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『君の名は。』のヒットで映画業界にはどんな影響があったの? 「東宝」「KADOKAWA」「松竹」のエラい人達にヒットの裏側を聞いてみた

『君の名は。』は配給会社にとって“希望の光”

藤津:
 「アニメファンと一般層」と俗に言われるあいだに、ギャップがあるように見えています。社会的にはないように見えているのだけれども、意外に映画の数字だとはっきり出る。

 特に「オリジナル劇場アニメ3億円ぐらいの壁」って僕らファンでなんとなく言っているのですけど(笑)。そこを越えてまで、知らないストーリーや知らないキャラクターに付き合うって言う人がそんなに多くないと感じるわけですけど。

古澤:
 めちゃめちゃ感じますね(笑)。その壁は厚いですし、最近ではこの三社ではない配給ですけど、『さよならの朝に約束の花をかざろう』がもう少し当たって欲しかったなっていうのがあって……、あれだけの実力がある方たちが集まっているし、ピーエーワークスさんのオリジナルで。

『さよならの朝に約束の花をかざろう』
(画像は公式サイトより)

 やはりファンタジーのビジュアルとかだと普段アニメを見ない方だと敷居は一段高くなりますが、見てみると本当に泣けるお話なので。あれば宣伝面も含めてもっとうまくやれたらもっといけたのじゃないかなと。

 ここは本当に難しくて企画のところからどういうビジュアルのどういうお話にするのかっていうところで、それによって公開規模が大規模300館にもなれば、50館でやらざるを得ないものにもなるかなと思っています。

藤津:
 飯塚さんは、館数の判断の件はいかがですか。

飯塚:
 2種類あって自分達で仕込む時は、興収何億を目指す為に内容を考える。要は、さっきの話じゃないですけれど300館で興収20、30億を目指すとなったら250~300館開けないといけない。

 それに向かって地方の方達も含めて、アニメファンじゃない人達も持っていかないとこの数字はいかない。では、そういう人たちにウケるストーリーは何だろう? というところのキャラは何だろう? というところから始めるパターンです。

 外からお持ち込みいただける企画の場合は、当然委員会の方でも制作費はこれだけかかるのでこれだけ開けたいっていうお話もあるのだけれども、当然内容を分析してお話し合いをさせていただくということも多いです。

 深い話になっていきますけども、やっぱりある程度10億円とか超えるにはさっきの話じゃないけれどもアニメファンと一般層のファンの間の「超スーパーライトのアニメファン」という人たちもいたりするので、そういう人たちを捕まえてなんとか10~15億円。

 15億円以上いくのだったらもっと外側の「一年に一本アニメを見るか見ないか」みたいな、最後に見たアニメは中学生の頃に見た『名探偵コナン』みたいな人たちまで捕まえないといかないだろうなとは思いますけどね。

 ただ一方で、古澤さんの方で一昨年に『君の名は。』を当てていただいたというのは工藤さんも含めて、我々他の会社の大変希望の光になったなとは思います。

『君の名は。』
(画像は『君の名は。』公式サイトより)

工藤:
 大変ありがとうございました(笑)。本当に助かりました。

飯塚:
 本当にありがとうございました(笑)。変に持ち上げるつもりじゃないのですけども(笑)。 本当にあのおかげで我々周辺の会社も含めて 非常に企画の幅が広がるというか……。

工藤:
 そうですね、実際問題として私からすると本も売れたみたいなことが色々あるのですけれど。

VR・ライブビューイング・応援上映。劇場公開の可能性

藤津:
 以前、僕は飯塚さんに取材した時に伺ったのは、『けいおん!』の劇場版がすごく人気があって地方の映画館から予想以上にいっぱい来ちゃって、むしろ適正な希望に絞らざるを得なかった、というお話を聞いた記憶があります。

『けいおん!』
(画像は『けいおん!』公式サイトより)

飯塚:
 そうですね(笑)。

藤津:
 やっぱり、そういう苦労もあるわけですよ、配給としては。

飯塚:
 そうですね。うちは逆にそれなりに絞って、なるべく長い週上映して、お忙しいお客さんも多いのでなるべく見る機会を増やしたいです。

藤津:
 最後に軽い質問です。今アニメーションがライブとして楽しむ方向でライブビューイングだったり大音量な上映だったり、あるいは応援上映と言われるものも増えています。

 こんな上映をやってみたい、というのを最後にお三方に聞いてみたいと思うのですけれど、工藤さんは何かありますか?

工藤:
 今、出ちゃったところがほぼ全てかなと思うのですけれど、それに沿った内容のコンテンツを開発するところから始めないとな、というのが私が今思っていることです。

 私たちは音楽の部門もあるのですが音楽事業会社がメインではないがゆえに、歌って踊ってみたいなIPは数としては少ないので、そういうものを開発して、ライブエンターテイメントというか、商品に繋がるようなのを目指さないとな、ということで現場では今ディスカッションしているような状況ですね。

藤津:
 ありがとうございます。古澤さんは何かありますか?

古澤:
 VRとか今ご自宅でも没入感のある映像を楽しめるメディアみたいなものってやっぱり出てくると思うので、それでもわざわざ映画館まで足を運んで大勢で見るみたいな体験って映画館でしか、なかなかできないことだと思っています。

『PlayStation VR』
(画像はプレイステーション公式サイトより)

 より良いサービスってそれこそ4Dみたいに動きのある座席にしたりとか、さらに例えば匂いまでつけて五感で楽しむみたいなこととか、少しずつ進歩していくのだとは思うのですけれど、それに合う作品がうまく作れないと活きてこないと思うので、作品の企画と合わせて提案できるようなものを考えられたらなと、漠然としか今のところ思えてないです。

藤津:
 飯塚さんはいかがですか?

飯塚:
 今日を機にどなたかに技術的に教えてもらいたいのですけれども、ライブビューイングって大変多いのですけれども、だいたい一つの劇場でイベントをやって、それを全国の劇場に中継するようは一方通行な中継になるのですけれども。

 本当は向こうの劇場にいる人と例えば四つの劇場にそれぞれキャストが入って、そのキャストが画面の中で分割してやりとりする、ということが技術的にできるようになると、イベントの幅が広がるのじゃないかなと思っています。

古澤:
 たぶん配信の回線の問題なのであとはコストですね。その四つを維持して全部の場所にカメラが必要になるので。

工藤:
 そうですね。

藤津:
 あと何回も使わないともったいないっていう話になってきますからね(笑)。

古澤:
 それがあったらやれるのじゃないかなと思いますね。やっぱりコールアンドレスポンスをやりたいのはありますよね。

飯塚:
 いつも舞台挨拶のライブビューイングをやると「ライブビューイング会場のみなさーん!」って本会場でやるのですけども、当然返事は聞こえてこないのでいつも漂う微妙な空気が辛いなーって(笑)。

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