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どちらが当選してもトランプの勝利!?―——岡田斗司夫が分析する米大統領選

 11月8日に投票、9日に開票となったアメリカ大統領選挙。直前の支持率調査では僅差となった民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補が対決する。ヒラリーは国務長官在任時の公務に私用メールアカウントを使っていた問題、トランプは女性問題が次々明らかになるなど、互いにスキャンダルにまみれた状態でこの日を迎えた。

 11月6日の『シン・ニコ生岡田斗司夫ゼミ』では、この決戦の直前に現地ニューヨークでその空気を直接肌で感じた岡田が、アメリカの過去と現在から資本主義を考察し大統領選挙の行方を語った。

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アメリカ大統領選2016特設サイト

 「史上最低のアメリカ大統領選挙の行方はどうなる?」「トランプ氏の逆転はありますか?」というテーマですが、逆転と言うか米ABC放送の世論調査ではトランプが1%、ヒラリーよりもリードしているのだけども、こういう普通のニュース番組みたいな事を言ってもしょうがないので、それなりにいってみましょうか。

ヒラリーTシャツが売られ、ハロウィンでヒラリー支持者がパレードするNY

 今回、月曜日(10月31日)から金曜日(11月4日)までニューヨークに行ってきたんですよ。主に「取材」と称して遊びに行ってきたんだけど、ニューヨークに住んでる人って、基本的にヒラリー支持なんだよね。

ヒラリーTシャツを売る露店(左)と、ハロウィンパレードのヒラリー支持者達(右)

 この写真はグリニッチ・ヴィレッジ の屋台で売っていたヒラリーTシャツ。こういうふうに草の根運動的にヒラリー・クリントンの支持をする人が多い。ニューヨークへ行った目的のハロウィンのパレードに行ったら、周りはゾンビとか骸骨とか中世の貴族とか、そういうのばっかりだったのだけれど、中には「ヒラリー支持」という事で、「ヒラリー」って垂れ幕を広げてやっているヤツらもいたんだよね。
 ニューヨーカーは基本的にヒラリー支持。それは9月に行ったロサンゼルスも同じ、基本的に、インテリの人たちとか都会に住んでる人はヒラリー支持で、ニューヨークでもオシャレな雑貨屋さんとか自然食ショップとか、そういう所に行くと「私たちはヒラリーを支持します!」とか、店のショーウィンドウをわざわざ今回の大統領選用に切り替えてやっている人もいる。
 そもそも、なんでアメリカではこんなに大統領選が燃えるのかというと、日本と違って、アメリカでは直に自分たちで大統領を選べるから。アメリカは国民が選挙人を選ぶという間接選挙なんだけど、それで大統領を選ぶ。それが4年に1回、それも「オリンピックと同じ年」と決められてるからスゴイお祭りになっちゃう。

結局、スキャンダル合戦となった史上最低の大統領選

 アメリカの大統領は、共和党と民主党のそれぞれの党から対立候補が出てくるわけだけど、正直に言ってこの20年ぐらい争点がほとんど無かったんだよね。よく言われているのが、民主党は大きい政府で社会保障をやっていて、人工中絶を認めましょうと、共和党は小さい政府で経済格差をある程度認めて、人工中絶は認めないと、といってもこの社会保障にしても何にしても殆ど差も無くなってきていた。今回はそこにトランプが殴り込んできて、「移民は全部追い返す!」 だの、「日米安保はアメリカが不当に損をしているから日本から金を取る! もし金を出さないんだったら、日本から米軍を引き上げる!」 とか言っているので、すごく争点があるように見えるけれども、10月の頭から半ばぐらいにかけて、ヒラリー・クリントンと一緒にテレビ討論をやったら、やっぱりその争点がそんなに燃えずに、お互いのスキャンダル合戦になっちゃった。
 なので、人によっては「こんなに下らない大統領選挙なんて、初めてだ」と、「いくら何でも、これはヒドイ」と言う人もいれば、「トランプに投票する人は、アメリカに対して絶望してる」「インテリに対して絶望している」と、なので「トランプが躍進するのが当たり前だ!」と言う人もいるという。

田舎のトランプ支持者は「仕事と誇りを金持ちに奪われた!」と思っている

 ロサンゼルスやニューヨークでは基本的にヒラリー・クリントン支持なんですというふうに言ったのは、アメリカの残りの大部分の田舎では、案外トランプ支持が多いんだよね。そこで、トランプが言っている極論の、「もう一回、アメリカを強くする!」 とか、特に言っているのが、「低所得者層の所得税をゼロにする」。あと「大金持ちから、徹底的に税金を取り上げる」とも言っている。これに、やっぱり言い方は何だけどもアメリカの貧乏人たちは「おぉーっ!」って言ってる。
 今、ヒラリーとトランプの支持層が各州によってどうなっているのかって地図が、ネットとかを検索するとスグに出て来る。それで見たら、すごい事になっている。本当にトランプが大部分になっている。でも各州ごとに選挙人の人数が違うんだよ。たとえばカリフォルニア州なんかは人口が多いから選挙人が55人いる、つまり55票の権利を持っていると。でもワイオミング州とか、そういうド田舎、俺も「こんな州、『未知との遭遇』ぐらいでしか見たこと無いよ!」というような所に行ったら、選挙人が3人しかいない。そういう人口の少ないところでは、トランプの支持者が多いという事にもなっているんだ。なので、今のところABCが調査した支持率では、本当に1%ぐらいの差しかない状態になっている。そういう田舎に住んでる人達っていうのは、みんな「仕事とか誇りを金持ちに奪われた!」と思っているんだよね。

開店セールで自転車を8ドルで売る! 仕事も誇りも奪った「ウォルマート問題」とは?

 どういう意味かと言うと「ウォルマート問題」というものがあって、スーパーマーケットの西友の親会社がアメリカのウォルマートという世界最大の小売業であり、世界最大の販売企業、雇用数にしても、売り上げにしても、世界最大の会社。「ウォルマート問題」とは何かと言うと、ウォルマートはスーパーマーケットでアメリカ各地に店が出来ている。「Everyday Low Price」が売り文句で、本当に色んな物を安く売る。昔だったら大歓迎だったけど、今のアメリカでウォルマートを建てると言ったら、「そういう所が出来たら困る!」といって周辺住民からスゴイ反対運動や、反対訴訟を起こされている。それでも無理やりウォルマートが出店して大問題になっているので、10年ぐらい前に「ウォルマート問題」のドキュメンタリーが映画になってる。オレはそれをテレビで見た事があるのだけれど、本当に凄いんだよね。
 たとえばウォルマートは、新しく開店すると「開店セール」で自転車を8ドルで売っちゃう。そんな事をされたら、近所の町の自転車屋なんかバッタバッタ潰れちゃうわけだよ。それを半年間ぐらい続けるんだよね。何でそんな事が出来るのかというと、ウォルマートは世界中に店舗があるからそのうちの1店ぐらいで自転車を8ドルで売っても全然損にならない。それによって客が来てくれれば大儲け。それでどうなるのかというと、近くの町の自転車屋がバラバラとひとつずつ店が潰れてシャッター商店街みたいになっちゃう。その結果、みんな働く場所が無くなって買い物出来る場所が無くなって、働く場所はウォルマートしかない、買い物する場所はウォルマートしかないことになるんだ。

 これで正義感が強い人は「ほら見ろ! 結局、ダンピングして後で値段を吊り上げるんだろう!」と言うのだけど、ウォルマート問題が根深いのはそこじゃない。近所の自転車屋が潰れたからといって200ドルにはしない。ウォルマートはその自転車屋が潰れた後で、80ドルで売るんだよね。そういうウォルマートぐらいの資本力と販売力があれば交渉力が半端無い。自転車屋のメーカーに対してもそこら辺の店に対しては60ドルで下ろしているのに対して、ウォルマートは1万台まとめて買うから、それを50ドルにしろよとか、40ドルにしろよと交渉しちゃう。なので、普通の店よりも明らかに安い値段で売ることが可能なんだ。近くのパパママショップでは自分たちの店舗を運営して自分たちの食い扶持を稼がなきゃいけないので、仕入れた自転車に利益を乗せてなんとか100ドルで売っている。実は最初からパパママショップでは勝負にならないんだよ。勝てないんだ。これが「ウォルマート問題」。

商店街が無くなり、働くところも買うところもウォルマートだけになる

 結果、ウォルマートが出来た町には、商店街が無くなって近所の人の顔を見て、その人たちから物を買うという事がなくなってしまう。結局、みんな週末にやる事が無くなって、ショッピングモールに行く事が一番の楽しみになっちゃう。「モール・ラッツ」が増えていく。モール・ラッツというのは、ショッピングモールに住むネズミ、イコール、たとえばイオンモールとか、ああいう所に、やる事が無くてウロウロする子供たち・若者たちの事を悪口で言うのだけれど、モール・ラッツが増えていく。
 それは、今の日本の僕らの状況と、すごいそっくりなんだよね。一方でシャッター商店街があって、一方でイオンモールがあって、「昔は商店街だったけど、今はイオンモールに行ってるからいいや」と思うのだけれども、それを広大なアメリカの土地でやったらどうなるのか? 日本だったらまだ狭いから、東京とかでは商店街が一個潰れても200メートルから300メートル離れたら次の商店街があったりする。地方に行っても商店街がシャッター商店街になって、イオンモールになっても、まだ地域の祭りとかがある。だけど、広大なアメリカでそんな事をされたら、本当にゴーストタウンの中にウォルマートだけが建っているという状態になっちゃう。
 それがそこら中の州で起こっているので、たとえば州の議会に働きかけてウチの州はウォルマート出店禁止にしてくれとか、スゴイ住民運動があるぐらい。アメリカで金持ちたちが貧乏人の仕事も誇りも奪うというのは、そういうこと。ちゃんとやっている仕事みたいなものをどんどん無くしてしまって、買うところも働くところもウォルマートだけにしてしまう。

「ウォルマート問題」は現代に形を変えた奴隷制度である

 ウォルマートは「世界最大のブラック企業」と言われていてコストカットして安く売るのだけれど、交渉で仕入れが安いだけでなく、人件費を死ぬほど削っている。広大なフロアに本当にパラパラとしか人がいなくて、そのフロアをオペレーション出来る最低限の人数でやる事になるので、みんな10時間、12時間、14時間労働が当たり前になっている。給料も安い。それで「辞める」って言ったら、「いくらでも辞めていいよ、働きたがるヤツはいくらでもいるから」って。何でかというと、ウォルマートが出来たおかげで失業したヤツが山のようにいて、ソイツらが列を成してウォルマートで最低賃金で働きますって言っている。何で最低賃金で働けるのかというと、「エブリデイロープライス」でウォルマートで安く食料品が買えるから。オレはコレは明らかに形を変えた奴隷制度だと思うのだけれどさ、こういうのをタコ部屋と言うのだって俺は習ったんだけれども。

 これだけだったら従業員に対してだけなんだけれど、従業員だけじゃない。サプライヤーといわれる仕入れをするような自転車のメーカーとか、そういう所にもコストカットを要求してくる。「安く入れろ」と言う。そうするとそれぞれの部品メーカー、電気屋さんや、冷蔵庫メーカーに関しても、それぞれの部品メーカーに対しても、無茶なコストカットを要求せざるを得ないという事で、ウォルマートの周辺はドンドン貧困になっていってる。
 こんな状況の中でウォルマートの人たちはひたすら稼いでいる。ウォーレン・バフェットも数を減らしたとはいえウォルマート株を優良株として持っている。ウォルマートの株を持っている人や、ウォルマートを所有している人たちが金持ちになっていくと。ウォルマートはこれらに関して一個も反論をしてないの「だからウチは儲かるんです。さあバフェットさん株を買ってください。」と言っているぐらいの状態なんだ。
 これに対して、正義の味方が立ち上がらないのか? というと、立ち上がらないんだよね。なんでかと言うと、資本主義社会において正義の味方というのは消費者であって、消費者は常に文句を言いながらもウォルマートで安いものを買っちゃうから、こういう情報を仕入れて「けしからん!」とインターネットで叫ぶ人はいるのだけれど、そういう人たちがインターネットで使っているパソコンやスマホを何処で買っているのかと言うと、一番安いウォルマートで買って、回線も一番安いウォルマート契約の会社のものを使っている。そういう物凄いやりきれない構造になってしまっていて、ウォルマートはそれで世界一になったんだ。
 低所得者に対して税金をゼロにするとか、金持ちから高額の税金を奪い取るというと、僕らからすると極端な事を言ってるように見えるのだけれども、多分、アメリカの田舎に住んでいる人たちにとって、この20年間の生活、誇りの奪われ方というのはとんでもない事になってるんだ。これがトランプが支持を伸ばしている原因の一つだという事になるんだよね。

資本家が世界を支えていた「古き良きアメリカの資本主義」

 もう一つ、アメリカの資本主義というのは元々こんなものだったのか? という話をしたいです。

ロックフェラー・センターの選挙のポスター

 ロックフェラー・センターというアメリカの中心、ど真ん中、ロックフェラー・ジュニアが1927年に建て始めた巨大なビル郡。その一番下に、NBCのニューススタジオに選挙特番のポスターがあってヒラリー対トランプっていう対立構造がハッキリ分かるようになっている。これを抜けた正面玄関に壁画がある。

ロックフェラー・センター正面玄関の壁画
ロックフェラー・センター正面玄関の壁画

 これはロックフェラー・センターが1931年に完成した頃の壁画なのだけれども、巨大な人間がでっかい木みたいなものを持ってる、その周りに小さい人間がいる。これって何かと言うと、天を支えるアトラス。つまり巨人が天を支えていて、天を支えている梁みたいなもの、柱を持っているんだ。その周りを人間たちが支えているっている構図になっていると。

ロックフェラー・センター正面玄関の壁画の天井部分
ロックフェラー・センター正面玄関の壁画の天井部分

 次にこの壁画が天井の方に行ったらどういう構図になっているかというと、この支えている天井の木が上の方まで渦を巻いて雲とつながっていて、その周りを戦闘機や飛行機がぐるぐるぐるぐる回っている。こういうふうな絵になっている。これは天を支える巨人、アトラス。ギリシャ神話では天というのはアトラスが支えていて、私達が生きているのはアトラスが支えてくれているからだとある。
 それを今のアメリカに置き換えるとどういうことになるかと言うと、アメリカの栄光というのは1931年位のいわゆる航空機産業がどんどん伸びていた時代に、これからはアメリカが制空権を担って世界中を支えなければいけない。このアトラスは世界を支えるアメリカで、そのパワーというのは航空機などアメリカの先端の工業や科学技術で担われていると考えられている。それで周りにいる小さい人間達はなにかというと実はこれ労働者なんだよ。つまり大資本家が、金持ちたちがアトラスとして世界を支えるから、労働者は資本家を支えてくれって祈りが込もっているんだ。
 1930年代くらいのアメリカは社会主義のロシアというのが脅威になってきて、本当に正しい社会システムは共産主義なのかそれとも資本主義なのかという、道徳的な対立が現れていた。ロックフェラー・ジュニアはアメリカ生まれの大富豪としてさ、ものすごい数の慈善事業をやった人。アメリカって慈善事業やる人多いよね。例えばビル・ゲイツとかも今や全資産の8割位を投入してる。何でこういうことをやるかというと、金持ちになった人間というのは必ずその富というのを社会に還元しなければならない。それが資本主義を善、正しい、良いことだと肯定することなんだ。

「資本主義は道徳的に正しい」が最早成立しなくなったアメリカ

 アイン・ランドという作家の『肩をすくめるアトラス』という本があって、その帯には聖書に次いでアメリカ人が人生で最も影響を受けた本だと言っているのだけれども、本当にアメリカで超ベストセラーで、本を読める人つまりアメリカの知識人のバイブルとも呼ばれているSF小説。近未来のアメリカは金持ちたちがどんどん共産主義や社会主義の波を受けて仕事がやりにくくなって、結果的にアメリカの富豪資本家達、誇りを持って天を支えていたアトラス達が、もういいやと言って肩をすくめだした。そうすると世界がゆっくりと滅亡に向かっていく……というディストピア小説、いわゆる暗い社会の小説。日本人はこの本のタイトルすら聞いたことないヤツがほとんどだけど、だいたいアメリカ人の頭のいいヤツはほぼ全員この本を読んでいて、かなりこの思想的な影響を受けているんだよ。
 思想的な影響とは何かと言うと、資本家というのは偉い、何でかというと一つ目はちゃんと成功したからだと。貧乏から身をなした人もいるし、親の遺産を受けた人もいるんだけど、そういうところから身をなして、ちゃんとこの世界を支えるアトラスの役割をしているから、同時に十分富を蓄えた後は、そのアトラスたちは人民たちを助け、労働者たちはアトラスを助けるという、そういう道徳的なフィードバックが働いている。

アイン・ランド著『肩をすくめるアトラス』
アイン・ランド著『肩をすくめるアトラス』

 貧しい人間にも、怠惰な人間にも同じように飯を与えよう、娯楽を与えようとするソビエトの社会主義、共産主義に対して、どんなにアメリカの慈善活動っていうのは人間的で、能動的であるのかというのがアイン・ランドの考え方。これがあるのでアメリカ人は社会的な成功者に対して基本的に尊敬する。尊敬されたヤツらの大部分はちゃんと慈善活動をやる。中にはそんなもの全くやらずに自分だけで富を独占しようとするやつもいるんだけど、それは割と少数派であって、アメリカの良い意味での資本主義は善であるという考え方なんだよ。
 話が戻るけれども、ウォルマートの経営者たちって道徳的に正しくないじゃん。つまり1957年の小説で資本主義は道徳的に正しいとアイン・ランドが言った時代。それがもう成立しなくなっているんだよね。ニューヨークとか、ロサンゼルスに住んでるヤツらというのがどんなヤツか、ヒラリーを支持しているのがどんな人かって言うと、やっぱり同様にウォルマートの株を持っているようなヤツなんだ。つまり、ヒラリー陣営の人達はどちらかって言うと金持ち派みたいに見られてるし、トランプ派はどちらかというと貧乏人というか庶民の味方というような凄い大雑把な分け方をすると、そんなふうになってしまっているんだよね。そういうふうにイメージ操作をしたトランプの勝ちとも言えるんだ。

子供向けの絵本まで作り、とにかく支持者を増やそうとしてるヒラリー陣営

ヒラリーの絵本(左)とレナード・ニモイの絵本(右)
ヒラリーの絵本(左)とレナード・ニモイの絵本(右)

 ヒラリーもそれなりに逆襲していて、俺、絵本ショップ行ってびっくりしたんだけど、絵本専門店に行ったらヒラリー・クリントンの絵本というのが売っていて、なんじゃコレって思って中見たら、もう、ホントにね、ヒラリー嫌われるのが分るイケ好かない本で、「ヒラリー・クリントン——世の中には人々を導くために生まれた女の子もいるのよ」っていうスゴイことが書いてあるんだよ。その隣で売っていた絵本が生涯スタートレックのミスター・スポックをやり続けた男、レナード・ニモイの自伝本。隣同士で売っていて、ヒラリーの本は超安売りしているんだけど、レナード・ニモイばっかり馬鹿みたいに売れているんだよ。アメリカって凄えよなやっぱり!
 ヒラリー・クリントンを支持している人っていうのはこういう絵本を出してでも、とにかく支持者を増やそうとしてるし、草の根運動的にやってる。

マイケル・ムーアも手玉にとる! イメージ操作の魔術師ドナルド・トランプ

 マイケル・ムーアも『トランプランド』っていう映画を作って、ニューヨークに行ったらグリニッジ・ヴィレッジでやっていたんだよ。ふつうマイケル・ムーアの映画ってさ、途中で観客が「マイケルの言ってること正しい! 正しい!」って拍手するんだけど、今回の『トランプランド』は誰も拍手しないシーンとした上映会で、客も閑散とした状態だったんだ。
 その『トランプランド』の中で、「ヒラリー・クリントンをみんなが嫌いなのは知ってる、君たちオレが住んでるミシガン州の、オレの一番のファンのミシガンのみんなもきっとヒラリーみたいの大っ嫌いだろう。その通り、ヒラリーみたいな奴らやヒラリーの後ろにいるような奴らが、僕らから職を奪い、僕らから誇りを奪ったんだ。それは間違いない。でも、それでも今は大嫌いなヒラリーのために一票を投じてくれ」というのがこの映画のクライマックスなんだけど。もうマイケル・ムーアもそこまで言わなきゃいけないくらい追い込まれて……。
 そうしたらトランプがその部分だけ映像を引用して「ほらほら、マイケル・ムーアもこんなこと言ってるぞ」と言って、再生された映像の中で、「ヒラリーが俺達から職を奪い、誇りを奪った。それは間違いない。」というトコロがエンドレス再生されてるやつでキャンペーンやりだしてさ。

どっちが当選しても、勝ち負けで言えばトランプの大勝利

 両者ともね、争点としてはアメリカをどうやって立て直すのかという事に関して言っていることは間違いないんだ。トランプは資本家たち金持ちたちと、そして職を奪われて、誇りを奪われた我々庶民という無理矢理の対立構造にして、「一方が一方を搾取している」という構造に持って行っている。
 これ日本のネット界でもあるよね。いわゆる例えば老人たちが我々若者の仕事のチャンスも何もかも奪っているという対立構造にすると、絶対にそれによって熱狂的なブームというのが起こるんだよ。だからトランプの支持が増えているということに関して、僕らはアメリカ人何考えてるいんだ? 田舎なんだなと笑うことはできるのだけれど、何かを対立構造にして何処かに悪者を作って盛り上げようとするやつは絶対にいる事はいるわけだよね。なのでオレ個人としてはね、この問題、ヒラリーとトランプに関しては何も言えねえよ。別にトランプも資本家の敵って訳じゃなくて、本人も金持ちだしね。貧乏人の味方ってわけでもなんでもないんだ。

 ただ単に今回の選挙を、選挙結果という意味じゃなくって、勝ち負けで言うともうヒラリーの負けなんだ。トランプの勝ちなんだ。何でかというと、結局大統領になってもならなくてもトランプは大儲けしているからだよね。なったらもちろん大成功だし、なれなくてもこれまで実は景気が悪くて所得税の納税すらも遅れていて大金持ちってイメージだけあったんだけど、実は資産に関してはフォーブスの全米ベスト100にも入らないって言われて大喧嘩してたトランプが、もう一回大金持ちっていうイメージに返り咲けた訳だから、負けてもトランプ全然ダメージ無いんだよ。
 それよりはヒラリーの方がトランプとのスキャンダル合戦によって大ダメージで、おそらくヒラリーが大統領になっても、これは宮崎哲弥さんの読みで、このイメージの悪さのせいでこの4年間の任期、ヒラリーはたぶん力は出せないだろうと言っているのだけど、どっちが大統領になるにしてもトランプが勝ってしまった選挙ということだと思います。
 「トランプ氏の逆転はあるか?」ということは、「トランプが大統領になる可能性は?」だよね。正直あると思うよ。30%くらいだけどね。ほぼヒラリーで確定と言われているんだけれども、そんな確定と言うほどのもんじゃないなという温度はちょっと感じました。

アメリカンドリームが崩れている瞬間に僕ら立ち会っている

 そのときに、この『肩をすくめるアトラス』という本からはじまるアメリカの資本家に対する考え方、資本主義というのは道徳的に正しいんだという夢、アメリカドリームというのは何でみんなが成功しようとしているのかというと、ピューリタンにとって、頑張って働いて富を稼ぐという事自体が、実は神に祝福された自分の天職であるから。神様が選んだ職についたからこそ自分は成功できて、お金を儲けることが出来た。だから神様から与えられたギフトとしての才能の発露でお金を儲けたんだからそれを慈善事業にもう一回投資する、という本来アメリカ人が持っていた資本家は善であるべきだ、あって欲しい、という夢が崩れている瞬間に僕ら立ち会っている。そんな風にちょっと見てもらえれば楽しいと思います。

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