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「アニメ業界は何でこんなことに? 」ヤマカンこと山本寛と『秒速5センチメートル』アニメーションプロデューサー・竹内宏彰が考える「日本のプロデューサー教育システム」

制作本数が多すぎて全体に気が回らない

竹内:
 他人事みたいに言って、申し訳無いんですけれども、とにかく今は制作本数が多すぎて、とにかく納品をするという、アニメの場合は、テレビなんかだと放送事故を一番起こしちゃいけないんで、とにかく間に合わせるというとこが最優先される。

 で、作ることに追われているから、教育しようとか、作ったものをアーカイブ、いわゆる一回こうやったものを伝播しようとか、やり方のノウハウを伝授しようという意識が、制作している人達にはあまりないですよね。

 良い作品を作っているスタジオっていうのは、ひとつの組織として、そういうことをきちんとやっている、要するに、そういうことができる余裕。

 金銭的余裕とか時間的余裕とか、いろいろあると思いますけれど、そういうスタジオは、作れば作るほど良いものが作れるような流れになってきている。だから一概にプロデューサーがダメなんじゃなくて。なんでプロデューサーが、こうなってしまったのか? ということをひっくるめて解決しないとまずいと思います。

山本:
 組織論かな? 僕が最近思うのは、“京都アニメーション”の大絶賛大会をしているんですけど(笑)、さっき言った制作部の上司ですよ。上司で、本当にお世話になって、もちろん怒られもしたし、いや滅多に怒られなかったですね。怒らないで皮肉を言うんですよ。

 だから逆に怖いっていうね。「ふーん、山本くんってそうなんだ」って。おっおって(笑)。ちょっとインテリぶった人間には、そういうのがすごく効くんですけど。まあそれはいいや。

 で、僕が演出になった時に、その上司が制作進行になってくれると、親方よろしくお願いしますと(笑)、平身低頭になるという。ええっ! そんな、(元)上司なんだから偉そうにしていてくれていいですよと。

 僕も当時はとんがっていたから、それはそれでまた、どうなっているんですか!? ということも言っちゃうんですけど、ちゃんとした立場で受け止めてくれるという。立場が変われば態度も変わるという。ホントに僕は制作にずっと恵まれてきたなというのは思いますけどね。

竹内:
 今山本さんが言った、立場が変われば態度も変わると、いうのはすごく大事。僕も、そうなんですよ。僕の世代、山本さんよりもさらに一世代か二世代上なんですけども、僕は集英社にいたんですけども。

 もう、これ言っていいのかな? 毎週、会社の裏で怒鳴られていた。大きなミスした時に。愛のムチで怒鳴られ殴られていることもあった。だからと言って、文句言うかといったら違うんですよ。真剣に怒られることはそれだけ目をかけられてもらっているということだった。

 ちなみに僕も当時は灰皿で良く頭コツーンとかやられていましたから。それって悔しいと思うじゃないですか? でも、なんで自分がそんなことをされたかというのを学ぶんですよね。人間はそういうのは記憶に残るから。で、自分がじゃあ上の立場になった時に、俺は、こういうミスした時に、こういうことで先輩が教えてくれたんだというのがあって。

 あともうひとつ大事なこと、その時に殴ったりコツーンってやった先輩は、必ず翌週など、怒られたことでちゃんと仕事がうまく行った時、漫画原稿などを無事入れたりしたら、「よし、お前先週ぶん殴って悪かったから、今日はうまいもん食わせてやる」と。

 当時お金がないから、何を食いたいかと聞かれたら「寿司です」と即答。「オッケイ寿司、いくらでも食え」と言って回転寿司連れていかれて、「あれ回っているのかよ」と思いながら、「何皿でも食えっ」て言われて(笑)。

山本:
 (笑)

画像はWake Up, Girls! 総合公式サイト|WUG!ポータルから引用

竹内:
 怒った後にご馳走してくれたり。当時はそういうこと普通にやってくれていたんですよ。僕らは、とにかく、忙しくて家にも帰れない、寝られない、ミスして殴られたり蹴られたりしたけどその分いっぱい食べさせてもらったり、そんな中で先輩が教えてくれたんですよね。

 今のアニメ業界とか、漫画業界はそういうことがあるのか、ないのか、よく分からないです。

 山本さんと一緒に“WUG!”(Wake Up, Girls!)をやっていた時って、大変だったけど、もうなんだかんだで、僕のモットーは人間美味しいものがあると楽しいと、腹が減ったら機嫌が悪くなる。だから食べたり奢ったりしまくってました。

山本:
 下世話な話なんですけど、今のプロデューサーって、奢ってくれなくなったんですよね。僕は、こんな歳になったんで、まあいいかと思うんですけど、理由はあるとは思うんですよね。

 経費で落とせないとか、いろいろあるとは思うんですけど。でも、武士は食わねど高楊枝。自腹を切ってでも、クリエイターに奢るというのが、昔のプロデューサーだったんですよね。竹内さんはいまだにやってくださっているんですけど。

竹内:
 僕はもう嫁から「アンタいったいくら使ってんの!?」ってたまに怒られます。自宅で経費精算しているとお土産代がものすごいんですよ。お土産代は全額経費にはならないんですよね。打合せなどは全額経費ですが、お土産や高額の飲み代は違う。

 自慢じゃないですけど、“渋谷ヒカリエ”の地下とか、東急渋谷店などの、団子屋さんのおばちゃんとツーカーの仲なんですよ。ほぼ二日にいっぺん買いに行っているから。

 で、自分もやっぱりスタジオは行ったりする時に。それは、僕らの先輩がやってくれたことなんですが、差し入れのお菓子持ってきてくれた。僕らの若いころはひもじかったから、アニメのスタジオにいたり、アフレコスタジオにいてやっていても、自分たちでそんなに買う余裕ないんでとにかくお腹空くんですよ。その時先輩が、「おー頑張ってっか!」と言いながら差し入れ持ってきてくれて。

 それを食べながら仕事して、余ったら家に持って帰って明日のご飯にしようかな? みたいなことを皆がやっていた。そんなことをやりながら、作っていくという経緯が日常だった。

“WUG”の時は人情味を感じる現場だった

竹内:
 確かに今、世知辛い世の中というか、経費削減とか、いろいろあるので、僕は若手のプロデューサーに自腹を切れ、とは言いません。むしろ会社に堂々と、これ経費で僕はお土産を持っていきたいんです。

 それくらい、僕はこの作品をこのスタッフと密接に仕事がやりたいんです。ということを、やっぱりちゃんと上司に言えるような、そういう環境が、もっとあったらいいのかなと思います。その中で自分の中で、スタッフとどういう関係性を作っていくのかというのが大事なような気がします。

山本:
 竹内さん、“WUG”のアフレコ現場とダビング現場に、必ず持ってくるんですよ。差し入れを必ず持ってきてくれて。

竹内:
 最近は自分が食べたいんで持ってくんですよ(笑)

山本:
 ほとんど甘いものなので僕は食べられないから。甘いの食べられないんですけど。

竹内: 
 だって、監督に食べさせても意味ないもん(笑)

山本:
 なんだそれ。

竹内:
 監督はいいもの食べているじゃん。

山本:
 いいもの食べてないですよ。

竹内:
 それはダメだね。夜だってちゃんと食べないと。そう言えば“WUG”の時も山本さんホントに寝ずに不眠不休で正月も、なんかカップヌードルばかり食べてなかった?

山本:
 (正月に)ローソンに弁当が、まったく残ってなかったというね(笑)。

竹内:
 あの時は、吉祥寺の“タツノコプロ”さんで、やったんですよね。

山本:
 三鷹です。

竹内:
 三鷹か。三鷹の“タツノコプロ”さんのスタジオ、そこに山本さんのルームを作って、制作してたんです。目の前がローソンなんだけど、そこの弁当がスタッフがみんなで買うので大体9時過ぎると売ってないんですよ。

 それならスタジオの中にそのままコンビニエリアというのを作ろうと、当時の”タツノコプロ”の社長と一緒に考えた。

山本:
 あった。あった。差し入れエリア。

竹内:
 スタッフのみなさんがコンビニに買いに行く時間ももったいないから、と言って、ここを無料コンビニにしようと言って、エリアを作って、僕も自前でキャンプで使っている冷蔵庫を持っていって。

 どんどん充実させたりしたら、みんながどんどんこう寄付というか無料で何か持っていこうという流れになって、なんかああいうの楽しいじゃないですか?

山本:
 そこで、人情味を感じるんですよ。そうするとクリエイターも、面倒見てくれているという、僕らのことを気にかけてくれている。ああ嬉しい! 頑張ろう!という気になるんですよ。

 それがね、別に食い物で釣れっていうわけではないんですけど、いろんな手が僕はあるはずなんですけども、最近はそれを一切しないで、ほんとにまずコミュニケーションをまずとらないですからね。

竹内:
 それは、ちょっと僕もいろいろ若い人たちと一緒に仕事をしていて感じる。基本的にはプロデューサーの方からクリエイターに話をしなくなっちゃまずいってていうのは、最近ちょっと感じた。

山本:
 あれは、あれは絶対ダメです! じゃあ、プロデューサーは何のためにいるの! という。

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