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「ルパンの良いところは、盗みに動機がないこと」原作誕生から50周年を迎えた『ルパン三世』を語る

ルパン三世には動機がない。宮崎駿がカリオストロの城に込めたルパン像

画像は『ルパン三世 – カリオストロの城 [DVD]』Amazonより。

藤津:
 ルパンの一番いいところは、何かをやる動機がないんですよ。これは、お話を作る上では苦労されていると思うんですが、ルパンはお金儲けになるとか、親のかたきとかで盗んでいないんです。ゴールがなくて、どうなったら終わりというのがないのがルパンの特長で、回ごとに動機を作るんですね。

 一番よくあるのが、ゲストヒロインに助太刀いたす、というパターンが多いんですが、本筋の動機がないところが物語を延々と作れる理由ですね。

番組スタッフ:
 確かに。物語は動機を考えるのが難しいところで、共感や反感を持って作られているから、そこを放棄したっていうのは、すごい発明ですよね。

藤津:
 モンキー・パンチ先生は、トリックのためのトリックみたいなものがすごく好きで、お話をひっくり返すことが目的のエピソードが結構あるんですが、そういう時って動機は不要なんですよね。シチュエーションさえあればいいわけですよ。

立川:
 逆に、自由に作っても怒られない。

藤津:
 ある種の“ルパンらしさ”をキープしていれば、たいがい何とでもなる。

立川:
 そういう点では、『ルパン三世 カリオストロの城』はちょっと変わっている方向の作品ですか。

藤津:
 かなり変わっていますね。僕は好きなんですが、ルパンらしさで言えば、かなりメーターが振り切れてます。宮崎さん的には、勝手にルパンを締めくくろうと思って作ってるんですよ。

立川:
 え! そんなの、めちゃくちゃじゃないですか(笑)。

藤津:
 ルパンっていうのは、年齢不詳で、時間がたっても何度も物語が作れるんですが、『ルパン三世 カリオストロの城』はルパンが中年になりかけているっていう設定なんです。自分の青春は終わっているっていう想定で、窮地に立たされている女の子を救うことくらいしかできないよっていう話になっていて、“ルパンの青春の終わり”みたいな映画なんですよ。

 宮崎監督自身も、映画の最後に「完」って出しているのは、自分なりの区切りということなんです。

立川:
 勝手にやっちゃっていいんですか(笑)。

藤津:
 いやいやいや(笑)。わからないんですけれど、すごくまじめに宮崎さんはルパンをとらえていたんですね。宮崎さん的には、ルパンというのは、「泥棒がものを盗むのが、なんでエンターテイメントとして成立するのか」と考えたときに、高度成長でどんどんいろいろなものが日本に入ってきて、物質的に新しいものがたくさん出てきて、ああいうのが欲しいなって思ったときに、ひょいと盗むやつがいるから痛快だったんですね。


藤津:
 だけど、物質的に豊かになって欲しいものがない時代になったときに、何を盗んでも盗みが爽快にならないよねってことが、宮崎さんのルパンの解釈だったんですね。時代とルパンがずれちゃったものに対して、けじめをつけるっていう形で『ルパン三世 カリオストロの城』を作ったんです。

立川:
 時系列的には、『ルパン三世 カリオストロの城』はルパン作品でも後の方なんですか。

藤津:
 当時、テレビでは2期目の頃だったんです。だけど、『ルパン三世 カリオストロの城』の時に宮崎さんは、わざわざ1期目のグリーンのジャケットに戻した。あと、1期目のオープニングで有名なサーチライトのあるところを走るシーンを作中に入れて、「1期目の頃は若造だったやつが、今は中年の入り口になってますよ」というアングルを作っているんですね。

一同:
 さすがだな~。

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