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ドン・中矢・ニールセンが逝去(享年58)「前田日明さんがカリスマ的存在になる要因を作った人ですよね」吉田豪らが過去の試合をふり返る

前田日明戦はリアル・ビジネス・ファイト?

久田:
 ニールセンって、ちょっとやばかったですもんね。ストレートが当たったりしましたよね、前田さんに。

吉田:
 あれで完全に意識飛んだままやっているのは、もうそこはリアルでしょう。

久田:
 まじか。で、逆エビ固めで決めるというね。

ターザン:
 逆エビ固めを決めるというのは、格闘家に決める一番いい方法なわけですよ。逆エビ固めって坂口征二が一番得意だった。格下のレスラーが新日でやる時は全部これですよ。

久田:
 そうみたいですね。

ターザン:
 猪木さんはザ・モンスターマン相手に決めた。今で言うとパワーボムのような技ですよね。

吉田:
 やってましたね。

久田:
 逆エビ固めで決めるということが、プロレスなんですよね。

ターザン:
 プロレスだな。でも「リアル・ビジネス・ファイト」と言うのであれば、あれを「真剣勝負」と言うのは、言い過ぎじゃないかな?

吉田:
 複雑な、含みある言い方だから、なんとも言えないですよね。

ターザン:
 ただ、ビジネスというのはお金。でもあのファイトマネーが1万ドル。「安いな」と思ってさ。

久田:
 え、そうですか?

吉田:
 当時の知名度のないキックボクサーだから、飛びつくだろうけど。

ターザン:
 格闘家と試合をやる場合は5万ドルが最低ラインでしょ。

久田:
 なるほど、でも、お亡くなりになっちゃったんで、本当にご冥福をという感じですね。もうびっくりしましたね。

ターザン:
 藤原喜明との試合も山田恵一との試合もリアルファイトだったと言い切っているところが男らしくていいよね。

今のプロレス界に足りないもの

吉田:
 せっかくだからひとつ聞きたいんですよ。山田恵一、現在の獣神サンダー・ライガー選手とドン・中矢・ニールセンが戦った時に、リングサイドで日本武道傅骨法(こっぽう)創始師範の堀辺正史師範がブチ切れて、「俺と戦えこの野郎!」と、ニールセンに喧嘩を売った話があるじゃないですか? 山田さん側のコメントを聞きたいんですよね。僕は、堀辺さんからは聞いたんですよ。あの時のニールセンの態度にブチ切れて「てめえ俺とやれ」と、ずっと言っていたという。

ターザン:
 俺も初めて聞いたよ、それ。

吉田:
 え、そうなんですか?

ターザン:
 初めて聞いた。

吉田:
 知らないんですか?

ターザン:
 知らない。

吉田:
 聞いてない?

ターザン:
 聞いてない。

吉田:
 ええ!

ターザン:
 堀辺先生も、他の人に言うのと僕に言うのと、区別をしているんです。

吉田:
 違うんですか。

ターザン:
 僕の時は、品のいい態度をするんですよね。それは、もろに使い分けてるんですよ。だから全然違うんですよ、ニュアンスが。僕の場合はものすごく、高潔な、高等な思想を言うわけですよ。他の人に会った時は、もうボロカスですよ。

吉田:
 でもニールセンに「俺とやれ」とか最高じゃないですか? 堀辺師範対ドン・中矢・ニールセンだったら見たかったですよ。

ターザン:
 その方が面白いでしょ? でも堀辺師範は常に山田恵一とか船木誠勝にプロレスをやっていても、「これをやれ」、「やっちゃえ」ということを言ってくる。そんなことプロレスラーが、できるわけないじゃないですか。

吉田:
 でも、前田さんも新日本の選手に「やっちゃえ」と言っていたじゃないですか。「なんでやらないんだ」と。そういう流れですよね。

ターザン:
 でも、猪木さんも馬場さんもリングの上だったら「これやっていいんだ」という考え方なんですよ。それがプロレスなんですよ。はじめは決められていたんだよ。決められていても途中から「これ、やってもいいよ」というのがプロレスですよ。その思想がプロレスにないからつまらないわけよ。 それがないんですよ、今。

久田:
 今、ちょっとつまらないですか?

ターザン:
 つまらないよ。途中から、これ【※】になるから面白いんじゃない。

※これ
シューティングサイン。プロレスにおける真剣勝負を意味するジェスチャーである人差し指と親指を立てたハンドサイン

久田:
 不穏な空気がという。

ターザン:
 男と女だって途中から裏切るから面白いわけじゃない。

久田:
 はい(笑)。

吉田:
 アクシデントが起きるかもというところに緊張感が生まれるわけですよね。

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