なぜベストを尽くしたのか――モテたエピソードから“機材”自慢まで、日用品で音楽を奏でる演奏家たちが語る「演奏してみた」【RAZO×おれお×お野菜×ケロリン】
“異色演奏”という言葉をご存知だろうか。
楽器とは程遠い日用品などを使ってハイクオリティな演奏をやってのける、という変態な演奏家たちを呼ぶための、ニコニコ動画では知らない人はいないと言っていいほど広く認知されたジャンルなのだが……今回なんと、ニコニコ超会議2018の「超演奏してみた」のプロモーションとして、異色演奏シリーズの中でも名のある演奏家たち4名を同時にインタビューする機会を得たのだ。
お集まりいただいた面々を順番に紹介すると、まずは上記の動画サムネイルの上段中央、こちらをガン見しながら歯ブラシを咥えているお野菜氏(@masaya_oyasai)、その右でガチャポンを爪弾くケロリン氏(@kerorinkerorin)、そしてその下でモノサシで低音を唸らせているおれお氏(@mono_oreo)。
さらにこの動画には出ていないのだが、おれお氏が「影響を受けまくった」と語ったモノサシ演奏界のレジェンド、元祖モノサシストのRAZO氏(@mono_razo)の4名だ。
集まった方々にまずは自己紹介を……と思った矢先に目に飛び込んできた“とあるピンクの物体”について、筆者が思わず質問をしてしまうところからインタビューは始まった。
取材、文/レオ・ハリス
写真/K15H1
このピンクのものは一体…?
――今日はお集まりいただきありがとうございます。まずは自己紹介を……こ、これも楽器なんですか?
ケロリン氏:
そうですね。全部で5、6個持っています。
――どう演奏するんでしょうか……?
ケロリン氏:
ガチャポンに当てて音を出すために使っています。それぞれ振動の大きさとかも違うので、響きのコンディションに合わせて使い分けるようにしていますね。
――ドラムでいう所のスティックの役割を果たすと。ちなみに演奏以外でも活用される時はあるんですか?
ケロリン氏:
演奏以外の使い方がちょっと……分からないですね。
――そうですよね。お、今度はこんなところに新品の歯ブラシが落ちている??
お野菜氏:
あ、それは僕の楽器です! 毎回近場で買うようにしているんです。今日も近くで買ってきました。
――毎回買う??? “楽器”なので、気に入っているブランドとかメーカーの話を聞きたいと思っていたのですが……。
お野菜氏:
比較的、ビトイーンが好きですね。
――な、なるほど(笑)!
異色演奏者が集結
――すみません、ちょっといきなり色々と質問してしまいましたが、改めてみなさん自己紹介をお願いしたいと思います。
ケロリン氏:
ケロリンです。7年前に歯をカチカチさせて曲を演奏する活動を初め、紆余曲折を経て現在の“ガチャポン演奏”にたどり着きました。他にコンポタの缶だったりとか、キャップとかでも演奏してます。
お野菜氏:
お野菜です。歯を磨いています。色々と動画をあげているんですけど、歯を磨いている動画だけがなぜか飛び出して行く感じになっちゃってますね(笑)。
一同:
(笑)。
――ありがとうございます。そして、なんと今日はモノサシスト界のツートップと言っても過言ではない、こちらのお二人にもお越しいただきました!
RAZO氏:
私はモノサシストのRAZOと言います。2007年の初投稿以来、元祖モノサシストとしてやってます。基本的にはモノサシ演奏以外はやっていませんが、初期のころは歌ってみたとか、武富士のCMを集めたりとかもしていました(笑)。
おれお氏:
おれおです。僕もモノサシで演奏してます。実は僕……お会いするのは今日が初めてなのですが、RAZOさんに影響を受けてモノサシ演奏を始めたので、今日はとても楽しみにしていたんです。
――それはアツい出会いですね! ちょっとその辺も後ほど詳しくお伺いできればと思います。
“異色”な自慢機材
――さて、では改めてみなさんの楽器についてお話を伺っていきたいのですが……ケロリンさん、先ほどはいきなりローターから攻めてしまい失礼しました。メインのガチャポンについてもお聞かせください。
ケロリン氏:
いえいえ(笑)。ガチャポンに関してなんですけど、よくあるやつは直径48mmで穴があいてるのですが、僕の持ってるガチャポンは穴がないんですよ。
穴があると音が分散してしまって音程が低いところが出せなくなっちゃうので。なのでまずは、こういう穴のないガチャポンを探すところから始まるんです。
――楽器屋巡りではなく、ガチャポン巡りから始まると。隣にあるのはコーンポタージュの缶……ですか?
ケロリン氏:
コンポタなんですが、これはスチール缶じゃないといけなくて。でもスチール缶であればコンポタじゃなくてもいいんですよ。
偶然コンポタの缶を持ってたから「コンポタで演奏」って言ってたんですよね。缶で演奏というよりコンポタで演奏と言った方が(笑)。
――そのキャッチコピーは確かにオイシイですね(笑)。お野菜さんはビトイーンの歯ブラシが好みということでしたが、固め、柔らかめの好みとか、固さによる音色の違いはあるんでしょうか?
お野菜氏:
今回は固めをチョイスしました。音色違いは……分からないです(照)。
一同:
(笑)。
――続いて、おれおさんお願いします。
おれお氏:
このモノサシはシンワ製の150㎜のもので、素材はステンレスです。
RAZO氏:
おっ! 型番は?
――モノサシストのRAZOさんは、やはり気になるところですよね。
おれお氏:
14001です。同じシンワ製のものでもステンレスだったりシルバーだったり色々あるんですが、これが一番しっくりきました。幅だとか厚さ、柔らかさが、演奏向きなのかなと。
そして演奏するときは、ガラスの鍋敷きを下に敷いています。かなり滑りやすい素材で、これを敷くと音が伸びやすいとか、高い音が出やすいという利点があって。
最近いろんなイベントに出させていただけるようになったのですが、これを持ち歩けばどんな環境でも同じ音が出せるので、そういった理由でも愛用しています。
――RAZOさんはおれおさんの定規に反応していましたが、もしかして同じものを……?
RAZO氏:
同じ定規なんですけど、私のやつは15歳の時に買ったので、20年前のものです。なのでちょっとJISのマークが違います。
――なるほど、ビンテージモデルですね。
RAZO氏:
基本的にはこれしか使ってなくて、演奏を始めた時からずっと同じものを使っています。なので、指で弾くところがもうツルツルに削れてきているという(笑)。
――すごい、テカテカになってる……! 隣にあるのはギターのピックアップですね。どこかのメーカーのものですか?
RAZO氏:
そうですね、ギターのピックアップです。すごく簡単に言うと“振動を拾って音に変換する装置”なのですが、それを使ったらどうなるかなと思ったら、ベースみたいな音になったんです。
これは中国で1000円ぐらいで買ったやつですね(笑)。他にも、クリップで付けるタイプのバイオリン用のマイクを使うこともあります。
やっぱり音楽系の動画を投稿しているので、音には若干こだわりを持ってやっています。ミキサーも使ってやっているんですよ。
――素晴らしいです。こちらの機材ケースには、他にもいろいろ入っていますね。
RAZO氏:
弾けそうなものを色々。ただちょっと数が多いですね(笑)。
――「何でも弾いてみた」の動画で弾いていたものもありますね。こういうのって、日々試されているんですか?
RAZO氏:
そうですね。モノサシストあるあるですよ(笑)。この基板は『ナイト・オブ・ナイツ』の演奏動画で使ったやつですね。
より良いものを探し求めているので、こういうのを見つけるとどうしても弾きたくなります。でもやっぱりいつも使っているモノサシが一番いいですね。