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「“湯浅デビルマン”は昔ながらのオタクを相手にしていないよね」──女性&海外向けに制作された『DEVILMAN crybaby』を岡田斗司夫氏が解説

 毎週日曜日の夜8時から放送中の『岡田斗司夫ゼミ』。
 1月14日の放送にて、パーソナリティの岡田斗司夫氏は、永井豪の『デビルマン』のリメイク作品としてNetflixで公開された、湯浅政明監督によるアニメ『DEVILMAN crybaby』について語りました。

『DEVILMAN crybaby』(画像はDEVILMAN crybaby | 公式サイトより)

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『DEVILMAN crybaby』は昔ながらのオタクを相手にしていない作品

岡田:
 『DEVILMAN crybaby』なんですけど、もう本当につまんないよね。

 どうにか4話まで見たんだけども、酷い酷い(笑)。BLのみなさんにとことん媚びている感じがして、「こんなもん、別に誰でも作れるだろうし、わざわざ湯浅監督がやる必要はないんじゃないのかな?」って思ったんだけど。

岡田斗司夫氏

 たぶん、このアニメは“僕ら”を相手にしていないんですよ。完全に、海外の人向けに作られているんですね。

 なぜ僕がそう思ったのかというと、Netflixというメディアの考え方が、「これまでのアニメファンはもう開拓し尽くしたから、これから先はそれ以外の層にアプローチする」というものだからです。

 だからこそ、湯浅監督に発注が行ったんだろうし、湯浅さんもそういうつもりで作っていると思うんですよ。

男同士の無意味なハグシーンは美少女アニメのパンチラと同じ

 その1つが、「1話につき1ハグ」って僕が呼んでいるもので、不動明と飛鳥了が、毎回毎回、1話につき1回必ず抱き合うんだよね。

 こんなシーン、全く要らないんだけど。あれは、「とりあえずハグシーンを入れておけば、腐女子のみなさんはお喜びでしょ? 『尊いー!』とか言って喜ぶんでしょ?」という打算だと思うんです。

飛鳥了と不動明(画像は公式『DEVILMAN crybaby』PV第3弾より)

 腐女子のみなさんは、それで大丈夫なの? あんなナメきったことをされて。それでも「尊いー!」と言ってしまうくらい重傷なんだったら、それはそれで、まあ構わないんだけども。

 みなさんは、いわゆる美少女アニメのパンチラとか胸揺れに対して「うおー! 萌えーっ!」て言っている男オタクを、「バカみたい」って思って見てるわけですよね? この1話1ハグというのは、美少女アニメのパンチラと同じような、超バカみたいなものを見せられてるのと同じことだと思うんだよね(笑)。

 ……まあまあ、それは置いときましょう。

『DEVILMAN crybaby』は海外向けの戦略商品

 海外向けとはどういう意味かというと、70年代の後半頃に僕が初めてアメリカのSF大会に行った時、深夜の上映会で『科学忍者隊ガッチャマン』が流されていたんだよね。「あ、ガッチャマンやってるのか」と思っていたら、それを見ている外人たちが、なんでもないような回ですごく盛り上がっていたの。

 「どうしたのかな?」って思ってよく見ても、もう本当に、普通のアクションシーンなの。科学忍者隊がギャラクターの雑魚敵をポコポコ殴ってるだけのシーンなんだけど、会場中で「Wow! Wow!」って歓声が上がるくらい盛り上がってたんだ。

 これはどういうことかというと、SF大会に集まっていた海外の人達も、『科学忍者隊ガッチャマン』自体はテレビでオンエアされていたから、見たことがある人が割といたんだけれど、彼らが見ていたバージョンは、いわゆる“人を殴るシーン”が、全部カットされたものだったんだよね。

 つまり、彼らは、そこで上映されていた日本版の『ガッチャマン』で、生まれて初めて、拳が相手にめり込むアニメのシーンというのを見たんだ。それで、「うわーすごい! すごい!」となっていた、と。

『科学忍者隊ガッチャマン 第1話 ガッチャマン対タートル・キング』より格闘シーン(画像はTatsunokoChannelより)

 『ガッチャマン』のアクションシーンって、まあ、確かに見応えはあるんだけども、日本人からしてみれば、別に声を上げて興奮するようなものじゃないんだ。でも、向こうの人たちにとっては見慣れない、とてもすごいもののように映っていた。

 今回の湯浅版の『DEVILMAN crybaby』も、それと同じようなもので、「日本ではありふれている過激なアニメ表現を、海外に、それも、“日本のアニメ”というアートっぽいものとして持っていったら、すごくウケるんじゃないのか?」という戦略商品の匂いがプンプンするんですよね。

「原作にはかなわない」という思いが伝わらない

 一応、4話までは見たんだけど、この時点で“妖鳥シレーヌ”が人間に変身した姿で出てきたんですよ。

 それを見て「おいおい! デーモンが人間に変身しちゃったら、それではデビルマンと同じになっちゃうよ! デーモン族は、自らの誇りのために人間の形態なんか絶対に取らないはずなんだけど、何考えてんだよ、お前!」って(笑)。

 別に、原作逸脱がいけないとか、原作至上主義者であるつもりは全然ないんだけど、勘所の押さえなさというか、ピンぼけさというか、そういうところに呆れ返ってしまって。

 いや、いくら勘所を押さえてなくても、ピンぼけでも、原作を無視してても、それを上回る面白さがあればいいんだよ? でも、『DEVILMAN crybaby』には、それが全くないんだよね。

妖鳥シレーヌとの戦いが描かれた原作版『デビルマン』(画像はAmazonより)

 湯浅監督が『ピンポン』をやった時には、原作をリスペクトしている感じというのがあったんだ。なぜかというと、「原作漫画には敵わない」っていうことを、湯浅さん自身がよくわかっていたからなんだ。

 ところが、今回の『デビルマン』に関しては、「漫画には敵わない」っていうことを、湯浅監督は全くわかってないんだよ。

 そういうわけで、4話から先は見るつもりがないんだけど。まあ、そうは言いながら、見てしまうかもわかりません。とりあえず、4話までの印象としてはそんなもんです。

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