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「AIは魂を持つのか? ゴーストが宿るのか?」押井守(映画監督)×山田胡瓜(漫画家・『AIの遺電子』作者)特別対談

「映画は国境を越えません」(笑)

押井:
 いまだに理解されてないと思ってるし。だから『攻殻機動隊』のどこがそんなに良かったのか、彼等は何に感心したのか、未だによくわかんない。ただああいう独特な世界観にある種のオリエンタリズムとしてきっと興味を持ったんだろうけどさ。思想的なものとして認めたわけでは全然ないと思っている。あとはデザインの問題だったり。言ってみれば日本のアニメーション自体が異文化だったんでさ。そう思うようにしている。じゃないとね、勘違いすることになりかねない。

山田:
 一方でその、魂みたいなウェットな話をしつつ、登場人物の感情の描き方はドライじゃないですか。そのギャップが海外の人には、心地良かったんじゃないのかなって思ったりもしますけど。

押井:
 冷静に考えたらさ、ハリウッドで作られている映画とかね、ヨーロッパで作られている映画もそうなんですけど、日本人が向こうの人間と同じように観てる訳がないじゃないですか。映画ってそういうものだと思っているし、映画は基本的に誤解されるものだと思っているけど、誤解されるからこそ興味が持てるんですよ。異文化だから。

 だから、僕はいつも映画祭とか行ってる時に、すみませんと思ったけど、「映画は国境を越えませんから」って(笑)。みんな不満そうな顔をするんだけどさ、その通りだと思ってて。国境越えないけど「興味は持てるよね?」っていう、僕はヨーロッパ映画は大好きだし、そういうことでいいんじゃないの?ってさ。AIが問題になるのは、一番向こうの人間がナーバスになるテーマだよね。

「人とは異なる知性」と付き合う未来

山田:
 先ほど、AIに関する物語は「人間とは何か」に帰結する、というお話がありましたけど、それには、「人間のような機械を作ろうとする中で、人間について知る」という面があるとともに、「人間とは異なる知性に遭遇することで、自分たちについて知る」みたいな面もあると思っていて。後者を印象深く物語にできたら、漫画家冥利に尽きるなと思ってるんです。

 ちょっと最近面白いなって思ったことがあって、NHKで「AIに聞いてみた」みたいな番組(『AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン』)があったんですよ。そこでAIが人間の常識にとらわれずに、「病院を減らせば健康になるんだ」みたいな、ちょっと反感を買うようなことをいっぱい提案して炎上したんですけど、僕は凄く面白いなって思って。それってつまり人間とは違うアルゴリズム、価値観で動いている知性、まあ知性といえるほどのものではまだないんですけど…… それが出したもので、それを叩き台にして人間がみんなで話し合うことで、良いものになるんじゃないのか? そんな期待があって。そういう役割こそAIの真骨頂なんじゃないか?って思うんですよね。

 僕らはAIが「聞き分けの良い優秀な人間もどき」みたいものになるんだろうって思いがちなんですが、でもそうじゃない、人間臭くない未知の知性になる可能性もあって、怖くもあるけど、そいつに出会ってみたいっていうのが個人的にはあるんです。

押井:
 神様があれ(AI)ですよね。神様いないから神様を作るしかないっていうわけですよね。

山田:
 ある意味、ご神託なんですよね(笑)。なんでそれが出てきたのかはパッと見だとよくわかんない。でもその……

押井:
 誰かが無茶苦茶言い出したけど、実は無茶苦茶なのかどうか検証し始めるとね、意外と真実があるものが含まれていたりとか。

山田:
 そうなんですよね。

押井:
 そういう話は、それを人間が脳みそからひねり出すのは、大変なんだけどさ。昔は、それこそ専門にやってる人間がいたんだけど、それをAIに対応させるというのはあるかもね。確かに病人が増えたのは、病院が多いせいだっていうのは、単に病名が増えたからだって(笑)。病名の数だけ病人が増えただけだという言い方、多分出来るんだよね。

 だから、テクノロジー・技術無しで人間社会はちゃんと機能しないのも確かだから、付き合うしかないんですよ。「とりあえず、自分の身体から改造してみようか?」っていう(笑)。攻殻ってそういうノリだったんですよ。「何か変わるかもよ?」って。義体っていう考え方はなかなか気に入ってて。今はちょっと違う考え方を持ってるんだけど。

 こういうテーマを扱える世界自体が依然としてすごく狭いから。やっぱりテレビの地上波でやる話じゃないからね。いつまでたっても未だにマニアックなSF映画か漫画か小説以外で語れない世界だよね。みんな読まなくなっちゃう世界だから、こういう漫画が売れることが大変いいことで、期待してますよ。

山田:
 ありがとうございます。頑張ります。

漫画家に疲れたら脚本家に

押井:
 もし本気で漫画家に疲れたらね、なんか……

山田:
 脚本家を。はい(笑)。

押井:
 ホントに、これだけ話を作れる人ってまずいないですよ。

山田:
 ありがとうございます。

押井:
 何かあったら今すぐシリーズ、文芸やろうよ。とにかく、たくさん描くというのが、すごく難しい時代になって架空でこれだけネタ描くってね。生産性の観点からすると、ものすごく効率の悪いことをやってますよね。普通の漫画だと、1本のネタで、大体1冊か2冊から3冊ひっぱりますよ。

山田:
 16ページでやめちゃうという(笑)。良い話出来たなと思っても、もう来週違う掴みを作らなきゃいけないという(笑)。

押井:
 ディテールをいっぱいくっつけて、キャラクターいっぱい出して、余計なものをいっぱいくっつけて、そういう意味では、惜しげもなく本質を使ってる。そんなことやってるの、『ゴルゴ13』と『AIの遺電子』くらいなもんですよ。

山田:
 ありがとうございます。すごく嬉しいです。

『AIの遺電子』第8巻を持つ押井守監督(左)と自画像を持つ山田胡瓜先生(右)

 対談後、押井守監督山田胡瓜先生のお二人に特別に色紙を描いていただきました。こちらはニコニコニュース オリジナルと公式Twitterとの連動キャンペーンとして抽選で1名様に、さらに山田胡瓜先生のサイン入り『AIの遺電子』単行本第8巻を3名様にプレゼントいたします。応募方法の詳細はこちらへ。


『AIの遺電子』第8巻より

AIの遺電子』は現在、ニコニコ漫画で公開中。118日にはファーストシリーズ完結を迎える第8巻が発売。さらに新章『AIの遺電子 RED QUEEN』が別冊少年チャンピオン誌上で連載中。

ニコニコ漫画では『AIの遺電子』を公開中

ニコニコ漫画公式サイトはこちら

プロフィール

TV番組リサーチ会社を経て、現在フリーランスの編集・ライター。映画・アニメとものすごくうるさい音楽とものすごく静かな音楽が好き。ニコニコニュースの他、SENSORS.jpなどで記事を執筆中。
Twitter:@suburbangraphic
Website:suburbangraphics.jp

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