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なぜ『シン・ゴジラ』はオタク女子たちをこんなにヒートアップさせるのか?萌えあり怒りあり怒涛の二時間トーク

 現在、大ヒット中の『シン・ゴジラ』。ゴジラといえば男性が好きな映画というイメージですが、12年ぶりに日本で制作された今回の『シン・ゴジラ』は、女性人気の高さがネットでも話題です。先日は、「女性限定鑑賞会議」なるイベントも開催されるなど、ことオタク女子の心もがっちりつかんでいるもよう。この作品のどこにオタク女子たちはときめいたのか……。
 そんな『シン・ゴジラ』を語るべく、世の女性たちを虜にしている「オタク女子文化」を徹底的に愛でて語り合う「オタク女子文化研究所」がひさびさに復活。「公務員萌え」「ゴジラの可愛さ」「ツボを押さえた出演者」の3つをテーマに『シン・ゴジラ』の魅力をオタ女視点で熱く語るのは、両角織江(編集者)、金田淳子(BL・やおい研究者)、西森路代(フリーライター)、ひらりさ(編集・ライター)の4人の女性たち。
 さて、いったいどんな話が飛び出すのか…

※本記事には『シン・ゴジラ』のネタバレが含まれます。ご了承の上でご覧ください。

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まず『シン・ゴジラ』を観た感想は?

金田:
 私は2回観てるんですけど、たぶんこの中で私が一番辛口でしょうね。今日は攻めの姿勢、総攻めでいきます。ツイッター見ている方はご存知だと思うんだけど、なぜ私がキレているかもお話します。

ひらりさ:
 私は4回観ました(女性限定鑑賞会議も参加)。ゴジラどころか怪獣映画全般に今まで興味がなかったんですが、単純に映像として観ていて気持ちいいなと思いましたね。なんかマタタビみたいな感じで、またすぐ観たくなるって感じで……(笑)。

両角:
 私も1回目を見終わった後に疾走感があって、あまりに気持ちよすぎて、レイトショーで見た後にそのまま27時の回を予約して、新宿ピカデリーから東宝シネマズに移動してもう1回観に行きました。でも、それくらい観終わった後の気持ち良さがありますね。

西森:
 3回観たんですが、1回観てからは「これは誰かと語らねば」と2回目以降は人を誘って観に行きました。

『シン・ゴジラ』には“公務員もの”“官僚もの”としての面白さがある。

西森:
 そう、まず会議だらけですよね。

両角:
 『シン・ゴジラ』って“公のために働く人たちのお話”ですよね。こういうのは描き方のジャンルとしてあって、同列に挙げられるとすれば『踊る大捜査線』とか『機動警察パトレイバー』のような公務員が中心となる作品があるかと思うんですが、『シン・ゴジラ』もその流れにはいると思います。庵野監督が『日本の一番長い日』という映画を意識したという話もありますが、みなさんはどの辺りが印象に残りました?

(C)2016 TOHO CO.,LTD.
(C)2016 TOHO CO.,LTD.

西森:
 矢口蘭堂が最後のほうで「上が誰であれ国民のためにやれることをやるだけだ」みたいな感じのことを言っていたところですね。この人はずっとそういうふうに受け止めて働いていたんだなぁって、あとになってしみじみと。

金田:
 おそらく『踊る大捜査線』でも会議シーンはあったけど、本来はやっぱり現場のほうが盛り上がりますよね。警察もそうだけど、海上保安庁が出てくる『海猿』もそう。あと、自衛隊ってテーマとして一番作りやすいと思う。でも『シン・ゴジラ』はメインが政治家で、あとは事務方っていうのが確かに面白いと思うし、その彼らの会議シーンが面白いっていう人が続出してるっていうのが、新しいと思いました。あ、でもゴジラの映画として新しいのかどうかは知らないんだけど。

シビリアンコントロールみ=「シビコン」が感じられるよね!

両角:
 ゴジラから逃げる人々や、彼らが助かるという筋を描いている作品もあったけど、ゴジラに対抗してる人々の会議が前半のメインになってるのが面白いですね。しかも、その会議に縛られてうまく動けない人達の可笑しさ、みたいなのも良かったです。

金田:
 うーん、でも私はあれは風刺ではなく、法治主義の理想的な形として描かれていると思っていて、あのシーンは手続き上すごくしっかりしたものだな、と思って観ていました。

西森:
 そう、だって「撃ちますか? 撃ちますか? 撃ちますか?」って3回聞いて、4回目くらいにやっと総理が決断するのってすごく慎重。

金田:
 そう、あれは法律で決められてるから。たとえば自衛隊が「うわぁ~も~撃ちてぇ~!」ってやらないのが文民統制の正しいあり方だと思うんですよ。そう、これ“文民統制み”よ、“シビリアンコントロールみ”……シビコン! それを私はすごく感じたし、会議会議の繰り返しで1つの法案も動かないって言いながら、ファイルを落としそうになってる人々がいるんだけど、それは風刺ではなくて、私に言わせれば「仕方ねえじゃん」の一言です。そりゃ、私もその場にいたら「会議会議じゃねえか」って言うだろうけれど、

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あのシーン、実際の官僚たちの姿とほぼ同じらしい

ひらりさ:
 私は法学部出身なので、周囲に官僚もけっこう多くて、現役で働いている友人に感想を聞いたところ、「ゴジラきたらがんばろって思った」と返ってきました。

両角:
 じゃああの辺の描写って現実に則った感じなんですかね?

ひらりさ:
 そうなんですって。「官僚あるある」が多すぎて笑っちゃうので本筋に集中できなくて困ったと言ってました。キングジムのファイルにしても、リコーのコピー機にしても、ガーッとしゃべる感じにしても…。

金田:
 じゃあ、あの有事の際にコピー機をガーって動かすシーンも?

ひらりさ:
 そう、ああいう感じらしいです。あと、あの情報量の多いまくしたてるようなしゃべり方も、そのまんま一緒だって言ってましたね。

両角:
 「総理ご決断を!」っていうのも?

金田:
 あれは公務員じゃなくてオタクしゃべりだと思うんだよね(笑)

ひらりさ:
 官僚の方たちって、ゴジラだったり震災だったりといった、目に見える大きな脅威がなくても、毎日せわしなく働いているわけなんですよね。有事と平時ではレベル感は違うでしょうけれど。

西森:
 え、じゃあふだんからああいう感じの会話なんですね……。

金田:
 あの会議シーンでは、うろたえたり興奮している人がほぼいないんですよね。それって通常の時と同じような会議だからだろうなっていう感じはする。

ひらりさ:
 そう、秘書官が背後からメモを渡すシーンなんか、本当に似てるって言ってましたね。
 わたしは、あの“メモを渡されてしゃべってる風のしゃべり方”を演技で見せるのってすごく大変だろうなって思いました(笑)。

金田:
 あっ本当だ!  メモ渡されたからしゃべるっていう演技って難しいよね。

日本人はシビリアンコントロールが観たいのかも

ひらりさ:
 あと、わたしがいいなあと思ったのは、「みんなで決めてる」話だってところですね。総理総理って連呼して決断を迫るシーンが前半では何度もあるんですけど、あれは結局総理が決めているわけじゃないんですよね。最初に総理が何か大きな命令を出す時には総理の顔は写らないでいて、撃つ時になって総理が「うん」って言ってるのが見えてくるようにはなるんですけど。

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金田:
 あれは合議ですよね。みんなで言いつのって「やれ」って言わせているように見えるんだけど、あそこ2,3人しかいないわけじゃないし、銃をつきつけられてるわけでもないから。あ、そういえば「承認お願いします」ってシーンで、私毎回、アニメの『ガオガイガー』の「ファイナルフュージョン承認!」のシーンみたいだなって思ってて(笑)。

一同:
 …わからない。

金田:
 あ、分かりませんか(笑)。97~98年に放映された『勇者王ガオガイガー』というアニメがあって、あれも公務員の話なんですけど、主人公が、敵と戦うために変身するかどうかの承認を下さいって毎回言うんですよ。で、長官が「ファイナルフュージョン承認!」って言ったら、事務方のオペレーターが「ファイナルフュージョン承認!」って、起動スイッチの入ってる、目の前のガラスを割るの、バーンっつって。これ「シビコン」ですよ。変身するのに承認がいるのも面白いんだけど、ガラス割るのも観たくて見てた(笑)。

ひらりさ:
 “シビコン”が観たいのって、やっぱり日本人っぽさなのかもしれませんね。

金田:
 あ、でもアメリカだってシビコンなはず。ま、確かにアメリカって大統領自身が戦いに出てったりする面白映画も多いけど。

ひらりさ:
 それを考えると、矢口も最後は現場に行ってるんですよね。でもあれって、自分がヒーローになるためとかじゃなくて、「いくらでも替えがきくから」っていう理由で現場に出ていってるんですよね。

金田:
 そうそうそう。いくらでも替えはきくし、あそこで実際に「放射線量がものすごいことになってるんだけどどうしますか」って聞かれた時に「どうしますかどうしますか」って悠長にやってる場合じゃないから、それで行くってことになったんだろうね。替えなら泉ちゃんもいるし、赤坂さんもいるしってことで。

西森:
 私は、彼がヒロイズムに酔わない感じがいいなって思いましたね。

公務員と政治家がごっちゃになってる人が多い!

金田:
 ほんと、シビコンについて楽しく語ってるところで申し訳ないんですけど、公務員と政治家がごっちゃになってて、ちゃんと説明できない人多いと思うんですよ。私は「その2つは明らかにちがうだろ」って思ってるので、この公務員と政治家の違いについて今から説明します。

西森:
 他のドラマではあまりこんがらがることないけど、『シン・ゴジラ』に関しては、最初は情報量が多くて、セリフだけで判別できなくて、途中、ああ矢口は政治家だったのかと気づきました。ツイッターで、政治家と官僚を簡単に判別するにはバッジを見たらいいよというのを見て、二度目からは大丈夫でしたが。

両角:
 私はおおざっぱに「国側の人」って認識で最後まで観てました。

西森:
 私は矢口のあり方が何となく政治家っぽくなくて、途中のセリフで「あ、この人政治家だったんだ」って気づいたんです。

金田:
 ただの公務員かって思ってる人もいるだろうけど、あの人、内閣官房副長官だから。

「5分で分かる公務員と国会議員の違い」

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金田氏が作成した資料

金田:
 まずは三権分立。これによって、公務員と国会議員を区別できるっていうのを説明します。三権分立で一番強いのは国会。ここは法律を作るところ。ここに集っているのが国会議員。で、この人たちは何で選ばれるのかというと、皆さんご存知の選挙。私たちが選んでおります。

 この国会議員は公務員なのかっていう議論はあるんですけれども、この人たちには何ができて何ができないのかっていう根拠法が公務員と違うので、やっぱり国会議員は公務員ではない説が有力です。

 そして、この国会議員の面白いところは、というか着目しなきゃならないところは、ほとんどの国会議員が日本の場合政党に所属していて、国民というよりも政党に束縛されてるってことです。作品中でいえば、泉修一が国会議員であり、かつ与党の政調副会長です。

あの登場人物はのちに国政選挙に出る可能性大!

金田:
 それとは違い、公務員と呼ばれる人たちも出てきます。これは三権分立の「行政」。ここには国家公務員と地方公務員がいます。この人たちは試験で選ばれます。おそらくこの作品に出てくる公務員は、昔はⅠ種試験と言われた、一番難しい総合職試験を通過したエリートたちです。

 たとえば尾頭ヒロミさんは、環境庁課長補佐。はぐれモノとかいわれてましたが、たぶんみんな総合職試験に通ってると思います。キャリアということですね。そして安田龍彦、統合幕僚長の財前正夫。そして内閣官房副長官秘書官、志村祐介。この人は防衛省から出向しています。矢口にくっついていますけど、この人は矢口とは立場が違うんです。
 ただ、ひとつこれポイントなんですが、国会議員の秘書になってる人って、のちのち国政選挙に出ることが非常に多いです。だから彼も「もっと矢口先生を補佐したい」とか言って、公設秘書だったのをやめて選挙に出る可能性はとても高い。

 で、最後に、今回映画には出てこないんですが、三権分立の「司法、裁判所」。試験によって選ばれた裁判官等で構成されています。

彼らは超エリートだった

金田:
 しかし、この世には国会議員でありながらも「特別職の公務員」になってしまう人もいます。これがこの映画にたくさん出てくる人たちなんですよ。特別職の公務員っていうのは、国家公務員法第2条第3項各号に示されている超トップの人たちだけです。だから行政職に関しては全体で20人とか30人とかしかいません。

 たとえば総理大臣、国務大臣、内閣官房長官、副長官。あと司法職の裁判官、これはそこそこ多いですけど。作品中でいうと、最初の総理である大河内さん、赤坂秀樹、そしてオレ達の矢口蘭堂!

 彼らは特別職の公務員でありながらかつ国会議員です。そして超エリート。ちなみに日本は議院内閣制というのをとっていて、総理大臣が国会第一党党首であることが定められていて、かつ国務大臣の半分以上が国会議員でなければなりません。

 で、この人たちは任命をされるんですけど、「公務員でありかつ国会議員でもある」っていう特別な職業になるわけですよ。たぶん、このあたりでごっちゃになってきちゃうんだと思うんですよね。

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