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【コメント職人座談会】コメントアート文化の歴史を振り返ってみた! 合作動画の始まりはビリー・ヘリントン兄貴がきっかけ? コメント職人が減ったと言われる真相は?

 「コメントアート」という文化をご存じだろうか。

コメントアート コメント職人 CA
(画像は「桜ミクコメントアート✿【初音ミク】」より)
コメントアート コメント職人 CA
(画像は「鬼滅の刃OP「紅蓮華」でコメントアートPV」より)

 ニコニコ動画のコメント機能を用いて、動画にさまざまな装飾を施すコメント群。それがコメントアートだ。界隈では「CA」と呼称されることが多い。

 そして、コメントアートを製作する者たちは「コメントアート製作者」と呼ばれている。もしかしたら世間的には「コメント職人」のほうが馴染み深いかもしれない。

 このコメントアート製作者の方々をお呼びして、コメントアートの歴史を振り返っていこうというのが本記事のテーマである。

 とは言え、コメントアートの歴史は長い。ニコニコ動画のタグ検索で調べたところ、2007年にはコメントアート動画の投稿が確認されている。

コメントアート コメント職人 CA

 そこでコメントアートの歴史を振り返るうえでいくつかの軸を設けることにした。

 ひとつ目はコメントアート文化を黎明期・低迷期・再出発期の3つの時代に分類。時代ごとにどのような傾向があったのか見ていくことにした。

 ふたつ目は振り返るうえで幅広い世代のコメントアート製作者をお呼びした。2007年から触れている方もいれば、2016年から活動を始めた方もいる。コメントで絵を描く方もいれば歌詞職人の方もいる。

 3つ目は「合作動画」を話題の中心に振り返ってもらった。合作動画とはなにか? 少し乱暴な括りになるが、ひと言で説明すると、「複数のコメントアート製作者が集まって作られた動画」を指す。ときに20人を超える大人数でひとつの動画を作ることもあるコメントアート製作者たちの集大成ともいえる作品だ。

※座談会主催者である・M・(まー) さんが企画立ち上げ、進行を務めた合作動画。

 今回は、コメントアート製作者として長期間活動され、界隈について詳しい・M・(まー)さんを中心に、配管さん、ヒロスさん、ヒツジさん、Yuuさんの5人のコメントアート製作者をお呼びし座談会を実施。

 コメントアート文化を振り返りつつ、各人の思い出話に花を咲かせてもらった。

■座談会参加メンバー
・M・(まー):
コメントアート歴は2008年夏頃から。2012年~2016年までは離れており、2016年から活動を再開。主催者としても参加者としても10作品以上の合作動画に関わっている。(@x_0227)
配管:
コメントアート暦としては2007年の頃から。数多くの合作動画に参加している。(@1010787)
ヒロス:
コメントアートは2008年頃から触れており、2010年代には合作動画3本の企画立ち上げをしている。(@hirosususu)
ヒツジ:
コメントアート歴は今年で12年目。2017年以降、数多くの合作動画に参加している。(@hituzi3)
Yuu:
コメントアート歴は5年。2017年以降の合作に多数参加。「CAプロジェクト」という合作動画企画を立ち上げている。(@YMacchadaisuki)

コメントアートの合作動画の始まりはビリー・ヘリントン兄貴がきっかけだった?

・M・(まー):
 今回は、これまでのコメントアート文化を振り返るにあたり、配管さん、ヒロスさん、ヒツジさん、Yuuさん4名のコメントアート製作者の方にお集まりいただきました。

 まずは2006年末~2011年の黎明期からご活躍しているヒロスさん、配管さんからお話を伺いたいと思います。

ヒロス:
 ヒロスと申します。コメントアートは2008年頃から触れてまして、当時はよく「組曲『ニコニコ動画』」にコメントしていました。ただ最近は私生活多忙につきコメントアートに触れ合う機会は少なくなっております。本日はよろしくお願いします。

配管:
 ハンドルネーム配管と申します。

 コメントアート暦としては、2007年の頃から触れていまして、毎日楽しくニコニコ動画を視聴していく中でコメントアート先駆者の方をお見かけし、そこから自分もコメントで何か面白い表現が出来ないかなと試行錯誤し、時間が飛びますが気が付いたら16年目に突入しました。

 ありがたいことに様々なご縁がありまして今日に至ります。どうぞよろしくお願いします。

・M・(まー):
 今回、コメントアート文化を振り返るなかで、各年代において合作動画が何件くらい投稿されていたのか調べたところ、2009年には2件、2010年には3件、2011年には1件の合作動画投稿されていました。

 2009年の2本のうち1本が、ヒロスさんが主催し、配管さんと私が参加した「【東方ニコ童祭】投コメで『ハイコートポロロッカ』【25人合作】」です。

 この合作動画が9月26日投稿でして、私はこの合作動画が最古の動画だと思っていたのですが、実はこの動画が投稿される2ヵ月前に合作動画が投稿されていたんですよ。それが「コメントアートで兄貴の誕生日を祝ってみた」という合作動画で、その4人の参加者のうちひとりが配管さんでしたね。

配管:
 そうですね。この合作動画は、当時、ニコニコ動画で大人気だったビリー・ヘリントン兄貴の誕生日が7月14日だというのを誕生日当日に気づいて、急遽作ったものなんです。製作期間1日あるかないかくらいでした。

・M・(まー):
 えっ⁉ たったの1日で作られたんですか?

配管:
 はい。時間に余裕もなかったので、これまでに兄貴のキャラクター絵を作っていた人たちの静止画を集めてAviUtlという動画編集ソフトを用いて動画を作成したんですよ。

 7月14日中に投稿は間に合ったんですが、参加者のひとりが「なにか物足りない……次はコメント機能のみで純然たる動画を作ってみたい」と、仰られたんです。それが次の機会として巡ってきた「投コメで『ハイコートポロロッカ』」に繋がっていったと記憶しています。

2010年頃からコメントアート文化が盛り上がりを見せた

・M・(まー):
 そんな「投コメで『ハイコートポロロッカ』」ですが、東方ニコ童祭【※】が告知されて、そのお祭りに参加してみようぜというノリがあったんですよね。

※東方ニコ童祭……東方Projectの二次創作作品をみんなで投稿・発信して楽しむ、東方ウェブイベント。

ヒロス:
 そうです。告知動画を知って「やってみようぜ!」と持ち込んだら皆さん参加してくれましたね。

・M・(まー):
 25人参加という大人数かつ、当時では過去に類を見ない企画だったと思いますが、実際に主催してみてどうでした? 今こうして改めて振り返ってみたとき、楽しいと大変、どちらの気持ちが残っていますか?

ヒロス:
 圧倒的に楽しかったという気持ちです!

 もともとは「組曲『ニコニコ動画』」に集まっていた人たちに声をかけたのがきっかけで、お祭り感覚で楽しみながら気が付いたら完成してた……みたいな感じです(笑)。

コメントアート コメント職人 CA
(画像は「【東方ニコ童祭】投コメで『ハイコートポロロッカ』【25人合作】」より)
コメントアート コメント職人 CA
(画像は「【東方ニコ童祭】投コメで『ハイコートポロロッカ』【25人合作】」より)

・M・(まー):
 私も参加者なので覚えていますが、普段から「組曲『ニコニコ動画』」にコメントアートを貼っていた人たちの集まりだったので個々のパワーが凄かったですよね。そういった人たちを取りまとめるのは大変じゃなかったですか?

ヒロス:
 いえ、参加者たちで集まる定例会みたいなのを開いて意思疎通を図りながら進めていったので、発起人ではありましたけど、具体的に何か作業したかということはなかったです。スケジュールや担当割を決めるくらいで、基本的には参加者各々で進めていただく感じでした。

・M・(まー):
 今でこそコメントアートの合作動画づくりには、絵系、歌詞、装飾など様々な表現技法を得意とする方々が満遍なく参加していますが、当時は各界隈の交流みたいなところは難しかったですよね。

 ヒロスさんが翌年2010年に主催した「【30人合作】投コメで『ニコニコ動画流星娘』【第8回CA祭】」では、そういった各分野の方々の交流が行われたのかなと記憶しています。

※CA祭……会場となる動画を決めて期間中にみんなでCA投下を行うイベント。

ヒロス:
 そうですね。「投コメで『ニコニコ動画流星娘』」はそういう意図で立ち上げました。「投コメで『ハイコートポロロッカ』」の動画で様々な反響をいただいたので、次は絵系以外の人たちも交えて合作を行おうと。

・M・(まー):
 この合作動画は、「みんなでコメントアートを投下して楽しもう」が趣旨のCA祭というイベントに合わせて投稿されていましたが、私調べですと同じタイミングで「【5人合作】投コメPV詰め合わせ【第8回CA祭(SA部門)】」という合作動画も投稿されていまして、徐々に”合作”ジャンルの開拓が始まっていったのかなと思えますよね。

ヒロス:
 このあたりからコメント動画も増えてきた印象ありますよね。

・M・(まー):
 ですね。この頃が最初にコメントアート文化盛り上がりを見せた時でしたね。

界隈の雰囲気や動画プレーヤーの機能などコメントアートがしやすい環境

・M・(まー):
 配管さんは2009年から現在まで数多くの合作に参加し、クレジットに名前載る回数が一番多いのではないかと言われるくらい精力的に活動されています。参加者として楽しむ秘訣や実際に参加して楽しかった思い出などありますか?

配管:
 合作はいわゆる学芸会・文化祭と言いますか、そういう誰しもが経験したことあるような催し物みたいな、誰かと一緒に活動する楽しさみたいな心の栄養が接種出来るのが合作の魅力だと思っています。

 また一つ付け加えると、基本的にコメントアートは性質上一人で活動するもので1対コンテンツという形式が基本形態だと思うのですが、ある時期を境に合作動画が数多く投稿されるようになりました。

 それは、燻っていたものが爆発……その形式では満足できないというボルテージが徐々に高まっていたと同時に、そこに着火剤じゃないですけど、求心力のあるリーダーシップのある方が企画したりお声掛けしてくれたお陰かなと。

・M・(まー):
 ほうほう。

配管:
 あともう一つ環境ですかね。

 これは自負していることですが……コメントをお米に掛けますが、良い田んぼには良いお米が育つんですよ。

・M・(まー):
 おぉ! その心は?

配管:
 コメントしやすい風土(環境)であったり、コメントで応援したいという雰囲気はもちろん大事です。

 加えて、コメントの仕様、ワンタッチで投稿出来るというユーザーインターフェースが充実した環境下だからこそ、コメント文化が育っていったんじゃないかと。これうまいこと言っちゃって!(笑)

・M・(まー):
 (笑)。でも本当にそうだと思います。

配管:
 なので、参加者としてもほんのちょっとのキッカケが大きい成果を生み出すわけで、私はこのキッカケを貰う機会が多かったのかなと。参加した動画ひとつひとつに思い入れもあります。とても有意義な、充実した時間を過ごさせていただきました。

・M・(まー):
 私たちコメントアート製作者界隈の雰囲気の良さも大事ですが、ニコニコ動画プレーヤーの機能が安定することで、コメントがしやすい、コメントアートがしやすい環境が整っているのが大きい要因だよなぁと思いますね。

ヒロス:
 あー、環境と言えばあとは、合作動画投稿後の視聴者コメントのウケの良さが大きかったなと思います。

 初めて合作動画を投稿した時はどういったコメントが付くのか全く想像出来なかったのですが、好意的なコメントが多いと言いますか、皆優しいなぁと思いましたね。

・M・(まー):
 ニコニコ動画、あったけぇっすよね(笑)。

配管:
 間違いないですよね、変わらないですよね。

・M・(まー):
 そう変わらないんですよね。もちろん流行の動画は変わったり、機能面が刷新されたり、ユーザーも変わっているとは思いますが、いつの時代も視聴者の方は皆優しいですよね。

動画プレーヤーの変更によりコメントアートが作りにくくなった時期も

・M・(まー):
 続いて2012年~2016年の頃のコメントアートの話をしていきたいと思います。この時期からコメントアートに触れたヒツジさんにもお話をお聞きしていければと。

ヒツジ:
 はい、ニコニコ動画ではヒツジという名前で活動しています。2011年4月、ニコニコ動画(原宿)の頃にアカウントを取得し、コメントアート暦は今年で約12年目を迎えます。本日はよろしくお願いします。

・M・(まー):
 この時期を今回の座談会での時代分けとしては、低迷期として位置付けています。

 というのも、2012年~2016年末のHTML5プレーヤー登場時期までの期間、ニコニコ動画:ZEROへのバージョンアップと共に動画プレーヤーが変更となりました。これにより、従来の仕様でコメントアートが作れなくなってしまったことはもちろん、普通にコメントすることもままならない状態が続きます。

 他にもコメントアートはニコニコ動画のプレーヤー仕様に左右される他、視聴する動画ブラウザにも左右されるものでして、GoogleChromeの影響をモロに受けてしまいコメントアートが作りにくくなってしまったのがこの時期にあたります。

ヒツジ:
 ちょうどその頃から活動し始めたのでよく覚えています。まーさんの仰った通りで、動画プレーヤーやブラウザに左右されており、仕様変更がしょっちゅう変更されるので作品作りがままならない状態が続いていましたね……。

ヒロス:
 私も同じ認識ですね。ヒツジさんのようにその頃からコメントアート始めた人たちもいますが、トータルで考えると一気に製作する人が減ってしまった時期なのかなと。他の時期と比べると新規参入者と離れる人のバランスが悪い時期だったのかなと。

・M・(まー):
 3DSユーザーの参入の影響によってコメント職人が減ったと言われることがありますが、実態としてはこのような様々な仕様変更の対応に追われ作品作りがままならない状態にあったというのが真相なんですよね。

 コメントアート合作動画の投稿本数を見ていくと、2012年には1本、2013年には0本、2014年には0本、2015年には2本、2016年には2本。1本も投稿されない年が2年間続きました。合作動画の本数も参加人数も少なく、仕様も安定してきた2016年末に10名以上の参加者でまた合作動画が作れるようになったのかなと。

ヒツジ:
 自分が初めて合作参加したのもその時期です。2016年末のFlashプレーヤー時代最後の「【合作】ニコニコ動画十年一昔」に参加してみて、すごく楽しかった思い出があります。

・M・(まー):
 私も飛び込みで参加しましたが楽しかったですよね! それまでは少人数の合作が年に1本投稿されていた中で、13人も参加した大きい合作でした。

 ヒツジさんは合作動画に参加することが多いとのことですが、合作動画に参加することの楽しみってどういうところにあるのでしょうか?

ヒツジ:
 参加者の特権かもしれないですけれど、他の参加した方の作品を先に観れたり、変化していく過程がみれるのが凄く嬉しいですね。この出来上がる過程が観たいがために参加してると言っても過言ではないです。(笑)。

・M・(まー):
 確かに。合作の裏側なんて参加しないと観れないですもんね。

アニメ『けものフレンズ』1話にコメント貼りに行こうぜ!

・M・(まー):
 2012年~2016年の約4年間はコメントアート文化の先が視えない不安な時代が続いたと思いますが、2016年末に復活の兆しが見え、そして2016年末よりHTML5プレーヤーが登場しコメント仕様も刷新されました。

 そして2017年には皆さんご存じアニメ『けものフレンズ』が世間的大ヒットとなり、『けものフレンズ』1話に「コメントアート貼りに行こうぜ!」という動きがコメントアート製作者間で生まれました

 そこから、コメントアートのイベントが開催されるようになり、コメントアート界隈にとっては再出発期だったのかなと思っております。そんな再出発期に活動を始めたYuuさんにいろいろとお話を伺っていきたいと思います。

Yuu:
 はい、Yuuと申します。コメントアート暦は5年になります。2016年の冬、ニコニコ動画のバージョンだと(GINZA)後半辺りにアカウントを作りました。普段は公式アニメのOPやEDに歌詞を貼ったりしています。よろしくお願いします。

・M・(まー):
 Yuuさんといえばヒロスさんや私のように合作動画の企画を立ち上げる主催者側で、自身の合作動画等を“CAプロジェクト”と呼称して企画実施されています。主催する際に大切にしていることってありますか?

Yuu:
 自分の企画で皆を楽しませたいという想いがあるんですよね。動画投稿したり生放送を行う中で第一に考えているのは、やはり参加してる皆を楽しませたい、笑顔にさせたいというエンターテイナーみたいなものを意識しています。

・M・(まー):
 参加者を楽しませるって大事ですよね。私が調べた範囲ですけど、「【プロセカ】スイートマジックで歌詞コメントアート」「【花は咲く】コメントで花を咲かせてみた《CAプロジェクト》」「【初音ミク15周年】ミクさんの誕生日をコメントで祝ってみた♪《CAプロジェクト》」「超コメントアート2022歌詞ラップバトル」など、Yuuさんは本当に多くの合作動画を主催されています。

Yuu:
 「コメントで花を咲かせてみた」の合作動画は、参加者が集まってくれるか正直不安だったんですが、蓋を開けてみたら10名の方が集まってくれて嬉しかったですね。

・M・(まー):
 私もその合作動画に参加したひとりなんですが、3.11を経験した身だったのもあり参加できて嬉しかったです。

 Yuuさん自身これまで多くの合作動画を主催されてきて、楽しかった思い出や逆に苦労したことで印象に残っていることはありますか?

Yuu:
 楽しかった思い出のほうが記憶に強く残っています。僕自身が絵系のコメントアートに対して苦手意識がある中で、他の参加者の方が貼ってくれた絵系作品を見るのが密かな楽しみだったりします。

 けど、逆に大変だったこともありまして。合作を計画する際Googleスプレッドシート等を用いて管理を行うのですが、自分でいちから作ることができなくて……そこは本当に苦労しました。

 その時大変助かったのがまーさんが合作計画の際に用いていたスプレッドシートでして、それをコピーして自身の合作用にアレンジして使いました。その節はありがとうございました。

・M・(まー):
 いえいえ(笑)。合作企画する中でスケジュールや人繰りを管理するの大変ですよね。スケジュールに関しても期限を守れない人が居たりするのを見越して余裕のあるスケジュールを決めたり。

 あとは合作参加者の中で協力的な人いると助かります。私の場合だと配管さんやヒツジさんが生放送を行い情報共有行ったりしてくれるのですが、大変助かっています。

Yuu:
 そうですよね、本当助かっています。

・M・(まー):
 ヒロスさんや私の場合ですと、合作動画を企画するときは東方ニコ童祭やCA祭など母体となる大きな企画に乗っかろうぜという感じで、合作動画の企画を立ち上げることが多いのですが、Yuuさんは何かのイベントに合わせてではなく自身で企画を立ち上げて合作動画を主催されているというのは、新しい動きなのかなと思います。

Yuu:
 ありがとうございます。

2020年は「合作を作りたい」熱量が爆発した年

・M・(まー):
 さて、2017年以降に投稿された合作動画の件数についてですが、2017年~2019年は0本でした。

 この背景には、2017年以降のHTML5プレーヤーという新環境でのコメント仕様・コメントアートの表現の研究が盛んに行われていたことがあると考えられます。研究と並行して、コメントアートイベントは行われていたものの合作動画投稿までは至っていませんでした。

 が、2020年、時代が動き出します。この年、合作動画は何件投稿されたと思います? 急にクイズ始まっちゃましたが(笑)。

ヒツジ:
 (正解を)当てにいきますね。4件!

Yuu:
 えー……何件だろう……。3件とか?

ヒロス:
 完全にカンですけど5件で。

配管:
 9件!

・M・(まー):
 なるほど。正解は……10件です!

一同:
 ええええっ!!

・M・(まー):
 この10件の内訳には、投稿された動画に対しコメントが直接表示される「直表示版」と、コメントが流れているものを録画して投稿される「キャプチャ版」の2種類が合算されています。ただ、重複を除いても7本投稿されているので各段に増えていると言えるでしょう。

 2021年以降も同様にキャプチャ版を含めた件数ですけど、2021年に6件、2022年4件、そして2023年である今年は2件となっています。

ヒロス:
 この2020年に合作動画が急に増えた背景には、HTML5プレーヤー以降コメントアート文化は盛り上がりを見せた中で、徐々に「合作したい」という想いが蓄積されていき、まーさんが主催を行った「中曽根OFF合作」から放出されていった印象があるのですが、実際のところはどうだったんですか?

・M・(まー):
 2017年以降コメントアートのイベントは行われており界隈としてもの凄く盛り上がってはいたのですが、一方で何度か「合作動画作ろうぜ!」という話題は度々挙がりつつも、結局実現に至らずだったんです。

 そんな中、世界的なパンデミックが起き、ニコニコ超会議がリアル開催からネットへの超会議へ移行しました。その際に、「中曽根OFF動画を投稿してください」という公式企画がありまして、そこで「投稿された動画にコメントアートを貼ろうぜ!」と提案された方がいたんです。

 一方、私は個人でコメントアート動画を作って中曽根OFF動画企画に乗っかろうと動いてました。で、投稿期限が迫ってきたタイミングで「結局みんなどうする?」みたいな動きがあり、水面下で進めていた私が音頭をとってはじめたところ……あれよあれよと参加者が増えていき総勢25名の方が集結。そこから製作期間3日で作ったんですよ。

 今振り返ってみると、やはりみんなの「合作を作りたい」欲が燻っていてあのタイミングで爆発したのかなと。

ヒロス:
 そういうことだったんですね。

・M・(まー):
 ノリと勢いみたいなものでしたね。私も初の合作主催者で、また3日間という短い期間中で参加者もろくに管理していませんでしたので……。未だに誰だかわかっていない参加者がひとりいます(笑)。

配管:
 あー、そういえばおひとりいますよね。

ヒツジ:
 でた、謎の人物(笑)。

Yuu:
 居ましたね(笑)。

・M・(まー):
 そういった不安要素もありつつ完成出来たことが奇跡であり、私にとっての成功体験で自信に繋がった出来事だったなと思いますね。

コメントアート コメント職人 CA
(画像は「少し楽しくなるコメント動画【中曽根OFF合作】」より)

ヒロス:
 まーさんにお聞きしたんですが、2020年から毎年中曽根OFF合作動画を投稿されているじゃないですか。毎年演出を考えたりするのは大変じゃないですか?

・M・(まー):
 そうですね、キャプチャ動画を含めこれまで9作品投稿していますけど、同じ楽曲でどう演出するか本当に毎年悩んでいます(笑)。

 ですが、有難いことに毎年固定メンバーではなく、新しい方にも参加いただきつつみんなで力を合わせて作っているので、毎年違った作品が出来上がる感じです。

 今後も新規参入者や続けている方はもちろん、その時々、アクティブに活動している人たちで合作動画を作っていきたいですね。

ヒロス:
 まーさんが企画する中曽根OFF合作は毎年開催すると決まっているので、参加者の方達の目標にもなっている気がしますね。

 単純に「合作をやるぞ!」というだけでなく、新規コメントアート製作者獲得や、コメントアート文化のアピールなど、別の意味も付随しているのが凄いなと。

・M・(まー):
 恐縮です。こういう合作企画を通してまずは参加してくださる皆さんのモチベーションアップに繋がってくれれば嬉しいなと思っていますし、合作動画を企画する→投稿する→新規参入者獲得→合作動画を企画するのサイクルをまわしていくことでコメントアート文化の活性化に繋がれば良いなぁと思っています。

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