『ゆるキャン△』声優・花守ゆみりインタビュー。「野生児」なでしこが抱いた感情をそのまま表現したい──“自然体なかわいさ”にこだわった役作り
各務原(かがみはら)なでしこという女の子がいる。
明るく元気いっぱいで、食いしん坊で体力もすごい。収録現場では「野生児」と評されることもある『ゆるキャン△』の主人公のひとりだ。
そんな、なでしこの声を担当する声優の花守ゆみり(@hanayumi09)さんは、なでしこを演じる際にあえてキャラを作り込まないよう意識したという。
表情がコロコロ変わるなでしこの自然体なかわいさを表現したい。彼女自身が“見て感じたものから出る声”を大切にしたい想いがあったそうだ。
だからだろうか。アニメで描かれているなでしこを見ていると、彼女の「うれしい」「楽しい」「おいしい」などの感情や想いがストレートに伝わってくる気がする。
『SEASON2』の放送が始まり、第1作目と変わらず元気いっぱいな姿を見せる一方、「(私も)ソロキャンプやってみたいな」と新しい一面を見せるなでしこ。
そんな彼女を花守ゆみりさんはどのように演じたのか。役作りへのアプローチや演技に対する向き合いかたなど、花守ゆみりさんの表現へのこだわりに迫った。
演じていても伝わってくる“なでしこの成長”
──本日はよろしくお願いします! もう少しでアニメ『ゆるキャン△ SEASON2』が放送開始【※】となりますが、公開されているPVを見ていると、なでしこの雰囲気が第1作目とはちょっと違うように見えます。
※取材日は2020年12月27日。
花守:
第1作目では、なでしこ自身、浜松から引っ越してきたばかりということもあって、リンちゃんや野クル(野外活動サークル)のメンバーたちとの関係値がゼロの状態から始まるんです。
そこから、リンちゃんと出会って、みんなと出会って、居場所を作っていくお話だったと、私は思っています。
──なでしこの立場で見ると、知っている人がいないところで友人関係を築いていく物語でしたよね。
花守:
はい。キャンプを通して、みんなとの仲もだんだん近づいていって、その集大成が第1作目ラストのクリスマスキャンプでした。
──ふむふむ。では『SEASON2』ではどうなんでしょう?
花守:
『SEASON2』では、リンちゃんとの関係だったり、野クルメンバーだったり、居場所をちゃんと持てている状態からのスタートになります。
そこで、なでしこは「じゃあ私は何がしたいんだろう」と、改めて自分の気持ちと向き合うんです。そのときに、「リンちゃんみたいにソロキャンプやってみたいな」と、一歩踏み出すわけなんですね。
──「ソロキャンプやってみたいな」と、PVでも口にしていて、あれ……なでしこ、雰囲気違う……? ってちょっとびっくりしちゃいました。
花守:
そうなんですよ。それまではバイトなんてしたことなかったなでしこが、キャンプのためにバイトを始めるんです。
キャンプに関わることでどんどん成長しているのが演じていても伝わってきます。そんな、なでしこを見ていると、もう「はあ……」ってため息がでるくらい感動しちゃって。
──演じられているご本人なのになんだか保護者みたいな。
花守:
あ、でも、それに近い感覚なのかもしれません。
なでしこには桜さんという姉がいるんですが、山に取り残されてしまったなでしこを迎えにきてあげたり、なでしこがキャンプに行くときにはたびたび車を出して送ってあげたり、妹のことをものすごく気にかけている優しいお姉ちゃんなんです。
多分、桜さんがなでしこを見ているのと同じような気分になっちゃうんですよね。演じていても、しみじみしちゃう……歳なのかなって(笑)。
© あfろ・芳文社/野外活動委員会
──いやいや、お若いじゃないですか(笑)。
花守:
私、いま23歳なんですが、役を演じさせていただく際の向き合いかたが、作者さまや原作者さまから子どもをお預かりして、アニメという場で声を吹き込むことで、その子たちにかわいい洋服を着せてあげてみんなに見てもらう感覚に近いんです。
お預かりした子どもたちに、かわいい声だったりかっこいい声だったり、その子に見合った声で向き合いたい。そういう意味で、役作りや演技をする際も、演じるキャラクターというより、子どもと向き合っている感覚になります。
自然なかわいさを表現することが『ゆるキャン△』に合っている
──いまではお姉ちゃんに近い感覚で向き合っているとのことですが、最初になでしこと出会ったときのお話を教えていただけないでしょうか。
花守:
なでしこ役は、オーディションを受けさていただいたんですが、その際に原作コミックを読ませていただきました。
作品を読ませていただく前は、『まんがタイムきららフォワード』さんに連載されている作品ということで、きらきらした女の子たちが描かれているんだろうなと思っていたんですが、実際に作品を読んでみたら「おや、空気感が思っていたのと違うな」と。
──ほうほう。どう違ったんですか?
花守:
『きらら』さんの“きらきらしたかわいい女の子”の系譜とは少し違って、描かれているキャラクターたちがすごい自然体に見えたんです。
演じるうえで、その自然なかわいさを表現することが、この作品に合っているんだろうなと、オーディションを受ける前に個人的には感じていました。
とは言え、原作の中でのなでしこは、すごい元気印なヒロインとして描かれていましたので、その天真爛漫で元気なところはしっかり出せるようにと意識してオーディションを受けさせていただきました。
──オーディションってどんな感じだったんですか? 「こんなイメージで演じてください」や「もっとこういう演技をできますか」みたいなやりとりがあったんでしょうか。
花守:
「野生児」であり、「自然の中にいるからこそのかわいさを出したいキャラクターなんです」と言われたことは印象に残っています。
© あfろ・芳文社/野外活動サークル
──野生児……元気いっぱいで食いしん坊で体力もあるなでしこにピッタリな言葉な気もします(笑)。と言うことは、花守さんが原作を読んで受けた印象と、方向性は一致していたわけですね。
花守:
そうですね。でも、その指示を受けて実際に演じてみた後はとくに何もなく、そのまま終わってしまったんです。
なので、「ああ、私ダメだったかもしれないー」って思いながら、スタジオを後にしたことを覚えています。
──あらっ!
花守:
そこからしばらく連絡がなくて、私自身も落ちたのかと思っていました。でも、あるときマネージャーさんから「なでしこ、決まりましたよ!」と連絡があったんです。そのときは、本当にすごくうれしかったです。
なでしこが“見て感じたものから出てくる声”を大切にしたい
──実際に演じる際に、花守さんはなでしこをどんな女の子として演じられたんですか?
花守:
なでしこに関しては、彼女が見たものに対して表情がコロコロ変わるところを表現したい想いがあり、演技のテンプレートを作らないようにして演じさせていただきました。
──演技のテンプレートですか。
花守:
はい。うれしいや悲しい、喜怒哀楽の度合を自分のなかでこれって決めたくなかったんです。
作り込んで自分の中で勝手にルールを作ってしまったら、かわいさが決まったものになってしまいそうだと。見て感じたものから出る声というのを大切にして演じたいと思ったんです。
──なるほどなるほど! 喜ぶときはこう、悲しむときはこう、みたいに枠組みを作らないことで、なでしこの感情をより自然に表現されたと。
花守:
そうですね。リンちゃんと話しているとき、野クルメンバーと話しているとき、その場その場でなでしこが抱いた感情を声として作ってあげたいと思ったので、作り込まないというところを意識しました。
──以前のインタビュー【※】で、「アフレコを通してなでしこの印象が変わっていった」ことをお話されていましたが、その変化について詳しく教えていただけないでしょうか。
花守:
最初は、天真爛漫で一直線に突っ走るキャラクターというのがイメージとしてあったんですが、原作を読み進めていくうちに、「あれ、この子って思っていたよりも周りのことをすごい見ている子なんじゃないか」と、だんだん自分の中で意識していくようになったんです。
──「周りのことをすごい見ている子」とは?
花守:
例えば、リンちゃんに対して最初こそグイグイ行くんですが、途中で「もしかして困っているのでは?」と、ちょっと止まるんです。そのときに、なでしこってちゃんとそういう表情が見える子なんだと気づいたんです。
そこで、なでしこのキャラ像へのアプローチを、より身近な女の子というのを意識するようになりました。そのほうが自然体のかわいさに近づけるのではないかと。
──何話くらいでそういう気づきがあったんでしょう。
花守:
3、4話くらいだったと思います。いま振り返ってみると、5話前に気づけたのが大きかったです。
──5話というと、なでしことリン、ふたりがそれぞれ別の場所でキャンプをするなか、夜景の写真を送り合うシーンがある回ですよね。
花守:
はい。物語が進むにつれ、リンちゃんや野クルメンバーと仲は深まっていくのですが、なでしことリンちゃん、ふたりの関係性が、最初に近づきが見えるのがこの5話だと思っています。
なでしことリンちゃん、空を見上げるシーンでは、(東山)奈央さんと「どこを感情の頂点にしてあげようか」と、ふたりが同じ歩幅でいっしょに感情の頂点に向かえるように話し合っていました。
──あの名場面の裏でそんなやりとりがあったとは……。
花守:
なでしこに限らない話なんですが、最初のうちは私には私の、リンちゃんを演じる奈央さんには奈央さんのなでしこ像があって、話し合いや収録を進めていく中で、すり合わせをしていくわけなんです。
それが、この5話のタイミングで、私の考えるなでしこ像と、奈央さんの中でのなでしこ像というのがピタッと重なった感じがありました。
私自身も、「もうちょっと年齢感を下げてみましょう」「このシーンではメリハリをつけて」などのスタッフさんとのやりとりを通じて、キャラとしての軸みたいなものを1話から作り上げていたんですが、この5話のタイミングで改めてなでしこというキャラを落とし込めたと感じました。
キャンプを通して成長したなでしこを見てほしい
──では最後に、『SEASON2』のなでしこのここを見て! という推しポイントがあったら教えていただけないでしょうか。
花守:
『SEASON2』では、なでしこなりに自分の持ち得るキャンプ知識とともにソロキャンに挑戦しようとするんですが、その先で出会った人たちとの会話のなかで、成長を感じられるものになっています。
第1作目1話の最初、リンちゃんに助けてもらうだけだったなでしこが、こういう表情でこういう話をしているんだと。キャンプに対してこう理解しているんだって。ソロキャンに興味を持ったなでしこの表情だったり、行動だったりをぜひ見てほしいです。
──第1作目でキャンプという存在を知って「リンちゃんとキャンプがしたい!!」と思っているなでしことはまた違う一面が見られるという。
花守:
はい! 違う一面でいうと、『SEASON2』には、なでしこの幼なじみの土岐綾乃ちゃんが登場するんですが、彼女と話しているなでしこは、これまでにない表情を見せてくれているので、ぜひ注目してほしいです。
──なんと。どんな感じなんですか?
花守:
距離感が近いんです。なでしこって仲よくなるとこんな話しかたになるんだって、キュンキュンしちゃいました。
引っ越してくる前、浜松にいた時代のなでしこがどんな女の子だったのか、感じてもらえるんじゃないかと思っています。そういうところも含めて、なでしこのいろんな表情が『SEASON2』では見られると思うので、そこを楽しみにしていただけるとうれしいです。
──ありがとうございます!(了)
花守さんへのインタビュー後、アニメ『ゆるキャン△』の第1作目を1話から見直してみた。
無邪気に喜ぶなでしこ、満面の笑みを見せるなでしこ、おいしいものを頬張るなでしこ……本当にコロコロ表情が変わる女の子だった。そして、そんな感情豊かなところがなでしこの大きな魅力なのだと、改めて気づかされた。
それこそが、喜怒哀楽の感情をあえて作り込まず、見て感じたものから出る声を大切にしたと語る花守さんが表現したかった、なでしこの自然体のかわいさなのだろう。
そして『SEASON2』では、なでしこの新たな一面が描かれていくとのこと。なでしこがどのような表情を、成長を見せてくれるのか。また、そんな彼女を花守さんはどのように演じているのか。『ゆるキャン△ SEASON2』を見るうえで楽しみがまたひとつ増えた。
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— ニコニコニュース (@nico_nico_news) January 28, 2021
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締切:2021/2/3(水)23:59 当選はDMでお知らせします。 pic.twitter.com/PWQTOgBF1Q