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すべてのパトレイバーに関わる男が28年を振り返る『機動警察パトレイバーREBOOT』川井憲次インタビュー

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間違った使い方でも構わない。出てきた音がすべて

——次はテレビシリーズとNEW OVAですが、急に決まった企画でしたから、音楽制作も大変だったんじゃないかと思いますが。

川井氏:
 そうですね。ちょうど『らんま1/2』もやっていた時期だったので大変でしたね。時間がないなか、いきなり60、70曲も作らなければならなくて。浅梨(なおこ/録音演出)ちゃんが、急に電話で「川井さん、明日までに2曲ちょうだい!」って言ってくるようなことが頻繁にありました(笑)。

TVシリーズ(1989〜90年)

OVA、劇場版の人気を受けて急遽スタートしたTVシリーズ。OVAを受け継ぐかのようなキャラクターたちのドタバタ劇から、イングラムのライバル機である黒いレイバー“グリフォン”との激戦を描くストーリーなど、幅広いジャンルを内包した「パトレイバー」らしさを1年にわたって全国に広めた。結果、それまで「パトレイバー」を知らなかった層にも認知度を高めることとなった作品。制作はサンライズ。
(C)HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

——この頃の作品はご覧になっていかがでしたか?

川井氏:
 よかったですよ。面白かった。やっぱり、本筋とどんどん関係ない脇道の話が出てくると「これが『パトレイバー』だよな」って思いますね。「二人の軽井沢」【※】とかね。

※NEW OVA第12話。

——振り返っていただくと、だいたいみなさん番外編が好きだとおっしゃいます。

川井氏:
 僕もそうですね(笑)。

——NEW OVAも音楽的にはテレビシリーズの延長線上で?

川井氏:
 同じですね。作り方も変わらなかったし、相変わらず「明日までに2曲ちょうだい」といったこともあって。音楽のパロディもやりすぎて覚えてないぐらいですね(笑)。

NEW OVAシリーズ(1990〜92年)

設定・時間軸ともにTVシリーズの続編。未解決だったグリフォンとの最終決戦を描いた完結編と、各キャラクターの事件以外の日常にスポットを当てた番外編で構成。シリーズの集大成ともいえる内容でコアなファンに好評を博した。ヘッドギアメンバーの遊び心満載の書き下ろし脚本も見どころ。全16話(巻)。制作はサンライズ。
(C)HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

——劇場版の2作目はいかがでしたか?

川井氏:
 最初にプレサントラ、いわゆるイメージアルバムを作ったんですよ。あの当時アニメ音楽業界的には、劇場用アニメの公開前にイメージアルバムを作るという流れがちょっとあったんですよね。なかにはサントラでもなんでもないじゃないか、というものもたくさんありましたけど(笑)。『2』の本編もそのイメージアルバムから引っ張ってきた曲がほとんどです。

——ちなみにプレサントラはどういう資料をもとに作ったんですか?

川井氏:
 絵コンテかなんかあったのかなあ。よく覚えてないんですよね(笑)。とりあえず6、7曲作って出したいと。

——『2』の頃には押井さん流の、いわゆるキーになる楽器を最初に決めてから音楽を作るというスタイルになっていたんですか?

川井氏:
 もう、そうでしたね。『2』のキーになる楽器はコントラバスでした。緊張感のあるゴッゴッゴッという音は全部そうです。劇場版ではシンセでしたが、サウンドリニューアル版では生のコントラバスに差し替えています。エスニックなリズムと、ホワーッとした音と、コントラバス。この3つが核になっていましたね。あとは「Proteus 3」というサンプリング音源を多用しています。核になる楽器のまわりを肉付けしていく作り方は、今でもあまり変わってないですね。当時に比べれば今の方が技術的な自由度は全然高いんですけど、不自由な楽器を駆使して作るのも、これはこれでいいんですよ。出てきた音がすべてで、それをいかに使うか。間違った使い方でも構わない。その頃からちょっと間違った使い方をしてるんですけどね(笑)。

——『2』の作品の印象は?

川井氏:
 かっこいいなと。あのスクランブル発進のところとかすごくかっこいい。船の上のシーンも静かな雰囲気があるじゃないですか。廃墟のような空気感もすごく好きですね。曲として変わったことをしたのは終盤のトンネルのシーンですね。あれは本当にものすごく変な曲なんですよ。『2』が始まる前に、今回のリズムのテーマを決めようと思ったんです。ダンツタタン、ダンツタタン……というリズムをテーマにしようと思って、そのリズムがあのシーンではずっと鳴ってて、そこにツタララツタララ……みたいな変なシーケンスが入って。あそこは「普通はこういう音楽は付けないだろうな」と思いつつ作って、押井さんに聞いてもらったら「これがいい」って。

『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年)

前作のリアル路線をさらに推し進めた劇場版第2作。戦時下となった東京を舞台に後藤と南雲が事態の収集に動く。押井守監督の都市論・戦争論・政治論が強く現れた作品で、実写映画にも大きな影響を与えた。地下鉄サリン事件や9.11米同時多発テロ事件など後の現実に呼応したことで、今や押井の最高傑作であるとの呼び声も高い。レイアウトは今 敏ら実力派アニメーターが担当し、極めて映画的な見応えのある画面に仕上がっている。制作はプロダクションI.G。
(C)1993 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA/Production I.G

——それからしばらく経って、次は『WXIII』。これは準備期間が長い作品でしたが、オファーは出渕(裕/『WXIII』スーパーバイザー・メカニックデザイン)さんから?

川井氏:
 そうですね。「いま五反田で高山(文彦/『WXIII 機動警察パトレイバー』総監督)さんと飲んでるから、すぐに来てくれ」と言われて(笑)。その高山さんと会う前にいっぱいブッちゃん(出渕氏のニックネーム)から高山さんの噂を聞いてはいたんですよ。家に電話がないとか(笑)。ただ、高山さんとはあんまり打ち合わせしてなくて、やり取りが多かったのはやっぱりブッちゃんとかな。あとは亡くなられた監督の遠藤(卓司)さん。『WXIII』は怪奇的な要素のある作品なので、変な音が欲しいなと考えて、中国とかの小さいシンバルをいっぱい用意して、みんなでシャンシャン叩いてた記憶がありました。あれがずっと鳴っているのは結構怖いんじゃないかなと思って。

『WXIII 機動警察パトレイバー』(2002年)

ゆうきまさみのマンガ版「廃棄物13号」のエピソードをもとに作られた外伝的な作品。「昭和75年」の東京を舞台に異形の怪物による生物災害を追う刑事サスペンス。本作オリジナルのキャラクターがストーリーの中心的な役割を担い、新たなスタッフが指揮を執るなど、「パトレイバー」世界の多様性を作品の内外で示した。制作はマッドハウス。
(C)2002 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

——『WXIII』と同時上映の『ミニパト』は音響プロデュースが押井さんでした。当時、押井さんと川井さんが爆笑しながら作業しているというお話を耳にした記憶があります。

川井氏:
 はい。爆笑しながらやってました(笑)。命がけで笑わそうと思いましたね。笑ってもらってナンボ。あれは自分のなかでもエポックメイキングな作品でしたね。なんといっても、当時の最新のCG技術がなぜ棒につけた人形なんだよと(笑)。たまたまその直前に『セブンソード』というツイ・ハーク監督の作品の音楽をやっていたんですよ。それで彼が日本に来て一緒に食事しているときに「そう言えばマモル・オシイの最新作はどんな作品だ?」って言うから「紙の人形を割り箸につけて……」って説明したら「なんだそれ?」って(笑)。

——説明は間違ってないんですけどね(笑)。

川井氏:
 そう。『ミニパト』は音楽的にもセルフパロディが重要でしたね。新曲でギャグをやるよりも、みんなの知っている曲をパロディにしたほうがいいだろうと、知らない曲はなるべく使わないようにした。でもハゼの話(第3話「特車二課の秘密!」)の終盤から急に演歌のメロディが流れてくるのは新曲ですが、あれは楽しかったな。

『ミニパト』(2002年)

押井守脚本、神山健治監督による短編作品。全3話で構成され、「WXIII」の上映の際に各話がシャッフルで公開された。紙人形的なアニメを当時最先端のCGを使って表現しているのが特徴(作画は西尾鉄也が担当)。内容も銃器のウンチクをひたすら話す内容だったり、作中で「ロボット/アニメとしてのパトレイバー」を語ったりと、メタ的な色合いが濃い作品。
(C)HEADGEAR/EMOTION/TFC/Production I.G

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