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「独裁国家の核保有は日本にとって悪夢」──北朝鮮核武装へのシナリオに自民党議員らが警鐘

 韓国が米軍の高高度防衛ミサイルTHAAD(サード)を配備したことを脅威とみなしたことによって、中国は韓国への団体旅行を禁止するなど事実上の報復措置を講じ、韓国の旅行・小売業界に大きな打撃をもたらしました。昨年、中韓両政府は両国関係の改善を目指すことで一致、これにより日米韓関係の行方が心配されています。

 自民党参議院議員の山本一太氏が番組ホストを務める「山本一太の直滑降ストリーム」では、拓殖大学特任教授の武貞秀士氏がゲストで登場し、現在の韓国の経済状況を挙げ「中韓は関係修復に踏み込まざるを得ない」と前置きをし、その上で日本は2月9日から開催される平昌五輪を機会に「積極的な国益を踏まえた外交をすればいい」と提言しました。

左から山本一太氏、武貞秀士氏。

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中韓の関係修復で予測されるシナリオ

武貞:
 10月30日、中国政府が先に発表したんですけれども「中国・韓国関係修復のための合意」というのをしたんです。これは先に中国がバラしちゃって韓国政府が慌ててそれを追認したんですけれど、「韓国、アメリカ、日本は将来同盟関係にはならない」。もう一つは「韓国はアメリカのミサイル防衛システムの中には入らない」。もう一つは終末高高度防衛ミサイルTHAADの追加配備。

 今は6基が運用されてますけれども、「7基目以降はそれを配備させない」この三つの不可能の“三不”の約束をしたと。これは一筆書いたも同然なんですよ。これを「追認約束しました」ということを、韓国の外務省の高官までがきちっと発表しました。

 もう一つ付け加えなければならないのは、韓国は今動いてる6基のTHAADミサイルを撤去することを約束したらしいです。中国は「7基目以降は配備させませんと説明しているのにおかしいじゃないか」「撤去すると約束したじゃないか」と噛み付いたわけですね。

THAADミサイルの発射の様子。
(画像はWikipediaより)

山本:
 約束したんでしょうか。

武貞:
 約束した可能性はあります。中韓の高官の中での秘密協議ですからわかりませんけれども、いずれにしてもすごく大胆な約束を中韓の関係修復のためにしてしまっていると思いませんか。中国の韓国への団体旅行客の再開がはじまった。韓国にはアメリカとの同盟関係を薄めてでも、経済再生のための唯一の選択なので、中国・韓国の関係修復に踏み込まざるを得ない。中国というのは、中韓関係だけではなく、中国との約束というのは北朝鮮問題にも絡んでしまいます。

 中国は特にこの数ヶ月の間は対話を通じてしか北朝鮮の核問題は解決できないということを国連の安保理でも、あるいはトランプさんが北京を訪問したときも、ティラーソン国務長官にも中国は説明してきています。「対話以外の軍事力をちらつかせて、北朝鮮を脅かすことはやめなさい」と言ってきている中国と韓国が軍事問題でも、「アメリカと日本との同盟関係に入りません」と中国に約束しちゃっている。

 韓国、日本、アメリカが政策の協調をしてこそ北朝鮮の核問題は解決できるんだけれども、我々の心配よりもはるかその先、我々が本当にこれでいいのだろうかと思う方向に韓国政府はいってしまっているんです。

山本:
 北朝鮮の脅威に対抗するための安全保障上のことも追加配備しないと約束してしまった。それはある意味で言うと韓国経済は今で言うとリスク分散を図っているけれど、輸出の20%以上が中国。でも、その中国に化粧品を止められ、韓流スターの出演を断られ、団体旅行を止められたらGDPが0.5%減りますよね。こういうことに、どうして気づかないのか。

 武貞先生の話を聞いていると、これからのシナリオはかなり悲観的になってしまう感じがします。結局我々が非核化をしなければいけない。あの北朝鮮という独裁国家が核を持った国としてここに出現するというのは日本にとっては悪夢なので、そこを回避しないといけないということでやってきたわけですが、日米韓の圧力は今の韓国政権が離脱していくと、明らかに日米が描いているシナリオと違う方にいくと思うのですが。

武貞:
 違う方にいく可能性は十分あります。文在寅(ムン・ジェイン)【※1】さんが今までの政権と違って日韓関係についても、はっきりとした政治理念を持っている人で、「1948年建国のときに遡って日韓関係をリセットしましょう」とまで言っているんですね。これは非常にはっきりとした日本離れを試みる政権。その政権が中韓関係修復を非常に重視し、北朝鮮に秋波【※2】を送りはじめて、そして今現在に至っている。

※1文在寅
第19代韓国大統領。2012年12月19日の大統領選挙では朴槿恵(パク・クネ)に惜敗したが、朴槿恵の弾劾・罷免に伴う2017年5月9日の大統領選挙で当選し、同年5月10日に大統領に就任して在任中。

※2秋波
こびを表す目つき。色目。

 その文在寅政権と日本、アメリカの政策協調が大事だと思いますけれども、なかなか文在寅さんに伝わるかどうか……短期的な視点で、中韓関係を重視したり南北対話をやろうとしているのではなくて、彼の政治哲学でもあるんでしょうね。そこで日本とアメリカはさらに緊密な協力をしながら、今までは受け身であったのですが、もっと積極的に朝鮮半島の政策を考えるべきだと思います。

平昌五輪を機会に日本は積極的に国益を踏まえた外交を

武貞:
 今回平昌五輪の開会式に安倍総理が行くことが決まりましたが、これはいいことだと思います。自民党の中で反対が随分あったと。安倍総理は行って「日韓関係大事にしましょうね」「韓国、日本、アメリカの政策協調大事ですよ」と、これも当然仰るでしょうし、北朝鮮の代表の方がどなたが来られるかわかりませんけれども、金正恩委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)さん、政治局員候補ベスト37人のうちの1人の政策に影響のある人が来るかもしれない。

山本:
 誰が代表になるか話題になっていますもんね。

武貞:
 李洙墉(リ・スヨン)さんという外交の総責任者に、私は昨年の9月に3時間半、懇談しましたけれども、あの方が来るかもしれない。いずれにしても「2020年の東京オリンピックに是非来てくださいね」「スポーツはいいですね」とニコッと総理大臣が北朝鮮の人に語りかけてもいいんじゃないですか。あまり日朝が接触したりするとアメリカの気持ちがおさまらない。

 韓国も気分が悪いことがあって、それを忖度して日本はそう軽々しく北朝鮮との対話をやらなかったけれども、今は南北がこういう状態で、南北が「やりましょう」とやっているでしょう。

 トランプさんだって1月9日南北協議が終わった翌日の文在寅さんとトランプさんの電話で、「金正恩さんに条件が整えば会ってみてもいいよ」とトランプさんが言っている。

 これもアメリカと韓国の立場を心配して、日朝はそんな軽々しく接触してはいけないなんて思う時代は終わったわけだから、積極的に拉致の問題もそうだし、核とミサイルの問題も、直接北朝鮮の責任あるポストにいる方がもし平昌に来られるのであれば「ちょっと話しましょう」と言ってもいいと思うんです。

武貞:
 そういう意味で今回、安倍総理が平昌に行かれるのはいいことだと私は思ったんです。いずれにしてもこういうチャンスを活用して積極的に日本が国益を踏まえた外交をすればいい。アメリカのペンス副大統領も来られる。

 中国の政治局員も来る。スポーツを通じた信頼醸成をまずやって、スポーツを通じて文在寅さんにも「2020年東京オリンピックもありますよね」「これからスポーツ交流もしっかりと日韓でやりましょうね」ということを語りかけながら、それをきっかけとして安全保障分野でも「韓国、アメリカ、日本の協調が大事ですよ」と言うことがあってもいいわけです。

 そういう外交をする機会があるわけだから「平昌に行ってはいけない」と、「慰安婦問題のいろいろなことで日韓が緊張しているから今は行ってはいけないよ」と言うのは、あまりにもケツの穴が小さい。

山本:
 私は日韓関係重視派なのですが、総理が平昌五輪に行くことには慎重です。まずこの話が持ち上がったときに総理は行くと決めていると思ったので、賛成できないと書いたのは、日韓慰安婦合意は相当な政治的なリスクをかけてやったんですよ。

 こんな対抗措置もとらずにスムースに行けば、日本側は慰安婦合意を破棄してもしょうがないんじゃないかと、そういうメッセージが伝わってしまうのではないかというのを恐れていて、欧米のジャーナリストたちがみんなそう言うので、「そんなことはない」と。「あの慰安婦合意は日本としても相当の覚悟でやったんだ」と。

 それが心配です。もう一つは国際社会の中で不可逆的なことをやって、こうやってスムースに行くというのは、スポーツと切り離すとはいえ、国際社会からの見え方も考えたほうがいいと。私は行かない選択肢もあると思っていて、その代わり総理が行くにしても反対を押し切って行ってもらわないと……。

 まるで何もなくスムースに誰も反対しない中で行くのはおかしいと思って。最初に声をあげて「慎重にやってほしい」と。決めたからには、いろいろな外交をこの舞台でやってもらいたいと思うんです。確かに了見が狭いというのはわかるんですけれども、行ったからといって文在寅政権の強さは変わらないですよね。本当に感謝はされないですよね。韓国側は当然だと思うと思うんですよ。

 今の韓国のメディアを見ていて、よく読むと総理がリスクをとってきたという感覚がない。結局感謝されない。文在寅政権の政策も変わらない。確かに行かなかったらどうなるのかというのもあるし、いろいろな意味の外交の装置として使うというのはあると思うのですが、やはり反対意見もないといけないと思っています。

 平昌五輪の話はともかく、そうすると我々は北朝鮮を非核化にもっていかなければいけない。憲法みたいなものを作って、「核大国を作る」と北朝鮮は言っているのだから、こちらも引かないと。しかしそういう中でも非核化にもっていきたい。今の流れを聞くと、本当に北朝鮮の核保有を認めて、その上で抑止しないといけないというスーザン・ライス元国際連合大使が言っているようなシナリオになってしまうのは避けないといけないと思うのですが、先生はどうお考えですか。

武貞:
 核保有を認めるわけにはいきません。特に日本は長崎、広島であんな辛い思いをした世界で唯一の国民ですから、認めるわけにはいかない。ですから「認めて」という議論自体が間違っているんです。核放棄をするという約束を前提として、「日朝で会話をしましょう」と言っていると、どんどん軍事技術が北朝鮮は向上していって、ワシントンやニューヨークに核弾頭が落ちるところまで来たわけですよね。ですからむしろ丁々発止、核を使わせない。

 そしていろんなことを絡み合わせながら、スポーツ交流もあるし、他の政治交流もあるし、「拉致問題の調査報告を受けます」ということで、連絡事務所を平壌に作ってもいいと思いますよ。そういったプロセスの最後のところに、核放棄の約束というのをもっていく意外にないと思います。

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