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「ミクと一緒に踊る夢」を叶えた男――話題の動画『自分を3Dスキャンして遊んでみた』作者に話を聞いてみた

――(笑)。坪倉さんの発想は、先の「嫁が画面から出て来ないなら、自分から画面の中に入ってみよう」という発言しかり、「ハチ公前にいる人が減らせないのなら、ハチ公を増やそう」という動機で制作した『Myハチ公』しかり、普通とは違う裏側にいきますよね。

坪倉:
 ハチ公を増やすネタは以前から考えていて、HoloLens【※】が出たばっかりだったこともあり作ってみました。既存の発想を覆すことって意外性があって面白い。普段から“当たり前のこと”を観察したり考察したりするようにしていますね。 裏を見るためには、真正面の当たり前のことをよく見ておかないといけません。ハチ公に人が集まる=ハチ公が一つしかないからであって、だったら増やせばいいと(笑)。

 そのためには増やすためのテクノロジーが必要になる。何かを解決するアイデアを考えると、自ずとテクノロジーの問題も出てくるんですよ。問題解決の意識が働くので、僕の場合は自分の制作物と広告仕事がリンクしてくるところもあるのだと思います。

※Microsoft HoloLens
マイクロソフトが開発したゴーグル形のヘッドマウントディスプレイ形の、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)を融合したMR(複合現実)を実現するウェアラブルデバイス。

 テレビでも紹介され話題を集めた『Myハチ公』 より

初めてのメディアアートはグーグル先生に聞きながら作った

――そもそも坪倉さんがこういった世界に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

坪倉:
 親がよく科学館などに連れて行ってくれたので、子どもの頃から不思議な現象を見ることが好きでした。ただ、一番衝撃を受けたのは、小学校3年生くらいのときにナンジャタウンで体験した『ファイヤーブル【※】というライドアクション。VR・MRの先駆けとも言えるアトラクションで、 透過型のゴーグルをつけてヘリを操縦して戦うゲームなのですが、スーファミしかプレイしたことのない僕にとって本当に異世界だった。

 そのときの「どうして現実と非現実が入り混じっているんだろう? どうなっているんだ!?」という疑問がずっと残っていて。その後、2010年に僕が大学の卒業制作で作る「Shadow Touch!!」などにも影響を与えていると思います。

ファイヤーブル
実は坪倉さんが詳しい情報をまとめたウェブサイトを制作しています。
http://teruaki-tsubokura.com/Lab/firebull/

――ちなみに「Shadow Touch!!」はどのような作品なのでしょうか?

坪倉:
 「もし影に触れることができたら」という思いから作ったインスタレーションです。投影した影に触れると、その影を触ったり動かしたりすることができる作品ですね。今であればKinectや3Dセンサーなどがあるため、さほど難しくないと思いますが、当時はそういったものがないためWiiリモコンをハックして制作しました。指先に装着した再帰性反射キャップで赤外線を反射し、システム前方のWiiリモコンを介して、反射した位置を取得することで影を掴んだりすることができる。現実と非現実を融合させたかったので、表現としては影を使うのは面白いなと思いました。

金沢工業大学時代の卒業制作として手掛けた「Shadow Touch!!」 より

――「Shadow Touch!!」以前にもそのような作品を作ったことはあったのでしょうか?

坪倉:
 実はメディアアートと呼ばれるものはこの作品が初めてで……プログラミングなども含めてグーグル先生に聞きながら制作したんですよね。

――ここでもまさかのグーグル先生ですか!? 逆に、それまではどんな制作をしていたのか気になります。

坪倉:
 大学ではウェブプログラミングなどを学んでいたので、卒業したらそういう道に進むと思っていたんです。ところが、先輩がメディアアートなるものを制作しているのを目撃して、「なんだこれは?」と。それまでメディアアートの存在も知らなくて……面白そうだなと思い、自分も卒業制作で作りたいと思って、作ったのが「Shadow Touch!!」でした。

――グーグル先生に聞きながら制作したデビュー作で、「第16回学生CGコンテスト」で優秀賞を受賞してしまったと。

坪倉:
 恐縮です(苦笑)。僕自身、現実とデジタルを行き来する魔法のような装置が大好きですから、実際にお客さんが「Shadow Touch!!」に触れて、「なんで?」「どうして?」と不思議がっている姿を見て、しめしめという感じでした(笑)。

 優秀賞をいただいたことで、「メディア芸術祭」内で展示していただくことになったのですが、自分でも驚くほど反響があって、「この世界で勝負してみたいな」って。ありがたいことにワン・トゥー・テン・デザインさんからオファーをいただいて、デジタルクリエイティブの道に進んだという感じです。

 

エンタメ×メディアアート×広告を往来するためには何が必要か?

――「VRクリエイティブアワード2017」にて審査員特別賞を受賞した「不可視彫像」ですが、これも影をモチーフにした作品ですよね。

坪倉:
 「不可視彫像」は、「Shadow Touch!!」を今の技術でリメイクしてみた作品です。何も置かれていない展示台に、懐中電灯で灯りを向けるとあるはずのない作品が影として映し出される……この作品のアイデアも、「展示物ってなんでどこもかしこも白い台に乗っているんだろう?」という当たり前のことに注目したところからでした。展示台に作品が乗っているのが当たり前ならば、展示物の無い展示台を作れば面白いのではないかと。

美術鑑賞の常識を覆す“展示物の無い”展示『不可視彫像』 より

――なるほど(笑)。メディアアートの世界を選んだ坪倉さんですが、デビューは遅い。足を踏み入れて焦りなどはなかったのでしょうか?

坪倉:
 それこそ美術系の大学に行って、早くからメディアアートなどを制作している人と比べると、スタートが遅かったため、「もっと早くからやっておけば」と思いました。でも、その一方で僕は正直アートとかよく分からない人間で(笑)。

 「Shadow Touch!!」を作ろうと思ったきっかけも、僕自身が不思議なものを作りたくて、人をビックリさせたかったから。難解なコンセプトや表現論などは、僕には複雑すぎて。ベースにあるのは、科学館で夢中になった「なんで?」というシンプルな疑問です。

――結果的に、それが坪倉さんの強みのように思います。エンタメ×メディアアート×広告という、近いようで遠い分野を股にかける坪倉さんの作品は、とっつきにくい世界もより分かりやすく感じさせてくれます。

坪倉:
 結局、全部好きなんですよ。広告は依頼されたものを作るんですけど、その中でも、こうした方が絶対面白いとか、あとは絶対にお客さんに喜ばれるものを作っているので、やり甲斐はありますよね。

――『ソードアート・オンライン』を現実の世界で体験できるキャンペーン【※1】に携わったり、『目指せスタァ!!体感プリズムショー』【※2】では実際にスクリーンの前に立つことで、自分の姿がステージ上に登場したり、坪倉さんのアイデアをエンタメとして体験できる機会も増えています。

※1 『ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM
2016年3月に実施されたVR体験型イベント「ソードアート・オンライン ザ・ビギニング」。参加者は全身をスキャンして作成された自身のアバターを、実際の身体を使ってコントロールするという、全身で仮想空間に没入してソードアート・オンラインの世界に入ることができた。

*2 『目指せスタァ!!体感プリズムショー
応援上映などで話題となった映画『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の続編『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』公開時にコラボカフェ内で行われた体感イベント。

坪倉:
 僕はエンターテイメントが大好きなので、アニメやゲームなどのお仕事は機会があれば是非(笑)。ただ、好きなジャンルのお仕事に関われることはとてもありがたい一方で、自分の制作物を作る時間も確保したい。前職を辞めてフリーランスを選んだ理由は、自分の作品を作る時間を増やしたいという思いがあったから。そのバランスが難しいですよね。

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