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ドラクエシリーズの魅力って何だ? 「アクション性ゼロ、ヒント山盛りのヌルゲー……だが、それが良い!」

ドラクエが日本のRPG「JRPG」を作った

マクガイヤー:
 良くも悪くも結局ドラクエが日本のRPGを作ったんですね。 J-POP・ Jリーグ・JRPGですよ。

那瀬:
 確かにそうですね、ドラクエに出てくるキャラクターの職業がデフォルトになっていますね。

マクガイヤー:
 一覧としてまとめてみました欧米RPGとJRPGの違いです。欧米RPGはだいたいオープンワールドが多いんですが、JRPGは一本道。特にキャラメイキングとか、物語へのプレイヤーの介入は欧米RPGの方が多いです。

 欧米RPGではキャラクターが実写っぽいのに対しJRPGはアニメっぽいというのがあります。だからドラクエは世界では、ほぼ売れない。『グランド・セフト・オート』とか『スカイリム』が何千万本も売れているのに対して、ドラクエは日本国内で何百万というのがやっとですね。

那瀬:
 こう並べるとドラクエがすごく子供っぽく見えますね。欧米RPGは、どこの年齢層をターゲットにしているんでしょうか。

マクガイヤー:
 要は子供から大人までを対象にしています。

那瀬:
 じゃあ子供もオープンワールドを楽しんでいるということですか。

マクガイヤー:
 海外では「子供向け」と「大人向け」がはっきり分かれています。日本ではドラクエを子供から大人までやるんですけれども、『グランド・セフト・オート』や『スカイリム』は大人のゲームで、子供はまた別のゲームを遊ぶ。だから、年齢指定というものは海外の方がはっきりしていますね。ちなみに、ドラクエは海外では全年齢向けです。

 それに海外では日本よりもパソコンでゲームを遊ぶ人が多いですね。日本より海外の方がゲーム人口は圧倒的に多くなっています。だから『グランド・セフト・オート』や『スカイリム』が何千万本も売れている。 日本はゲームの環境的にもプレイヤー的にもすごく特殊な状況にあると言えます。つまりガラパゴスってことなんですけどね(笑)。

 海外でも日本のゲームはそれなりに売れています。しかしゼルダやFFに比べてドラクエは圧倒的に売れない。ゼルダなんて日本よりも海外の方が売れているんです(笑)。ゆえに一番新しいゼルダはオープンワールドにせざるを得なかった。海外ではRPGはオープンワールドが普通だし、『メタルギア』もオープンワールドになりました。『ファイナルファンタジーXV』もホストがオープンワールドでバーベキューするゲームです(笑)。

なぜドラクエは海外では売れないのか

マクガイヤー:
 ドラクエが海外で売れない原因は絵柄だけではないと思うんです。なぜなら、『ドラゴンボール』はアジア圏では大人気です。つまり、鳥山明のデザインが悪いわけじゃない。理由はいくつかあると思うんですけど、ひとつはノスタルジアの源泉が違うということです。

マクガイヤー:
 たとえば『グランド・セフト・オート』は「犯罪映画」が源泉にあります。FFは『ファイナルファンタジーVII』がとても画期的だったのでここからゲームに触れたという人もいます。一方でドラクエはジャンプが600万部売れてた時代に、ジャンプに連載されていた「ファミコン神拳」という記事があって、そこでユーザーに「ドラクエというのはなんぞや」と啓蒙してたんですね。まあ、海外にジャンプはなかったということです(笑)。

 つまり、ドラクエの魅力の半分くらいは堀井雄二の書くテキストなんです。「あぶないみずぎ」とか「ゆうべはお楽しみでしたね」みたいなテキストを英語にするのは、すごく困難ですよね? 一方でゼルダはアクションが主になっているし、FFはむしろ美麗なグラフィックを売りにしている。

那瀬:
 なるほど日本人的な感覚がないと、わからないということですね。

マクガイヤー:
 それも今となってはオッサンの感覚、言い換えれば80年代の雑誌漫画文化の感覚なんです。ドラゴンクエストが『Dragon Warrior』と訳されて海外に出た時の英語が特徴的なんです。

マクガイヤー:
 「Thou hast put the Knight to sleep.」これはイングランドの古英語がもとになっています。完全にプレイヤーが置いてけぼりの訳し方なんですよね。つまり日本語で言うと、「いとをかし」みたいな感じですね。それは堀井雄二の魅力じゃないし、「RPGが中世だから、イングランドの古英語を使おう」みたいな感じですね。

 それが、完全に明後日の方向だった。だから、ドラクエの人気がなかった理由のひとつとしてあると思います。ドラクエの魅力の半分は英訳すると伝わらない、ということです。

 つまり、「ホイミ・ベホイミ・ベホマズン」これも英訳できない。「愛と信頼のゴールド銀行」の「信頼はわかるけど、愛ってなんやねん(笑)」という面白さは伝わらない。

那瀬:
 お互い様だと思いますけどね。映画の吹き替えが全く向こうのニュアンスを反映していないって言いますよね?

マクガイヤー:
 俺は『Fallout』とか『スカイリム』が大好きでよくやってるんですけど、これらの日本語訳は最低ですから! あれって、シナリオ量が長いんで、翻訳をいろんな人に手分けしてもらってるわけですよ。だから同じアイテムも同じ言葉で訳さないときがあるんです。

那瀬:
 それは仕事として駄目ですね(笑)。

マクガイヤー:
 それはゲームにとって日本語の文化圏がマイナーなものになってきた、ということを表してるのかもしれません。

那瀬:
 「ドラクエは日本語のゲームだ」という考え方は、海外にはあるんですか。「アメリカの映画だからアメリカンジョークなんだ」みたいな理解の仕方があったりするじゃないですか。

マクガイヤー:
 それはプレイヤーの年齢の問題もあると思うんです。ドラクエはかわいいグラフィックを採用しているので、一見子供向けに見えるんです。でも、深いところは大人じゃないとわからない構造になっている。

 それも人気の出ない理由かもしれないですね。FFはいかにも大人向け、ゼルダは子供から大人まで楽しめます、というふうに任天堂が作っている感じですよね。ゼルダってアクション以外のニュアンスがあんまりない。でもドラクエはテキストとかストーリーの端々で大人にしかわからないことも、実は表現している。

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