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「技術で社会はマシになるが、人は技術を悪用する」仮想通貨580億円事件を受けてコインチェックアプリ規制の是非について討論【津田大介×東浩紀×夏野剛】

ゲーム感覚で気軽すぎるアプリの問題点

東: 
 だから俺は、アプリの問題だと思うんだよ。俺は、楽天証券もやっているんだけど、楽天証券のアプリもあるわけよ。楽天証券のアプリと、考え方が違うもん。楽天証券のアプリってiSPEEDって言うんだけど、コインチェックに比べるとめっちゃスピードが遅いわけよ。

津田:
 (笑)

夏野:
 ただ、スピードが早かったのは、ノミ行為だったから。

東:
 そうなの。楽天証券の場合は、アプリが立ち上がるんだけど、購入する時に、もう1回ログインしないといけない。アプリなのに、もう1回ログインって……。

夏野:
 購入の時に、もう1回パスワード入れる必要がある。それは全部仕様でしょ?

東:
 でもコインチェックのほうは、夜中目がいきなり覚めても、立ち上げていつでも売却できるんだもん。

津田:
 (笑)

東:
 アプリの作り方もやっぱりおかしいのよ。フィンテックとかの話じゃないよ。絶対になんかおかしい。

夏野:
 まさにそこなの。野放しになってたってこと。

津田:
 でも、考え方としてはワンクリックとかで、できることこそがインターネットテクノロジーの便利さでもあったわけでしょ?

夏野:
 いやいや。でもそれを本当にやるかどうかは、ソーシャルアダプテーション(社会が新しい技術にどう適応していくのか)。

東:
 これ、どうなんだろう。わかんない。誰かいろいろな証券会社のアプリを実際に取引してみて比較するべきだと思うんだけど。

夏野:
 いや、証券会社は、いちいちそれを報告しなくちゃ。

東:
 そうだよね。楽天なんだからおそらくまだ便利な方なはずで……。

夏野:
 まあ、いまどきみんなギリギリ狙ってるから同じだよ。

東:
 でも、このコインチェックのアプリを入れたときの落差ってすごいよね。

コインチェックアプリの取引はFX取引に近い

夏野:
 ちなみに言うとFXはそっちに近いんですよね。

東:
 そうでしょうね。

夏野:
 ところがFXは為替だから母数がでかいんで、そんなの一部の投機マネーじゃ動かないんだよね。

東:
 なるほど。

夏野:
 だから、ものすごい被害者は出てこないんだけど、その代わりレバレッジの倍数が無制限に行われてたから、そこは金融庁がちゃんと入って下げたんです。

津田:
 だから、それで損しちゃった人はもう少ない金額で、上がる人はいけるけど、逆に少ない人からしたら……。

夏野:
 それはそういうもんだから。ハイリスクハイリターンだからね。

津田:
 なるほど。

夏野:
 でも、それも行き過ぎてたということで、倍率を制限してやってきたわけなんだけど、これに関しては……。

東:
 仮想通貨も、上級者というか、こういうのばっかりやっている人だと、取引所をまたいでやってるわけじゃん。こっちの取引所のレートと、こっちの取引所のレートで、こう動かして、戻したりとかしてるんでしょ?

夏野:
 普通は、その取引所のレートは共通化されてないはずなのよ。

東:
 共通化されてないんだよね?

夏野:
 なんでかというとノミ行為だから。

東:
 めちゃめちゃだよ。

夏野:
 このコインチェックの犯罪性というのは、僕は絶対にあると思うんだよね。だって実際に買ってないんだもん。だから取引所ですらない。ノミ行為をやっている。

東:
 そうなんだよね。

あなたの自己実現を支援するバズるサイト『STORY.JP』

東:
 みんなが自分の個人史を投稿するというプラットフォームがあって、そこから『ビリギャル』という、成績がビリの女の子が慶應義塾大学に受かったというベストセラーが出ているんだけど、その「STORYS.JP」というサイトを作った人がコインチェックの和田晃一良さんなんだよね。

津田:
 それがコインチェックになっていく。

東:
 これ僕ね、すごく意味が深いことだと思っていて、要は、和田さんは「あなたの自己実現を支援するバズるサイト」を作った人なんですよ。そのノウハウが完全にコインチェックにも仕込まれてる。コインチェックは本質的にはフィンテックじゃないわけ。

夏野:
 まったくそうだろうね。やばい。

東:
 こういうことが起こるということを、経済学とか技術者は考えないじゃん? これは、まったく違うところから来ているわけですよ。

夏野: 
 考えない。なるほど!

東:
 だからコインチェックは、まったく違うんだよね。フィンテックとかそういう発想で作られていなくて自己実現で作られているんですよ。「あなたの輝かない人生が一発逆転しますよアプリ」なんですよ。

津田:
 このスマホ一台で。

夏野:
 だから「億り人」が実際に出ているんだ。

東:
 そういう意味で僕はコインチェックのアプリは本当によくできていると思った。これは自己実現のために特化しているサービスだから。これで投資とか金を増やすとか安全性とかということじゃないわけですよ。

夏野:
 なるほど。「夢を実現する!」今日は何か深いね。

仮想通貨の問題点は社会の問題と一緒

東:
 仮想通貨の問題って逆に言うと……。

夏野:
 今の日本社会についての、社会問題。

東:
 そう。仮想通貨の問題も社会問題になっていて、つまりコインチェックに流れ込んできているのは、フィンテックじゃないんですよ。俺は今日、それが言いたかったことなんです。コインチェック騒動を考えるためには、フィンテック以外の視点を持たないと

夏野:
 本当にそうよ。経済学的に言えばやっぱり、資産の偏在であり、テクノロジーから言えば、ある一定のところにあまりに価値が集まりすぎたがためにハッキングの対象になったということ。

東:
 そうそう。

夏野:
 いやあこれは深い。

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