ニコニコニュース

ボカロ絵師インタビュー特集

話題の記事

「“けもフレ”はヘロイン」漫画家が力説する「ダウナーな漫画・アッパーな漫画」って?

“覚醒コンテンツ”は「生きる活力」、“麻酔コンテンツ”は「身を守る防空壕」?

山田:
 コンテンツには2種類ある。それは、コカインなどの“覚醒コンテンツ”と、ヘロインなどの“麻酔コンテンツ”というもの。

 覚醒コンテンツは、ざっくり言うと「こんな世界もあるんだ」「現実でも頑張ろう」と思わせる力があるものを指す。

 これは言ってみれば、昔のスポ根なんかもそれに含まれる。「努力と根性でも未来は開けるんだ」「ボロボロになるまで戦うのって格好いいよな」みたいな70年代のコンテンツに習って、「こんな風に物事を考えたっていいんじゃないか」っていうのが、覚醒コンテンツ。

 だから、「うほほーい【※】」だって、実はちょっと覚醒が入っているんだよ。一見、麻酔のようだけど。

※うほほーい
『Dr.スランプ』に登場するキャラクター『則巻アラレ』が発するセリフ。

乙君:
 そうなんですか?

山田:
 あれって実はレジスタンスだったんだよね。小さい女の子が月までぶっ飛ばすことができるっていうのは、そんな力があるんだよっていうような、ある種の覚醒。というか、常識を破壊しているんだよ。

乙君:
 それはそうですね。ニコちゃん大王とかもそうですしね。

山田:
 で、麻酔コンテンツは何かと言うと、そんな厳しい現実で戦う中で、「たまには休みたい」「『すっごーい』とか聞こえる島で、女の子の形をした生き物たちに囲まれて生きたい」と思うような、逃避の頼りになるようなもののこと。

 昔は、「麻酔ばっかりじゃないか」とずっと思っていて怒ってたの。で、俺は覚醒ばっかり描こうとしてた。でもこれじゃ売れないから(笑)。

乙君:
 痛い痛い、なんか痛い。グサグサって(笑)。

山田:
 刺しながら喋る。

一同:
 (笑)

山田:
 「ダメだ、売れない! 麻酔のフリをするぞ!」って言ってこの漫画を読み、「オタクでもモテるぜ」という風に麻酔成分を加えることによって、私はとりあえず漫画家を続けることができたんですよ。『Bバージン』【※】という漫画でね。

『Bバージン』画像はAmazonより。

※Bバージン
山田玲司氏の青年漫画作品。生物部に所属する生物オタクの高校生・住田秋が当時の典型的なナンパサークルでカリスマナンパ師のごとく活躍するが、言寄ってくる女性の誘惑にも負けず、高校時代に恋をした桂木ユイへの気持ちから自分のアイデンティテイを見出し、大学を中退して水族館にアルバイトとして勤務しながら、本当の自分像を追い求める青春ストーリー。

乙君:
 説得力ある。

山田:
 そうでもしないとダメなんだよ。最近どっちも大事だなと思いながら、どうもこの覚醒がまたウケないなっていうのがあると思っていて……。

山田:
 それで、80年代に『うる星やつら』が出てきたときに、それまでのスポ根っていうのはダサいよと。それから、『タッチ』で疲れるから嫌なんだよって言うじゃない。覚醒の批判をするわけだ。だから押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』は麻酔を覚醒にしちゃおうとする試みだったんだよ。

 だから、後半にカウンターとして出てくるぐらい、覚醒を批判するって流れが80年代にあって、その後「YouはShock」と『北斗の拳』が始まるわけですよ。あれ、一見麻酔なんだけど、覚醒でもあるみたいな熱い戦いを、メタ視点で笑っているところがどこかであるんだよね、90年代の熱いものって。

乙君:
 『北斗の拳』が?

山田:
 なぜかって言うと「ひでぶ」なんだよ。「ひでぶ」で笑ってたの。でも、スラムダンクになると笑っていないんだよ。だから80年代って、一度ガーッと麻酔に移ってから、もう一度90年代に戻っている。これの揺れが常にあるなと思っていて。

 そして、最近の萌えの話ね。右も左も萌えばかりじゃないですか(笑)。

乙君:
 まあまあ。

山田:
 そんなんでいいのかなと思って。で、いろいろ考えたんですけど、現実があまりにも酷すぎるから、覚醒して社会とか出ちゃったら残業で死んじゃうかもしれないじゃん。

乙君しみちゃん
 (笑)

山田:
 でも、そういう人たちを落ち着かせてるのは何かって言ったら「フレンズ達」なんですよ。萌えキャラが命を救っているんですよ。そう考えたら、もしかしたらこれは、ある種のコールドスリープ戦略なのではないかと思うんですよ。

乙君:
 あー! なるほどね。萌えという愛の中でね。

山田:
 萌えカプセルで最悪な現実をとりあえずしのいで、命だけを守るだからこれ、防空壕なわけですね。

山田:
 防空壕の中にいて、「お前は戦わないのか、お国のために」なんて言って。ブラックと言われる企業に入って戦うんだよ、みたいな感じで。「嫌ですよ、ぼくはけもフレ見たいっすよ、だから帰ります」って言って、その中に入る人の遺伝子が最終的には残るのではないかっていう話。

 覚醒して出て行っちゃうと、みんなのために残業しちゃうから。

乙君:
 なるほど。

山田:
 みんなのために残業してる場合じゃないんだよ。なんでかって言うと、そんなお金はパナマ経由で一部の人たちのフェラーリとかになっちゃうわけじゃん。だからここは冷静になるべき。戦争だって5年しかなかったんだから。5年経ったらぜんぜん違う時代が回ってきたんだから。

 だったらこんな時代長くは続かないんだから、VRをつけて萌えカプセルの中で生き残れ!という戦略ではないだろうかという話ですよ。

乙君:
 なるほど。戦略というか、自然とそこに向かってしまっているというか。

山田:
 今はね、「オタクだ」とか「お前らリアルの女の子触ったことないじゃないか」とかいろいろ言われて迫害されてますけども、振り返ってみてください。戦争中に反戦活動してた人たちと一緒じゃないですか? 白樺の人たち【※】と一緒じゃないですか。彼らこそが小林多喜二【※】なんじゃないですか。現代の小林多喜二は秋葉原にいるんじゃないですか? っていう話ですよ(笑)。戦っているわけですよ、その歪んだ資本主義社会とね。

※白樺の人たち
白樺派。1910年創刊の同人誌『白樺』を中心にして起こった文芸思潮のひとつ。創刊にあたって学習院の学生十数人が、1908年から月2円を拠出し、雑誌刊行の準備を整えた。彼らが例外なく軍人嫌いで、学習院院長であった乃木希典が体現する武士像や明治の精神への反発からと言われている。

※小林多喜二
日本のプロレタリア文学の代表的な小説家。治安維持法下に特高警察からの取り調べの際に拷問死。代表作は『蟹工船』

しみちゃん:
 (笑)

「生活」の最新記事

関連記事

新着ニュース一覧

公式Twitterをフォロー

アクセスランキング