韓国のクリエイターは何故、文化・社会を描くのか?日韓の違いが明らかになったCGアニカップ日韓クリエイター座談会
韓国のクリエイターが文化的・社会的な題材のアニメーションを作る理由
──お互いに作品をご覧になって聞きたいことはありますでしょうか?
Waboku:
僕、韓国の方が文化的だったり社会的だったりする題材を選んでアニメーション作るのは何故か? ということを聞きたいですね。全然コンセプト違うものなので。
ギヒョク:
韓国で作られている短編の大体90%くらいは大学とかで学生さんが作っていて、先生がそういう風に作ったらどうだろうというアドバイスをすることがあります。過去に『Muscle Man』というロボット物も作っていて、自分が筋肉とかアクションが好きだからそれ1本でやる感じで、社会的なものを入れなかったんです。だから教授にすごく「何でこんなの作るんだよ」と、企画段階ではちょっとギャーギャー言われましたが、完成されたものを見たら面白かったと言ってくれたんです。
ミンジ:
韓国では作品を作る時に主題・テーマがなければならないという気持ちが強く、映画館に観に来るお客さんたちがテーマとかそういうものを求めて見に来ているんじゃないかと感じています。私たちは、現代の人々の生活や色々な現象を違う視点から見て作品を作ろうと思っています。私の今回の作品が憂鬱なテーマを扱っているのは、社会が暗いからそこに面白さを見出したというよりは、描こうとしている社会が憂鬱だからなんです。
ギヒョク:
私は反対に社会が憂鬱だから憂鬱じゃない作品を作ろうと思いました。
チェ・ユジン(以下、ユジン):
私からも説明させてください。韓国インディペンデントアニメーションに社会的なメッセージや文化的な内容・背景の作品が多い理由にはその成り立ちに理由があると考えています。韓国は90年代に自主制作のアニメを作り始めたのですが、その時代は文化運動がすごく盛んで、アニメーションでも社会的・政治的だったり、文化的な内容の作品を作るのが90年代の流れでした。
2010年を過ぎてからは作品でもっと自分自身の話をするようにはなりましたが、大学の先生たちは元々90年代のアニメーションの始まりを知っていて、テーマを込めなければいけないという考えがあったので、学生に同様のことをさせたいのだと思うんです。
日本の観客は社会的なテーマを求めているのか?
──日本チームの中でも日本人の生活感が表れているのが『東京コスモ』だと思いますが、岡田さんは『東京コスモ』ではそうした社会的・文化的なものを表現しようという意識はあったのでしょうか?
岡田:
僕は前の作品の『CHILDREN』が社会的な作品と言われていたんですよ。僕としては『東京コスモ』と『CHILDREN』には、そんなに差があるわけではないと思っています。
以前から『東京コスモ』みたいな生活感が大事だということをずっと考えていて、それを目指したんです。社会的なテーマを意識したわけではないんですけど、キャラクターを生きている存在にしたかったので、リアリティについては色々考えました。小物に生活感に出すために、モノの大きさとかを自分で実際に正確に測って、住宅とかも多分1㎜くらいしか差がないんです。そういうものがリアリティを生む、ここに本当に住んでいるんだな、このキャラクターは生きているんだな、というのが見る人に共感を与えるきっかけになると信じているので、そうして見ると東京の暮らしが作品に込められているように見えるかなとは思います。
主人公のコスモちゃんの住むアパートは岡田さんが上京当時に住んでいた部屋がモデルだそうです。
──文化的な面で言えば、Wabokuさんの作品は一見、無国籍な世界観を持っていて、高尾さんの『ROBBER’S COMPANY』はよりグローバルなコンテンツを目指していると思いました。それぞれお話を伺いたいのですが。
高尾:
見ていて新鮮ではありました。普段、自分が接している日本のアニメとはやっぱり違うというか、ハッキリとしたテーマが伝わってくるので、それは新鮮でした。ちょっと話は変わりますけど、日本のアニメはテーマ性を出し切ると、逆にちょっと見づらくなるという感覚もあって。
Waboku:
それは確かにあると思います。商業を意識するのであれば避けられないなというのは。
高尾:
最後にちょっとあるくらいがちょうどいいのかなと。
──多田さんは、そこでなにか思われるところありますか?
多田:
ギヒョクさんが言っていたように、昔から自分の考えを出すのに社会的なものを通して表現する、というのはちょっと考えられないというか……
──日本の受け手の人たちには社会的なテーマは求められていないと感じますか?
多田:
そうですね。でも自分が思っているものとお客さんが求めているものというのは、今日の拍手のやつを見ていても違うんやなと、ズレがあるんだなと。
──審査員のみなさんともズレていましたね。
多田:
そう、全然こちらが思っているのとは結果が違うなというのは何個かありましたね。
岡田:
クリエイターがそういう社会性を出すことを抑えているというよりは、例えば『天空の城ラピュタ』や『風の谷のナウシカ』も、環境問題をテーマにしているように見えます。でも、見ている時には、あまりそういう風に受け取っている人は日本人にはそんなにいないんじゃないかなと、受け取る側は見て楽しめたことが大事なんだと思います。