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俳優・斎藤工が監督を務めた「13年消息不明だった父の葬儀」がテーマの映画『blank13』、元は“コントの企画”だった

 俳優の斎藤工さん【※】が監督を務めた長編映画作品『blank13』が2月3日より公開されました。13年間消息不明だった父と家族の物語で、放送作家である、はしもとこうじさんの実話を基にした作品です。

 映画解説者の中井圭さん、女優の小林涼子さん、放送作家の鈴木裕史さんが出演する映画情報番組「シネマのミカタ」では本作品をピックアップ。スタジオには齊藤さんがゲストで登場し、映画を作るきっかけや、主演俳優の高橋一生さんとの秘話、海外映画祭での観客の反応について語りました。

※監督名義は『齊藤工』を使用。本記事では以下、齊藤と記載しております。

『blank13』
(画像は公式サイトより)

当初は芸人だけのコント企画だった

左から中井圭さん、小林涼子さん、齊藤工さん、鈴木裕史さん。

中井:
 ここに至るまで短編を何本も撮ってきて、僕らとしては「長編はいつ撮るのかな、いつくらいに出てくるんだろう?」と期待しながら待っていたんですが、長編を作るきっかけはそもそも何だったんですか。

齊藤:
 映画企画ではなくて、原作者のはしもとこうじさんはバラエティの放送作家【※】なんですよ。実は最初はコントの企画だったんです。彼からご家庭の話を雑談の中で聞いていたら、「お父さんがタバコを買いに行ったまま13年間帰ってこなくて」という話から……。

※はしもとこうじ
大阪府寝屋川市出身。現金輸送車勤務を経て、2001年にルミネtheよしもとの開館と当時に劇場の座付き作家となる。吉本新喜劇の脚本家を経て放送作家に転身。

鈴木:
 最初はコントだったんだ!?

小林:
 しかも結構重めですね(笑)。

齊藤:
 この物語はそこも描かれてはいるのですが、そこがメインではなくて……誰も来ないだろうと思って、形式上あげた格安の葬儀に来た謎の人たちのスピーチの話なんですよね。息子が親父の知らない側面をそこで知っていくんですよ。

 そのシチュエーションのコントだったんです。あの葬儀の空間で笑っちゃいけないじゃないですか。その縛りがある中で、芸人さんだけのコントを企画していたんです。

鈴木:
 笑いの基本で「緊張と緩和」というのがあって、それこそドリフターズの「もしもシリーズ」【※】でお坊さんのネタとかがあるくらいで、厳粛な空気の中でそれを壊すと、それが笑いになるという意味では、お葬式はコントの定番といえば定番だし。

※もしもシリーズ
フジテレビ系列で放送されていたバラエティ番組『ドリフ大爆笑』にて披露されていた、名物コント。「もしも……◯◯な☓☓があったら(いたら)……」というフレーズのコントで、ストーリーは主人公・いかりや長介が、まともでない人物に出会ってひどい目に遭わされるのが主流。最後には、呆れ果てた、いかりや長介がカメラ目線で「だめだこりゃ」と言う締めのギャグで終わる。

齊藤:
 普段だと全然琴線に触れないのに何かがおかしいとか。祖母の13回忌にうちの母が喪服の下にシャツを着ていたんですよ。そのシャツの下が岐阜の郡上おどりのバックプリントのシャツだったんです。母が前傾姿勢になると、僕ら全員が葬儀場なのに祭りの情報が来るっていう(笑)。

一同:
 (笑)

齊藤:
 そういうあるあるを結構集めて映画にしました。

中井:
 工くんは、これまで多くの作品に出ているし、現場も経験しているし、短編も作っているじゃないですか。映画的素養は特にないけれども、好きな人を集めてやってみた結果、できたこととできなかったことがあると思うのですが、そこはどうですか。

齊藤:
 世代が近いというのがストロングポイント(強み)になっていて、僕の年代は90年代に思春期を過ごしているんですよ。90年代のカルチャー、同時多発的な『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だったり『トレインスポッティング』だったり……。

 ああいうむき出しのカルチャーが多発した時代に多感な時期を過ごしていたということで、会話の中で出てくるわけではないんですが、共通言語が多かったなとか、結果としてテレパシーではないですが感覚的に、説明せずに共有できるということが、特に編集段階で感じました。

目指したのはガス・ヴァン・サント作品のカメラワーク

小林:
 スタッフさんでそういう方を集めるのって、日本だと10人いると8人くらいは好きな人で、2人くらい不必要な人が入っちゃってるじゃないですか。関係性的にどうしてもここに声をかけなきゃみたいなのがあると思うのですが、そういうのはなかったんですか。

齊藤:
 ノーコメントです(笑)。

一同:
 (笑)

齊藤:
 でも僕も同世代でノリだけで突っ走れたかというと、そうではなくて基礎を構築した上で壊していくというか。何もないところで荒唐無稽なことをしていくということではなくて、基礎固めみたいなものが同時にできたチームなんですよ。

 なので、仕上げに関して同世代というのが効いてきたな、ということなので、絵に関しては堅いショットもあったりしました。関わってくれた方たちには、作業的な人が1人もいなかったので。

小林:
 うらやましい現場です。

齊藤:
 嬉しかったですね。

中井:
 本来監督がやる裁量の範囲と比べて、工くんがやっていることって超えているのかなと思うんだけど、企画が映画になっていくにあたって工くんが果たした役割ってどういう感じなの?

齊藤:
 僕は準備段階で終わりました。全て大丈夫だと思ったのはキャスティングです。現場で「ああしてくれ」っていう指示は、導線以外は出してないですね。

鈴木:
 過去の作品の手法とか、この監督のこういうスタイル、この俳優さんのこういうやり方みたいなもので、オマージュというのかは、わからないのですが……。

 こういうやり方を自分が監督になったときにやってみたいなとかは……。

齊藤:
 めちゃくちゃありますね。絵コンテも描けないし、Vコン【※】も撮れないし、なので自分の好きな映画を棚から引っ張り出してVTRを流してスマホで撮って、「このシーンはこの感じ」って言うと、わかりやすいというか伝わりやすいなと。

※Vコン
Vコンテ。映画、アニメなどの映像作品の撮影前に用意されるイラストによる表であり、映像の設計図「絵コンテ」を映像で作ったもの。

 早坂さんというカメラマンさんと話をしていく中で、奥行きのあるショットを縦位置で多く描こうというのがあったのですが、どのショットも横じゃなくて縦を意識しているというのがありました。

 全体のトーンとして、どこを目指すかという中で、ガス・ヴァン・サント【※】と仕事をしていたハリス・サヴィデスというカメラマンがいて、初期の頃から後期の作品までやって、そのあと何本か撮って亡くなってしまった人がいて、その監督の質感というのも共通言語でありました。

※ガス・ヴァン・サント
アメリカ合衆国の映画監督。2008年にはゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクを描いた『ミルク』が公開された。彼自身、ゲイであることを公表している。

 僕がVTRを撮って送ることしかできなかったので、それをキャッチしてくださいました。それは見てきたものの蓄積かもしれないと思いましたね。

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