なぜ人は“萌え声”に魅了されるのか?――アニメ・ゲーム二次元キャラの声をガチで研究している大学教授にいろいろ聞いてみた
ツンデレが「萌える」のはなぜ? 『涼宮ハルヒの憂鬱』に見る「緊張の緩和」
山田:
もうひとつ要素があるんです。桂枝雀という落語家がいるんですけれど、この人が「笑いの本質は緊張の緩和にある」と言っているんですね。
ところがこれは哲学者のカントという人のパクリなんですね。つまり緊張感があってそれが緩和した時に笑いが出るという話なんです。よく考えてみたら、例えば『涼宮ハルヒの憂鬱』は分かりますか。
まこと:
分かります。
山田:
長門有希はツンツンですよね。
まこと:
そうですね。
山田:
みくるはデレデレですよね。主人公のハルヒは?
まこと:
ツンデレ。
山田:
そう。つまりツンという緊張がデレになった時に萌えるんですよ。だから主人公になれているんですよ。ところが逆はありえない。デレからツンになった人は『涼宮ハルヒの憂鬱』に出てきましたか。
まこと:
いないですね。
山田:
いや、ひとりいるんですよ。朝倉涼子委員長。最初はすごく親切だったのに、結局戦闘しちゃって、いつの間にかいなかったことになっていましたよね。つまり主人公にはなれないんですよ。敵役にしかなりえないんです。ツンデレが萌えるのはなぜかというのは、「緊張の緩和」なんです。
“萌え”の研究が二次元アイドルのトータルプロデュースに広がる可能性
山田:
あともうひとつ、『アイマス』はめちゃくちゃ研究していますよ。
まこと:
『アイマス』の研究って、どのような研究ですか。
山田:
キャラクターの立ち絵があるじゃないですか。あれと声がマッチしている、マッチしていないという研究をやって、つまり声優さんがちゃんとキャラクターに合っているかどうかという話ですね。それから、一人ひとりCDが出ているのを知っていますか。
まこと:
キャラソンみたいなやつですか。
山田:
そう。あれの音楽の研究もやっていますし、CDのジャケットの研究もやりました。何が分かるかと言うと、『アイマス』はアイドル候補生をトレーニングしてデビューさせるわけじゃないですか。立ち絵の写真がCDのジャケットになった時、メイクもバッチリして、服もそれなりにデザインしてやっているわけで、成長しているはずですよね。
それがもともとの立ち絵の特徴がより強調されていることになっているのかどうかということをやると、それほど強調されていなかったんです。
まこと:
つまり?
山田:
もっと画家さん頑張って(笑)。
まこと:
そういうことなんですね(笑)。
山田:
ところが『アイドルマスター シンデレラガールズ』は全員が最初のタイトルのどなり【※】をやっているんですよ。あれを全員がやっているんですよ。その声質がありますよね。その声の特徴がCDになって、その人の声に合わせたような曲が作曲されて編曲されて歌詞がついて歌っているわけですよね。その声から歌になった時に、声の特徴がより強調されているかと言うと、すごい強調されていたんですよ。
※どなり
タイトルコールのこと。
まこと:
素晴らしいですね。
山田:
その話を日本コロムビアにしたら大喜び。今は『アイマス』のキャラクターたちがダンスを踊っていますよね。キャラクターソングと衣装がマッチしているかどうかを研究しています。こういうことをやると二次元のキャラクターのトータルプロデュースをすることができますよね。
まこと:
流行るものが分かりそうですよね。
山田:
今、アニメは年間に200本以上とか出ていますよね。だけれど、どれだけ駄作が多いか。うまいこといったり、うまいこといかなかったりしているんですよね。それはなぜかと言うと、製作者の経験と勘でやっているからですよね。
そこにいわゆるハズレがないような、大ヒット狙えるかどうかは知らないけれども、ある程度の法則性があると大ハズレはしない。そういうものの設計指針、デザイン指針ができるといいなと思っています。
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