「展覧会も“作品”なんです」──コロナ禍での休館中に学芸員が感じたこと、これからに期待すること【江戸東京博物館・学芸員インタビュー】
2020年3月初旬、コロナウイルスの感染拡大を受けた自粛要請により、全国の美術館・博物館が臨時休館することを余儀なくされた。
緊急事態宣言の解除により、再開を迎えた美術館・博物館が出てきたが、およそ3ヵ月という長い閉館期間の中で、観客が一度も見ることなく終わった展覧会が数多く存在する。
江戸東京博物館で2020年2月8日~4月5日の会期で行われる予定だった特別展「江戸ものづくり列伝-ニッポンの美は職人の技と心に宿る-」も、そういった展覧会のひとつだ。
江戸東京博物館は、2月29日から休館となり、「江戸ものづくり列伝」は1ヵ月以上の会期を残したまま、再開を待たずに終了となってしまった。
江戸東京博物館では新型コロナウイルスの感染拡大防止のため2月29日(土)から3月16日(月)まで展覧会事業を休止、図書室を休室いたします。
— 江戸東京博物館 (@edohakugibochan) February 28, 2020
今後については都の指示等を踏まえ、随時お知らせします。なお、ホールでのイベント等の開催状況については、主催者にご確認ください。 #江戸東京博物館
他所の美術館や博物館から展示品を借りてくることで構成されることが多い「特別展」と呼ばれる展覧会は、その美術館の所蔵品を中心に構成される「常設展」と異なり、会期を延長したり、時期をずらして同内容の展示を行うことは難しい。
こうした一度限りの「特別展」が、観客の目に触れずに終わってしまうことは、楽しみにしてた観客にとっても、準備をしていたスタッフにとっても、本当に残念なことだと思う。
ニコニコでは、ニコニコ美術館の取り組みの一環として、こうした特別展をインターネット上で楽しんでもらうため、閉館中の江戸東京博物館の「江戸ものづくり列伝」の会場より、学芸員さんの解説付きで生中継を実施した。
「江戸ものづくり列伝」は、江戸時代に活躍した「職人」をテーマに、建具や調度品などの工芸品を多数展示した特別展だ。
蒔絵師・原羊遊斎と柴田是真、軍艦の建造をも手がけた鬼才の陶工・三浦乾也、葛飾北斎の弟子である金工・府川一則、超細密工芸を究めた小林礫斎など、日本が世界に誇る名工たちの作品と人生にスポットを当てた展示会だった。
生放送を行うなかで、運営スタッフは、「江戸ものづくり列伝」を手掛けた、江戸東京博物館に所属する学芸員のひとり、落合則子さんと出会った。
落合さんはまもなく定年を迎えるため、「江戸ものづくり列伝」が自身が企画し、手掛ける最後の展覧会のつもりだったという。
長年に渡る学芸員としての仕上げとなる活動が、途中で見てもらえなくなった無念さは、きっと簡単に割り切れるものではないだろうと思う。
そこで今回、落合さんにその胸中と博物館の現状を伺うべくインタビューを行った。大変な状況下にも関わらず、落合さんの明るくストレートなトークのおかげで、笑いの絶えないインタビューとなった。
普段触れることができない、展覧会を作り上げる学芸員の想いを知っていただけたらと思う。
また、インタビューでは「江戸ものづくり列伝」に込めた落合さんの熱い想いにも話が及んだ。「今こそ、これからの時代をどうやって私たちは生きていくのか、過去の歴史に学んでいきたい」という、「江戸」を研究し、展覧会を作り上げた落合さんだからこその、説得力のある言葉を聞くことができた。
「江戸ものづくり列伝」の展示は残念ながらもう見ることはできないが、このインタビューで語られる作品やエピソードから、展覧会に込めたメッセージの一端を感じ取って頂ければ幸いだ。
取材:高橋薫
取材・文:金沢俊吾
※インタビューはリモートで行いました。
──コロナウイルスの影響で博物館も大変な状況の中、取材を受けて頂きありがとうございます。
落合:
とんでもないです。上手くお話できるかわかりませんが、本日はよろしくお願いします。
──改めて、江戸東京博物館の休館中に「「江戸ものづくり列伝」の会期が終わってしまったことは、とても残念でした。
落合:
こればっかりは誰も予測してなかったことだし、仕方ないわよね。
でも、「江戸ものづくり列伝」は3週間だけでもお客さんに見て頂けたので、まだよかったなと思っています。【※】それこそ、準備だけして、1日も公開できていない展覧会だって、日本中にたくさんあるから。
※「江戸ものづくり列伝」は1ヵ月以上の会期を残して、2月28日から休館。
──そうですよね……多くの美術館が、かつてないダメージを受けていると思います。
落合:
展覧会事業にこういうリスクがあるっていうことは、改めて突きつけられましたね。
展覧会を作り上げるのは、私たちだけじゃなくて、共催者や広報事務局、物販を手がけるショップさん、施工業者さんなど、たくさんの方々がいます。こうした関係者にも、今回のできごとは大きな影響を与えています。
今後、展覧会をどうやって運営していくかというのは、リスクマネジメントも含めて、根本から考えていかなきゃいけないんでしょうね。
私たちだけじゃなくて、共催するメディアの方々、関連しているショップさん、施工業者さんもそうだと思うんだけれども。
──展覧会の会期を変えて、やり直すことは難しいのでしょうか?
落合:
巡回展なら別の会場で挽回することもできますが、借用先のご都合や作品保存上の展示日数の制限もあるので、まったく同じものを集めてもう一回やる、っていうのは難しいでしょうね。
──何年もかけて、ある一定期間のためだけに色々な所から集めてくるという。
落合:
それが展覧会っていう興行の宿命なんですよ。展覧会って、ある意味、ぶっちゃけて言えば見世物興行なんですよ。
──でも、学芸員の皆さまは、その見世物のために、たくさんの準備や研究をしているわけですよね。
落合:
その通りです。学芸員たちは皆、研究発表じゃないですけど、一つの論文や作品を作り上げるような気持ちで展覧会をやっていると思いますよ。
──私個人の話で恐縮なんですが、東京国立博物館で行われた特別展「運慶」【※】を見に行った時、作品もそうですが、展覧会自体がすごく面白いと思ったんです。仰るように研究発表の中を歩いているような、作品たちの後ろにある学芸員さんの意志が見れたような気がして。
※特別展「運慶」…2017年に東京国立博物館で行われた展覧会。仏師・運慶とゆかりの深い各地から名品を集め、運慶の作風の樹立や次世代への継承を辿った。
落合:
特別展「運慶」は私も見に行きましたけど、ものすごくよかったですよね。でも、どの博物館・美術館も、そうやって意志を込めて取り組んでいると思います。
──観客側として、やっぱり「国宝を見たい」とか、「有名な画家の作品が見たい」って思うじゃないですか。
落合:
それはもう、見世物興行だから仕方ないのよ(笑)。
だから、展覧会に込めたメッセージを見てもらいたいなっていう、学芸員としての想いはありますよね。名品をただ集めてきて、バーン! って見せるだけっていうんじゃないんだよって思っています。「江戸ものづくり列伝」も、そんなことを考えながら作っていきました。
コロナ禍の今こそ、“歴史”を切り開いてきた先人に学びたい
──展覧会の企画って、どのように立ち上がるんでしょうか?
落合:
館によってやり方はいろいろですが、一般的にはまず学芸員が「こういうテーマでやりたいです」って企画を上げる形ですね。あとは「開館〇周年」とかって記念事業にしたり、例えば今年だったら、オリンピック関連の企画を立てるとか。
──なるほど、オリンピック。「日本文化を世界に伝える」みたいな。
落合:
はい、2020年は、東京都のみならず多くの美術館・博物館で「日本を世界にアピールできる企画をやりましょう」という話がよく挙がっていました。
──落合さんが担当された「ものづくり列伝」もその一環ということですか?
落合:
そうですね、オリンピックに端を発して、江戸博でも「職人」とか「ものづくり」っていうテーマで展覧会をしようということになりました。3年近く前のことだったと思います。
──3年! 3年もかけて準備されてきた展覧会が、ほとんど休館のまま終わってしまったのは、やっぱりとても残念ですね……。
落合:
そうですねえ……。
──「職人」「ものづくり」というテーマが決まり、そこからどうやって作品をピックアップしていくのですか?
落合:
まず、江戸東京博物館の所蔵品をメインに組み立てていこうって考えました。今回は、一つ大きな目的があって、この原羊遊斎【※】と酒井抱一【※】のコラボ作品を見て欲しかったんですよ。
※原羊遊斎…江戸時代後期に活躍した蒔絵(まきえ)師。印籠や櫛、茶道具などを制作した。
※酒井抱一…江戸時代後期の絵師、俳人。「江戸琳派」と呼ばれる流儀の元祖的存在とされている。
落合:
一昨年、この作品が国の重要文化財に指定されたっていうのもあって、「これを見て欲しい」というのがスタートでした。
うちの博物館は、ジャンルとしては歴史系なのですが、工芸品のコレクションもいろいろ持ってるんですよ。漆器や金工品、それに甲冑とか刀剣も所蔵してるのだけれども、なかなかこれを主役にした展覧会をする機会がなかったんです。
──そして、足りないものというか、テーマに沿って必要な作品を他所の美術館や博物館から借りてこられたということですね。
落合:
はい、今回はそういう形で進めていきました。
「職人」の価値を取り戻したかった
──「ものづくり列伝」は工芸がテーマですけれど、絵画のような美術品もプログラムに入っているのがすごく面白いと思いました。
落合:
ありがとうございます、三浦乾也【※】は面白いでしょう?
※三浦乾也…幕末に活躍した陶芸家。陶器だけでなく、蒔絵、造船、ガラスやレンガの製造まで行った多才な人物。
──サザエみたいな香炉を作ったと思ったら、軍艦を設計したり。すごい人ですよね。
落合:
三浦乾也は尾形乾山の陶法を受け継いだ芸術家としての顔と、造船までしちゃう技術者としての顔と、両方を持っているんです。今回の展覧会で見せたかったポイントの一つは、そこにもあります。
展覧会の副題は「ニッポンの美は職人の技と心に宿る」とつけましたが、「ものづくり」とか「職人」と聞くと、科学技術や工業製品、あるいは実用品を作る職人さんの伝統工芸展をイメージされると思うんです。
──そうですよね。私もそうです。
落合:
でしょ? そういうイメージで「江戸ものづくり列伝」に来てみたら美術品がたくさん飾られていて、「なんだ、美術展じゃん」って。お叱りコメントまでいただいちゃったり。でも、私的には狙い通りだったんです。
明治になってフェノロサや岡倉天心【※】が唱えた美術観なのだけれど、かつては、古代中世の仏教美術が日本美術の最高峰とされ、これに対して世俗的な「江戸の美術」は長らく格下に扱われてきました。でも最近、江戸の美術も評価が高まっています。
※フェノロサ、岡倉天心…日本古美術の保存を説き、伝統的な日本画の復興に尽力した東洋美術研究者。この2人で日本美術学校の設立に努めた。
──仏教美術以外にも素晴らしい伝統美術はたくさんあるんじゃないか、という。
落合:
その大きな理由が、「日本の伝統美は、日本人の暮らしの中にある」という考え方が生まれてきたことなんです。
例えば、描かれた絵の部分ばかりが鑑賞の対象になりがちですが、掛け軸や屏風、障壁画というものも、本来は住まいの空間を仕切ったり模様替えをする実用的な「道具」の一つで、四季折々の暮らしを豊かに彩るためのツールです。そうしたツールを使い、飾って、愛でてきた日本人の心こそが、「日本の美」なんじゃないか? そして、それを作り出してきたのが、「ものづくり」に生きる職人なんじゃないか、ということです。
──本来、あらゆる芸術家は「職人」だったじゃないか、っていうことでしょうか。
落合:
そういうことですね。
「ものづくり列伝」のニコニコ美術館に出演してくださった橋本麻里さんは、私のメッセージに気付かれたと思うんです。というのは、放送中にワグネル【※】っていうドイツの科学者の名前を出されたんですよ。
今回の展覧会では迷った末に扱わなかったんですけど、ワグネルって、まさにファインアートと「ものづくり」の間で翻弄された生涯を送った人なんです。
※ゴットフリード・ワグネル…ドイツ出身の科学者。製品開発のため来日し、東京工業大学の前身になる東京職工学校の教授を務めた。
──なるほど、橋本さん、鋭い指摘だったわけですね。
落合:
ワグネルは「ものづくり」っていうのにすごくこだわって、東京大学の前身である東京開成学校に「製作学教場」っていう、実技と学問的な研究が両方できる場所を作ったんです。
ところが、それがたった3年でなくなってしまったんですね。東京大学が組織改編するときに、「ものづくり」的なものは、ありふれていて実用のものだから学問としてふさわしくないって、排除されちゃったんです。
──まさに「職人」が下に見られていたっていうことですね。
落合:
そうなんですよ。その後、それを惜しんだ人たちが東京職工学校を作って、それが東京工業大学の前身になっていくんですけども。
「ものづくり」が、日本の近代の教育制度の中でいかに翻弄されたのか、東工大の歴史からも見えるんですよね。
──お話を伺っていると、「職人」という現代の感覚でカテゴライズされた言葉を改めたい、っていう強い意志があったんだなとすごく感じます。
落合:
職人の仕事、ものづくりについて、「日本の伝統」や「美」と切り離さないで接続させたい。そういう想いが今回の展覧会にはありました。
──なるほど、「職人」の意味を拡大させたいというメッセージが。
落合:
また、AIの発達やものの仮想化が急速に進む現代に、さらにコロナ禍が追い打ちをかけて、人の関わりや人の手のぬくもりが薄れつつあります。「先人に学ぶ」じゃないですけど、これからの時代をどうやって私たちは生きていくのか、どのように時代を切り開いていくのかっていうことを、過去の歴史に学んでいきたいなって。
──未来を考えるにあたって、それこそ「江戸のものづくり」であったり、「日本の心」みたいなものに立ち返ることに意味があるんじゃないか、ということでしょうか?
落合:
そうですね。
展覧会をインターネットで公開すること
──「ものづくり列伝」をニコニコ美術館で中継させていただいた時のことを少しお聞きしたいです。
当初、打ち合わせしたときは撮影NGの展示がたくさんありましたが、当日までの間に、ほとんどが撮影OKになったじゃないですか。それにすごく驚いたんです。
落合:
江戸東京博物館の館蔵品だったら、原則として撮って頂いていいし、他所様からお借りしているものも、印刷物への掲載やテレビ放映については、あらかじめご意向を伺っているのですが、いきなりインターネット生中継での作品公開っていうご提案をいただき、面食らってしまい、あわててご所蔵者に連絡を取った次第です。
──なかなかネットで公開することまで想定しないですもんね。
落合:
そうなんです、今回はいきなりインターネットで生中継したい、という話になり……。
──急なご相談で本当に失礼致しました……。
落合:
いえいえ(笑)。うちとしては本当に有難いお話だったので。
それで、当初は他所からお借りしてきたものは許可を頂けないというつもりで保留してたんですけれども、いよいよ直前になって、私が先方に、だー!っと電話をかけて、番組で映す打診をしたんです。でもやっぱり、すぐOKは出なかったですね。
──検討させてください、みたいな。
落合:
そうですね。その結果、「あくまでも展覧会の紹介っていうことだったらいいですよ」と許可を頂けたところがいくつかありました。
──許可をくださった博物館・美術館さんは、普段はダメだけど、こういう時だから……っていう考え方でしょうか。
落合:
っていうか、急速に進んでいくIT化に博物館側がなかなかついて行かないという実情があります。インターネットでの展覧会の生公開というのは新しい試みなので、ネット公開に対するガイドラインを決めておく必要がありますね。今回はいい宿題を与えてくださいました。
学芸員としての人生
──ここまで展覧会のことをいろいろ伺ってきましたが、落合さんについてもお話を聞かせてください。子どもの頃はどんなことに興味がありましたか?
落合:
中学生の頃から遺跡の発掘に行ったりしてました(笑)。博物館に行くのも好きでしたし、「物と対話をしたい」っていう気持ちでいましたね。
──「物と対話」というのは、例えば遺跡を発掘して、その周辺を調べていくのが楽しいということでしょうか。
落合:
最初は穴掘り自体が楽しかったんだと思いますけど、でも、そこから遺跡がの成り立ちとか、だんだん歴史や背景にハマっていきましたね。
──大学で歴史を専攻されてたとのことですが、ご専門は何でしたか?
落合:
学生時代は中世の対外交渉史、日明貿易なんかを研究していましたね。江戸東京博物館に就職してからは、担当するコーナーや企画展に合わせて、江戸の町人の暮らしとか、江戸の子育てとか。あかりの歴史を取り上げた展覧会をしたこともあります。ここ10年ぐらい取り組んでるのは幕末明治維新ですし、しまいには今回のような美術展を無謀にも企画してしまいました。
日本の多くの博物館では、学芸員は自分の専門だけにとらわれず幅広く何でもやります。事務仕事や営業活動も。昔は、いろんなことをやるのを揶揄されて、「雑芸員」なんて言われたこともある。
──雑芸員はひどいですね(笑)。
落合:
でも、この2、30年で博物館の社会的な役割が変化してきて、幅広いパフォーマンス力のある学芸員像が求められるようになっているので、今は「雑芸員」という自虐的な呼び方は影を潜めました。
──落合さんの考える、江戸東京博物館の魅力ってどういったところでしょうか?
落合:
美術館さんだと作品を美しく陳列して、それをきちっと説明をして、静かに作品を鑑賞するっていうことが肝になるんですけど、ウチはちょっと変化球ができるっていうか、良くも悪くも何でもあり的な博物館なんで、歴史もやれば美術もある、民俗もある、本当に何でもあり、幅が広いところが魅力でしょうか。
だから、「雑芸員」って言われちゃうのかもしれないけど(笑)。
──落合さんは再来年で定年を迎えられるということですが、何年働いていらしたんですか?
落合:
江戸東京博物館が開館する2年前に入ったから、いま29年目ですね。開館する前のことを知っている数少ない学芸員になっちゃいました。
──長年やられている中で、どんなお仕事が好きでしたか?
落合:
やっぱり資料を集めて整理して、っていうのは好きですね。
お客さんにレクチャーしたり、人前で喋ったりとかっていうのは苦手で、裏方でちまちまやってるほうが好きだし。
──研究者タイプっていうことでしょうか。
落合:
好事家以上研究者未満、みたいな(笑)。
“過去の展覧会”は博物館のネタ帳
──落合さんにとって、「江戸ものづくり列伝」が江戸東京博物館の学芸員として、最後の展覧会だったわけですよね。
落合:
今のところはそうですね(笑)。いろんなことをやってきて、やっと自分なりにやり方がわかってきたっていうか、今回は落ち着いてできたかなって思います。落ち着いて、ちょっと独自のアレンジを入れることができた企画かなって。
もちろん私1人でやり遂げたことではなくて、展示のガイドをした杉山他と3人でチームを組みましたし、共催の毎日新聞社さんも尽力してくださいました。音声ガイドを担当してくださった神田伯山さん……。
──「江戸ものづくり列伝」の音声ガイドは神田伯山さんが務められたんですよね。素敵なキャスティングだと思いました。
落合:
音声ガイドは台本を何度も書き加えたり修正して、出来上がったものを伯山さんに読んで頂けたんです。収録に立ち会わせていただいたんですけど、本当に素晴らしかった!
会期の半ばで展示替えをしたので、後期分の収録もあったのですが、それを皆さんに聴いてもらえなかったのは本当に残念です。
──ガイド、聴いてみたかったです。こうした見どころ満載の集大成ともいえる展覧会がこういう形になってしまい……。
落合:
でも、過去にやった展覧会は、博物館・美術館にとってはネタ帳みたいなものなんですね。だから、先輩たちがやった展覧会を見て、後進の人たちが参考にするというか、上手く利用してくれればうれしいです。
──なるほど、ベテラン学芸員のやってきた展覧会を見て、メソッドや考え方を学んで欲しいと。
落合:
「古いロートルがしてたことなんか知らねえよ!」って言われてるかもしれないけど(笑)。
でも、もしそうであったら、学芸員冥利に尽きるなって思いますね。
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