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トランプ大統領に記憶障害!? 「同じことを何度も言う」「合意をその日の夜に反故に」…米政権の暴露本『炎と怒り』をジャーナリストが解説

 ドナルド・トランプ大統領は1月30日夜(日本時間同月31日午前)、これまでのアメリカの現状とこれからの主要な政治課題を連邦議会両院の議員に説明する一般教書演説を行いました。

 ニコニコ生放送では一般教書演説の様子を「トランプ大統領 「一般教書演説」生実況」と題して中継し、その放送の中でジャーナリストの神保哲生氏が、2月に刊行されるトランプ政権の暴露本『炎と怒り』をピックアップ。なぜ著者は政権の内情を自由に取材できたのか、出版に至るまでの裏側を解説しました。

『炎と怒り――トランプ政権の内幕』
(画像はAmazonより。)

※本記事は2018年1月31日に放送された「トランプ大統領 「一般教書演説」生実況」の内容を元に一部再構成したものです。

※早川書房にて先行公開されている『炎と怒り――トランプ政権の内幕』第一章前半はコチラ
トランプ陣営は大統領選に勝つつもりはなかった!? ただ1人の男を除いては……。衝撃のベストセラー『炎と怒り』より、第1章を先行公開〔前半〕


トランプ大統領は精神的に不安定? 内部ネタが詰まった書籍『炎と怒り』

神保哲生氏。

神保:
 今トランプ政権の内幕を暴いた『Fire and Fury』という本が話題になっています。日本語訳はもうすぐ早川書房から出る予定で、翻訳版の表紙ができているということで、きょう持ってきました。日本語のタイトルも『炎と怒り』でそのままなのですが、日本語版の発表は2月下旬ということで、僕は一足先に英語版のほうを読ませていただきました。確かに内幕というか、内部ネタが満載ではあるんですけど、この本に書かれていたことの中で私が何よりも一番不安を覚えたのは、トランプさんが精神的に不安定な人物なのではないかということを伺わせるようなエピソードがいっぱい出てくることでした。

 たとえば同じことを何度も言うとか、その日に合意していたことを翌日どころかその日の夜のTwitterで全く逆のことを言って全部反故にするとか、だからもしかしたら記憶障害もあるんではないかとか、あるいは精神的に不安定で機嫌がいいときと悪いときで思考が変わってしまうのではないかとか、いろいろなことが書かれています。

 毎日、お天気のようにトランプの機嫌を周辺の人に聞いておかないと、トランプとはまともにつき合えない感じなんですね。機嫌によって、「きょうはこういう細かい話はするのはやめておこう」とか、逆に「きょう決めてもまた夜のTwitterでひっくり返るかもしれない」とか、常に彼の精神状態を気にしながら政治を行わないと、大統領の権限は大きいですから、大統領にひっくり返されてしまうと。苦労して作った合意が一夜にして崩されてしまうんですね。

 ですからトランプ大統領の周辺にいるホワイトハウスのスタッフにはいろいろな人からその日の大統領の精神状態を確認する電話が入っているのではないかと思います。

政権の無防備さが招いた暴露本の出版

神保:
 僕もついこの間、本を訳したばかりなので言いますけれど、(『Fire and Fury』という本は)この厚さですよね。

 僕が翻訳した『暴君誕生』は結局、なんだかんだ言って出版までに半年近くかかりました。翻訳して、直して、直して、直して……。印刷も普通だと、一カ月近くかかりますからね。『Fire and Fury』の英語版は1月5日発売だったんですね。実はトランプ辺りから出版を止めるよう求められたので、法的措置を取られる前に前倒しで1月5日に出ることになったのですが、出版社が日本語版を2月中に出すというのは大変なことだと思います。いつの段階で原稿を入手したのかはわかりませんが、翻訳をしている方々は大変なことになっていると思います。

 これが最終的な表紙になるかはわからないのですが、見るとわかると思いますが、表紙のデザインもほぼ一緒ですね。デザインに凝っている余裕もなかったんじゃないかと思いますが、おそらく大勢ほ翻訳者の方々がチームで翻訳されていると思うんですね。

 でもそうすると、用語や言い回しが統一されないので、最後には誰かが必ず通しで見ないといけないんです。その誰かが、おそらく今、大変な思いをされてるのではないかと思います。実際に似たような作業をちょっと前にやった者としてはその苦労の大変さはぜひ知っておいていただきたいと思います。本の中身についてはいろいろなところで紹介されてますので、特に僕の方から付け足すことはありません。

 私が昨年の12月に翻訳した、『暴君誕生』という本は、マット・タイービというローリング・ストーンという、どちらかと言うと音楽系とかアート系のテーマを扱うけれど、政治だけはベタなものをベトナム戦争時代から伝統的に扱っているという雑誌の人気コラムニストが書いた本です。

 彼はトランプの選挙戦にずっとついてまわっているんですが、決してインサイダーにはならずに、主要メディアの報じ方なんかも含めて、あるいは有権者とか支持者への取材も含めた選挙戦の全体を観察することで、トランプ自身だけでなくトランプ現象の素地となっているものも深く掘り下げた本でした。

 打って変わって、『炎と怒り』は完全にインサイド本ですね。これは非常に重大な問題だと思うんですけども、マイケル・ウォルフという、どちらかと言うと、ハリウッドの芸能の記事やニューヨークっていう雑誌があるのですが、そこのコラムニストとか、ヴァニティ・フェアという雑誌のコラムニストもやっていたことがあるのですが、どちらかと言うと広告関係とかセレブ関係とかの記事を書いていたことで、そこそこ有名なジャーナリストなんです。

 ホワイトハウスには中央棟とその両側にイーストウイングとウエストウイングの3つの建物があるのですが、みなさんがよく写真などで見る正面の建物は大統領の居住スペースがあるところで、執務室とかプレス用のルームとか仕事に関係する部屋があるのが、その西側にあるウエストウイングです。ちなみイーストウイングにはファーストレディのオフィスがあります。この本はウルフがウエストウイングに自由に出入りして、トランプ政権の中枢、特にスティーブン・バノン【※】とたくさん話しているんですけれども、延べ200人、200回のインタビューをしたと言っています。

※スティーブン・バノン
アメリカの保守系ニュースサイトであるブライトバート・ニュースの会長で、トランプ政権における前首席戦略官兼上級顧問。

 政権は全く無防備だった。だからこういう形で出るとは、しゃべった人たちは思ってないということなんですね。実際それ自体が問題といえば問題なのですが、このマイケル・ウォルフという人は、以前にルパート・マードック【※】のことを書いているのですが、このときもマードックと昵懇の仲になって、本当にどんな話でもできるように仲良くなっておきながら、本ではマードックをおちょくったり批判をして、マードックを激怒させた前歴のある人なんです。

 つまり仲良くなって、散々話を聞いておいて、恩を仇で返すようなひどいことを書くという、手法が得意な人なんですね。

※ルパート・マードック
実業家。 メディア・コングロマリットのニューズ・コーポレーションを所有することから世界的なメディア王として知られる。

 マイケル・ウォルフがそういう人物であることがわかっていながら、ウエストウイングに自由に出入りさせた。しかもトランプ政権中枢の人は誰もウルフのことを知らなかったって言うんです。マードックの本もたぶん誰も読んでないだろうと。それがトランプ政権の性格を物語ってると。逆に言うと、マイケル・ウォルフは自由に中を動き回ってこの暴露本を書きましたけれど、他に誰が歩き回っているか、わからないですね。ジャーナリストじゃない人たとえばスパイのような人も歩き回っているかもしれないということですよね。

 しかもその後にトランプ政権が出版を差し止めをしようとしたり、トランプ自身がTwitterでものすごい攻撃をしたために、結構本当のことが書いてあるんだと逆に思われちゃったりしています。でもこんな本が出るとこれから取材統制が厳しくなって、みんなそのとばっちりを受けるんだろうなと思ったりもしています。

 『炎と怒り』は内幕もの。『暴君誕生』は“トランプ現象”なるものの構造を描いたものですね。僕は一昨年の大統領選挙の前に仮にトランプが負けても、トランプ現象は終わらないっていうテーマで取材をしていて、その過程でこの本と出会い、ここまで取材している人がいるんだったら、自分で変なものを書くよりもこれを訳したほうが絶対に正しいと思って訳すことに決めました。

 両方を読んでいただけると、ほぼ全てが網羅されるんじゃないかと思います。

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