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連載「超歌舞伎 その軌跡(キセキ)と、これから」

 4月24日(土)~5月1日(土)に日本最大級のインターネットの祭典『ニコニコネット超会議2021』が開催されます。

 新型コロナの影響で前年に続き、多くのプログラムがオンライン開催をする中、4月24日・25日に幕張メッセで2年ぶりに「超歌舞伎」が上演されます。

 本連載では、2016年の初演より「超歌舞伎」の脚本を担当している松岡亮氏が制作の裏側や秘話をお届けします。
 「超歌舞伎」をご覧に頂いたことがある方も、聞いたことはあるけれどまだ観たことはない! という方も、本連載を通じて、伝統と最新技術が融合した作品「超歌舞伎」に興味を持っていただければと思います。

・超歌舞伎 公式サイト
https://chokabuki.jp/

・チケット購入ページ
https://dwango-ticket.jp/

第一回 「6年目を迎える超歌舞伎」

文/松岡亮

 数多くのお客様、そして出演者の皆さん、加えて、私たち作り手も、待ちに待ったといっても過言ではない、幕張メッセでの超歌舞伎公演まで、1か月をきりました。
 今月の半ば過ぎには、都内某所の稽古場でのお稽古も始まるので、各セクションともに最終調整の段階に入り、日夜邁進しています。
 いつも稽古初日には、台詞も踊りの振りもすべて完璧な状態で臨んで下さる初音ミクさんは、今ごろ、台本に何度も目を通し、台詞の確認や踊りの振りを浚うのに余念がないと思いますし、今年の超歌舞伎公演のために新調された衣裳に袖を通し、衣裳方と微調整をしていることでしょう。そして初めての悪役ということもあり、緊張で胸を高鳴らせているのではないでしょうか。

『今昔饗宴千本桜』(2016年)

大きな挑戦となった初演、そしてこれまでのあゆみを振り返って

 さて、超歌舞伎の記念すべき第1回公演は、5年前の2016年4月29日、30日のことでした。とにもかくにも無事に幕を開け、歌舞伎の魅力を若い世代に伝えること、そしてお客様に喜んで頂ける舞台を目指しながらも、いつもの歌舞伎の作り方とは異なる超歌舞伎の製作過程は、全てが初めての体験ばかりで、目を白黒させながら、汗を流していた日々が懐かしく思い出されます。
 この超歌舞伎6年のあゆみは、長いようで短く、短いようで長く、コツコツと歩みを進めていたら、こんな遠くに来てしまった、というのが正直なところです。
 1年目の超歌舞伎『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』が成功裡のうちに終わり、「さて2年目は?」という議題から始まり、試行錯誤の末に生み出された2年目の『花街詞合鏡(くるわことばあわせかがみ)』。中村獅童さんが幕張の舞台に戻ってきたことを寿いだ3年目の『積思花顔競(つもるおもいはなのかおみせ)』。超歌舞伎に携わる各セクションの3年の蓄積をもとに、構成、演出を一新した4年目の『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』。そして1年の時を経て、日の目をみることになった今年の『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』。また、2020年8月に無観客ライブ配信という形で上演された『夏祭版 今昔饗宴千本桜』や、南座超歌舞伎公演のために書き下ろした『當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)』。

 それぞれの作品の外題(げだい。タイトルのことです)を書きつらねていくだけでも、その時、その時の思い出が脳裏に浮かび、感慨深いものがありますが、超歌舞伎がこうして歳月を重ねることができているのも、通り一遍の表現のように思われるかもしれませんが、ひとえに数多くのお客様のご支持があればこそのものだと、超歌舞伎に携わっている全ての人々が常にそのことに感謝し、そうしたお客様の笑顔をみたいために、それぞれが担っている部門の仕事を深掘りしながら、このプロジェクトに携わっています。

『今昔饗宴千本桜』(2016年)

様々な人が協働して創り上げる「超歌舞伎」

 そして、超歌舞伎が回数を重ねるうちに、製作のタイムスケジュールも定型化され、4月の幕張メッセでの公演が終わり、ホッとひと息つく間もなく、来年の超歌舞伎の作品をどうすべきかと皆で考えを巡らせるうちに、夏が過ぎ、秋を迎えるころには、次年度の超歌舞伎のプロットが作成されます。これをふまえて準備稿の執筆にとりかかり、11月末から12月初旬には準備稿の締め切りがやってきて、私は準備稿を提出します。

『今昔饗宴千本桜』(2016年)

 これをもとに、CGチームや、NTTの技術の皆さん、勿論、歌舞伎の製作チームも舞台の具現化に向けて動き始め、年が明けると劇中で使用する歌舞伎の音楽の録音、さらに2月初旬には、超歌舞伎の演出と振付を担って下さっている八世宗家藤間勘十郎師が初音ミクさんに振りをうつすというのが、この何年かのルーティンワークとなっています。
 勿論、これと並行して各セクションが集っての定例のミーテイングが重ねられ、アナログ、デジタルの演出について協議を繰り返し、さまざまなアイデアが提案され、実現可能かどうか検討を重ね、それぞれの着地点を目指していきます。
 やがて桜が花咲く頃には、最終的な演出会議を終え、4月中旬からのお稽古、そして幕張での本番となります。

 こうした製作過程を振り返ると、勘十郎宗家も「ボーカロイドと私」のインタビューやご自身のインスタライブでもたびたび触れられ、もはや伝説になっている、デジタル演出のデッドラインを越えたところから製作が開始された1年目は、よく初日の幕が開いたものだと痛感するとともに、あの初日までのヒリヒリ感が思い出されることしきりです。
 加えて、薄氷を踏む思いで、何とかしてすべての素材を期日までに納入しようと連日連夜悪戦苦闘して下さったデジタル演出に携わるスタッフの皆さんの働きに頭が下がる思いです。

(第二回に続く)

・第二回
https://originalnews.nico/309906

『今昔饗宴千本桜』(2016年)

執筆者プロフィール

松岡 亮(まつおか りょう)

松竹株式会社歌舞伎製作部芸文室所属。2016年から始まった超歌舞伎の全作品の脚本を担当。また、『壽三升景清』で、優れた新作歌舞伎にあたえられる第43回大谷竹次郎賞を受賞。NHKワールドTVで放映中の海外向け歌舞伎紹介番組「KABUKI KOOL」の監修も担う。


■超歌舞伎連載の記事一覧
https://originalnews.nico/tag/超歌舞伎連載


 

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