萌えキャラで戦争を描くことで、理解と共感が得られる!? 岡田斗司夫が語る「萌えによる世界侵略」
1971年に放映された、タツノコプロが制作したテレビアニメ『アニメンタリー 決断』。太平洋戦争のノンフィクションドラマをアニメを使って表現した本作が現在、動画配信サービスHulu(フールー)で配信されている。
これを受けて、岡田斗司夫氏は3月19日配信の『岡田斗司夫ゼミ』にて、戦争をテーマにした作品を萌えアニメでリメイクするということについて言及。岡田斗司夫氏が語る「萌えによる世界侵略」とは何なのでしょうか。
萌えキャラは、雑味を消してくれる魔法の調味料
岡田:
萌えアニメでリメイクするのは、案外、穴場じゃないかなと思います。萌えキャラというのは、実はいろんな雑味を消してくれる魔法の調味料なんですよ。物語本編に集中させる力がある。だから、太平洋戦争を全部美少女キャラで、『魔法少女まどか☆マギカ』っぽく作ったら、僕は見るんですよ。たぶん、昭和天皇から山本五十六まで全部萌えキャラでやったら、これまで戦争アニメを絶対に見なかったやつも、ほぼ全員見るんじゃないかなと思うんです。
海外はこれからひたすらCGで、これまで見れなかった映像を出してくる。『プライベート・ライアン』の頃から今に至るまで、それまでの戦争映画では不可能であったものをどんどん出してくるんですね。
(視聴者からのコメントを読む)「ガルパンとどこが違うんだ」ですか……。『ガールズ&パンツァー』みたいに洒落のフリはしない。本気でやっちゃうんですよ。海外がこれまで見れなかった映像で攻めてくるんだったら、日本はこれまで誰も思いつかなかったキャラ化で戦うべきですね。
僕はこれまで萌えキャラが好きじゃなかったんですけど、今日から気持ちが切り変わりました。20世紀というのはSFの時代だったんですけど、21世紀は萌えキャラの時代だと思いました。というのは、SFというのはテクノロジーによって、社会がどう変わるか、という思考と推理の訓練法なんですよ。あくまで抽象化の方法として萌えキャラを使う、すると、キャラ化によって世界をどういう風にとらえるかという共感と理解を訓練するためのツールに使える。
抽象化の方法として萌えキャラを使う
岡田:
SFと萌えという二つを備えれば、無敵最強の思想になるんじゃないかなと思ったんですよ。日本が『Uボート』みたいに予算をかけて描こうとしたら、深刻ぶるのが好きな客層に媚びることになっちゃうんですよ。逆にあの戦争の時に日本人がどう考えたかに共感してもらう方が、『この世界の片隅に』を見てもわかるように、大事だと思うんですよね。
つまり、萌えキャラ攻めで、太平洋戦争を作ると、「あの戦争を忘れてはいけない」という人たちと、真っ向からぶつかることになります。しかし、「あの戦争を忘れてはいけない」というのは、果たして本当なんでしょうか。すでに逆効果だと証明されていると思うんです。
「忘れてはいけない教育」というのは、客観性を失わせます。別に忘れてもいい明治維新とか戦国時代に関しては、ひめゆり部隊より絶対に僕らの知識量は多いんです。なぜなら、「あの戦争を忘れてはいけない」というプレッシャーのおかげで、あの戦争周りに関して、極めて無関心になっているんです。この状態がすでに70年くらい続いている。この「忘れてはいけない教育」は、ある一定の効果はあったと思いますが、すでにもう逆効果が現れている。もちろん遺族や被害者、生き残りの方、家族の方のことを考えたら、面白がるというのは感性が麻痺していますが。
萌えによる世界侵略
岡田:
あえて無茶を言いますけど、思想の自由というのは、「こう感じるべき」というのを押し付けるのではなくて、まず子供は面白がらせるべきなんですね。面白がった後で、その時、扱われている人物たちがどういう気持ちだったのかっていうのを、後付けでのせていかないと、一番最初に面白いがないと、その上にのっかっていけないんですよ。
でも、これは大真面目なんですよ。僕は、「萌え」というのは、今の日本が持っている最大の武器だと思っているからです。萌えによって世界各国に共感を得ることが、世界制覇への道ではないのか、というか、安倍首相はこっちに金を使えよって思ってるんですけど(笑)。
太平洋戦争だけではなくて、日本の歴史というのを全て、萌えで振り返るでもいいですし、世界の歴史も僕らが萌えという形でやるんです。それはウォルト・ディズニーがヨーロッパの民話をディズニーアニメにすることで、いわゆるヨーロッパの文化が奪われたってことになるんですけどね。それに匹敵する何かが、萌えによる世界侵略という風に考えます。