話題の記事

“ググれカス”はもう時代遅れ。「我々はフェイクニュースに負け続けている」とプログラマーが警鐘

 Googleは3月20日に “ジャーナリズムの未来を築く”ためのイニシアチブ「Google News Initiative」(GNI)を、3年間で3億ドルを投じ、立ち上げる計画を発表しました。

 これを受けて、4月2日の『小飼弾のニコ論壇時評』で、プログラマーの小飼弾氏山路達也氏が、終わりが見えない“フェイクニュース”との戦いはどうなっていくのか、「性善説」と「性悪説」の間で揺らぐシステムについて、語り合いました。

左から小飼弾氏山路達也氏

─関連記事─

ネットはバカと暇人のもの?←「バカはともかく、暇人が勝つプラットフォームであるのは間違いない」——東浩紀、津田大介、ひろゆきらが語るインターネットの現状とこれから

トランプ大統領の息子も騙された、ロシア工作部隊によるTwitterを使用した情報操作の手法を解説

「Googleや Facebookは世論を誘導することができる」――プラットフォームを独占する巨大IT企業に政治コメンテーターが警鐘


報道と商売は、相性が悪い

山路:
 最近、Googleの取り組みで、「News Initiative」に3億ドルを投入して、独自のニュースチームを立ち上げて、きちんと自分たちが信頼できるニュースを読者に提供する購読モデルを作ろうとしている。

小飼:
 その人たちをどうやって信用していいの? という、そこに繋がるんですよね。実は、この問題というのは、資本主義国のマスメディアが、みんな抱えてるんですよね。広告主に鼻薬を嗅がされたら、もうどうしようもないんじゃないかという。

山路:
 そもそもジャーナリズムとビジネスは、相性が悪い感じがしますね。

小飼: 
 そうなんですよ。その相性の悪さの部分をどうするのかなというのが、これも測定が難しい。例えば産経新聞だから信用できないのか? なぜ産経新聞がああいう形になったのか? といったら、やっぱり商売があってこそなんですよ。

山路:
 売れるからですもんね。

小飼:
 その通りです。実は産経新聞も褒めるべきポイントというのは、少なくともひとつあります。どの記事も最後まで、有料オプションとかログインとかなしで読めるでしょう?

山路:
 確か、産経新聞って最初にiPadアプリとか出していて、全部読めるようになっていたかな。

小飼: 
 そうそう。

山路:
 そういう取り組みは確かに先進的でしたよね。

性善説と性悪説、コストと安全

小飼:
 善意に頼るというのは、本当に悪手なんだよね。だけれども、悪意だけを前提したシステムというのは、高く付きすぎちゃうんだよね。

山路:
 ホワイトリスト方式か、ブラックリスト方式みたいなあったりしますけど。

小飼:
 そういうことではなく、今の世の中というのは、9割は性善説で動いてます。ですが、100%にしちゃったらもう、やられたい放題なので、時々、性悪説が入るんですけれども、すべて性悪説だと思って設計しようとすると、あまりにコストが上がっちゃうんですよね

山路:
 ネットの力によって、個人でも出来ることが、すごく大きくなっちゃったというのがあるのかな。

小飼:
 なんですけども、プロポーショナルではないですよね。例えば僕のフォロワーというのは、7万人くらいいるんですけれども、例えばTwitterなしに7万人の人に何かメッセージを届けられるかといったら、それはすごく難しいじゃないですか? そういったわけで、僕の情報発信力というのは、Webのおかげでものすごく上がっているんですよ。

 では、もし僕に、せいぜい700人くらいにしかメッセージを届けられない能力しかないと仮定したら、僕の情報発信力というのは、100倍になりましたね。まあ、それはさておき、僕の調査能力、あるいは分析能力というのが、それだけ上がっているかといったら、絶対に上がっていない。

 だから、僕のフェイクニュース量というのは、それで100倍になっているんですよ。みなさんもそうですよ。

山路:
 弾さんがちょっと間違ったヤツに「いいね」を押しただけでも、それがフェイクニュースになっちゃう。

小飼:
 そうそう。

山路:
 弾さんが思わずリツイートしちゃっただけでも(笑)。

小飼:
 そうそう。だから僕は、フォロワーも多いですし、認証アカウントですし、ユーザーの平均よりは、その辺りに気を遣ってはいると思いますけど、それでもせいぜい気を遣っている程度なんです。

山路:
 うんうん。「性善説で動ける世界が1番効率良いんだよな」(コメント)って、まあその通りですよね。

小飼:
 その場合には、出し抜こうというヤツがいると、性悪説警察がやってくるまでは、やられたい放題になっちゃうんですよね。まあでも、ネット自体が本当に性善説だったから、テイクオフ出来たんですよ

フェイクニュースに対する負け戦が続いている

山路:
 つまり、最初にネットを使ってたというのは、相当リテラシーが高いというか、そもそもアカデミズムの人たちや開発者が。

小飼:
 まさか悪用しないだろうという。

山路:
 そもそも彼らは、最初は商売にインターネットが使えるとも思ってなかったりしたわけですからね。

小飼:
 でも、アカデミアでしかインターネットが使われていないころにも、ウィルスは書かれましたからね。

 こういうのも何ですけど、ネタが256倍になったのだとしたら、ガセネタは6万5千536倍になったというのが、これまでの話という感じですよね。

山路:
 すごい倍数になってる(笑)。

小飼:
 だってGoogleですら、「ググれカス」が効かなくなってきちゃったもんね。

山路:
 いい加減なフェイクニュースや、曖昧な医療情報みたいなことが。

小飼:
 そうそう。ハッキリ言ってしまうと、フェイクニュースに対する負け戦が続いているんですよ。

─関連記事─

ネットはバカと暇人のもの?←「バカはともかく、暇人が勝つプラットフォームであるのは間違いない」——東浩紀、津田大介、ひろゆきらが語るインターネットの現状とこれから

トランプ大統領の息子も騙された、ロシア工作部隊によるTwitterを使用した情報操作の手法を解説

「Googleや Facebookは世論を誘導することができる」――プラットフォームを独占する巨大IT企業に政治コメンテーターが警鐘

「報道」の最新記事

新着ニュース一覧

アクセスランキング