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コリア・レポート編集長が語る北朝鮮の権力事情「実権を握っているのは金正恩ではなく労働党組織指導部」

報道で見る金正恩は労働党が演出した姿

山本:
 金正恩委員長は自分の叔父(張成沢氏)まで手をかけ、有力な幹部までどんどん粛清していく。これは、自らやっているという見方ではなく、最高指導部の何人かの人間が、粛清の方針を決めているということですね。

辺:
 そうです。『恐怖政治』も1つのやり方で、金正恩委員長が叔父にまで亡き者にしてしまい、血のつながった兄・金正男氏まで手をかけてしまった。国際社会からみると、金正恩氏は何を考えているのか、何をしでかすか分からない、“統制不能のリーダー”として、存在が浮かび上がってくるんです。

辺:
 それだけ付加価値が付くんですね。裏を返すと、トランプ大統領も、何をしでかすか分からない“予測不可能の大統領”として世界が注目している。それと全く同じケースです。

山本:
 つまり、最高指導部が戦略として演出しているということですか。

辺:
 間違いなく演出ですね。金正恩委員長はどこに行くにしても、煙草を指から離さないんです。元老や長老の前でふんぞり返って、左のポケットに手を突っ込んで指示するんですよ。

 朝鮮半島は年上の人を大事にする儒教の思想が徹底されているんです。ところが金委員長だけが別格で、何をしても許されるという映像や写真を公開し、国民を従わせる方向に持っていくんですね。

山本:
 いろいろな専門家たちは「誰が金正恩氏の側近なのか」っていうのを、みんなで分析しているのですが、実は党の最高指導部の副部長たちが全部やっていると思っていいんですね。

辺:
 間違いないです。金委員長の視察に同行している人たちは、いわば実務者ですね。そういう点も含め、本当の実力者、黒幕と呼ばれる人たちは、表に出てこないです。一例として、軍ナンバー1の黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏は、軍総政治局長になる前は労働党組織指導部の第一副部長だったんですよ。組織指導部から軍に出向するという形で軍を抑えているんです。

 そして、金日成・金正日親子の遺体が安置されている宮殿に参拝に行ったとしても、彼は後ろの方に並んでますよ。年齢も70歳を超えている長老なんですね。私からすると、『元老統治』をやっているといっても過言ではないですよ。彼らが北朝鮮の“若様”を支えているんですね。

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