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新海誠監督、たつき監督を送り出したCGアニメコンテストの代表に、自主制作CGアニメの現在と課題を聞いてみた

出口が見えないクリエイターの道

──自主制作アニメのハードルは下がって参加する方の数は増えていますが、なぜ盛り上がりに欠けてしまっているのでしょうか?

鎌田:
 そうですね。さきほど言ったちょっとした習作をアップされる方なども多いですし、ハードやソフトはどんどん良くなる一方ですから、制作環境という意味でハードルはどんどん下がって、そういう意味でも数は増えている。だけれども、今一つ出口が見えない。

──出口とは?

鎌田:
 昔だと、「目指せ、新海さん」とか、「俺もああなって……」と、自分で作品を企画して作って発表して、それで儲けて食っていけるというクリエイターとしての道が見えていたのに、今はなかなか見えない。作る環境はある、作れる。作れるといったところで、目にするような凄い作品は到底作れそうにない。「じゃあ、何で自分は作るんだろう?」と思ってしまうので、本当に好きな人しか作れない世界になりつつある。

──それというのは、鎌田さんから見て自主制作アニメにとってはプラスなのでしょうか、マイナスなのでしょうか?

鎌田:
 それは悲しい現状ではあります。昔からみんなが目指していた方向というのは、自分で自分の企画を考えて自分で制作して自分の名前で発表して、そして十分それで食っていける。また次の新作が作れるというそういう映像作家、映像クリエイターというのがみんなが目指していた道です。その道にたどり着いている人たちが現状、新海さん以外に例を挙げるのがもの凄く辛いくらい居ないというのは悲しい状況ではあります。

 我々は過去にクリエイターたちと日本国内の市場では回収できないのだったら海外に売り込んでみたらどうだろうか?と、海外の映画祭のマーケットにみんなで売り込むとか、先ほど言ったポータルなどを作って、見た人からカンパを集めようという色んなアプローチをして、なんとかクリエイターたちが自分で作って食っていけるというアプローチを探していましたが、なかなか成立しないという現状はあります。

クリエイター達の闘争は続いていく

──国対抗のCGアニカップを始められたのは、国際交流という面が大きいかと思うのですが、そのような国際交流に期待するところがあるのでしょうか?

鎌田:
 CGアニカップを始めた10年前の頃というのは、日本がクールジャパンだ、日本のアニメ世界一だと言っていた時代なんです。だけれども、当時すでに日本のアニメが停滞している中で、世界中のアニメのレベルがガンガン上がっているというのを肌で感じていたので、国内で俺たちはナンバーワンだという前に海外をもうちょっと見よう、という意図でアニカップを始めました。だから今回、韓国と対戦して韓国チームが勝ちましたが、負けて海外の作品のレベルがいかに上がっているのかをクリエイターたちに痛感していただいたら、むしろ嬉しいですね。

CGアニカップ2017 日本対韓国は2-3で韓国が勝利し、優勝の挨拶を行う韓国チーム。
左からDoGA代表 鎌田氏、カン・ミンジ氏、KIAFA(韓国インディペンデントアニメーション協会)事務局長チェ・ユジン氏、クァク・ギヒョク氏

──そうすることでこれからの自主制作アニメは、良くなっていくと信じてらっしゃるのでしょうか

鎌田:
 環境が良くなって作ることのできる人が増えている以上、作品のクオリティーはどんどん上がっていくと思います。ただそれで食っていける人というのは、結局のところ物凄く一握りという状況ですね。その中である意味『けものフレンズ』のirodori、たつきさんたちも沢山の作品を作り、色々模索して1発ドカンと当てたわけです。そういった人たちが今後も出てくる、まず間違いなく出てくるでしょう。現在、Netflixなどの定額動画配信サービスが急速に伸びていますから、そうしたところで新しいコンテンツとして食い込むという可能性も感じています。
 30年前からずっと続けている闘争というのをこれからクリエイターたちはずっと続けていって、自分で食える道というのを探していくというのは変わらないと思います。あきらめずにみんなに色んなアプローチをやって欲しいと思います。

【予告】明日6日(水)には、CGアニカップに出場した日韓のクリエイター達が、日韓の表現の違いから自主制作アニメにかける想いまで語った座談会の記事を公開いたします。乞うご期待!


プロフィール

TV番組リサーチ会社を経て、現在フリーランスの編集・ライター。映画・アニメとものすごくうるさい音楽とものすごく静かな音楽が好き。ニコニコニュースの他、SENSORS.jpなどで記事を執筆中。
Twitter:@suburbangraphic
Website:suburbangraphics.jp

 

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