個人で業務用モーションキャプチャーを所有するクリエイターは、なぜ苦労して作ったモーションを配布するのか? 『週刊ニコニコインフォ 第44号』レポート
今のニコニコを伝える、今後のニコニコについてみんなで考える番組『週刊ニコニコインフォ』。
44回目の放送では、司会に百花繚乱氏、運営から栗田穣崇氏、ピックアップゲストコーナーにはmobiusP氏が登場。
直近のホット話題を取り上げるコーナーでは、男女別のニコ動ユーザーの検索トレンドワードを紹介。前回と変わって、今回は3つのボカロ曲が急上昇でランクインしたことなどを紹介しました。
また、今週のピックアップ動画を取り上げるコーナーでは、27人がコラボした歌ってみた動画など4曲を紹介しました。
今回のゲストコーナーでは、mobiusP氏が趣味で制作しているMMD動画のために、なぜ業務用のモーションキャプチャー機材を導入したのか、なぜ苦労して制作したモーションを配布するのか、クリエイター活動のモチベーションの源泉などについて話を伺いました。
アップデート情報などを紹介する「niconico future feature」では、投稿者アナリティクス、シリーズ機能など、動画投稿者向けの便利機能について取り上げました。
■目次
「ボカコレ」アルバム制作プロジェクトのお知らせ
番組は「ボカロ文化応援PROJECT」に関するお知らせからスタート。
クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」にて、ボカロの祭典『The VOCALOID Collection ~2021 Spring~』のルーキーランキング上位入賞曲を集めたアルバムを制作するプロジェクトを行っています。
目標金額の300万円。リターンはアルバム、メッセージカード、会議の参加権ほか、柊マグネタイトさんへオリジナル楽曲をオーダー制作権などが用意されています。
・参加アーティスト一覧
https://blog.nicovideo.jp/niconews/152203.html
・Makuakeの「ボカロ文化応援PROJECT」ページ
https://www.makuake.com/project/vocacolle2021/
ニコニコで今話題のニュース&トレンド情報紹介
番組は、「今週のホットなTOPICS」に沿って話題の動画やホットニュース、トレンド情報を伝えるコーナー「ホットな話題はどこだ? ここだ! ニコニコだ~!」に移ります。
ニコニコ検索トレンドワード
まずは男女別に集計された「ニコニコ検索トレンドワード」を紹介。
これまで男性の検索トレンドでは「急上昇」はあまり見られませんでしたが、今回は動きがありました。
「フォニィ」、「ノンブレス・オブリージュ」、「ナンセコンナセンス」といった3つのボカロ曲が急上昇でランクインしました。
※フォニィ
ボカロPのツミキが投稿した可不オリジナル曲。
※ノンブレス・オブリージュ
ボカロPのピノキオピー100作目となるボカロ楽曲。ボーカルは初音ミク。
※ナンセコンナセンス
ボカロのあまねが制作したミクオリジナル曲。第5回プロセカNEXTの応募楽曲で、これは処女作とのこと。
女性の検索トレンドで前述のボカロ曲に加えて、ボカロPとしても活動するクリエイター「¿?shimon」氏とその楽曲「偽物人間40号」、Ado氏の新曲「夜のピエロ」が今週新たにランクインするなど、ボカロ関連の強さが目立ちました。
ユーザー主催お祭りインフォメーション
ニコニコ動画にで活動するユーザー(有志)が主催するイベントを紹介するコーナーでは、東方の二次創作では最大級のお祭りとなる「第13回東方ニコ童祭」をピックアップ。
本イベントは、「東方Project」の二次創作イベントで、6月25日(金)21時~27日(日)24時に開催されます。
・第13回東方ニコ童祭 特設ページ
https://nicodosai.com/13th/
今週のピックアップ動画
今週の注目動画を紹介するコーナーでは、歌い手27人がコラボした歌ってみた動画、Ado氏の「踊」のオリジナル振付で踊ってみた動画など4本の動画を紹介しました。
・【小春六花】六花ちゃんが犬見るだけ【CeVIO AI】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38849395
・マステちぎり絵 果穂ちゃんメイキング
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38820230
・【27人コラボ】歌ってみたのうた【オリジナルMV】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38825889
・【踊】Ado/踊ってみた【オリジナル振付】
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38773263
歌い手27人によるコラボ動画の投稿者で企画者の1人でもあるびばりこ。さんより寄せられたメッセージも紹介しました。
びばりこ。さん:
一人一人ご本家の歌い手様に近いと思う人を厳選してお声がけさせて頂き、イラストもMIXも動画も全て歌唱メンバーで手作りしました!
無事投稿できたのは、素敵なご本家様と、手伝ってくれたメンバーのお陰です。令和の時代にニコニコラボを実現出来て嬉しく思います。たくさん見て楽しんで下さい!
夢を具現化するクリエイターmobiusP氏がゲスト出演
今週のゲストコーナーには、業務用のモーションキャプチャーを駆使して、夢を具現化するクリエイターmobiusP氏がリモートで登場しました。
──ニコニコを知ったきっかけを教えてください。
mobiusP氏(以下、mobiusP):
2007年に「面白そうな動画サイトがあるな」と見つけたのが最初ですね。
──普段はどのような動画をご覧になっていますか?
mobiusP:
普段はアイドルマスターの動画ばかり見てます。投稿される動画にはどれも凄いアイデアや、素晴らしい技術が詰まっています。
今はそれほどでもないのですが、ハマった当初は時間があったこともあり、アイドルマスタータグの新着動画を全部見ていました。
栗田穣崇氏(以下、栗田):
mobiusPさんはアイマスP【※】としても有名ですが、如月千早(きさらぎ ちはや)さんの推しポイントを教えてください。
※アイマスP
アイドルマスターのプレイヤー・ファンのこと
mobiusP:
やっぱり歌ですね。歌声が一番好きです。そこからアイマスが好きになったというところもあります。
高音の伸びが素晴らしいですし、よく千早の曲を担当されている椎名豪さんとのマッチングも最高なので、是非聞いて頂きたいです。
──アイドルマスターにハマったきっかけを教えてください
mobiusP:
2007年にニコニコ動画でアイドルマスターの動画を見たことがきっかけです。
最初はニコニコ組曲など流行っていた動画でアイマスを知って興味を持ち、そこからアイマスの動画を調べていって、如月千早さんの楽曲と歌声を聞いてどっぷりハマりました。
──アイマスPの魅力はありますか?
mobiusP:
特にニコマスPは技術力も高く本当に情熱が凄いんですよ。尊敬できる人たちばかりで本当に凄いと思っています。
──早速ですが動画の話に。ご自身で投稿された動画の中で思い入れのあるものを教えてください。
mobiusP:
2018年に投稿したものなんですが、MMDで「アイドルマスターミリオンライブ」のライブを再現した「アイル」という動画です。
当時、企画されていたニコマス【※】の有名大規模合作に真っ向からぶつけるという形で制作しました。ぶつけるならこの曲しかない! と今思えばおかしなことをした動画です(笑)。
※ニコマス
ニコニコ動画にアップロードされているアイドルマスター関連の動画の総称
モーション担当のRickさん、モデル担当の川瀬三奈さん、スクリーン映像担当のてつさんと、全員が最高の仕事をしてくれたおかげでとても素晴らしい動画になりました。
投稿前の予告の段階から投稿後もランキング上位独占と大変な反響を頂きました。
──この凄い映像を4人で……!?
mobiusP:
そうです。4人で実質半年くらいで作りました。
元になるライブが本当に素晴らしいライブだったので、これは是非再現したいとずっと前から思っていました。その思いがメンバーにも伝わってみんな頑張ってくれました。
──ご自身で投稿された動画以外で面白いなと思ったものはありますか?
mobiusP:
2つあるんですが、1つは『アイドルマスター ミリオンライブメドレー合作 「Unite&Ignite!」』です。
mobiusP:
これは私が初めて呼んでいただいた合作でもあります。
先ほど話題に上がった、ニコマスの有名大規模合作に呼ばれなかったメンツという説もあります(笑)。
一同:
(笑)
mobiusP:
呼んでいただいた時も感動しましたが、完成した動画を見た時は本当に感動しました。
──もう一つ思い入れのある動画があるそうですね?
mobiusP:
2つ目は『業務用のモーションキャプチャでミクと踊ってみたらすごかった』です。
「業務用のモーションキャプチャでミクと踊ってみたらすごかった」を番組中に紹介
──(上記の画像で)腰の輪っかはどういう目的でついているんですか?
mobiusP:
スカートに手が入らないようにするものですね。
──スカートのモーションを作るためじゃないんですか?
mobiusP:
よく勘違いされるんですが違うんです。
最初からついているものではなくて、本物のアイマスモーションキャプチャーで使われているものを模して100均のフラフープを改造して作っています。
──そうやって苦労して作られたモーションを、他のユーザーがMMDなどで使えるように配布されているのはなぜですか?
mobiusP:
MMDではモーションやモデルが配布されているおかげで、誰でも簡単に動画を投稿できるという文化があります。
私も最初は色んな方の配布されているものを使って動画を作っていたんですけど、自分で配布はしていなかったので「MMD界隈に貢献できていないのでは」と思うようになりました。
今はせっかくモーションを作れるようになったので、配布することでMMD界隈に貢献できればと思っています。
──そうなんですね。これらのモーションを作るモーションキャプチャーの機材は明らかに個人用ではないですよね?
mobiusP:
業務用です。業務用機材と言っても、大抵の場合は販売代理店に連絡すれば売ってもらえると思うんですが、私の機材はは海外の業者に売ってもらったものです。
これまで使っていた一般家庭用のものとは違い、本当に精度が高くて感動しました。位置もズレないし、変な方向に行ったりもしないですし。
──mobiusPさんはどうやってモーションキャプチャーの勉強をされたんですか?
mobiusP:
ほとんど独学です。
私の活動には「現実のライブを再現する」というハッキリとした目的がありますので、この目的を実現するにはどうすればいいかということをひたすら突き詰めたという感じです。
その過程で今の技術が身に付いたという形で、モーションキャプチャーもその一つです。
──mobiusPさんの動画って音が凄くいいんですが、やはりそのあたりもこだわって作っているんですか?
mobiusP:
ライブの中で音って重要なファクターを占めていると昔から思っているので、音だけでもライブが再現できているというところを目指して音作りを行っています。
──完成するとどんな感情が沸き起こりますか?
mobiusP:
ライブを好きなキャラクターが再現したりするとやっぱりエモいですよね。
──業務用のモーションキャプチャーを購入するきっかけを教えてください。
mobiusP:
MMDのダンスモーションの99%はモーショントレースと言って元となる映像から手作業で1フレームずつ動きをつけて作られています。
この手法は慣れた人でも1時間集中してやってようやく 2~3秒出来るレベルなので、1曲1ヶ月以上かかるのが普通なんですよ。
私もそうやって作っていましたが、2分の曲のモーションを作るのに1ヶ月半ちょっとかかって、しかもそれほど良い動きには出来ませんでした。
これを一気に解決する技術がモーションキャプチャーなのですが、仮に高価なものを導入しても、私が目的とするダンスを踊ってくれる人が近くにいなかったので意味がないなという状況でした。
2013年には一般家庭用のモーションキャプチャーを取り入れて、観客の動きなどには使っていたんですが、ダンスモーションキャプチャーは手が出せずにいたんです。
そんな時にTwitterでアイマスの踊ってみた活動をされている市川さんを見つけまして、一般家庭用のキャプチャーからお願いするようになりました。
一同:
おー!
mobiusP:
実際にやってみたところ、一般家庭用のものでダンスのモーションキャプチャーをするのは難しいということになり、結局2019年に業務用機器のOptiTrackというシステムを導入するにいたりました。
──そんなmobiusPさんの機材でモーションキャプチャーを体験できる集まりがあると聞きました!
mobiusP:
「モーキャプ会」と言って、私がモーションデータを収集させてもらいながら、ダンサーさんもモーションキャプチャーが出来るという集まりです。
以前は14台のカメラシステムを使っていたんですが、今の24台のセットに変えました。これは小規模スタジオより高性能なもので、2人以上の同時キャプチャーも出来てしまうというものです。
2人以上でのキャプチャーを試したことがなかったので、Twitterで「やってみたい人いませんか?」と募集したところ、ダンスゲーム世界チャンピオンでもあるダンサーのりりぃさんが食いついてくださり、その人脈で色んなジャンルの方が集まるようになって会が結成されました。
──モーキャプ会をやって良かったなと思うことはありましたか?
mobiusP:
様々なモーキャプデータの収集ができ、システムの運用経験もかなり得られたので良かったです。
ジャズ、ポップ、ロック、ブレイク、コンテンポラリー、バレエ、あと変わったものとしては、指をメインとしたフィンガータットや、高速で動くバトンなんかもとれることがわかりました。
栗田:
これはご職業ではないんですか?
mobiusP:
完全に趣味です(笑)。
──ダンス以外のキャプチャーもされているんですか?
mobiusP:
ダンス以外だとギターのキャプチャーもします。
──キャプチャーをお願いする時に心掛けていることはありますか?
mobiusP:
やっぱり踊り手さんにもメリットがないといけませんので、私の動画のためにお願いする曲だけでなく、好きな曲で踊ってもらってその方に動画を上げてもらうようにしたり、なるべく希望に沿う形にして、踊り手さんにもメリットがあるようにと考えています。
──クリエイターとしてのモチベーションはなんでしょう。
mobiusP:
自分の見たい光景が作れるのが楽しいです。あとは投稿した時のみなさんの反応やコメントが本当に暖かいので、そういったものがモチベーションになっています。
──ニコニコに感じる問題点などありますか?
mobiusP:
一般会員の方でも720pの解像度で動画を見れると良いと思います。
私は10年以上プレミアム会員なので最近まで気づかなかったのですが、一般会員だと良くても480pでしか動画を見れないんですね。
それだとニコニコよりTwitterに投稿した方が一般会員の方でもきれいに見れるという謎の状況になっているのは残念に思います。
栗田:
貴重なご意見ありがとうございます。各所と相談しながら考えてみます。
──最後に、先週ゲストのじんさんより質問なのですが、今後挑戦してみたいことや目標はありますか?
mobiusP:
せっかく業務用のモーションキャプチャー機材があるので、様々な分野で活用できればと思っています。
みなさんも「こんな風に使ってみたらいいんじゃないか」というアイデアがあれば是非教えてください。
──ありがとうございました!
mobiusP氏情報
・Twitter:
https://twitter.com/mobiusp
・ニコニコユーザーページ:
https://www.nicovideo.jp/user/333134
第46回ピックアップゲスト情報
7月6日の第46回の放送のピックアップゲストは、ゆっくり音声を使ったゲーム実況動画を投稿しているシモエル氏が登場します。
投稿者アナリティクス、シリーズ機能など、動画投稿者向けの機能紹介
続いてのコーナーは、「niconicoの未来に向かって、ユーザーのみなさんとフィーチャリングして、共に歩んでいこう!」という「niconico future feature」です。
ニコニコのアップデート情報や便利機能を紹介する本コーナーでは、動画投稿者向けの6つの便利機能を紹介しました。
動画 共通説明文
投稿した動画に共有の説明文を設定できます。動画ごとに設定しなくても、まとめてお知らせしたい情報を設定できます。
「いいね!」へのお礼メッセージ
自身が投稿した動画の「いいね!」ボタンが押された時、動画ごとにお礼のメッセージを設定できます。
カスタムサムネイル機能
動画のサムネイルを自身がアップロードした画像に設定できます。
アナリティクス ソート機能
直近30間の再生数、コメント数など、多い順や少ない順で並び替えできます。
シリーズ マイリストから作成
動画投稿者が自分の投稿動画をまとめることができる機能「シリーズ」は、作成済みの自分のマイリストから簡単に作成することも可能です。
シリーズにまとまることで、動画視聴時に次の動画を探しやすくなったり、再生リストを使って連続再生しやすくなります。
シリーズ サムネイル設定
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「niconico future feature」で紹介された機能やアップデート情報などは、下記のダイジェスト動画からも確認できます。
番組インフォ
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