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原作者のセリフですらボツになる!? ファンを虜にし続ける“ゆゆ式らしさ”の秘密

“かわいい”ではない、キャストへの演技指導

――『ゆゆ式』はキャストさんの演技も非常にマッチしていると思いますが、OVAの際もアフレコ現場へは立ち会われていたのでしょうか?

三上氏:
 はい。収録現場は本当に楽しいです(笑)。

――どういったところが?

三上氏:
 音響監督さんやかおり監督の出す指示もおもしろいですし、それに対してのキャストさんの返しもまたおもしろくて。ドラマCDのボーナストラックとして「収録現場」の録音を入れてほしいくらいです(笑)。

担当編集:
 久々の収録だったので、音響監督の明田川(仁)さんもディレクションされながら「あ、そうだった。この作品は、かわいいじゃなかったな」とおっしゃってましたね(笑)。

三上氏:
 「もっとかわいくなく」「もっとおっさん臭く」みたいなディレクションが飛び交ってて(笑)。

担当編集:
 録音ブース内の声がこちらまで届かなくても、キャストさんたちの様子から「たぶんいまあの話をしてるんだろうな」という感じが伝わってきましたよね。

三上氏:
 そうなんですよ。さっきのような変なディレクションがあったりすると、それに対してキャストさんたちが「えー!?」みたいに言ってるのがわかる(笑)。

――三上先生からは演技に対してもオーダーを出されることはあるのでしょうか。

三上氏:
 TVシリーズのときはシーンの意図やセリフのニュアンスについて質問をいただくことも多かったですけど、OVAではもうみなさんばっちりというか、むしろ僕の想像以上にいい演技をしてくださって。そもそもTVアニメになってからは、原作を描いてるときもセリフがキャストさんたちの声で再生されるようになったくらいですし、今回もたとえば、ゆずこが虫をつかまえるところのやり取りなんかはこんな風になるとは思わなくて、すごくびっくりしました(笑)。

©三上小又・芳文社/ゆゆ式SP情報処理部

わざとかわいくなり過ぎないように描く

――またこの機会に、マンガ『ゆゆ式』についてもうかがわせてください。現在はどのような手順で作られているのでしょうか。

三上氏:
 まずはネタ出しからですけど、『ゆゆ式』では会話の流れが重要になるので、1ページ目の頭から順々に考えていきながら、ときどき普段から書き留めてあるネタ帳を見てアイディアを足していってます。(サンプルを描きながら)こういう風に1枚の紙に、この子たちの会話を文字と記号で書いていくんですけど、アイディアは湯船に浸かっているときに思い浮かびやすいので、ネタ出しの紙をiPhoneで写真に撮ってお風呂のなかまで持っていって、その画像を見ながら思いついたことをメモするなんてことも多いですね。

――いま描かれたサンプルを拝見するに、ネタ出しのフォーマットが独特だと思うのですが、こちらを公表されたりしたことやされる予定というのは?

三上氏:
 ないですね。あくまで未完成品なので、その後のネームまで含めて全部処分してしまっています。残してあるのは下書き以降だけですね。下書きまではアナログで、それをスキャンして、ペン入れ以降はデジタルで。

――その際のアプリケーションは?

三上氏:
 線画はComicStudioで、色塗りはSAIです。ペンタブレットは板型のIntuosで、一昨年ぐらいにサイズを大きくしました。液タブも一回使ってみたんですけど、慣れるのに時間かかりそうだなと思ってIntousのままですね。

――時期によって絵柄が変化されているというお話もありましたが、ツールの変化なども関係しているのかなと思ったのですが。

三上氏:
 カラーの描き方は、ツールの新しい使い方を覚えたりして変わったところがありますね。ただ本編のモノクロの絵に関しては、僕自身の意識の変化が大きいと思います。というのも、連載当初はいわゆる萌え4コマっぽくしようという意識があったんですけど、それがどんどん抜けていったんですよ。むしろ一時期は、マンガチックにならないように、サービスも入れないように、かわいくなり過ぎないように、と思うようになっていて(笑)。5巻・6巻のころに一番極まってたんですけど、流石に少しやりすぎたかなと思って、7巻・8巻のころからはかわいいほうにも戻すようになりましたけど。

――“かわいくなり過ぎないように”というのはどういった理由から?

三上氏:
 感覚的なものなんですけど、いわゆる“かわいらしさ”を描きたいのではなく、“この子たちらしさ”のようなものを大事にすれば、それだけでかわいく、おもしろくなると思っていて。
 イベントを描かないというのもそういうことなんです。たとえば文化祭でこの子たちがおもしろくなるっていうシーンを描くとすると、その文化祭という楽しいイベント自体のおもしろさを描く必要がありますよね。周りでこんなことが起こってますよと。でもそうなると、その分この子たちが自分で発するおもしろいことが減ってしまうじゃないですか。それがもったいないなと思うんですよ(笑)。

――なるほど。それに対して「海水浴」や、その後の「映画」や「迷子」などのイベントは……この子たちが主体的に動けるから問題ないということですか?

三上氏:
 そうなんです。海水浴であれば「はい、海に着きました」というのを描けば、あとはこの子たちがおもしろいことをやるだけなので。

©三上小又・芳文社/ゆゆ式SP情報処理部

アニメ・マンガ『ゆゆ式』のこれから

――原作『ゆゆ式』の今後についてもうかがわせてください。現状では2年生を、単なるループではない独特の形式で繰り返していますが、今後3年生に進級させるという展開もありうるのでしょうか?

三上氏:
 3年生になるとどうしても受験の話題が出てきてしまうと思うので、いまのところあまり乗り気ではないですね。受験ネタをうまくかわしながら描くこともできるとは思いますけど、それなら2年生のままのほうがいいかなと。

――ただ原作のなかには、3年生への進級を予感させるような話題もよく出てきますよね。

三上氏:
 それは2年生であれば、3年生になる話が出てくるのが自然だと思うからですね。春が近づけば次の年度の話が増えるし、将来の話もするだろうと。だから特に進級への伏線というつもりはなくて、2年生のまま、いまと変わらない『ゆゆ式』をまだまだ描いていくつもりです。

――それですとアニメの続編へ向けたストックも心配なさそうですね(笑)。では最後に『ゆゆ式』のアニメ・マンガのファンへ向けてメッセージをいただけるでしょうか。

三上氏:
 アニメに関しては、個人的にもぜひ続編が観てみたいですね。TVシリーズが夏で終わっているので、秋と冬のエピソードはまだたくさん残ってますし、いまも新作を描くたびに、これもアニメ化してほしいなと思うことがよくあります。TVシリーズはもちろん、またOVAというかたちででも作ってもらえたらうれしいですね。特にアニメは、小倉プロデューサーやかおり監督、高橋ナツコさんたちがいれば安心ですから(笑)、僕自身、純粋に楽しませてもらう側でいられます。
 マンガに関しても、アニメがちゃんと“ゆゆ式丸出し”で作ってもらえているので、その延長線上でどこからでも読んでもらえるんじゃないかと思います。僕もまだまだ描きつづけるつもりなので、読者のみなさんにも、この子たちとずっと一緒に笑ってもらえればうれしいですね。

©三上小又・芳文社/ゆゆ式SP情報処理部

 ついに3回目を迎えたアニメ『ゆゆ式』インタビュー、いかがだっただろうか。

 この一連のインタビューでは、Twitterでのエア実況――2017年6月現在、火曜深夜の『ゆゆ式』エア実況は17クール目に突入し、そのうえOVAの発売を受けて再びツイート数を延ばしている――がいまだにつづくようなファンの熱狂の理由を紐解くことが一つの軸となってきたが、そのなかでキーワードとして浮かび上がってきたのが、製・制作陣に溢れる“『ゆゆ式』愛”と、原作者の三上氏がこだわり、アニメでも作品への愛情ゆえに大切に大切に描かれた“『ゆゆ式』らしさ”だったように思う。

 一般に萌え四コマというと、かわいらしい女の子キャラの日常を描いたかわいらしい作品を思い浮かべるかもしれない。もちろん野々原ゆずこ、櫟井唯(ゆい)、日向縁(ゆかり)たち「ゆ」からはじまる女子高生3人の、「ノーイベント・グッドライフ」な何気ない日常を描き出すマンガ『ゆゆ式』も、広くはそうした作品の一つと言うことはできる。
 しかし今回、三上氏の話を聞くなかから見えてきたのは、『ゆゆ式』においてはいわゆるかわいらしさではなく――わざと“かわいくなり過ぎないように”描いていたという発言!――、“この子たちらしさ”が大事であり、それが“『ゆゆ式』らしさ”の一端へとつながっているということだろう。

 かおり監督はインタビュー内で「三上先生の話の作り方って、誰かを傷つけたり貶したりするネタは絶対入れないじゃないですか」と語っていたが、それもきっと『ゆゆ式』が「ギャグもの」ではなく(「この子たちは芸人ではない」)、はたまた特別でかわいいキャラクターたちの物語でもなく(「いわゆる“かわいらしさ”を描きたいのではなく」)、「この子たち」(小倉氏が言うところの「たまたま仲良くなって一緒にいるのではなく、一緒にいるために努力している3人」)が楽しい作品だからなのではないだろうか。

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■『ゆゆ式』OVA
困らせたり、困らされたり〈初回限定版〉
2017年2月22日(水)より発売中

©三上小又・芳文社/ゆゆ式SP情報処理部

◆ 複製キャストコメント入り縮刷台本
◆ 原作・三上小又描きおろし三方背ケース
◆ キャラクターデザイン・伊藤晋之描きおろし特殊パッケージ仕様
◆ 特製ブックレット
◆ 新録ドラマCD(出演:大久保瑠美、種田梨沙、津田美波)

■ゆゆ式OVA キャラクターソングアルバム
2017年03月24日(金)より発売中

©三上小又・芳文社/ゆゆ式SP情報処理部

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