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なぜベストを尽くしたのか――モテたエピソードから“機材”自慢まで、日用品で音楽を奏でる演奏家たちが語る「演奏してみた」【RAZO×おれお×お野菜×ケロリン】

「普通の楽器」は恐ろしい

――普通の楽器を演奏しようと思ったことはありますか?

お野菜氏:
 僕はギターを弾きますね。

ケロリン氏:
 僕は小学校の頃ピアノをちょっとやったんですけど、諦めちゃって。あとは口琴や、鼻笛という鼻の呼吸と口の開閉で音を調整する楽器もできますよ。

――口琴って、口にくわえて叩くとミョーンて音が出るやつですね。どちらもニッチですが、“普通”といえば普通の楽器です。

お野菜氏:
 あれ、ベースの話はしないの?(ニヤニヤ)

ケロリン氏:
 (笑)。以前、異色演奏者たちで普通にバンド組んでみようみたいな話がありまして。お野菜さんはもともとギターができるし、ドラムをやっている人もいたので、僕はベースを買ったんですよ。バッカス……だっけ?

お野菜氏:
 そうそう、バッカスは安くて良いよって言って買いに行かせたんですけど、結局バッカスのパクりのよく分からないやつを買っちゃって(笑)。

――これはギターやベースをやる人にとっては“あるある”ですね(笑)。

ケロリン氏:
 それでやろうと思ったんですけど、ベースの一番太い弦を切るっていう。

――よく切れましたね(笑)。エレキベースを触ったことがない方は、直径1mmくらいある金属製のワイヤーをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。ちなみにどういう経緯で切れたんですか?

お野菜氏:
 チューニング中に、どこがいいんだ……と言いながら「バチン!」って(笑)。その様子を生放送で見てたんですが、「そろそろ切れるぞ」とちょうどコメントを打とうと思った瞬間に切れるという(笑)。

ケロリン氏:
 それでもう、僕はベース無理だなって(笑)。

――いやぁ、ベースの弦って切れるんですね。知らなかったです。

ケロリン氏:
 やっぱり楽器を触ったことがなかったので、加減が分からなかったですね。

――モノサシストのお二人はどうですか?

おれお氏:
 僕も小さい頃に多少ピアノを触っていたんですけど、すぐ辞めちゃいました。それ以来ちゃんとした楽器は触ってないですね。ただ音感みたいなものは、その時少し身についたのかなと思っています。
 モノサシを始めて以降は、これ一本で他の演奏をしようと思ったことは全くと言っていいほどないですね(笑)。

RAZO氏:
 私も普通の楽器の経験はないですね。中学校の時にギターをちょっと触っていたので、コードをジャラジャラできるくらいです。当時GLAYとかが流行ってたんですが、そういうのは全然できない状態ですね。あとはモノサシだけです。

演奏中むずかしいと感じること

――演奏中、どんな時に難しいと感じますか?

お野菜氏:
 僕はカメラの位置ぐらいですかね。全部一発撮りなので、他は特に何も……磨くだけだし。歯磨き演奏はミスしても分からないです(笑)。

一同:
 (笑)。

――――「ミスとは何か」「成功とは何か」みたいな、もはや哲学的な領域ですよね(笑)。みなさんは普段、何テイクくらい録音されるんでしょうか?

RAZO氏:
 私は大抵10テイクくらい録るんですけど、結局一番最初に録ったものが良いテイクなことが多いですね。

おれお氏:
 僕は結構多いかもしれない。けどテイク数が重なると、集中力が切れちゃうんですよね。

RAZO氏:
 録り終わった後に通して聞いてみると、一番最初がノリがいいというか、一番力が入ってるなっていう。

ケロリン氏:
 けどゆっくりな曲とかは難しいですね。僕の場合は、音が分かりづらくなっちゃうので。

――打楽器は音が短いので、早くて手数の多い曲のほうが「演奏してみた」的には見せやすいですよね。

ケロリン氏:
 そうなんです。それを解決するのに一番楽なのが、ピンクのおもちゃを使うことでした。ロングトーンを出せるようになるので、曲によってはこういうのを使った方が演奏しやすいですね。

――ギタリスト界のレジェンドみたいな人で演奏にドリルを使う人たちがいるんですけれども、それに近い精神性を感じますね。

※ギターリストのポール・ギルバード氏によるソロ演奏の様子を収めた動画。電動ドリルの先端にピックを取り付けて演奏しているのは、おそらく『上を向いて歩こう』のメロディ。

ケロリン氏:
 俺ミュージシャンなのかな(笑)。

――みなさんミュージシャンですよ。

おれお氏:
 ものすごく当たり前のことを言うと、普通の音楽ってモノサシで演奏できるように作られてないんですよ。

一同:
 (笑)。

おれお氏:
 例えば曲の間奏とギターソロとか。ギターは弦が何本もあって早弾きできたりもするんですけど、モノサシは多くても3本指しか使えない。それをどう工夫するかがやはり結構難しいですね。楽しいところでもあるんですけど。

RAZO氏:
 あと音作りが難しいですね。同じくギターで例えると、1弦と6弦では同じ音階でも音が違うんですよね。

――話が少しテクニカルになってきたので、読者のためにギターの仕組みをザックリと解説させてください。ギターには通常、それぞれ太さが違う弦が6本張られています。太い弦は低い音を、細い弦は高い音を出すのですが、ここでRAZOさんがおっしゃっているのは、例えば「太い弦のド」と「細い弦ド」では、同じ高さのドの音でも聴いている人に与える印象が変わってくる、ということです。
 そしてここで「〇〇オクターブ出せる」という表現も出てくるのですが、これは簡単に言うと、「何段階ぶん同じ音を出せるか」と言うことです。ギターは通常、概ね4オクターブぶんの音が出せ、さらに複数の音を組み合わせることができるので、多彩な表現をすることができます。

RAZO氏:
 それで、どうやってモノサシで表現をしようかと。そういうところはやっぱり難しいですね。いちおう3オクターブくらいは出るんですけど、その中で収まりきらないことも多いので。なので最初の音をどこに合わせるかも重要ですね。

おれお氏:
 分かります。高くしてみたら、今度は高すぎたり。

――なるほど。限られた音の中で、最後まで演奏仕切れる位置をモノサシの中から探し出すんですね。

RAZO氏:
 どこで切り替えるのかも意識していますね。いきなりオクターブ切り替えるとやはり聴こえ方が違ったりするので。

――音楽を聴いて「このパートは低めに弾いてこのパートは高めに弾こう」みたいな、構想の過程がレコーディングの前にあるんですね。

RAZO氏:
 ある曲を演奏したいなと思った時はその曲を聴き込むんですよ、モノサシ演奏って口笛みたいなもので、曲をちゃんと知ってれば弾けるので。
 でも実際やってみるとできなかったりもありますね。その時はもう、諦めます(笑)。私は苦手なのですが、逆に早弾きが得意な方もいますね。

――ヒップホップで言うスタイル・ウォーズみたいなものがあるんですね。「魅せ方の違い」みたいな。

RAZO氏:
 色々ありますね。さっきの「横弾き」「縦弾き」もそうですし。あとはツーフィンガーの人もいればスリーフィンガーの人もいます。
 弾き方やモノサシと台によっても音が変わるので、その人のなりの特徴的な音がありますね。意外と幅広いですよ。

――他の人を見て、「こういうのやり方あったんだな」と感じることもありますか?

おれお氏:
 エレキモノサシっていうのがあって。あまり詳しくは分からないのですが、そのエレキモノサシを使うことによって、音の伸びを良くしている人たちがいるんです。異色演奏者って音の伸びが課題だったりするんですけど、壁を一つ越えたなと。

――それは革命ですね。こうしてお話を聞いていると、視聴者がオモシロおかしく観ている以上の、哲学的や日々の研鑽がそれぞれの動画に発現している、という世界だということが分かってきました。異色演奏者で一番多いのは、やっぱりモノサシストなんですか?

おれお氏:
 モノサシかハンドフルートですね。動画投稿数で言ったらやっぱりモノサシだと思います。

――歯ブラシはどうですか?

お野菜氏:
 調べてないですね(笑)。どうせ動画上げてないだろうみたいな。

一同:
 (爆笑)。

RAZO氏:
 モノサシ演奏も、結構やってみようって言って買ってくる人はいるんですけど、辞めてしまう方がやはり多いですね。それか、別の普通の楽器に行ったりとか。

おれお氏:
 行っちゃうんですよ~、寂しい!

「やっててよかった」と思う瞬間

――そろそろ時間となって参りました。最後に一つだけ、「やっててよかった」と思う瞬間について伺ってもよろしいですか?

RAZO氏:
 モノサシストチャンネルという生放送をやっているのですが、集まったみなさん同士が友達になっていて。別に私が何かしたわけではないですが、楽しんでくれていると見ていて面白いですね。その中で結婚したカップルもいたりして。

――それはすごい話ですね。

RAZO氏:
 ハガキが届いたんですけど、「モノサシストチャンネルに入会して結婚できました! 」って(笑)。

――おおお! それだけ見ると、なんかやばい広告みたいですね(笑)。他の皆さんはどうですか?

お野菜氏:
 以前超パーティーで出た、さいたまスーパーアリーナはやっぱり良かったですね。

おれお氏:
 超会議などもそうですが、こういうイベントに出れる機会に恵まれると、やっていて良かったなあと思います。

錚々たるメンバーの中に並ぶ3名

ケロリン氏:
 一般人って言ったらあれですけど、普通、幕張メッセとかさいたまスーパーアリーナのステージに立ったり出来ないじゃないですか。
 なのに、極端な言い方をすると「歯を磨いていたらスーパーアリーナに行けた」みたいな感じなので(笑)。貴重な経験をさせていただいたかなと。

おれお氏:
 ニコニコの公式さんから声がかからなければ、本当に動画だけで完結しちゃうので。それがあんなに広いステージまで飛び出せるっていうのは、やっぱりやってて良かったなと思いますね。

――ありがとうございました! 超会議2018に出演予定の方は、当日のパフォーマンスも楽しみにしています!(了)

ニコニコ超会議2018開催概要

会期:2018年4月28日(土)10:00~18:00(最終入場17:30)
   2018年4月29日(日)10:00~17:00(最終入場16:30)

会場:幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール

超演奏してみたブースHP:超演奏してみた

公式HP:http://chokaigi.jp/

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