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「今の異世界ものは一周回って何でもあり」“pixiv”や“小説家になろう”の台頭でカオス化する「なろう系界隈」

「なろうサイト」クリエイターとプロクリエイターとの戦い

岡田:
 何でもありな中で「まさか異世界コミケはないだろう」と思い、探してみたら、pixivにちゃんと漫画があったんですよね。ひょんなことから「ファンタジー世界に転生してしまったコミケ帰りの男」が、異世界で魔法を覚えるという『魔法使いの印刷所』という漫画。

岡田:
 主人公の男は異世界で、「この世界の魔法を1つ覚えるのは苦労する」と感じます。なぜなら、魔法は個人個人で教え方が違っていたり魔法習得までのインフラが未整備という、問題があったから。

 そこで主人公は多くの魔法使いに声をかけ、1つの案を提示する。それは、「皆さんの知っている魔法を本にして、皆に見てもらいませんか。」というもの。主人公は定型魔法の『コピー』だけを使えて、そこで魔法専門の同人誌、オンリーコミケが開かれるようになったという話です。

岡田:
 このように、異世界コミケももうあるのです。日本のクリエイティブの中心というのが、昔はコミケだと言われていたりしたのですが、今はもう間違いなく『小説家になろう』『pixiv』というインターネットサイトが、日本のクリエイティブの最もベースになっているし、最底辺とも言えるのですが、この底辺があまりに広く、豊かで分厚いので、上に載ってくるコンテンツっていうのは、おそらく5年後、10年後ぐらいはもの凄いことになってるんですよね。

 もの凄いことっていうのは、僕らみたいな受け取る側にとって恐らく、凄く良いものがほぼ無料で見れるような場所なんですけども、中途半端なプロの人、つまり95%のプロの人にとっては、さっきみたいな『マリー・アントワネットの料理人』みたいな真面目などんなに漫画を描いても、pixivみたいなところに毎日公開されるものや、なろうサイトに小説で投稿されるものと、戦わなければいけないわけですね。

岡田:
 さっきの『マリー・アントワネットの料理人』は月刊誌か隔月かの雑誌に掲載されていたのですが、それくらいのペースで練り込んだ話を1話提供するんですけども、pixivにしても、なろうサイトにしても、その週盛り上がったら、同じような話がたくさん出て来て、そのバリエーションがあっという間に埋め尽くされてしまう。まるで飢えたイナゴの群れが通った畑には何も残らないように、あっという間にそういうファンタジーのある傾向だったり流行りだったりするものが、消費されつくしてしまう。

 プロには本当にやりにくい時代になるし、アマチュアにとっては天国なのか地獄なのかわからないですけども、間違いなく言えるのは、僕ら受け取る側にとっては、良い時代になってしまう。ただし、それは同時に同じようなものがひたすらどんどん現れる。

 例えば『異世界はスマートフォンとともに。』はそんなに流行っていないと思うのですが、あれが流行るとスマートフォンみたいに1アイテムを持って異世界へ転生するものが、わーっと出てきてしまう。今は「異世界チート」が流行りですが、そういうのがブームが変わってしまうと、そればっかり同じようなものが偏って発表されるような時代になってしまう。

 それを僕らは、「無料だから」と見るようになって、有料のものはどんどん見なくなる。そして、自分がちょっと描こうと思ったら、ほんのちょっとアレンジしただけで、もうオリジナルと言い張れるし、先生と言ってもらえるので、どんどん描くという時代になっているなと思います。

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