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加藤一二三九段とホテルで同室になった際のエピソードを、中原十六世名人が語る。「囲碁を打つことになったんですけど、加藤さんは囲碁でも長考するんですよ」

 将棋界で60年以上、プロ棋士として活躍してきた史上最年長の加藤一二三九段が、20日の竜王戦6組昇級者決定戦の対局に敗れ、現役引退となりました。

 最後の対局には、加藤九段と100局以上対戦をした中原誠十六世名人が解説者としてゲスト登場。数々の思い出の中でも、昭和57年の約4カ月に亘った『十番勝負』の激闘を振り返り、「加藤さんと言えば、それを一番思い出す」とコメントしました。

 また、視聴者からの「残り3局しか指せないとしたら」という質問に、加藤九段の名前を挙げたり、地方遠征で同室になった際のエピソードなどを、高橋道雄九段宮宗紫野女流初段に語りました。

左から高橋道雄九段、宮宗紫野女流初段、中原誠十六世名人。

伝説の『十番勝負』。「本当は負けたのは思い出したくないんだけど、もう時間も経っちゃってるから(笑)」

宮宗:
 中原先生には、4月に行われた第75期名人戦の第一局にティロフォン【※】で出ていただいたんですが、その時はどういった経緯でご出演されたんですか。

※ティロフォン
ニコニコ生放送における生中継時の電話出演システムの事。

中原:
 丁度良い機会ですし、前から名人戦の観戦に行きたいと思っていたんです。控え室で対局の模様を少し見た時に、感想を聞かれたんです。

宮宗:
 
その時のスタジオ解説が加藤九段でしたね。

中原:
 そうだったんです。ですので、加藤さんと少しやりとりをしたんです。喋ったのは相当久し振りでした。

宮宗:
 
本局に加藤九段が負けると引退となってしまいます。

中原:
 加藤九段は14歳からやっておられます。これだけ長く現役を続けた人はいないんじゃないですか。大山先生も長いですけれど、ここまで長くはないですからね。私は8年前くらいに引退しましたが、私より20年ほど長くやっておられますので、凄いですよね。

宮宗:
 
中原・加藤戦では中原先生の67勝ですね。

中原:
 100局以上はやっていたのですが、正確に何勝したかは覚えていなかったですね。

宮宗:
 
印象に残った対局も沢山おありですよね。

中原:
 加藤さんは昭和57年の名人を獲得したシリーズが一番印象深いとお話されているようですけれど、私も、加藤さんで一番思い出す対局と言えば、それですね。本当は、負けたのは思い出したくないんだけど、もう時間も経っちゃってるから(笑)。

高橋:
 私がお二人の先生の対局で一番印象的だったのは、昭和48年の中原先生が名人を初防衛されたシリーズが印象的で、加藤九段に対して圧倒の4連勝をしちゃうんですよね。

中原:
 あの当時の加藤さんは、将棋が消極的でしたね。それを変えてから、タイトルを取るようになりましたし、私も随分と負けるようになりましたよ。

昭和54年、第28期王将戦七番勝負 第5局の様子。左から加藤一二三さん、中原誠さん。画像は、日本将棋連盟ホームページより。

中原:
 第40期名人戦の終盤、私は他に勝負手が無く、自分の方に詰みがあると分かっていたんです。でも、加藤さんがどうも気が付いていない雰囲気だった。詰みに気がついた前後くらいに奇声を発したんです。

宮宗:
 奇声を発したのは座っている状態ですよね。

中原:
 ちょっと腰を浮かせるような格好もしましたね(笑)。

宮宗:
 びっくりしますよね(笑)。

高橋:
 
でも加藤先生なら、ありかな(笑)。

中原:
 今、藤井四段が出てきて、どうなるのか分かりませんが、加藤さんは14歳で四段になって、18歳で八段になっています。この記録はなかなか破れないと思います。私が奨励会に入った10歳の時、加藤さんが18歳で八段になられて、大変な騒ぎでしたよ。加藤さんは年齢以上に先輩なんです。

宮宗:
 その時からボヤキをされていたんですか。

中原:
 ボヤキはなかったけれど、空咳はその頃からやっていましたね。

高橋:
 空咳によって、形勢をどう思ってらっしゃるか分かるんですよね(笑)。空咳が出ている時は形勢が難しい時。形勢が傾くと、咳をされなくなるんですよ(笑)。

宮宗:
 プライベートでは、加藤九段と囲碁を打たれた事もあるとお聞きしました。

中原:
 碁はいい勝負ですよ。いつだったか地方に行った時、どういう訳か二晩もツインの部屋に閉じ込められたんです。時間を持て余したので、「加藤さん、碁でも打ちますか」って言って。ただね、一局3時間もかかるんです。

 どうも時間がかかるので、打ち掛けにして、2日で一局打ったことがあります。加藤さんは囲碁も長考派なんですよ(笑)。

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