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ギャラはどう変わった? 紙との違いは? 昨今のウェブライターを取り巻く環境について徹底討論【話者:中川淳一郎・ヨッピー・朽木誠一郎】

のんさんには、ヨッピーがギャラを支払っていた!?

ヨッピー:
 ちなみに、僕がギャラに関してすごく上がったと実感したのは、LINEに谷口さんという人がいて、すごい予算を使って広告記事を作ってらっしゃったんですよ。例えばライブドアニュースに載せるPR記事を作るためにすごい金額をかけて記事を作るとか。

朽木:
 有名でしたよね。

ヨッピー:
 そのお金を使ってすごく大掛かりなことをやるんですよ。

朽木:
 でも、すごいしょうもないことをやる(笑)。

ヨッピー:
 そうそう(笑)。土下座選手権とかね。

中川:
 谷口さんって面白企画のノウハウ本みたいな書籍を出しちゃったくらいだもんなぁ。

ヨッピー:
 僕はその谷口さんと一緒に仕事をしたことをきっかけにして、広告の予算と普通の記事の予算がまるで違うことを知るんですよ。一けた、二けた、予算が違う……で、これを上手に使う手はないかなぁと(笑)。やりたいけどお金がかかるから諦めていたような企画も、広告と絡めればいけるんじゃないかな、とか。

中川:
 のんさんの記事【※】とかもそうだよね?

※広島県呉市の観光スポットや名物を紹介するPR記事で女優・のんを起用

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ヨッピー:
 そうですね。僕がクライアントの広島県からお金をぶんどって、そのお金をのんさんにお渡しするという……。

中川:
 えっ? ちょっと待って、ヨッピーさんがお金を渡したの?

ヨッピー:
 そうっすよ! 実際には媒体からですけど、僕はその媒体の編集長でもあるので。

中川:
 えっ!? そんなことあるの?

朽木:
 ヨッピーさんは特殊なケースで、企画から携わるからですよね?

ヨッピー:
 はい。僕はライターでもあり、プロデューサーでもあるというか。「予算これだけあるからなんか面白いことやって」みたいに丸投げされることも少なくないですね(笑)。

朽木:
 一般的なライターの仕事の範疇かと言われると、それはちょっと違うような気がしますね(笑)。

 

ウェブ記事最大の恩恵~潤沢な予算を誇る広告記事

ヨッピー:
 SPOTで企画した記事『「エヴァ」のシンジ君ってヘタレ扱いされてるけど、実際どうなの?検証してみた』とか、めちゃくちゃお金かかってるんですよ。昔のウェブ記事の予算感だったらあんなにお金を使えませんからね。

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「エヴァ」のシンジ君ってヘタレ扱いされてるけど、実際どうなの?検証してみた(SPOT(スポット) -旅行・おでかけコミュニティ-)

朽木:
 ただ、採算度外視であんなことをされると、後ろに続いているウェブライターたちはつらいと思います(苦笑)。

ヨッピー:
 まぁまぁ(笑)。のんさんの記事にしたって思いついちゃったんだもん。彼女を出せばバズるなって。「この世界の片隅に」がヒットしてたり、のんさんは呉市で撮影した写真集も出してるので広島と親和性がありますし。そんな背景もあってクライアントさんが広島県だったので交渉んですよね。もし予算確保できないって言われたら、自腹を切ってでも絶対にのんさんを出すぞって。

中川:
 今って、ライター業界が「紙よりもウェブの方がカッコいい」という風潮があると思うんですよ。実際、その流れはオレ自身も感じているくらい。小学館、新潮社で仕事をしていてもウェブに対する期待感は高まる一方なんですよね。
ジャーナリストが生きていくにはつらい時代になったとも言われていて、これまで紙や書籍を主戦場にしていた人たちは苦心している実情があります。朽木さんはウェブでジャーナリスティックに記事を書いているわけだけど、そこらへんはどう考えています?

「紙でしか学べないこと」とは何か?

朽木:
 個人的には、取材するとか、調査するとか、本質的には紙でやっていたことと同じことをウェブでやっている、という感覚でいるんです。アウトプットが変わるだけで、ネットというアウトプットには、ネット独自の方法がある、という。同様に、紙でしか学べないこともあるので、それは学んでおいた方がいいと思います。

中川:
 紙でしか学べないことって何でしょう?

朽木:
 僕は雑誌ライターを2年くらいやっていましたし、今でも雑誌の連載も持たせてもらっています。ウェブでは例えば800文字という文字制限がある中で原稿を書くことがあまりありませんが、紙ではスペースが決まっていますから文字制限があります。800字の中で伝えたいことを書き切り、なおかつ読み応えのあるものにしなければいけないというのは、紙ならではでしょう。
 これ、やってみると、僕にとってはすごく難しかったんですよね。短い文章に伝えたいことを凝縮することができたら、もっと長く書けるときにはもっと多くのことを伝えられるわけですから、書き手としてスキルが身につくことは間違いないと思います。

ヨッピー:
 人材のレベルは、確実に紙の方が高いと思います。朝日新聞、読売新聞にしても人材の質が高い。新聞社の人って本当に細かいところまでよく見てるなって思います。そういう古いメディアには基本的に育てる環境がありますし、基礎を学ぶなら最初は紙かなと思います。

朽木:
 だから僕も編プロ(編集プロダクション)に入ったんですよね。最初にネットメディアに入って「このままだとやばいな」と感じて、学ぶために業界で信頼されている編プロに行きましたから。

ヨッピー:
 でも、応用になってくるとウェブの方がいいと思うんですよ。ウェブの面白いところはバスれば、どんどん反応が来ること。紙だと読者の反応がいまいち分からないため、自分にフィードバックしづらいだろうなって。書いて発信した後にどれくらい読まれたのか、どんな反応があるのかが分かれば、次回以降に活かせることも大きいと。

朽木:
 あと、修正に対しての意識も違いますよね。

ヨッピー:
 たしかに誤字に対してはそこまでナーバスになっていないかも。公開した後に指摘されることがしょっちゅうあるもん。本来ダメなことは分かっていますよ!

中川:
 ウェブは直せますもんね。紙だったら訴えられちゃう可能性だってあるわけで。

ヨッピー:
 ネット専業でも食べていけることはできると思うけど、基礎体力をつけることでその後の伸びしろにつながるとなれば、やっぱり紙は大切ですよ。

朽木:
 はい、それは私も思います。一番良いのはどっちでもできることだし、どちらからも求められることですね。

中川:
 基礎体力をつけるには、訴えられることが一番手っ取り早いですよ。二度とミスはできないという責任や自覚が一気に芽生えるから!(笑)

ヨッピー:
 (笑)。IT企業の悪口とか結構言っているのに、訴えられないもんなぁ。

中川:
 それは図星だから相手も訴えないんだよ。ちゃんと名誉棄損しないとダメだよ(笑)。

ヨッピー:
 どんなアドバイスですか!

朽木:
 常に、自分の発信で誰かが傷つくかもしれないという気持ちを持ちながら仕事はしていますけどね。

中川:
 そうそう! 

ヨッピー:
 でも、稼げるといったらこれからはウェブでしょうね。

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