ナルトがサスケに「お前“は”死ぬな」と言った理由。アニメ『NARUTO-ナルト-』メインキャラを演じた竹内順子・杉山紀彰が「終末の谷」など思い出深いシーンを振り返る
岸本斉史先生の大人気コミック『NARUTO-ナルト-』(集英社ジャンプコミックス刊)。
全世界累計発行部数は2億5000万部を突破した、世界で愛されるロングヒット作品だ。
現在、アニメ『NARUTO-ナルト-』の放送20周年を記念した展示会「NARUTO THE GALLERY」が、AKIBA_SQUAREにて開催中。
会場には、主人公・ナルトの背負う過酷な運命や様々な出会いと別れ。仲間との絆に熱いバトル。そんな葛藤と成長の足跡が色鮮やかに蘇っている。
本記事では、展示会の開催にあわせて、ナルト役の声優・竹内順子さん、サスケ役の杉山紀彰さんにインタビューを実施した。
オーディションの思い出や印象深いシーンなど、これまでの20年間を振り返りつつ、ナルトやサスケへの想いを存分に語っていただいた。全『NARUTO -ナルト-』ファン必見のインタビュー、ぜひ楽しんでほしい。
文・撮影/ニポポ
■ナルト・サスケ役が決まった運命のオーディション
──本日はよろしくお願いいたします!
竹内順子・杉山紀彰:
よろしくお願いいたします。
──さっそくですが、お2人がナルト・サスケ役に決まったときのことは覚えていらっしゃいますか?
竹内順子(以下、竹内):
もちろん、20年前のことですが、よく覚えています。ナルトは当初、男性声優を対象にオーディションをしていたんです。そこで決まらず、追加でオーディションに私も呼んでいただきました。
──オーディションには、どのように挑まれましたか?
竹内:
その頃、他のアニメ作品の主人公を演じていました。なので「同じようなお芝居をしても受からない」と思ったんです。
そこで、喉をガラガラにして叫び続けるという演技をしてみたんですが……あまりにも喉の調子が悪そうに聞こえてしまい「一度休んで、最後にもう一回受けてください」と言われてしまって(笑)。
──ええ(笑)。
竹内:
待ち時間にスタッフさんからいただいたココアを飲んで再チャレンジしたら、見事に受かったんです!そこから私の中で「ココアを飲むといいことがある」というジンクスが生まれました(笑)。
──杉山さんはサスケとの出会い、いかがでしたか?
杉山(以下、杉山):
僕はナルトとロック・リーとサスケ役のオーディションを受けたんですよ。
──なんと、ナルト役も受けられていたのですね。
杉山:
そうなんですよ。洋画の吹き替えでご一緒する機会の多かった録音演出の神尾千春さんが呼んでくださったんです。
神尾さんは僕に忌憚のない意見をズバッと言ってくださる方なんですが、オーディションでナルトに声を当てた時に「ごめん!杉山!なんか違う!」って(笑)。
一同:
(笑)。
杉山:
それで、最終的にサスケ役をいただくことができました。それから20年もやらせていただくなんて、当時は思いもしませんでした。
■サスケの幼少期を演じたら「ゴメン! きっしょ!」
──ナルトは少年期からはじまり、『NARUTO-ナルト-疾風伝』【※】で成長、『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』【※】では父親となります。キャラクターの成長に合わせてディレクションも変化していったのでしょうか?
竹内
基本的には各声優が原作や台本を見て、考え、テストで演じて調整している感じです。細かく「ああしてくれ、こうしてくれ」という指示はなかったです。
長く続く作品なので、各声優にお任せという部分が大きいと思います。
※『NARUTO-ナルト-疾風伝』
原作で第二部にあたる箇所を描いたTVアニメシリーズ。2007年2月15日から2017年3月23日まで放映された。
※『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』
うずまきナルトの息子・うずまきボルトを主人公に『NARUTO -ナルト-』のその後を描く作品。
──演技指導やディレクションで印象に残っているものはありますか?
竹内:
杉山さんが幼児期のサスケを演じたときのことは、よく覚えています。
杉山:
ああ、それは僕も覚えてます!
「杉山くんちょっと幼児期のサスケのセリフを読んでみて」と指示があったんです。「絶対に気持ち悪くなりますよ!?」と言いつつやってみたのですが……。
竹内:
そう。それでも杉山くんは頑張ったんです!そうしたら、監督が録り終えた杉山くんに「やらせておいてゴメン! きっしょ!」って(笑)。
一同:
(笑)。
──でも、実際には杉山さんの声が採用されていますよね。しかもまったく違和感がありませんでした!
杉山:
ありがとうございます。でも当時は、晒されてる感満載でしたね(笑)。
竹内:
私の場合、逆に歳を取ったナルトの声をやることになるわけです。
成長と共に太くなっていく男性の声を出すのが難しくて。だから「あの時、杉山くんを笑わなきゃよかった!」って思いました(笑)。
しかも今度は、『BORUTO』では結婚してお父さんになったじゃないですか。「人生って終わりがないんだな」と演じていくなかで感じましたね。
■自然と息があった演技ができた「終末の谷」
──サスケが成長するにつれて声のトーンも落ち着いてきましたよね。
杉山:
そうですね。スタート時のサスケは12~13歳。男性キャストが演じるかどうか微妙なところでした。
それでも僕が当初から続けられたのは、サスケのキャラクターによるところが大きいと思うんです。
──どういうことでしょうか?
杉山:
サスケは家族や里の人を殺されてしまうことで、精神的に大人にならざるえなかったんです。特に『疾風伝』に入ってからは、岸本先生の描くサスケがよりポーカーフェイスになったと思います。
──確かに。サスケが「蛇/鷹」のメンバーになった頃でしょうか。
杉山:
そうですね。その頃は、声に感情を乗せすぎると、表情と合わなくなる。感情が全くないと、会話としてつまらなくなってしまう。
物語の喜怒哀楽をどのくらい声にのせていいのか、どのくらい抑えていくのかという葛藤がありました。
──ちなみに声といえば、ナルトとサスケがぶつかる「終末の谷」のシーンは、声に魂が込められたような熱を感じました。こうしたシーンでは、収録前の打ち合わせをされるんですか?
杉山:
いえ、シリアスな場面になればなるほど「ああしましょう、こうしましょう」という打ち合わせはないです。「キャラクターの心情をどう表現しようか」というプランを持ってそれぞれが挑むだけですね。
「終末の谷」のシーンは、テストの時点で自然と息が合うという不思議な感覚でした。
竹内:
そうだったね。
逆にしっかり打ち合わせするのって、意外とギャグシーンの時が多いんですよ。
■ナルトは健気ないい奴
──ナルトとサスケは幼いころから過酷な運命を背負って人生を歩んでいきます。演じながら幼少期の辛さとはどのように向き合っていらっしゃいましたか?
竹内:
私はナルトに対して「健気~!」と思っていました。里の人たちがナルトの陰口を叩くシーンでも、めげずにコミュニケーションを取ろうとするじゃないですか。この行動に健気さを感じます。
──ナルトはサスケを追う姿勢も健気ですよね。
竹内:
そうそう。「友達だろ!友達だろ!」って犬みたいに健気(笑)。
杉山:
幼少期のサスケが、一族みんなを殺されてしまい、川で落ち込んでいるシーンがあるんです。
それをナルトが遠巻きに見ているんですよ。恐らくその頃から「同じ境遇の奴がいる」とナルトは親近感をもっていたのかなと思っています。
竹内:
ああ、きっとそうだと思います。やっぱり、ナルトは健気でいい奴なんですよね!
■ナルトはずっと恋愛の「好き」がわからなかった
──では、サスケを一言で表すとしたら、どんな人間だと思いますか?
竹内:
モテる奴!
杉山:
そうだね。でも、残念なことに人生一番のモテ期を「復讐」に費やしちゃったと思います(笑)。
──モテ期といえば、少し恋愛模様についても聞かせてください。元々、ナルトはサクラが好きだったと思いますが、結婚するのはヒナタです。この流れをどう感じられましたか?
竹内:
私のイメージでは「サクラちゃ~ん!」って言っているナルトは「みかんが好き!リンゴが好き!」と同じ感覚なんですよ。当時は12~13歳で恋愛の「好き」がまだ分からなかったのだと思っています。
『疾風伝』の頃でも、ナルトは鈍感なんですよ。ヒナタが助けてくれても「ヒナタ!サンキュー!」だけなんです。
杉山:
そうそう、そんな感じ。
竹内:
『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』で描かれた19歳の頃になって、ようやく男の子として女の子をみることに目覚めたというのが私の見解です。
──おお、なるほど。作品への理解度がグンと増した気がします!
竹内:
でも、こうやってナルトを幼少期から振り返ってみると思うんです。
その時その時に、いい師匠であったり、いい先生と出会ってるんですよね。
杉山:
そうですよね。イルカ先生が優しくて理解のある方だったからナルトは更生したのだと思います。イルカ先生がいなかったら、ナルトは相当な問題児になっていたかもしれないですよね。
■サスケは家族思いの優しい子
──現在、「NARUTO THE GALLERY」が絶賛開催中です。名場面や名セリフがたくさん展示されていますが、お二人はナルトとサスケの印象的なシーンはありますか?
竹内:
ナルトとサスケが白と闘ったシーンです。
サスケが助けてくれたのは、一番思い出深いですね。
──あのシーンは私も好きです。直後にナルトもブチ切れちゃうんですよね。
杉山:
あのシーンは「なぜサスケが復讐に燃えているのか」というところに繋がってくると思っています。サスケって本当は、里思いで家族思いの優しい子なんです。
復讐心で視野が狭くなっているだけで、本当は「近くにいる人を守りたい」という思いがあります。それが行動として現れたシーンなんだと思っています。
──あのシーンの直前、ナルトとサスケは一緒に修行していますよね。
杉山:
あれは2人にとって、ある種の「青春」なんです。サスケは仲間が死ぬのを見たくなかったんですよ。サスケがナルトに、「お前“は”、死ぬな」と言うのを凄く覚えています。ナルトには死んでほしくないという思いが強かったんでしょうね。
──杉山さんはサスケとナルトのシーンで印象的なものありますでしょうか?
杉山:
「第四次忍界大戦の最後で、第七班を再結成して共闘するシーンです。展示を見て「ここは熱かったな!」と思いだしました。
──あのシーンは本当にいいですよね!サスケが「俺が火影になる」って言いだして…。
杉山:
みんなが、「はぁ!?」ってなるという(笑)。あの発言は、イタチの想いを理解したサスケが「イタチの想いに報いるためにはどうしたらいいか」と考えて、「自分がトップに立って里を守っていこう」というところに行きついた末の言葉なんだと思っています。
■世界中で愛されるナルト。その根源にあるものとは
──「NARUTO THE GALLERY」には海外メディアも取材に来ていました。ナルトは世界中のファンから愛されていますが、その魅力ってどこにあると思いますか?
竹内:
実際に海外のアニメイベントに参加させていただいたことがあるんです。
そこで現地の方にナルトの魅力を聞いてみたら「登場キャラクターの一人ひとりが何かを背負っている。一人ひとりをメインとして見ることが出来る作品」と、そんな言葉が帰ってきたのが印象的でした。
──最後になりますが、ファンに向けてメッセージをお願い致します。
杉山:
こつこつ歩いてきたら20年。僕にとっては『NARUTO-ナルト-』が日本のアニメで初めてレギュラーを頂いた作品でした。本当にサスケをやらせて頂き、幸運だったと思っています。
「アニメ『NARUTO-ナルト-』放送20周年記念 NARUTO THE GALLERY」にはみんなの愛が詰まっています。みなさんも足を運んで、この大きな愛を体感してみてください。
竹内:
アニメって1話作るのに、恐ろしいほどの時間と労力がかかっています。それをコンスタントに20年も続けて来られたからこそ、今があります。色んな方に知って頂く機会にも恵まれました。世界中に届けることも出来ました。
今回の展示は、みんなの「愛の結晶」でもあります。是非みなさま足を運んでみてください。
アニメ『NARUTO-ナルト-』放送20周年記念 NARUTO THE GALLERY
開催期間:2022年12月10日(土)〜2023年1月31日(火)
開催場所:AKIBA_SQUARE(秋葉原UDX内)
「NARUTO THE GALLERYとは」
本ギャラリーは、アニメ「NARUTO-ナルト-」の放送開始20周年を記念したもので、 2015年に開催された「NARUTO-ナルト-展」以来、約7年ぶりとなる展示イベントです。
キャラクターの成長、仲間との絆、そして熱い“戦い”にフィーチャーし、たくさんのアニメ映像で、アニメ「NARUTO-ナルト-」の歴史を振り返ることができます。
大型スクリーンによる迫力の映像や多面モニターによる演出。そして、今話題のアニメーション作家とコラボレーションした、特別な作品の上映も実施しています。
放送開始から20年が経った今、再びアニメ「NARUTO-ナルト-」の感動の世界に没入しよう!
©NARUTO THE GALLERY実行委員会
©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ