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「アニオタで圧力団体を作ればいい」 政治はアニメ業界の危機を解決できるのか

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 日本が世界に誇るアニメ。その制作現場がいま危機を迎えているという声がある。テレビアニメの制作本数の増加と人手不足により放送を中断せざるを得ないという事態や、またTwitterで新人アニメーターが給与明細やスタジオの内情を暴露し、待遇の厳しさを訴えるということも起こっている。

 そんな中行われた11月23日のニコ生『みんなで考えよう 日本のマンガ・アニメ・ゲームの未来 ~第1回 クリエーターはこの先生き残れるのか?~』では、およそ50人の超党派の国会議員によるマンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟、略してMANGA議連から、会長の自民党衆議院議員古屋圭司氏、幹事の自民党参議院議員赤池誠章氏が参加。ニッポン放送アナウンサー吉田尚記氏が司会を務めた。

 アニメ業界の抱える問題について、「PLANETS」編集長の宇野常寛氏が議員たちにネットの声、アニメファンの声を直接ぶつける機会となった。第1回目のゲストに「アニメーション製作者実態調査報告書2015」を発行した、日本アニメーター・演出協会(JAniCA)事務局長の大坪英之氏を迎えた。

 今のアニメ業界が抱える問題とは? それを政治が解決できるのだろうか……?


左から吉田尚記氏、宇野常寛氏、大坪英之氏、古屋圭司氏、赤池誠章氏

「アニメ産業レポート2016」から読み解く、アニメ業界のお金事情

吉田:
 一番はじめ、「現場にお金回さないとな」とか「アニメーターって苦しいんでしょ」みたいなことを言っている人がいるんですけど、実際どんなものなのか?というのを日本アニメーター・演出協会事務局長の大坪さんにちゃんとした資料を見ながら解説をしていただきたいと思います。
 ただ、景気のイイ話もあります。『君の名は。』が200億円まだ超えてないでしょうけど確実に超えるだろうと言われているでしょ? 『名探偵コナン』が60億、『ガールズ&パンツァー』と『聲の形』が20億、このまま行くと『この世界の片隅に』も数億から2桁億行くんじゃないか?みたいな景気のイイ話もある。だけど現場の人にはお金が回ってないのかどうかというのを、まず教えていただきたいんですけど。

日本アニメーター演出協会事務局長 大坪英之氏と日本動画協会「アニメ産業レポート2016」

大坪:
 まずアニメーターの現場の話をする前に、アニメ産業のお話をした方が良いと思いますので、日本動画協会さんで毎年編集されております「アニメ産業レポート2016」という冊子のデータからお話をしたいと思います。

 まずアニメ産業全体と呼ばれるもの、このグラフを見ていただきたいんですけど、全体は2002年の統計開始から1兆948億円から2000年代半ばにかけ海外の販売を中心にして売上を拡大しまして、2006年には1兆3499億円と約23%増となりました。その後、北米を中心としたアニメ市場のDVDセールスが不振になって、2006年には5204億円にまで達した海外セールスが大きく減少。2009年には1兆2542億円に縮小したということです。
 ここで注意が必要なのは、パチンコ・パチスロの売上が加えられていることですね。2007年以前の取り扱いの詳細はわかりませんが、そちらを除くと市場規模は1兆877億円ですので2006年のピークから比べると20%減。それで2002年を下回るということになります。

吉田:
 まとめて言うと2002年から結構は成長したけれどもDVDが売れなくなったせいで、そこの数字だけ見ているとパチスロが入っているから意外にいけている気がするけど、ちょっと待てと。パチスロ取っちゃうと割と下がり気味かもしれないぞっていうのがアニメの現状ってことですね。

大坪:
 そうですね。特に2010年以降っていうのはまた市場が伸びてきておりまして、2013年以降毎年10%以上の成長を続けていると、特に直近のものに関しては1兆8255億円というような金額になっているというのが業界全体ですね、周辺の業界まで含めた売上というのがそこまで増えているということになります。

吉田:
 じゃあアニメ業界はお金がまったくないのとはちょっと違うらしいぞと。なのに「現場が苦しいってどういうことなの?」という質問が来ていて。他にも、統計だけじゃなくて東映アニメーションとかバンダイグループなどアニメの制作と利用を総合的に行っている上場企業のIR情報、いわゆる株主の方向けに出している情報を見ていくと、主に版権収入と海外市場の好調などによって軒並み業績は上がっている。GDP成長率が日本1%台の中だからかなり絶好調と言っていいのに、アニメーターが苦しいっていうのは、ネットの話って都市伝説も多いのでそうなのか?とも思うんですけど、大坪さんはちゃんと調べた人としてどう思われますか。

大坪:
 業界全体の話、ユーザーさんが実際にお金を落とすという話は、先ほどの1兆8000億円という数字になるのですが、じゃあ実際にアニメ業界として、産業として回している金額はもう一つグラフがありますので、そちらの方をちょっと見ていただきたいんですけれども。

吉田:
 コレですね。アニメ業界市場すべての商業アニメ制作の売上を推定した狭義の、厳密にもっと「アニメだけ」っていう話にした場合ってことですね。

大坪:
 こちらがアニメーションの現場の方が考える数字です。なので外から見える数字と内側から見える数字っていうのはちょっと違う。市場の状況と概況とはほとんど同じなんです。ただ、よく見ると下のピンクの「TV」の割合が増えている。売上に関して言うと、2015年の2007億円まで年々成長は続いているのだけれども、2009年から小幅に止まっているという実態になります。
 ここで注意していただきたいのは、金額はそんなに大きくは変わってないんですね。売上が、まあ小幅には上がってはいるものの変わっていないという状況で。じゃあそれで利益が増えたんですか?っていう話はまた違う話なんです。

吉田:
 利益はまた別の話、つまり制作費が上がってしまう分利益が下がるということですよね。

大坪:
 ええ。最近のアニメだけを観ていると分からないのかもしれないんですけれども、やっぱり昔に比べると線の密度が違ったり、あるいは動きが激しくなったり、視聴者が見飽きない、楽しませるように高クオリティ化しているんです。

吉田:
 観る人の目も肥えちゃっているってことですよね。

大坪:
 はい。そうしてしまうとどういうことが起きるかというと、やはり単価が上がるというか、作業効率が下がるというか。そういったことが起こり得ているということになります。

本数が多すぎて人材が回らなくなっているアニメ業界

ニッポン放送アナウンサー 吉田尚記氏

吉田:
 いまリアルタイムのアニメファンからすると、テレビアニメが放送までに完成が間に合わなかったりするというのが今シーズン何本か散見されたりして、本数が多すぎてどうやら人材が追いついてないらしい。で、人材集めようにも、アニメの場合はただすごいお金を出して「来てくれ」ってお願いの仕方が基本出来ていないということなんですか?

大坪:
 どちらかというと「カットいくら」というような歴史的な経緯で発注がされているのが実態かなあと思います。

吉田:
 なので、非常にコストは上がってしまっていて、人を集めるための魅力というのはアニメそのものが楽しいから来てもらっているとしか、もう言いようがないんですよね。

大坪:
 そうですね、それぞれのアニメーターの方々、アニメに関わるすべての方々と言ってもいいかもしれないんですけれども、そういった方の「犠牲」とまでは言わないんですけれども、熱意によって今の場面が作られているのかなあと思います。

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