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絵本からプラモデルの説明書まで “十冊十色”な本の面白さ「絵本は子供に読み聞かせるつもりで読むのが楽しい」

 2月4日に放送された『岡田斗司夫ゼミ』にて、岡田斗司夫氏が最近読んだ本の中から、「特に推薦したい本」の紹介を行いました。

 絵本屋大賞を受賞した『ノラネコぐんだんパンこうじょう』という絵本から、『紅の豚』のプラモデルの説明書まで、ありとあらゆるジャンルの本について解説。特に絵本については、「この辺を子供が面白がるんだろうな、と考えながら読むのがおすすめ」と熱弁しました。

岡田斗司夫氏

大人も楽しめる絵本『ノラネコぐんだんパンこうじょう』

岡田:
 もう、僕の中での最近一番のお薦め本は、絵本屋大賞を受賞した『ノラネコぐんだんパンこうじょう』という、工藤ノリコさんという方が描いた絵本です。

 白泉社という少女漫画をよく出している出版社から出ているので、絵本でありながら、わりと漫画的なセンスがあるんですよ。すごく面白いです。

ノラネコぐんだん パンこうじょう─工藤 ノリコ・著(画像はAmazonより)

 『ノラネコぐんだんパンこうじょう』をはじめとした、“ノラネコぐんだん”シリーズの絵本は、すでに5、6冊出ているんですけど、全部同じパターンの話なんです。

 「ワンワンちゃんという店主が経営するお店を羨ましがったノラネコたちが、夜中にこっそり店の中に侵入するんですけども、途中で失敗して、最後はワンワンちゃんの前で正座させられて反省する」という、まったく同じパターンなんですけど。作品ごとに少しずつパターンをずらしているので、この5冊ある本で、まったく飽きないんですね。

 もちろん、大人が読んでも楽しめる絵本なんですけど、やっぱり、僕が思うに、子供に読み聞かせるつもりで、「この辺を子供が面白がるんだろうな」と考えながら読むのがおすすめですね。

 例えば、毎回毎回、ちょうどストーリーの3分の2の辺りで「ドカーン!」という大きい音を出して、子供を笑わせるシーンがあるんです。次に、「そんなことをしてもいいと思ってるんですか?」「思ってません」という、ラストの説教のシーンでは、それまでノラネコ側に感情移入して聞いていたはずの子供が、そこでは、ワンワンちゃんと一緒にノラネコたちに説教をする気分で聞くはずなんですね。

 そういう子供の目線を考えながらの読み方をしても楽しいと思います。

宮崎駿への壮絶な恨み節『私の「ルパン三世」奮闘記: アニメ脚本物語』

 次に紹介したいのは、アニメ版『ルパン三世』の制作現場について書かれた『私の「ルパン三世」奮闘記: アニメ脚本物語』という本です。

 僕はこの本を、『ルパン三世 カリオストロの城』の話をする時の資料として買ったんですけど、この本、Amazonのレビューを見たら、点数がメチャクチャ低いんですね。なぜかというと、この著者の人は、宮崎駿や高畑勲が大嫌いな人なんですよ。

私の「ルパン三世」奮闘記: アニメ脚本物語─飯岡 順一・著
(画像はAmazonより)

 本の中でも、「俺たちが最初に作ったスタイリッシュで都会的な『ルパン三世』を、あいつらは乗っ取りやがった! 『カリオストロの城』なんて、本当のルパン三世じゃない! ルパンというのは、もっとキザでカッコいいんだ! そうやって作ったはずのシリーズなのに、後から入ってきた宮崎駿たちがメチャクチャにしやがった! 俺も最初は劇場版に参加してたのに、こいつがいたおかげで……!」みたいなことが散々書いてあって、とにかく、すごい恨みを抱いているんです。

 そういった恨み言ばかりな内容に加えて、この人自身に、あまり才能があるように見えないということが、やっぱり読んでいる人間にもわかってしまうわけですね。だから、Amazonでの評価もめちゃくちゃ低いんですけれども。

 ただ、Amazonでの評価が低かったとしても、これは貴重な“現場でのアンチ宮崎の意見”なんですよね。本は読みにくいんですけども、合間合間に入ってくる宮崎駿の恨み節とか、あとは押井守に対する恨み節もあるんですけど、それが面白いんですよ。

 例えば、『ルパン三世』の劇場版を企画したころの押井守は、ストレスで円形脱毛症になっていたそうなんですけど、本の中では、もう鬼の首を取ったかのように、「押井守にはハゲがあった! だから、いつも頭を隠しているんだ!」みたいなことが書いてあるんです。

 まあ、「オッサンの僻み恨みは、みっともねえな」と思ったんですけれども、そういう意味ではわりと楽しかったです。

説明書のためだけでも買う価値のあるプラモデル

 これは、本の紹介としては、ちょっと反則なんですけども。ファインモールドから出ている『紅の豚』のプラモデルの中に入っている説明書が、すごく良くて説明書のためだけでも買う価値があるんです。

 説明書の半分以上が、びっしりと文字で埋まっているんですね。「どの位置を改造したのか?」とか、「現実の飛行機とどこが違うのか?」みたいな、映画の中で語られなかったことの説明が延々と書いてあって、メチャクチャ読み応えがあるんです。

ファインモールド 紅の豚 サボイアS.21 試作戦闘飛行艇 ポルコ立像付 FG1 1/48スケール プラモデル(画像はAmazonより)

 例えば、『紅の豚』の劇中に「アメリカ人のカーチスには、シュナイダーカップでしてやられた。でも、このエンジンだったら、俺たち勝てるぜ」というセリフがあるんですけど、これはどういう意味だったのか? とか、フィオはポルコの赤い飛行艇のどの部分を改造したのか? という解説が、すごく細かく書いてあるんです。

 しかも、それらのすべてはプラモデルにも反映されているという、メチャクチャ良いキットなんですけども。この説明書を本として見ても、十分に面白いので、ここで紹介してみました。

面白すぎる『サピエンス全史』

 まあ、これは有名な本だから、読んだ人も多いと思うんですけども、『サピエンス全史』です。

 この『サピエンス全史』は、面白過ぎるんですよ。ただ、ちょっと読み方にコツがあるというか、ポイントポイントで、一旦、読み進めるのを留まって考えて見る必要があるんですね。

 僕が読んでいる限り、2ページに1回、ものすごいことが書いてあるんですよ。だけど、そんなふうに、1見開きに1回すごいことが書いてあると、途中で「すごい!」という感覚が麻痺しちゃうんですよね。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
(画像はAmazonより)

 『サピエンス全史』みたいな本って、「買ったけど積んでる」とか、「最初だけ読んだ」という人が多いと思うんですよね。その理由は、この本の面白さを知るためには、積み上がってくる話を解釈する必要があるからなんですよ。

 どういうことかというと、例えば、『アメトーーク!』の読書芸人の時に、カズレーザーさんがこの本を紹介してたんですけど、そこで「最初のネアンデルタール人の所が一番面白かった」っていうふうに話をしていたんですね。

 人類というのは、かつて、いくつもの種があった。僕らはそんな人類の中の一種である“サピエンス種”なんですよ。そのサピエンス種以外にも、“エレクト種”とか、“ネアンデルタール種”とか、いろんな種があって、僕らは、その中の殺し合いに勝ったチャンピオンとして、唯一残っている人類なんですよね。

 「じゃあ、なぜ僕らの祖先は、他の種族を殺すことができたのか? 他の種と何が違ったのか?」というふうに話が進んでいく辺りが一番面白かったと言っているんですけど。

 僕なんかは、もうちょっと後に出て来る「農業革命というのが一体なんだったのか?」というパートが好きなんですけど、これまでの自分が持っている人類観や文明観というものを、根本から覆すような話が、シンプルな証拠と共にバンバン出てくるところが、すごくゾクゾクして面白かったんですね。

 なので、いつかこのニコ生でも、ちゃんと語りたいと思います。

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