『攻殻機動隊』ハリウッド版とアニメ版の違いを比較考察。「強いキャラを足したのが実写版の失敗だった」
現代のアニメの二択。「萌えか押井守か」
岡田:
全てが、押井守さんの世界に見えないとダメというすごいタイトな世界で勝負してるんですね。そのためにアニメ版の『パトレイバー』の押井作品版の『パトレイバー』の泉 野明(いずみ のあ)も「攻殻機動隊ゴースト・イン・ザ・シェル』の草薙素子も押井守版では、感情の起伏が乏しいキャラとして描かれてしまうんですね。
その代りに世界観がめちゃくちゃ際立つんですよ。主人公たちがすごい受動的で、受け身であるから周りの世界がきらびやかなネオンっぽいですね、僕はホントにデジタルねぶたって呼んだんですけど、『イノセンス』なんて本当にデジタルの世界で、ねぶた祭りが繰り広げられるようなシーンが10分以上続くんですけども、そういうぎらぎらな世界観が極めてよく映えて見えるんですね。
そういう中で、本当の自分とは何か、すごい中2病的というのもなんですけども、哲学的なんだけども中学2年生でもわかる哲学的なテーマを選んだために、アニメファンの中の中2病心というのをすごいくすぐるんですね。だからアニメファンの中の中2病心というのは、あるアニメを見た時に、萌えキャラの方に行くか、押井守哲学に行くか極めて、2つにパーンと別れちゃうんですね。
押井守の創り上げた世界をぶち壊した「ハリウッド風」
岡田:
たぶん、これの合体したようなものを作ったら、最強だと思うんですけども。『けものフレンズ』もそっちの方にはいかないんですね。萌えか押井守さんかの2択に分かれちゃうくらい、現代のアニメのなかなか悩ましいところなんですけど、パカッと分かれちゃうんですね。
そういう中2病的な人が好きな中2でもわかる哲学風味というのが、押井守さんのアニメの大きい魅力なんですね。ところがそれはハリウッドの人たち、そこにやっぱり目をつけるんですね。これ、行けるぞと。何が足りないが、ハリウッド映画ではない、世界映画ではない、なんでかというと、キャラが弱いからだと。違うんですよ。押井さんがキャラを弱くしたんですよ。
わざわざ、面白くするために、押井守的な世界にするたえにキャラをわざわざ弱くしたのに、スカーレット・ヨハンソン版の『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、おお!素晴らしい! ジャパニーズのアニメ、みつけたよ!『ゴースト・イン・ザ・シェル』見てごらん。すげえだろ。すげえだろ。たった1つ足りないものがあるネ。なんだろう? それは、強いキャラだよ! ハリウッド風の強いキャラを足してみよう。」とやっちゃったのが、今回の大失敗なんですけれども。