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韓国のクリエイターは何故、文化・社会を描くのか?日韓の違いが明らかになったCGアニカップ日韓クリエイター座談会

プロと素人の垣根がなくなってきた

──日本では2016年に新海監督の『君の名は。』が大ヒットして、2017年の初めにたつき監督の『けものフレンズ』大ヒットして、どちらも自主制作のCGアニメコンテスト出身の方なんです。同時に自主制作アニメの置かれている状況が厳しいというだけじゃなく、商業アニメ制作自体の状況が厳しいと言われている状況があります。そうした状況に関してどう思っていますでしょうか?

高尾:
 先ほど岡田さんが言われていたんですけど、自主制作は割と誰でもできるようになって、自主制作をされる方の人数はどんどん増えています。逆に昔、新海さんが『ほしのこえ』を作られた時のような注目度を得ることが難しいんです。

──埋もれてしまう

高尾:
 そうです。逆にそういう状況がインフレーションになってきている、頑張ってクオリティの高いものを作ってもあまり目立たない、なかなか注目度を集めるのが難しい状況なのかなと思いますけど。

Waboku 『VOYNICH / NENENE-Film Vo.1』より

Waboku:
 僕も割と高尾さんがおっしゃっていたようなことを思っていて、僕も今回流した『VOYNICH』、卒業制作の作品、仲間たちで1本作るとか自主制作の発表はしたんですが、なかなか受けなくて、一方でアニメーションじゃなくて他分野で活動している人がアニメを作ったら評価されるということもあります。

──少し前に、Twitterでイラストレーターのloundrawさんがいきなり自主制作アニメを発表して、とてもリツイートされていて、ということにちょっとびっくりしましたね

Waboku:
 アニメ1本を人気出そうとしたら、多目的に色んな方面で活動してコンテンツを増やして、アニメーションをその一部として売っていかないと、見てくれる人が増えないのかなと今感じますね。

──多田さんは本業がイラストレーターですが

多田:
 全くアニメを商売としては考えていないんですけど、高尾さんも言った通りプロと素人の垣根がなくなってきた感がありますよね。それのおかげで僕もアニメを作れたわけなんですけども。

──そこの垣根を崩してきたのが多田さんであるという。

多田:
 素人から這い上がる、じりじりと来たのが僕やと思うんです。

多田文彦 『自主制作アニメ ゾンビ入門 Zombie manual』より

韓国ではインディーズ系のアニメーション制作には政府の支援が受けられる

──では次は、韓国のお二人に。日本の状況は聞いていただいたかと思いますが、韓国の今の自主制作アニメはどういった状況にあるんでしょうか。

高尾:
 そもそも韓国の作家さん達には、どういう食べていく手段、キャリアフローがあるものなんですか?

ユジン:
 小規模の、低予算でつくられるそういうアニメーションの企画、例えばインディーズ系だから、政府の支援で作るんです。長編の場合は支援を貰って、その後投資とかを少し貰って作ります。そんなに多くはないのですが、支援対象に年に2本3本くらいが選ばれるんです。

ギヒョク:
 インディーズ系は大抵、色々な会社からお金をもらって仕事をしていたり、政府の支援を貰って作品を作ったりしているのですが、仕事で貰ったお金を自ら出して自分たちの作品を作ったりというケースはあまりないです。個人で作るのは難しいので、制作支援を貰えないと良い作品を作るのは難しいと思います。

ミンジ:
 最近の韓国では、アニメーションや映像を活用したいろんな講義とか教室とかワークショップ等が増えているので、そのアニメーション制作で生活することができます。自分の友達で美術系や音楽の人も多いのですが、そちらの方がもっと厳しい状況なので、アニメーションをやってる人の方がましだと思います。

ギヒョク:
 自分は商業的に成功したいと思っているんですけど、韓国のアニメーション市場は規模も小さいし、難しい。今考えているのは、WEB上でアニメ・漫画を発表して、それに基づいた話の長編のアニメーションを作るという計画を考えています。

ミンジ:
 アニメーション作る人は、絵も出来るし、映像制作も編集も出来て、一応技術力を持っているので、もっとお金が貰える良い所に就職できるかもしれないですが、私は自分の作品を作りたいという選択をしているので、少し辛くても我慢します。それは自分のために選んだ道であって魂的なものなのです。

多田:
 日本も同じような感じではないですかね。

waboku:
 そんなに遠くはないですね。

座談会の様子

自主制作だからできることとは?

──日本のみなさんは商業の世界では出来ないことをやりたい、あるいは商業的に成功したい、どちらのタイプなのでしょうか?

Waboku:
 僕の場合は、僕は大学に行って奨学金を借りていたんですよ。借金がめちゃめちゃあって、普通にアニメーション会社に入ってキャリア積んで行ったら、現実問題、これは絶対に返せないと思っったんです。たぶん就職する前から、僕はアニメーション業界に向いていない人間だということはちょっとわかっていて、それで実際に1回就職もして辞めたので、もうアニメーションでお金を返していくんだったら、個人作家として確立するしかないんだなと思って、こっちの道を選んだんです。

──すごいですね。普通だったらなかなか選ぶことができない道を

Waboku:
 怖いですし、でもアニメーション業界の崩壊の兆しが見えている頃だったので。

──多田さんとかは、まったく別のやり方を。

多田:
 全く商業的に考えてないですね。とりあえず(本業で)食っていけたらええかみたいな。

──では、何故アニメを作るのでしょう?

多田:
 やっぱ絵を描いてたら、動かしたくなりますよね。動かすと話を作りたくなる。僕のキャリアは、全然デザインとかの学校とかも出てないし、勝手に1回、デザイン事務所に入りましたけど。そこに入る前も未経験では入れないんで、最初はやっぱり風俗雑誌の編集から。アニメは、純粋に自分が描いた絵を動かしたいという思いだけで。

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