コミケに集結した“海外オタクイベント代表者”たちに、国外オタク事情を聞いてみた! ロシアはコスプレ中心、香港では未だ『アクセル・ワールド』が大人気【C94】
フランス:同人作家に貢献したい
名前:Alban
イベント:JONETSU
思い出のキャラ:荻上千佳(げんしけん)
自国の流行:ナルト
日本のレイヤーに一言:今までみた中で1番良い……!
「参加サークルと運営の距離がとても近いんです」
――フランスは日本のアニメや漫画も人気なことはよく知られていますが、同人誌はどうなんでしょうか?
Albanさん:
フランスの同人誌コミュニティはそんなに大きくありませんが、アクティブな作家たちは確かに存在します。JONETSUまだ小さなイベントですが、同人誌がメインのイベントなんです。同人作家たちが大成できるようにプッシュできる場になりたいと思っています。フランスで一番ポピュラーなのは、やはりイラストやグッズですね。
でも実は、私たちにとって18禁コンテンツはそんなに重要ではありません。というのも、ファミリー層も気軽に足を運べるイベントに育てていきたいんです。
――同人誌にフォーカスしているというのは、欧米のイベントではかなり珍しいように感じます。客層について、何かコミケとの違いを感じますか?
Albanさん:
どんな人に来て欲しいか、というお話になってしまうのですが……JONETSUには「作家に貢献したい」という側面があるんです。なので実際にクリエイターを呼んで、講演をしてもらっています。例えば日本からは、アニメーターの高津幸央さんをお招きしたことがあります。
ただ開催地の公的な機関とも協力関係にあって、子どもを連れたファミリーにも気軽に遊びに来れるような環境づくりに努めています。
――最後に、総合して、コミケのJONETSU の共通点と相違点を教えてください。
Albanさん:
もっとも大きな共通点は、同人サークルに主眼が置かれていることです。スケールはコミケの方が何倍も大きいですが、方向性は同じだと思っています。
相違点ですが、私のイベントはまだ会期中に850人ほどの動員しかないので、とにかくサイズです。ただ、運営と参加サークルの距離がとても近いんですよ。参加サークルは最大で50ほどなのですが、私自身、彼ら全員の名前を覚えています。コミケ規模のイベントではそれは不可能だと思うので、これはポジティブに捉えることもできます。
あとは、先ほども言った「作家への貢献」の部分ですね!
スペイン:日本のサークルにも参加して欲しい
名前:Ramon Liste
イベント:Madrid Otaku、Nippon-Go!
思い出の作品:聖闘士星矢、ダッシュ勝平
自国の流行:ユーリ!!! on ICE
日本のレイヤーに一言:細かい部分にもこだわりがあって最高
「どうか海外のイベントにも参加して!」
――スペインにも同人文化ってあるんですか?
Ramonさん:
もちろんあるよ! でも数は、日本ほど多くない。18禁コンテンツも日本ほどたくさんはないかな。もっとファンアートに近い、イラストのような作品が多いかな。でも僕たちはいま、もっと同人誌そのものをもっと活発にしたいんだ。絵を描く人は多いから、そこから派生していくように、何か前例になるようなことをイベントを通してやりたいなと思っているんだ。
――日本ではいわゆる18禁コンテンツがかなりの割合を占めていますが、スペインではどうなんでしょう?
Ramonさん:
スペインでは全然見かけないよ。規制が結構厳しいから、スペインというよりも、ヨーロッパではそんなに見かけないね。
――そうなんですね。ちなみに、コスプレ文化はどうでしょう?
Ramonさん:
コスプレは人気だよ! ただちょっと変わってるのは、アニメや漫画のの他に、ディズニーやMARVELのコスプレがとても多いんだ。オタクイベントにいって、ディズニープリンセスやミッキーマウスのコスプレを見かけるのって面白いよね。
――ナルトやブリーチとミッキーがごった返す現場は、凄まじいですね(笑)。客層に違いはありますか?
Ramonさん:
若者をそんなに見かけないことかな。これはちょっと悲しいことでもあるんだけど、若者は即売会よりも、オンラインでの買い物を好む傾向があるんだ。年齢層は比較的高めなんだけど、最近はよく、彼らの子供がコスプレをして会場を一緒に歩いていて、それは見ていてとても微笑ましいよ。
――最後に、総合して、Madrid OtakuとNippon-Go! とコミケの共通点と相違点を教えてください。
Ramonさん:
大きな違いは、企業ブースだね。僕らのイベントにはまだ企業は入って来ていないんだ。共通点は……Loveだね。ボランティアのスタッフさんを含めて、イベントやコミュニティへの愛があって良いと思う。
最後に日本の同人作家さんたちに伝えたたいんだけど、どうか海外のイベントにも来て欲しいです。日本の同人誌は、海外でも需要があるんだ!
台湾:こういうイベントはどこも戦場
名前:林さん
イベント:Fancy Frontier
思い出の作品:うる星やつら
自国の流行:日本と同じ
「コミケには11年間フル参戦しています」
――まず初めに、台湾での同人文化事情についてお話を伺いたいです。
林さん:
イベント規模でいうと、一番大きいもので参加サークルが1000以上になります。参加者は、2日間で6万人くらいです。実際にはもっと需要があると思うんですが、もっと大きい会場で開催することは、現状ではなかなか難しいです。
――そうなんですね。台湾でも、同人誌というと日本のような、いわゆる18禁コンテンツが多いんですか?
林さん:
台湾もそうですね。特に漫画出版の委縮が続く不況な現在は、18禁コンテンツが独走状態です。
――続いてコスプレイヤーについての質問なのですが、
林さん:
台湾と日本は近いので、流行の情報もすぐに入って来ます。とくに漫画とアニメ、ゲームはほぼ時差はないんですよ。台湾で人気が出る作品やキャラクターも日本と似ていますね。
ただ近年はスマホゲームの影響大きいので、日本作品以外の、中国発のゲームキャラの人気が高まっています。あと台湾発の創作物にも独自のファン層があるので、そういったキャラクターのコスプレをする人も多いですよ。
――なるほど。流行やコンテンツのタイプが似ているということは、イベントに集まる客層も日本と似ているんでしょうか?
林さん:
コミケは歴史が長いので、客層も若い世代から中年世代まで様々ですよね。Fanct Frontier含め、台湾の同人イベントの歴史は25年くらいなので、客層は学生から若い社会人くらいがメインです。
でもここ数年も家族世帯が増えています。先月日本でも話題になった「血小板ちゃん」の集団幼児コスプレはまさにその象徴だと思います。あの子たちの親はほぼ、コスプレイヤーや元コスプレイヤーで、だからこそ成立するんです。
台湾のかわいい血小板たち#FF #血小板 #はたらく細胞
— Niixtion (@Niixtion) 2018年7月29日
轉FB pic.twitter.com/fPdvZxLTXp
――あれはとても可愛かったですよね。日本でも、「こんなに早く海外で人気が出るのか」と話題になっていました。日本の流行が、台湾とリンクしている理由はなんだと思いますか?
林さん:
一番の原因はもちろん物理的な距離と文化自体が似ていることだと思います。
他に思い当たるのは……実は50~80年代にかけて、台湾では創作物に対する審査制度があったことです。ところがその審査は海賊版のようなかたちで国外から入って来るものに対しては働かないので、日本漫画の海賊版が大量に出版された、という歴史があるんです。
当時の市場は、あっという間に日本産コンテンツに独占されました。90年代以降に版権化が進んでも、日本産コンテンツ優勢の流れはもうひっくりかえらなかったんですね。
――それは知りませんでした。善悪はさておき、当時ものすごい勢いで台湾に浸透した日本産のコンテンツと共に成長した今の大人たちは、日本の漫画やアニメに対して「海外のもの」というハードルは感じていないんですね。そしてそれが、現在の流行のリンクにも繋がっていると。それでは最後に、総合して、Fancy Frontierとコミケの共通点と相違点を教えてください。
林さん:
規模と一部のルールは異なっていますが、それは些細なこと。本質は同じだと思います。規模の差と一部ルールが違い、でもそれは些細なこと、本質は同じだと思います。似ていることは……戦場感ですね。みなさん情熱と欲望がある。私はこの11年間コミケにフル参戦していますが、好きなものに対して忠実なのは台湾でも日本でも変わらないと思いました。
ロシア:コスプレに特化したイベントが多い
名前:Ren
イベント:AniCon、Akikon
思い出の作品:セーラームーン、ワンピース
自国の流行:僕のヒーローアカデミア
日本のレイヤーに一言:すごくかわいい、かっこいい!
「カップルも見かける!」
――お二人とも、コスプレとてもかわいいですね! 早速質問なのですが、ロシアでは、同人文化って盛んなんですか?
Renさん:
同人誌の作家もファンもいるんですが、日本のように大きなコミュニティは多分ないと思います。それよりもイラストや、ステージでのコンテストがあるコスプレイベントの方が規模が大きいです。
コスプレコンテストのステージは結構規模が大きいものもあって、レイヤーさんにとってはファンを集める大切なイベントなんですよ。
――そうなんですね、ロシアや周辺地域でのコスプレイベントはクオリティが高くて、世界中から熱心なファンが訪れると聞いたことがあります。みなさんどんなコスプレをされているんですか?
Renさん:
最近は『僕のヒーローアカデミア』や『進撃の巨人』がすごく人気です! あとは『ナルト』とか、定番のコスプレはいまでも見かけます。
――コスプレがメインのイベントだと、客層ってどういう感じなんですか?
Renさん:
コスプレをする若者が中心ですが、子供やカップルも見かけますよ!
――ぐぬ、カップルうらやましい……。お忙しい中、ありがとうございました!(了)