身が秋葉原に住み始めたことをきっかけに、2005年3月に「VOL.01」を発行しました。それ以降原則として毎年夏冬のコミケで発行しています。臨時増刊号を含めると、これまでに30冊を発行しているんですよ。
――30冊も! ずいぶんと長く続いているんですね。
しげの:
内容的には毎号の特集記事と、秋葉原に住んでいる方のお部屋紹介、秋葉原に帰るための終電案内、そして巻末には実際の物件紹介という構成となっています。
画像は秋葉に住むHPより
画像は秋葉に住むHPより
画像は秋葉に住むHPより
――かなり現実的に「使える」同人誌なんですね。でも秋葉原って「住む」イメージはあまりないんですが……。
しげの:
秋葉原の周辺って、今でも多数のマンションが建設されており、居住の選択肢は増え続けています。都心回帰の影響もあり、住む人は確実に増えているんですよ。そんな人に選択肢を提供するのが、この同人誌の目的です。
自前でヘリをチャーターして空撮!
――先日の冬コミで出された最新刊「秋葉に住む vol.25」の表紙は空撮写真ですが、これはどこかからもらったものですか?
しげの:
写真は基本的には全部自分で撮っています。この空撮も、実はヘリコプターをチャーターして自分で撮ってるんですよ(笑)。
――えっ、ヘリをチャーター!?
しげの:
機材は普通の一眼レフです。撮影機材や制作環境は巻末に書いてあるので、よかったら参考にしてみてくださいね。誌面レイアウトもこだわっていて、ビジネス誌などを参考にしています。8ポイント4段組を基本としていますが、写真や図の配置などで変化を持たせるようにしています。
――すごい情熱ですね……!
しげの:
ちなみに、「秋葉に住む」は基本的には一人で制作しています。ラーメン店紹介やコラムなど一部の記事を知人に書いて頂いたり、あとはお部屋紹介では様々な知人にご協力をいただいています。
――読者やネット上などでの反応はどうですか?
しげの:
年に2回のコミケではほぼ毎回、「秋葉に住む」をきっかけに秋葉原に住み始めたという方が私のブースに来てくれるんですよ。それはとても嬉しいことです! 「住む街としての秋葉原」を知って貰えたという意味では、効果はあったと思います。
秋葉原のターニングポイントになった「2005年」
――この同人活動、いつから続けているんですか?
しげの:
2004年から活動を続けています。もう13年にもなりました。コミケの「評論・情報」ジャンルで事前に調査して、同じコンセプトの本がどこにもないことを確認し、「これはいける!」と思いました。
――それはなかったでしょうね(笑)。継続的に秋葉を見ていると、いろいろな変化を目にされてきたと思います。大きく変わったのはいつですか?
しげの:
そうですね。やはり2005年という年が秋葉原にとって最も変化が激しかったように思います。6月に『電車男』の映画が、7月にテレビドラマが放映され、秋葉原という街やメイド喫茶の知名度が一気に上がりました。さらに8月には「つくばエクスプレス」が開業、9月に「ヨドバシAkiba」がオープン。このコンボが決まった事により、秋葉原は非常に話題の街となり、来客も増えました。
――懐かしいですね! 最近の秋葉原についてはどうですか?
しげの:
秋葉原は電気街と言われ、もちろん今でも家電量販店やPC・ゲーム関係の店舗が数多く立地していますが、ここ数年はやはりAKB48に代表される「アイドルの街」の側面が強くなってきましたね。
秋葉原という街は表面的には常に変化を続けている街ですが、「神田祭」にも見られるように下町という一面もあり、根底の部分は揺るぎない頑固な部分がある街であると思っています。
秋葉原と共に歩んできた人生
――ご自身は秋葉原という街と、いつごろからどのような関わりがあるのでしょうか。
しげの:
最初に秋葉原に来たのは、小学生の時に父親と「交通博物館」に来た時だと思います。中学生、高校生の頃は電子工作の部品を買うために何度か来ました。大学生の時はPC関係のチェックなどのために時々来ており、Windows95の深夜販売の時は秋葉原で夜明かしをしました。その時はその10年後にはそこから至近距離に住んでいるとは思いもしませんでしたね(笑)。
――同人活動をやり始めたきっかけはなんですか?
しげの:
大学の時のサークル(鉄道研究部)がコミケにサークル参加したことから、同人活動を始めました。大学卒業後も鉄道研究部の人たちと鉄道ジャンルで活動していました。それが「秋葉に住む」を始める前のことです。
――もともと街づくり、都市計画に興味があったんですか?
しげの:
もともと分譲マンションのモデルルームを見るのが好きで、これまでの13年あまりで300物件以上見ています。「秋葉に住む」の物件紹介で、どちらかと言えば分譲物件に力が入っているのはこのためです。間取りよりは立地や構造に興味を持ちます。特に都心部のタワーマンションが好きです。
画像は秋葉に住むHPより